大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

クラファン7,491万円達成の富士通「FMV Keyboard X」、極限の静音化を追求

FMV Keyboard X

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の高性能コンパクトキーボード「FMV Keyboard X」が、生産・出荷に向けて最終調整段階にある。

 2026年6月12日まで実施したクラウドファンディングでは、目標を大きく上回る支援を得ることに成功。すべての支援者に対して、2026年9月末までに手元に届くように、生産および出荷を進めることになる。現在も、細かい改善が行なわれているところだ。

 開発をリードしたFMVキーボードマイスターであるFCCLの藤川英之氏は、「より良い製品に仕上げるために、引き続き努力をしている。支援者のみなさんには、手元に届くまで、もう少しお待ちいただきたい」と語る。

 「FMV Keyboard X」の最新状況とともに、新たに「Lifetime Comfort」のコンセプトを掲げたFMVアクセサリ事業戦略について、藤川氏に聞いた。

日本のノートPCユーザーに最適化

 「FMV Keyboard X」は、FMVアクセサリの新たな製品と位置づけられ、磁気スイッチ方式やラピッドトリガーを採用しながら、静音設計を実現。心地よい打鍵音に加え、キーごとに反応荷重を最適化したプリセットを選択できるようにしているのが特徴だ。

 藤川氏は、「FMVによって培ってきた技術により、日本のノートPCに慣れ親しんだユーザーに向けて最適化したキーボードである」と位置づける。

富士通クライアントコンピューティング(FCCL)プロダクトマネジメント本部ペリフェラル統括部開発部部長でキーボードマイスターの藤川英之氏

 ビジネスシーンでの利用を想定し、快適性、正確性、耐久性といったニーズに対応。日本語配列を採用したほか、カーソルキーはFMVノートPCと同じ独自レイアウトを採用。良触感キーキャップを取り入れるなど、使いやすさ、品質、デザインにこだわった。

 そして、FMVキーボードマイスターである藤川英之氏の監修により、細部まで手を入れ、完成度を高めている点も大きな特徴だ。

 「FCCLのノートPCに慣れ親しんでいる人はもちろん、ビジネスユーザーが快適に利用できるキーボードを目指した。FMV Keyboard Xを、他社のノートPCに接続して利用してもらうことも想定しており、FMV Keyboard Xを使ったユーザーが、次に購入するノートPCにFMVを選んでもらうことも狙っている」と、新たなFMVファンの獲得にも意欲をみせる。

支援総額7,491万円、2,921人が支援

 FMV Keyboard Xは、CCC(TSUTAYA)グループのワンモアが運営するクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」において、4月8日から支援の受付を開始。初日で目標金額の100万円を達成。6月12日の締め切りまでに、支援総額は7,491万9,827円に達し、2,921人が支援した。

 筐体色は、ブラックとホワイトを用意しているが、比率は2対1となっており、想定通りだったという。

 支援者の支援理由を集計してみると、最も多かったのが、「デザイン・製品コンセプト・所有欲」であり、17.2%を占めた。また、「理想のキーボードの探求」および「HHKBとの比較検討」が14.0を占め、さらに、「ブランドへの信頼」が13.2%、「キー配列や打鍵感へのこだわり」が11.6%となった。

 藤川氏は、「支援理由の上位をみると、製品コンセプトとFMVブランドへの評価が高い。また、キー配列に対する評価や、2021年7月にクラウドファンディングを行ない、話題を集めたLIFEBOOK UH Keyboardの後継機種を待っていたという声もあがっていた」とし、「FMV Keyboard Xを使ってもらいたい人たちに届いている」と自己分析した。

 FMV Keyboard Xの目玉機能といえる「磁気スイッチ・最新技術への期待」が7.1%の構成比に留まり、7番目の評価となっているのは、意外でもあり、やや残念な感じもするが、藤川氏は、「その点はあまり気にしていない」と語る。

 FMV Keyboard Xは、キースイッチには磁気スイッチ方式を採用し、繊細な打鍵感と静音性を両立。ラピッドトリガーにより、高速入力にも対応しているのが特徴だ。さらに、Nキーロールオーバー機能を搭載しており、すべてのキーの同時入力を正確に認識して、高速タイピング時の誤入力を防止するといった新たな機能も搭載している。

磁気スイッチ方式を採用している

 また、静音性の実現には、カスタマイズ静音キースイッチとガスケットマウント構造を採用。オフィス内や、周りが静かなビジネスシーンでも周囲を気にせずに使うことができる。

 藤川氏は、「ビジネスでの利用を前提としており、そのための製品コンセプトやキー配列、デザインに一番こだわっている。特に、FMV Keyboard Xの最大の特徴はカーソルキーのレイアウトにある。ここに対する評価をもらっている。むしろ、その点ではうれしい結果」と語る。

 また、支援者のコメントを集計すると、「応援しています」「がんばってください」といった応援やエールが約40%を占め、「届くのが楽しみ」「期待しています」などの期待を寄せるコメントが約30%を占めた。

 「FMVの打鍵感が好き」「配列が良い」といった製品仕様への共感や評価が、全体の約15%を占めており、FMV Keyboard Xへの期待が高いことが分かる。

 一方で、「テンキーの搭載を希望する」「Macに対応してほしい」といった改善や機能追加の要望が約5%あったという。ちなみに、FMV Keyboard XはMacでも利用できるが、「Windowsアプリを用いて、キーごとの詳細な設定やキーマップの変更ができる」としていたことから、Mac対応の要望があったとみられる。

 ちなみに、FMV Keyboard Xは、東京・二子玉川の「蔦屋家電+」や、福岡天神の「蔦屋書店」にモックアップを展示し、タッチ&トライを行なっており、ここに参加し、実際に操作した人たちからの評価も高かったという。

打鍵音の静音化をぎりぎりまで追求

 現在、生産、出荷に向けて、最終調整を行なっているところだ。

 「4月の発表会では、シフトキー、スペースキー、エンターキーの打鍵音に対する要望があった。もともとさらにチューニングをする予定だったが、モックアップとはいえ、この部分に対する要望が多かったことから、さらに静音化する方向で改良を行なった。静音化については、まだ満足していない部分もある。ぎりぎりまで追求をしていく」と述べた。

 ガスケットマウント部の寸法の見直しなどにより、キー内部の構造を細かく調整したほか、スタビライザー周りの精度調整や、適切なグリース塗布などにより、音や振動を抑えるための対策を施したという。

 キーボードの打鍵音は、dB(デシベル)だけでは評価できないと藤川氏は語る。

 「感覚的な要素が大きい。人間が耳で音を聞いたときに受ける聴感が重要であり、そこに関しては、FMVキーボードマイスターとして、自信を持って調整をしていく」と語った。

 さらに、キートップがぐらぐらと揺れるという指摘があり、ここにも改良を加えている。これもモックアップ段階での完成度の低さが原因であったが、量産品では解決される。

 また、量産に向けて、塗装の最終調整も進めているという。

 FMV Keyboard Xには、武蔵塗料の高耐久触感塗料「ネオラバサン」を使用。FCCLのエンジニアが、工場を訪れて条件を決定しており、製品の安定化につなげているという。これは、ゼブラのボールペンのグリップなどにも使用されている塗料であり、操作性を高めることにも貢献する。

 「モックアップでは、見た目の確認を優先し、簡易的な塗装に留めていた。そのため、強く擦った際に印字が摩耗して見える状態となっていた。製品に近い塗装条件でキーを作り直し、印字がどの程度まで耐えられるかを検証した。キーに印字された文字も、長く安心して使える品質に近づいた」としている。

プリセット調整が最後の難関

 FMV Keyboard Xでは、3種類のアクチュエーションプリセットを搭載している。これは、藤川氏による「マイスター監修」のプリセットであり、軽い力ですばやく入力できる「ライト入力設定」、FMVノートPCと同様の押下圧を実現する「おすすめ入力設定」、深く押し込んで確実に入力する「ハード入力設定」を用意。ユーザーは、好みの打鍵感を選択できる。

 藤川氏は、「設定する項目が多く、現時点で最も苦労をしている部分」と語る。

 FMVノートPCと同様の押下圧を実現する「おすすめ入力設定」は、すぐに設定できそうにも感じるが、「それも、1つずつのキーを細かく設定しなおしている」と明かす。

 というのも、ラピッドトリガー機能を持つキーボードで、通常のFMVノートPCと同等の押下圧を実現するためには、一からのチューニングが必要となり、その調整に時間がかかっているのだという。

 「最後の最後まで、最も苦労する部分だと考えている」とする。

 なお、FCCLでは、クラウドファンディングの支援者への発送以降、公式オンラインストアである「FMV Store」において、FMV Keyboard Xの販売を開始する予定であることを明らかにしているものの、その時期は明確にしていない。価格は、2万9,700円(税込)を予定している。

周辺機器全体に広がる新コンセプト

 FCCLでは、アクセサリブランドのコンセプト「Lifetime Comfort」を打ち出している。

 この点についても、藤川氏は触れた。

 「FMV Keyboard Xを開発する際に、FCCLとしてのどんな方向性で、どんなモノづくりをしていくのかという軸を設定する必要があると感じた。そこで打ち出したのが、『Lifetime Comfort』である。日本人の暮らしに寄り添ったコンセプトである」と位置づける。

 FMV Keyboard Xでは、Lifetime Comfortを具現化する要素として、「リニア特性による軽くスムーズな打鍵と、打鍵感を好みに合わせて変更できるプリセット機能を搭載」「省スペースでも使いやすく、デスクをすっきり見せることができる無駄のない上質なミニマルデザイン」「日本語配列やFCCL独自のカーソルキー配置など、日本のノートPCユーザーの作業効率を高める設計を追求」の3点を挙げている。

 中でも、日本のオフィスや家庭に最適なミニマルデザインを、Lifetime Comfortを実現する明確な要素の1つに挙げてみせた。

 藤川氏は、「今後も、Lifetime Comfortのコンセプトに則ったアクセサリを出していきたいと考えている」とする。

 藤川氏は、FMVキーボードマイスターであるとともに、2026年4月からは、プロダクトマネジメント本部ペリフェラル統括部開発部 開発部長に就いている。つまり、2026年4月以降は、キーボードだけでなく、ディスプレイなどの周辺機器全体の開発責任者の立場となっているのだ。言い換えれば、Lifetime Comfortのコンセプトが、キーボード以外のディスプレイ、マウスといったFCCLのアクセサリ全体に広がるといっていい。

 「アクセサリの新たな動きについては、今後、改めて伝えたい」とする。

 今後、FCCLのアクセサリ事業が、どう展開することになるのか。2026年度下期以降の注目すべきポイントの1つになりそうだ。