大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
TVドラマ「ゆうべはお楽しみでしたね」の制作現場でマウスコンピューターのDAIVが活躍
2019年2月27日 06:00
TBSで毎週火曜日25時28分から放送されている「ゆうべはお楽しみでしたね」は、オンラインRPG「ドラゴンクエストX」をモチーフにした同名の人気漫画を実写ドラマ化したものだ。
ドラマのなかには、実写画像に、主人公のアバターとなるキャラクターが登場したり、ゲームをプレイしたりするシーンがふんだんに使用されている。それらの映像制作や撮影で活躍しているのが、DAIVシリーズをはじめとするマウスコンピューターのPCである。「ゆうべはお楽しみでしたね」の制作現場で、なぜ、DAIVシリーズが選定され、利用されているのか。実写のなかで動くキャラクターのCG制作などを担当した、あまた株式会社を訪れて、話を聞いた。
mayaで制作されるアバターのCG映像を実写映像に合成
あまたは、2008年6月の設立したエンターテイメントコンテンツの制作会社。ゲーム開発のほか、VRコンテンツの開発や映像制作なども手掛ける。
ゲーム開発では、「天華百剣 -斬-」(ディー・エヌ・エー)、「FINAL FANTASY AGITO」(スクウェア・エニックス)などの実績を持ち、RPG、アクション、シミュレーション、パズルなど幅広いジャンルのゲームソフトウェアの開発を行なっている。
また、自社VRゲーム「Last Labyrinth(ラストラビリンス)」の開発実績のほか、TVドラマ「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」をはじめとした映像コンテンツの企画、プロデュースでも実績を持つ。
今回の「ゆうべはお楽しみでしたね」の制作は、同社の映像コンテンツ事業の取り組みの1つで、「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の実績を活かしたものだ。
「ゆうべはお楽しみでしたね」は、金田一蓮十郎氏の同名人気漫画を実写化したドラマ。スクウェア・エニックスが、「ドラゴンクエスト」シリーズ初のオンライン専用ゲームとして、2012年8月にサービスを開始した国内最大級のオンラインRPG「ドラゴンクエストX オンライン」をモチーフにしたシェアハウスラブコメ作品だ。
原作は、スクウェア・エニックス刊の「ヤングガンガン」で連載され、単行本は、最新刊となる第6巻が1月25日に発売されたところだ。
ドラマでは、強気なギャル系女子であるものの、部屋ではすっぴんめがねというギャップのある「おかもとみやこ(ゲーム内では「ゴロー」♂)」役に女優の本田翼さん、優しくて懐の深いオタク男子である「さつきたくみ(ゲーム内では「パウダー」♀)」役には実力派俳優の岡山天音さんを起用。ダブル主演でドラマは繰り広げられる。ちなみに、本田翼さんは、「ドラゴンクエスト」のガチプレイヤーとしても知られる。
あまたでは、ゴローやパウダーのアバターの3Dモデルを制作。実写と合成させて、画面上でアバターが自然な動きをしたり、豊かな表情を見せたりする。
あまた ビジネス開発部部長兼プロデューサーの渋谷恒一氏は、「マウスコンピューターの協力を得て、スペックがもっとも高いPCを2台導入し、これをフル稼働させた。このPCがなかったら、納品期日までに制作が間に合わなかったかもしれない。まさに縁の下の力持ちとも言える存在だった」と振り返る。
オートデスクの3次元モデリングソフト「maya」でアバターを制作。このCG映像を、実写映像に合成するさいには、フレーム単位で1枚ずつ書き出す作業が必要になる。これらの一連の作業を行なうためには、多くのマシンパワーが必要になり、マシンパワーが足りなければ時間ばかりがかかってしまい、かぎられた制作日数を圧迫するばかりになる。
実際、制作日数はかなりタイトだった。
アバターの映像合成は、実写の撮影後に、編集作業を行ない、それから開始されることになる。
「ゆうべはお楽しみでしたね」では、実写映像とアバターを合成する「カットバック」と呼ばれる映像編集方法が使われており、違和感がないように、実写の俳優と、制作したアバターが、同じアングルで、同じ演技をしなくてはならないからだ。
あまた側には、事前にシナリオや絵コンテが提供されていたが、撮影、編集が終わってからでないと、アバターの制作ができないという状況にあったわけだ。
最初の放送は、関西エリアのMBSが、1月6日からとなっている。第1話の撮影は、11月20日に終了したが、そこから納品時期を逆算しても、きわめて短期間でアバターの制作を行なわなくてはならないことがわかる。
アバターの制作を担当したビジュアルディレクターの林浩行氏は、「私が、このプロジェクトに参加したのは11月のこと。制作時間がかぎられていたことから、アバターを動かせる範囲は、必要最小限になると考えた」と、制作開始前の心境を語る。
林氏は、Graphic幹に所属しており、あまたの要請で、今回の制作プロジェクトに参加した。
だが、「多くのドラクエファンに納得してもらえる完成度に高めたいという気持ちに加えて、登場する可愛いキャラクターを、人間らしい動きによって、できるかぎり演技をさせ、視聴者にキャラクターの意思が伝わるようにしたいという思いが強かった」とも語る。
林氏自身も、これまでに、ドラゴンクエストシリーズに関する仕事に携わってきた経験がある。それだけに、作品に対する思い入れは人一倍強い。
「アバターの制作作業に入る前に、第1話のラッシュ(編集前の映像)を見せてもらい、監督が求めている演技を想定し、ありとあらゆる状況に対応できるように準備をしていた。結果として、それが、その後のスムーズな作業につながった」とする。
林氏が制作するアバターは、プクリポのパウダー、オーガのゴロー、そして、スライムの3体だ。パウダーとゴローは、俳優の動きとリンクさせて制作。さらに、ライティング調整なども行なっている。
アバターに違和感なく、俳優と同じ動きをさせるのが、ビジュアルディレクターとしての林氏の腕の見せ所だ。
ここには、林氏ならではのオリジナリティが発揮されているという。
当初は、スクウェア・エニックスから提供されたモデルや仕草、動きなどを使って制作するつもりだったが、実写と合成したさいに、そのままでは、表現力が足りなかったり、アバターでうまく演技ができない部分が発生したりといった課題が生まれた。そこで、林氏は、アバターがよりスムーズな動きを行なったり、豊かな表情をしたりするように、作り込みを行なった。
キャラクターの管理は、著作権を持つスクウェア・エニックスが行なっているが、林氏が制作した動きや表情などについては、スクウェア・エニックス側も高く評価したようだ。
CPU使用率100%張り付き状態でも、一度も落ちずに安定稼働したDAIV
「ゆうべはお楽しみでしたね」の制作においては、マウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」シリーズを使用。11月に、レンダリング用として2台を導入した。
「それまで導入していたPCでは、性能が劣るため、これを使っていては期日に間に合わないと判断した。マウスコンピューターとは、できれば最高スペックのPCを使いたいという話をしていたが、撮影準備などに追われて、直前まで、具体的なスペックを提案できていなかった」と、渋谷プロデューサーは語る。
その後、マウスコンピューターとの話し合いにより、スペックを決定。短期間で制作現場にPCを導入した。
導入した2台のPCの仕様は以下の表のとおりだ。
DAIV-DGX750U1-M25H10 | DAIV-DGX750H2-M25H5 | |
---|---|---|
CPU | Core i9-7980XE (18コア/36スレッド、2.6~4.2GHz) | Core i9-7900X (10コア/20スレッド、3.3~4.3GHz) |
GPU | GeForce GTX 1080 Ti | |
メモリ | DDR4-2666 128GB | DDR4-2666 64GB |
SSD | 1TB(Samsung PM981 NVMe対応) | 512GB(Samsung PM981 NVMe対応) |
HDD | 3TB | |
直販価格 | 699,800円 | 429,800円 |
「CPU使用率は、つねに100%まで振り切れていた。また、レンダリングしている最中に、別のソフトを立ち上げて、確認作業をしなくてはならないことがあったが、そのさいにもトラブルが起こることなく問題なく利用できた。それだけ酷使しても、一度もシステムが落ちることがなかった。安定性は抜群であり、それによって、安心感を持って、ストレスなく、作業を行なうことができた」と林氏は語る。
林氏は、以前にもマウスコンピューターのPCを使用して、アニメ制作などを行なった経験があるという。
「並行して使っていた他社のPCでは、システムが落ちてしまうこともあったが、このときも、マウスコンピューターのPCは、最後まで問題なく動作した。それ以来、マウスコンピューターのPCは、安定性とハイスピードを両立できるPCであるというイメージをずっと持ち続けている」という。
一方、また、あまたでは、TVドラマ「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の制作においても、マウスコンピューターのPCを使用した経験があった。
「このときには、監督の指名でマウスコンピューターを使用したが、制作過程において、一度もトラブルがなかった。そうした信頼があったことも、今回の制作にマウスコンピューターを利用することにした理由の1つ」(渋谷プロデューサー)とする。
さらに、制作プロジェクトの管理を担当した、あまた 制作0部プロジェクトマネージャーの三鴨ユキ氏は、「ゲームソフト開発会社には、コストパフォーマンスの高いPCとして、マウスコンピューターのPCが数多く導入されているという印象を持っていた。
世のなかでの知名度が低いときから、知る人ぞ知るPCとして、ゲームソフト業界内に浸透しており、開発者からも高い評価を得ていた」としながら、「マウスコンピューターから、PCを調達して、すぐに利用できる環境にすることを心がけた。マウスコンピューターには、最高のスペックを搭載したPCの調達にも、迅速に対応してもらった」とする。
現時点まで、制作現場において、マウスコンピューターのPCは、一度もダウンしていないという。
林氏は、「まさに、質実剛健という言葉が当てはまるPC。もし、一度でもダウンしたら、制作期日に間に合っていなかっただろう。ハイパフォーマンスと安定性を持ったバランスがいいPCであり、任せられるPCである」と評価する。
実は、「ゆうべはお楽しみでしたね」において、マウスコンピューターのPCが使われているのは、制作現場だけではない。
ドラマで使用されているゲーム画面を撮影するためのPCや、実写の撮影シーンで、主人公が使っているPCやディスプレイなどにも、マウスコンピューターのゲーミングPC「G-Tune」などが使われ、原作者の金田一蓮十郎氏のブログの投稿にも、マウスコンピューターのノートPCが使用されている。
そして、主人公がドラマのなかで使用しているPCに、G-Tuneが選ばれているのは、同製品に、「ドラゴンクエストX推奨パソコン」が用意されていることも見逃せない。
「ドラゴンクエストX推奨パソコン」であれば、モチーフとなっている「ドラゴンクエストX」を、快適にプレイできる環境が整うことになり、まさにこのドラマには最適なシーンの撮影が可能になるというわけだ。
結果として、ゲーム画面の撮影用や現場でのプレイシーンの撮影用、そしてアバター制作用のPCをあわせて、7台のマウスコンピューターのPCが使われている。
「今後は、業務用PCとしても、マウスコンピューターのPCを導入することを予定している」(渋谷プロデューサー)という。制作現場での高い信頼性が、業務用PCとしての導入もつながっているというわけだ。
最後に、「ゆうべはお楽しみでしたね」の見所を、制作した立場から語ってもらった。
渋谷プロデューサーは、「ゲームをテーマにしたドラマであるのが、『ゆうべはお楽しみでしたね』の特徴。そのドラマに、ゲーム開発会社である当社が関わることで、ドラマに命を吹き込めることができたと自負している。実写との合成部分にはこだわっている。ゲーム開発会社が作ったドラマであるというこだわりの部分を見てほしい」と語る。
また、林氏は、「原作は、ドラクエを楽しんでプレイしていることが伝わってくる内容。ドラマでも、それを伝えたいと思い、制作した。このドラマを見てもらうことで、ドラマを楽しむだけでなく、ドラクエをプレイしてみたいと思ってもらえるものを目指した。ドラマも、ゲームも楽しんでほしい」とする。
そして、三鴨氏は、「キャラクターの可愛い表情を、ぜひ見てもらいたい」と呼びかける。
制作現場からも自信作であるとの思いがヒシヒシと伝わってくる。それらのこだわりを実現するために、マウスコンピューターのPCは、重要な役割をはたしているというわけだ。
なお、「ゆうべはお楽しみでしたね」の放送は、全6話で放映。MBSでは1月6日から、毎週日曜日24時50分から。TBSでは、1月8日から放送を開始して、毎週火曜日25時28分から放送。また、CBCでは1月31日から、毎週木曜日25時29分から、HBCでは1月14日から、毎週月曜日25時27分から、となっている。さらに、U-NEXTでの独占配信のほか、U-NEXT限定外伝も製作されるという。