大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
顧客体験の向上で顧客を成功に導くアドビの戦略
~アドビ 佐分利ユージン社長インタビュー
2017年11月27日 12:49
Adobeにとって、2017年は大きな発表が相次いだ1年だった。2017年3月に米ラスベガスで開催されたAdobe Summitにおいて、Adobe Experience Cloudを発表。Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloudとともに、3つのクラウドサービスを提供する体制を整えたほか、2017年10月に、同じく米ラスベガスで開催されたAdobe MAXでは、Adobe Creative Cloudの強化や、Photoshop CC、InDesign CC、Illustrator CC、Premiere Pro CCなどの主要アプリケーションの機能をアップデート。人工知能(AI)と機械学習プラットフォームであるAdobe Senseiも大きく進化させた。
日本法人であるアドビシステムズの佐分利ユージン社長に、2017年のアドビの取り組みを振り返ってもらうとともに、今後の方向性について聞いた。
――2017年は、アドビシステムズにとっては、どんな1年になりましたか。
佐分利 じつは、アドビシステムズの日本法人は、1992年に設立して以来、今年(2017年)で25周年を迎えた節目の1年でした。外資系IT企業としては日本で長い歴史を持つ1社であり、その間、アドビの業態は大きく変化してきました。アドビは、イノベーションの速度が高まるのにあわせ、それに危機感を持って変化を遂げてきたわけですが、そうした変化をするなかにおいても、長年に渡って、お客様、パートナー様に支えられてきたことに、改めて感謝したいと思っています。
今年はそのなかでも、「顧客体験の時代」が到来してきたこと、そして、コンテンツ、データが重視され、デジタルを駆使した顧客体験が重要になってきたという点にフォーカスしてきたわけですが、これは、言い換えれば、我々が持つクリエイティブのDNAを生かすことができる時代に入ってきたとも言えますし、我々のルーツに戻ってきたとも言えます。
IT市場は、メインフレームからサーバー/クライアント時代に変わり、その後インターネットの登場、スマートフォンやSNSの広がりといった変遷を辿っていますが、我々の表現を用いれば、ERPなどを活用することで企業最適を追求した「バックオフィス」の時代から、従業員の生産効率を高める「フロントオフィス」の時代へと変わり、いまは「カスタマエクスペリエンス(顧客体験)」の時代を迎えていると言えます。この新たな時代では、バックオフィスとフロントオフィスの効率化の経験を活かしながら、どうやって最適な形で顧客の満足度を高めるかが重視される時代とも言えます。それが、まさに顧客体験の時代なのです。
そうした時代の変化にあわせて、アドビが提供するサービスが変化し、製品や技術が揃ってきたのが2017年と言えます。アドビは、顧客体験の時代に大きな影響を与えることができる企業になったと言えます。
――ところで、アドビシステム日本法人の25周年については、これまで対外的に訴求していなかったような気がします。記念キャンペーンも行なっていませんよね。
佐分利 隠していたわけではないのですが(笑)、これまで25周年については、まったくお話ししていません。このインタビューで初めてお話ししました。これを今年の社内のクリスマスパーティーのメインテーマにしようと思っています(笑)。社内を熱くしてから、社外にも訴求しようと考えています。
――まさか、25周年を忘れていたわけでは?(笑)
佐分利 さすがにそれはありませんよ(笑)。じつは、2017年12月に、Adobe Systemsが創業してから35周年を迎えます。日本法人は、1992年3月の設立だったので、すでに25周年目に入っているのですが、米本社の創業35周年とあわせて訴求しようと考えています。2018年1月からは、お客様やパートナー様にも改めて、本社創業35周年、日本法人設立25周年ということを組み合わせて、ご挨拶をさせていただき、新たなご提案をさせていただこうと思っています。
――話を戻しますが、2017年3月に米ラスベガスで開催されたAdobe Summitにおいては、Adobe Experience Cloudを発表し、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloudとともに、3つのクラウドサービスを提供する体制を整えました。とくに、Adobe Experience Cloudは、市場にどんな影響を与えたと考えていますか?
佐分利 一般消費者の行動が大きく変化してきているのは周知の通りです。消費者の多くは、WebやSNSを活用して、商品の情報を得たり、商品を直接購入したり、あるいは商品を評価したりしています。こうした変化に企業はどう対応していくべきなのか。現状維持は戦略ではありません。危機感が高い企業こそ、変えていくという意識が高く、顧客体験の重要性も強く感じています。
そうした変化に対して企業がトランスフォーメーションしていく上で、そのお手伝いをするのがアドビの新たな役割だと言え、その中核になるサービスが、Adobe Experience Cloudになります。Adobe Experience Cloudは、8つのソリューションで構成される包括的なクラウドサービスであり、すでに、日本においてもいくつかの導入成果が出ています。
たとえば、丸井グループでは、オムニチャネル事業強化の一環として、アドビのWebコンテンツ管理ソリューションであるAdobe Experience ManagerとパーソナライゼーションソリューションであるAdobe Targetを採用し、Web制作や効率的な情報配信をすべて内製化し、パーソナラズした情報配信を開始しました。リアルの店舗を持つ丸井グループが、eコマース専業事業者にどう対抗していくか。それを考えたときに、デジタルを活用しながら、小売店ならではの特徴を生かそうとしたわけです。
その結果、同社が取り組んだのが、デジタルを活用して集客し、店頭では最高のおもてなしを行ないながら、試着は店舗で行なってもらい、実際の商品は翌日や翌々日にお届けするという仕組みの提案でした。小売店の特徴を活かしながら、顧客にとっての新たな価値の提供と、利便性を増すことができる取り組みだと言えます。
実際、試着だけを可能にした常設店舗は5店舗にまで拡大していますし、外部施設を活用したイベント開催では、2017年上半期だけで21回も開催しており、新たな提案が顧客に受け入れられていることが示されています。
一方、イオン銀行では、DMP(データ管理プラットフォーム)の観点からAdobe Audience Managerを導入し、オーディエンスプロファイルデータを活用することで、顧客1人1人にパーソナライズしたデジタル体験の提供を可能にしました。顧客の属性情報を活用して、Webや店舗を横断したかたちで、パーソナライズ化した顧客体験をさらに前進させることができたのです。
イオン銀行では、2014年からデータ分析ソリューション「Adobe Analytics」と、「Adobe Target」というAdobe Experience Cloudの2つのソリューションを導入しており、キャッシュカードとクレジットカード、電子マネーの機能が一体になった「イオンカードセレクト」の申し込み数を約1.5倍に増加させたり、顧客行動に応じて掲示するバナーやビジュアルをパーソナライズした結果、各商品のコンバージョン率が2~3倍向上したりといった結果が出ています。今回のAdobe Audience Managerの導入では、各地域ごとの店舗キャンペーンの告知などが行なえるようになり、よりパーソナライズした提案が可能になりました。
――Adobe Experience Cloudによって、まさに顧客体験の時代のソリューションが実現できているというわけですね。
佐分利 もう1つ見逃せないのが、製品導入だけでなく、同時に、人材育成のプログラムを実施している点です。アドビでは、今年から、新たに人材育成サービス「アドビデジタルマスターズワークショップ」を開始しています。豊富な知識と専門性を持つコンサルタントおよびトレーナーが、Web制作の基礎知識とデータ分析の基礎などを教える「ジェネラルトレーニング」と、データ分析やパーソナライゼーションなどの専門知識を習得するための「プロフェッショナルトレーニング」を提供し、企業のデジタルトランスフォーメーションの早期実現を支援するものです。
その第1号ユーザーが、丸井グループとなります。日本では、失業率が低いことを見てもわかるように、人材が不足しています。とくに、デジタルなどの新たな領域のスキルを持った人材は、大学での教育が遅れているということもあり、ますます不足しています。不足しているのならば社内で育成しなくてはならないという危機感も高く、アドビデジタルマスターズワークショップに対する関心が高まっています。海外に比べても、その意識は高いと言えます。
また、DSG(デジタルストラテジーグループ)を通じたプロフェショナルサービスも強化していますが、ここでは、日本特有の要求が出てきています。海外では、ほとんどがデリバリー領域でのサービス提供やテクニカルコンサルテイングが中心なのですが、日本では3~4割をビジネスコンサルティングの領域で占めています。もともと日本では、マーケティングをアウトソースする傾向が高く、社内にマーケティングに関するノウハウが蓄積されていないことが浮き彫りになっています。
たとえば、日本では、Webの管理はIT部門が行なっている例が多く、マーケティング部門が行なっているケースはまだまだ少ないですよね。デジタルマーケティング領域におけるプロフェショナルサービスは、アドビにとっても新たなビジネス領域です。この数年で、顧客の現場でインプリメンテーションを行なっていた経験者やシステムイングレータの技術者といったように、ユーザーが求めることに対して共感できる人、技術力に長けた人などを採用して、新たな体制を整えています。
現在、日本法人の社員は約400人体制ですが、約3分の1がコンサルティングサービスを担当し、そのうち9割以上がAdobe Experience Cloudによるデジタルマーケティング領域を担う社員です。デジタルトランスフォーメーションを、技術面だけでなく、アセスメントやビジネス戦略立案といったビジネス経営コンサルティングの観点からも支援できる体制を整えているわけです。以前のアドビにはいなかった人材が、いま最も急速な勢いで増えています。そして、これからも最も人員を増やしていくことになります。ここでもアドビの変化を感じてもらえると思います。
――しかし、売り上げ規模としては、Adobe Experience Cloudが3分の1を占めるという状況ではありませんね。
佐分利 個別の地域ごとの情報は開示していないので、直接的にお答えすることができないのですが、日本においては、Adobe Creative Cloudの構成比が圧倒的であることに変わりはありません。また、日本の市場がアドビ全体において第2位の市場であり、Adobe Creative Cloudも日本が世界第2位の規模となっています。
ただ、Adobe Experience Cloudにおいても日本が第2位かというと、そうではありません。Adobe Experience Cloudは、10数社のM&Aによって製品ポートフォリオを整えてきましたが、日本では、そのうち、オムニチュア(Omniture)とチューブモーグル(TubeMogul)の2社しか展開していなかったこと、それにより日本語版も最初から作らなくてはならないものが多いということもあり、海外とは状況が異なっていたことが影響しています。ただ、言い方を変えますと、Adobe Experience Cloudの日本における成長率は他の国に比べて高く、まだまだビジネスチャンスがあるとも言えます。2桁成長は当たり前であり、私にとってやりがいがある分野とも言えます。
――Adobe Experience Cloudにおいては、CRMをどうするのかといったところに注目が集まってましたが、先頃、マイクロソフトのDynamics 365と連携することを発表しました。この提携はどんな意味を持ちますか。
佐分利 過去には、セールスとマーケティングには一定の距離感があったのですが、デジタル化の進展によって、むしろ距離感があることが不自然になってきました。ある見込み顧客が、ベンダーのサイトを1日何回見に来ているのか、それによって、なにに関心を持っているのかという情報があるのとないのとでは、営業担当者の動き方や提案の仕方がまったく異なります。
新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどの広告などで訴求していた場合には、行なってみないどれぐらいの関心があり、どれぐらいの理解度があるのかがわかりませんでしたが、デジタルの時代はそうしたこともわかるようになります。つまり、CRMとAdobe Experience Cloudのようなソリューションを組み合わせることで、見込み顧客の状況がもっと細かく理解でき、より効率的で、より戦略的な営業活動ができるようになるのです。その点で、Dynamics 365との組み合わせは、「A match made in heaven(理想的な組み合わせ)」だと言えます。
MicrosoftがLinkdInへの投資を増やしていることもこの連携においては追い風になるでしょう。また、1つ付け足せば、Microsoftのサティア・ナデラCEOと、AdobeのCEOであるシャンタヌ・ナラヤンは同じ高校の出身なので(笑)、その点でもお互いの連携が強いものになっています。
――日本では、まだDynamics 365のシェアが低いですね。日本での影響は限定的ではないでしょうか。
佐分利 日本マイクロソフトの平野拓也社長も、ここは伸ばさなくてはいけない市場だという意識を持っているようですし、これから期待しています。アドビとしても、この分野は投資していく領域ですし、これからの成長が見込まれます。お客様にとって、最もいい提案はなにかということが重要であり、その点では効果的な提携です。
――2017年10月に、米ラスベガスで開催したAdobe MAXでは、Adobe Creative Cloudの強化など、多くの製品強化を発表しました。ここでのポイントを教えてください。
佐分利 Adobe Creative Cloudのサービスを本格的に開始したのがいまから5年程前です。日本では、3年前から切り替えが本格化し、サブスクリプションモデルへと移行しはじめています。その後、半年ごとに新たなリリースを行なったり、BehanceやTypekitといった新たなサービスをローンチしたりといったことで、多くのユーザーに、Adobe Creative Cloudに対する魅力を感じていただいています。
従来のライセンス方式の時代には、プロフェッショナルユース向けというイメージが強かったのですが、Adobe Creative Cloudでは、月額980円というプランを用意し、趣味でデザインを行なう人たちにも使っていただけるようになっています。
こうしたなか、今回のAdobe MAXでは、「UX」という言葉や、「レシポンシブWebデサイン」という言葉で表現されるように、PCやタブレット、スマートフォンといったさまざまなデバイスに最適化した環境を効率的に実現できるツールに注目が集まりました。
たとえば、新たに発表したAdobe XDは、コードを書かずに優れたUXをデザインできるものであり、さらに、デザインやレイアウトだけの機能に留まらず、承認プロセスを提供したり、デザイナーとデベロッパーのコミュニケーションを円滑にしたりする機能を組み込むことで、ワークフローの最適化まで図っています。
また、Photoshop CC、InDesign CC、Illustrator CC、Premiere Pro CCなどの主要アプリケーションの機能をアップデートすることも発表しました。Lightroom CCも新たなものになりましたし、Dimension CCでは、3Dモデルを構築するさいにも、それほど経験がなくても簡単に利用できるようにしています。
――人工知能(AI)と機械学習プラットフォームであるAdobe Senseiも大きな注目を集めましたね。
佐分利 そうですね。これまでは、一般の人たちがクリエイティブエクスプレッションをやろうとすると、自分の思いと、出力する作品とのギャップが大きかったということが見受けられましたが、Adobe Senseiを活用することで、この距離がかなり埋まるようになると思います。調査によると、71%の企業が、2~3年前に比べて10倍ものコンテンツを制作しているという結果が出ています。消費者の期待に応えるために、これまでにない量のコンテンツ制作が求められています。
さらに、動画コンテンツが増加していることも、クリエイターの制作工数を増やすことにつながっています。そのためには、制作できる人たちの数を増やす必要がありますが、プロフェッショナルの数はそれにあわせて増大するわけではありません。こうした課題を解決する役割を果たすのが、Adobe Senseiということになります。
これまでは、アウトプットはプロフェッショナルの人材に限られていましたが、増大するコンテンツ制作を補うには、そうではない人たちもコンテンツを作れるようになったほうがいい。たとえば、Webやマーケティングを担当している人たちも、クリエイティブエクスプレッションができるようになると、コンテンツの増大に対応できるようになります。
すでにAdobe Senseiの機能は一部で利用できるようになっています。たとえば、1億点を超える写真、動画、イラストを利用することができるAdobe Stockでは、Adobe Senseiの画像認識機能を利用して、そこから欲しいコンテンツを検索することができます。このように、クリエイティブ領域において、専門性を持ったAIとして、Adobe Senseiは進化を遂げていきます。
――一般論として、AIの登場によって、自らの仕事がAIに置き換わってしまうのではという話がよく出ます。Adobe Senseiの登場は、クリエイターの仕事を奪ってしまうという危機感を持たせてしまうことになりませんか。
佐分利 いや、むしろ多くのクリエイターが望んでいたのが、この分野におけるAIの登場だと言えます。私もこのポテンシャルは大きいと感じています。実際、Adobe MAXに参加していたクリエイターの約9割が、すぐに使いたいと言っていましたよ。もちろん、一部にはAIの登場を脅威に捉える方もいました。ただ、クリエイターの仕事は、限られた時間内に最高の品質に仕上げることが求められており、芸術性を犠牲にせず、業務効率や作業効率を加速するという点では、AIは最高の機能になると言えます。
簡単なコンテンツ制作の部分は、プロフェッショナルではない人たちにも任せられるようになりますから、プロフェッショナルのクリエイターは、さらに専門知識が求められているところや、ARやVRのように難易度が高いところに挑戦していくことができるようになります。Adobe Senseiはクリエイターの仕事を取ってしまうものではなく、クリエイターの仕事をエンハンスすることができるものになると私は考えています。
――日本でも、2017年11月28日に、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、Adobe MAX Japan 2017を開催しますね。日本ではどのあたりにフォーカスしますか。
佐分利 もちろん、ラスベガスのAdobe MAXで発表したものをご紹介することになりますが、じつは、日本ならではの「お楽しみ」も用意しています(笑)。それは、ぜひ、期待してください。
――一方で、Adobe Document Cloudにとっては、どんな1年だったと言えますか。
佐分利 この分野では、電子サインの領域での利用が徐々に広がりはじめたという点では、特筆できる1年だったと言えます。日本では、「電子サインは法的観点から適用外ではないか」という議論からはじまってしまいますし、紙文化が定着している国ですから、なかなか欧米のようには進展しにくい環境にあるのは確かです。
しかし、大手企業において、試験的導入が始まるといった動きがいくつも出てきましたし、業務効率の改善や働き方改革という観点から、電子サインを検討し始めたという企業も出てきています。その点でも、働き方改革は追い風になっています。いろいろなチャンスが生まれるタイミングに入ってきたとも言えます。
いまは、試験的な導入でもいいので、まずは電子サインを使ってもらうということから始めています。アドビとしても、試験導入をしやすいパッケージを用意したり、この分野の専門知識を持った人員を配備し、試験導入の検討にあわせて導入支援サービスを提供したりといったことも行なっています。
日本のある大手企業での試験導入では、議事録を回覧し、それを確認したらハンコを押すという部分をデジタル化して、電子サインを活用するといった例がでています。これは、世界的にも珍しい導入事例の1つになります。
――Adobe Experience Cloud、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloudという3つのクラウドサービスを提供するアドビシステムズが日本市場において展開する上で、いまの課題はなんだと考えていますか。
佐分利 顧客体験の重要性をもっと多くの方々に知っていただくことですね。いまは、良いものを作れば済む時代ではなく、素晴らしい製品と素晴らしい顧客体験を組み合わせて、それを伝えていくことが企業に求められている役割であり、サバイバルに必要な方程式であるとも言えます。
そして、アドビに対する期待も高まっていますので、まだまだそれに向けた体制強化は必要ですし、人も増やしていきたいですね。私が、アドビシステムズの社長に就任した際には280人でしたが、いまでは400人以上の体制になっています。とくに、コンサルティングチームなど、お客様との接点を持つ人員を増やしたいと考えています。
――2018年は、アドビシステムズにとってはどんな1年になりそうですか。
佐分利 2020年に向けて、日本ではデジタルエンケージメントへの本格投資が始まってきています。それがさらに加速する1年になります。たとえば、海外からの観光客が増加するなかで、デジタルでのエンゲージメントが有効な手段になりますし、アドビシステムズの貢献領域も広い。その点でも、アドビシステムズはユニークなポジションにあると言えます。
――アドビシステムズは、12月から新年度が始まりますね。
佐分利 最初の月曜日となる12月4日には、数時間をかけて、新年度の方針を社内に発信し、それを全社員と共有することになります。そこでは、数字の話などもすることになります。
ただ、私が重視したいのは、「カスタマサクセス」という点です。これを2018年には徹底したいですね。外部要因が変化するなかで、いかにカスタマを理解し、成功につなげるか。アドビは、カスタマサクセスを実現する最後の最後まで、お客様を支援できる企業になりたいと考えています。