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着脱可能な水冷ユニットを搭載したモンスターゲーミングノート「ROG GX700VO」

ASUS ROG GX700VO

 ASUSがR.O.G.(Republic Of Gamers)ブランドで発売した17.3型ゲーミングノートPC「ROG GX700VO」(以下GX700)は、世界で初めて着脱式の水冷ユニットを備えたゲーミングノートPCとして注目を集めた製品だ。

 今回、そのGX700を借用する機会が得られた。直販価格549,800円(税別)というモンスターゲーミングノートPCのパフォーマンスをチェックする。

モバイル向けSkylakeとデスクトップ版GeForce GTX 980を搭載

 着脱式水冷ユニット採用ゲーミングノートPCであるGX700は、ノートPC本体と、水冷ユニットを内蔵したドッキングステーション「Thermal Dock」によって構成されている。まずはGX700の基本的なスペックを確認していこう。

【表1】ROG GX700VO
CPUCore i7-6820HK
メモリ32GB DDR4-2133 (16GB×2)
GPUGeForce GTX 980 8GB
SSD512GB(256GB×2、RAID 0、M.2 PCI Express x4)
光学ドライブなし
OSWindows 10 Home 64bit
販売価格(税別)549,800円(税別)

 CPUのCore i7-6820HKは、Skylakeアーキテクチャ採用のモバイル向け4コア8スレッドCPU。TDP 45Wの4コア8スレッドCPUで、動作クロックは標準が2.7GHz、Turbo Boost時最大3.6GHz。型番末尾に「K」が付与されたCore i7-6820HKは、デスクトップ向けのCore i7-6700Kと同様に倍率ロックフリーモデルであり、GX700では水冷ユニット接続時に最大4GHzで動作する。

 GPUのGeForce GTX 980は、2,048基のCUDAコアを備えたデスクトップ向けと同じGPUコアを採用。ビデオカードに搭載されるものより動作クロックは低めに設定されているが、専用VRAMとして搭載するGDDR5メモリは8GBと、GeForce GTX 980搭載ビデオカードの2倍の量を用意している。

 メインメモリはDDR4-2133動作の32GBだが、今回借用した個体では基本的にDDR4-2400にオーバークロックされて動作していた。ストレージはPCI Express x4接続のNVMe対応SSDを2基使って構築したRAID 0ボリュームで、容量は512GB。ディスプレイの17.3型液晶は、画面解像度1,920×1,080ドット(フルHD)の非光沢IPSパネルで、最大リフレッシュレートは75Hz。フレームレートにリフレッシュレートを同期させるNVIDIAのG-SYNCに対応する。

 ノートPC本体のサイズは429.2×309.9×35mm(幅×奥行き×高さ)で、Thermal Dockが417×368×114mm(同)。ACアダプタはノートPC単体用の180Wタイプと、水冷ユニット接続時用の330Wタイプが付属。その他、USB有線接続のゲーミングマウス「ROG SICA」が同梱されている。

本体正面
本体左面。USB 3.0×2、SDXCカードスロット、音声入出力、スピーカー、ケンジントンスロット
本体右面。USB 3.0×1、USB 3.1/Thunderbolt 3(USB Type-C)×1、USB 3.1(USB Type-C)×1、HDMI×1、Mini DisplayPort×1、Gigabit LAN、スピーカー。
本体背面。冷却液が流れる水冷チューブ、ACアダプタ接続用の電源コネクタを備える。両端には排気口が設けられている
本体裏面。Thermal Dockの台座に本体を固定するためのポイントが用意されている
本体上面。起動中、ROGロゴの両サイドにあるスリットは赤く発光する。この電飾は任意で消灯可能
ディスプレイは画面解像度1,920×1,080ドットの17.3型液晶。リフレッシュレートは最大75Hz
液晶はIPSパネルを採用。視野角が広く、非光沢パネルなので画面への映り込みも気にならない
ディスプレイはG-SYNCに対応。ゲーム画面のフレームレートに合わせてディスプレイのリフレッシュレートを変更することで、ティアリングやスタッターによる画面の破綻を防ぐ
キーボードはテンキー付きのフルサイズ英語キーボード
アイソレーションキーを採用。LEDを内蔵しており、赤色に発光する
タッチパッドはクリックボタンが独立したタイプを採用
外付け水冷ユニットThermal Dock
ユニット左右にそれぞれ120mmサイズのラジエータを内蔵。2基のラジエータを使って冷却している
左側面。電源コネクタを備えている
右側面
背面。中央部の大型レバーを倒すことでGX700本体とドッキングする
付属のACアダプタ。左がThermal Dock用の330Wタイプ、右がノートPC単体利用時用の180Wタイプ
付属マウスのROG SICA。最大解像度5,000dpiの光学式マウス

電源オンのまま着脱可能なThermal Dock

 GX700最大の特徴であるThermal Dock。この外付け水冷ユニットとの接続は、Thermal Dockの台座の上にディスプレイを閉じたノートPC本体を置き、Thermal Dock側の接続レバーを倒すことで完了。この際ディスプレイを閉じるのはThermal Dockとの物理的な干渉を防ぐためであり、PCの電源を落とす必要はない。取り外しはThermal Dock側のボタンを押すだけで完了する。シンプルな着脱方法だが、水冷チューブからの水漏れは皆無だった。

Thermal Dock側の水冷チューブと電源コネクタ。Thermal Dockのレバーを押し下げるとコネクタがせり出してくる仕様となっている
Thermal Dockの台座にはロック機能を備えた4カ所の突起が設けられている。これにより、GX700とThermal Dockの位置決めを行なう
GX700側の水冷チューブと電源コネクタ。Thermal Dockに接続した場合、ノートPC本体への電力はThermal Dockから供給される
台座にGX700本体をセットした状態
Thermal Dockのレバーを倒し、GX700と接続した状態
動作中はThermal Dock内部に配置された赤色LEDが点灯する
Thermal DockのPushボタン。これを押すとThermal DockとGX700の接続が解除される

 GX700には、「標準」、「最適化」、「最高」、「手動」という4段階の動作モードが用意されており、各動作モード毎にCPUとGPUの動作クロックが変化する。選択できる動作モードはノートPCと電源、Thermal Dockの接続状態によって異なり、バッテリ駆動時は「標準」のみ、ノートPC本体にACアダプタを接続すると「最適化」と「標準」、ノートPCとThermal Dockを接続すると全ての動作モードが選択可能となる。

【表2】GX700の動作モード
標準最適化最高手動
Thermal Dock接続時
ノートPCのみ(AC電源)××
ノートPCのみ(バッテリ駆動)×××
◎…標準設定、○…選択可能、×…選択不可
ユーティリティソフト「Gaming Center」。Turbo Gearの機能から動作モードの変更が可能

 動作設定を自分で変更する「手動」を除いた3つの動作モードは、電源を落とすことなく切り替えが可能。ACアダプタやThermal Dockの着脱を行なうことで設定が自動的に設定が切り替わるほか、ユーティリティソフト「Gaming Center」から動作モードを切り替えることができる。

Turbo Gearの設定画面。画像はThermal Dock接続時のもので、4つの動作モードをすべて選択できる
バッテリ駆動時のTurbo Gear設定画面。最適化以上の項目がグレーアウトして選択できなくなっている

ベンチマーク結果

 それでは、各ベンチマークテストでのスコアを確認していく。利用したベンチマークテストは「3DMark 1.5.915」、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.1.2」。

 GX700の動作モードについては、Thermal Dockを接続した「最高」、ノートPC単体でACアダプタを接続した「最適化」、ノートPC単体をバッテリ駆動した「標準」で、それぞれベンチマークスコアを測定した。なお、CrystalDiskMarkについては動作モード:最高でのスコアのみ紹介する。

 ベンチマークテストの結果、Thermal Dock接続して水冷ノートPCとしてのフルパフォーマンスを発揮したGX700は、ノートPC単体で利用した最適化モードより20~30%程度のスコアアップが確認できる。3D系ベンチマークテストにおけるノートPCとは思えないほどの高いパフォーマンスも素晴らしいが、4GHzにオーバークロックされたCore i7-6820HKがCINEBENCH R15で記録した876cbというCPUスコアは、デスクトップ向けのCore i7-6700Kに迫るほどのパフォーマンスだ。

 一方、ノートPC単体でバッテリ駆動した標準モードでは、3D系ベンチマークテストのスコア低下が顕著で、最適化モードと比較しても半分以下のスコアにとどまっているテストが多い。また、必要以上な高フレームレートでの電力消費を抑制するためか、描画負荷の軽いIce Stormなどのスコアが著しく低いのも特徴的だ。唯一、CINEBENCH R15のCPUテストでは最適化モードを若干上回るスコアとなっているが、Turbo Boost動作でのクロックの伸びの違いからCPU(Single Core)では最適化モードの8割程度のスコアにとどまっている。

 中間の動作モードとなった最適化モードでのパフォーマンスも、ゲーミングノートPCとしては上々だ。ゲーミングPCとしてのGX700は、基本的にAC電源に接続して使うノートPCであると言える。バッテリ駆動でもファイナルファンタジーXIVベンチマークで「快適」との評価を獲得できる程度のパフォーマンスは発揮できるが、同ベンチマークをループモードで実行した場合、フル充電状態のバッテリが1時間7分で残り10%まで減少した。バッテリ駆動はThermal Dockとの接続時に電源を落とさないためについているという程度に考えるのが無難だ。

 M.2スロットにPCI Express x4で接続された2台のNVMe対応SSDによりRAID 0を構築したGX700のストレージ。今回借用した検証機では、512GBの容量をシステム用に約200GB、データ用に約300GBという形でパーティションが区切られていた。CrystalDiskMarkの実行結果をみると、シーケンシャルアクセスは読出し3,000MB/sec以上、書込み2,500MB/sec前後という驚異的な転送速度を実現している。

【表3】ベンチマークスコア
項目最高最適化標準
3DMark v1.5.915 - Fire Strike
Score11,6229,2714,934
Graphics score13,63710,7175,124
Physics score12,88111,52110,161
Combined score5,1564,0232,408
3DMark v1.5.915 - Sky Diver
Score29,27623,2576,389
Graphics score44,91034,6976,586
Physics score11,2779,8855,181
Combined score24,06716,1137,315
3DMark v1.5.915 - Cloud Gate
Score30,02424,6746,999
Graphics score87,29356,0276,915
Physics score9,1098,3407,314
3DMark v1.5.915 - Ice Storm
Score174,521134,19811,152
Graphics score392,551236,2949,973
Physics score59,28153,41819,034
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(DirectX 11)
1,920×1,080ドット/最高品質12,917(非常に快適)7,239(非常に快適)3,646(快適)
ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4
1,920×1,080ドット/簡易設定657,00834,3661,571
CINEBENCH R15
OpenGL126.47105.7229.41
CPU876 cb653 cb694 cb
CPU(Single Core)172 cb152 cb126 cb
システム用パーティションでのCrystalDiskMark実行結果
データ用パーティションでのCrystalDiskMark実行結果

 これだけのパフォーマンスを発揮するGX700だが、Thermal Dockに接続した水冷はもちろん、ノートPC単体で利用した場合でも、動作音はゲーミングノートPCとしてはかなり大人しい。ファイナルファンタジーXIVベンチマーク実行中のGPU温度をモニタリングしてみると、もっとも温度が高くなったノートPC単体利用での最適化モードで最大78℃。水冷となるThermal Dock接続時は最高温度を66℃にまで抑えられており、動作音や温度に悩まされることなくゲームに集中できる。

ベンチマーク実行中のGPU温度推移。ベンチマークの実行時間に差があるのは、CPU性能の違いなどからテストのロード時間に差が生じているため

 GX700は、単体でも標準的なデスクトップ型ゲーミングPCより優れた性能を持つノートPCだ。それに外部水冷ユニットであるThermal Dockを接続すれば、ゲームにおける性能はさらに向上。ノートPCとは思えない驚異的な性能を発揮する。

 圧倒的な基本性能に加え、32GBの大容量メモリ、高速なストレージ、そしてG-SYNC対応の75HzフルHD液晶を備えたGX700は、ゲームを快適にプレイするための要素を詰め込めるだけ詰め込んだ珠玉の1台だ。ノートPCの携帯性に期待するゲーマーのみならず、本格的にゲームを楽しみたいと望むエンスージアストゲーマーに、上質なプレイ環境を提供してくれることだろう。

(三門 修太)