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無償ながらAI対応で写真管理を容易にするNero「AI Photo Tagger」

Nero AI Photo Taggerを利用すると、写真を自動で解析してAIが最適と判断するタグをExifに書き込むことができる

 Intelから第11世代Coreプロセッサが発表された。搭載ノートパソコンは、今後年末商戦に向けてOEMメーカーから順次市場投入される。その第11世代および第10世代Coreでは、AVX512の拡張としてIntel Deep Learning Boost(以下DL Boost)と呼ばれる命令セットが追加された。

 そうしたDL Boostに対応しているのが、今回取り上げるNeroの「AI Photo Tagger」だ。AI Photo TaggerはAIが自動で解析し、タグづけを自動で行なってくれるため、写真の検索性が大きく向上する。Neroはこのツールを無償で提供しており、同社のWebサイトからダウンロードして利用可能だ。

以前はCD/DVD書き込みソフトで知られたNeroの最新ツール「AI Photo Tagger」

Neroのサイトからダウンロードして無償で利用することができるが、登録に電子メールアドレスは必要になる

 Neroは1995年に「Ahead Software」という社名でドイツにおいて創業したソフトウェアベンダーで、2005年1月1日に社名を現在のNero AGへと変更して現在に至っている。NeroはCD-RやDVD-Rなどの記録メディアへの書き込みソフトウェア(そのソフトウェアの名前がNeroで、後にこれが社名になった)で知られていたが、ご存じのとおり近年では、Windows OSやmacOS自体に光学メディアへの書き込み機能が標準で実装されたことなどもあり、現在では動画編集、写真編集、バックアップなど7つのソフトウェアを1つのパッケージにした「Nero Platinum」などの統合ソフトウェアを販売している。

 そのNeroが無償ソフトウェアとして提供しているのが「AI Photo Tagger」だ。NeroのWebサイトから無償でダウンロード可能で、ダウンロード時とアプリケーションの初回起動時にメールアドレスを登録する必要がある。

画像の解析中

 AI Photo Taggerの特徴は、ディープラーニングの推論機能を利用して、写真の画像認識を行ない、その認識された画像の種類で画像にタグをつけていくということにある。

 ネコならネコ、犬なら犬、料理なら料理、車、列車、飛行機などの画像認識を行ない、それをタグとして画像のExifデータに保存できる。Windowsのファイル検索は、画像ファイルのExifデータを含めて検索することができるので、パソコンのストレージ上にある写真のExifデータにこうしたタグをつけておくと、検索が容易になる。

タグにより写真を分類できる。「Save Tags」のボタンを押すとタグをExifに書き込むことができる

 実際にAI Photo Taggerを使うには、まずターゲットとなる写真が保存されているフォルダを指定して「分析」というボタンを押す。これだけ自動で分析が開始される。

 解析したタグは、Exifに書き込んだりもできるし、Neroが提供しているNero Platinumに含まれる「Nero MediaHome」に引き継いで写真の管理に利用することも可能だ。

OpenVINOツールキットでDL Boostに対応。第10/11世代Coreで高速処理が可能に

検索中の様子、右上にはCPUの利用率などが表示される

 Neroによれば、こうしたAI Photo Taggerの解析はCPU、GPUなど使えるハードウェアリソースをすべて使って行なっているので高速だという。とくにIntel CPUへの最適化は、Intelが提供するOpenVINOツールキットを利用して行なわれているとする。

 OpenVINOは、Intelがソフトウェアベンダーに対して提供しているツールキットで、AIの推論をIntelのCPU/GPUに最適化して実行するソフトウェアをより効率よく作ることができる。Neroによれば、OpenVINOやIntelのソフトウェア部門の協力により、2人月分もの作業を短縮できたという。

 高速化には、とくにDL Boostによる恩恵が大きい。DL Boostは、IntelがSkylake以降で対応している拡張命令セット「AVX512」の追加命令として用意されているVNNI(Vector Neural Network Instructions)という命令セットのブランド名で、大まかに言うと、FP32(32bitの浮動小数点演算)で演算するところを、INT8(8bitの整数演算)に置き換えて、推論処理を行なう。ディープラーニングの推論では、データをFP32からINT8に置き換えても、精度にはほとんど影響がないことがわかっており、その置き換えによりCPUでより多くのデータを並列に処理することが可能になるので、性能が向上するのだ。

 今回はSurface Pro 7(Core i7-1065G7、16GBメモリ、512GB SSD)で、331ファイル/1.71GBの写真データを解析してみたところ、解析には全部で12秒、1枚当たり0.04秒と高速に分析を行なうことができた。DL Boostに対応していない第8世代Core i7-8665Uを搭載したノートパソコンで同じテストをしたところ29秒、1枚当たり0.09秒、AMD Ryzen 7-4700U(Zen2、8コア)を搭載したノートパソコンで同じテストをしたところ22秒、1枚あたり0.07秒だったので、確かにDL Boostには大きな効果があることがわかる。

 前述のとおり、AI Photo Taggerはメールアドレスを登録するだけで、無償で利用可能だ。第10世代Coreや第11世代Coreを搭載したノートパソコンを持っているユーザーはもとより、それ以外のCPUでも利用可能なので、試してみてはいかがだろうか。

[制作協力:インテル]