山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

iPhoneの6.9型大画面モデル「iPhone 17 Pro Max」を購入。電子書籍との相性は?

「iPhone 17 Pro Max」。価格は19万4,800円から

 「iPhone 17 Pro Max」は、iPhoneファミリーの中では最大となる6.9型という画面サイズを備えるフラグシップモデルだ。従来モデルで新たに搭載されたカメラコントロールなどを継承しつつ、背面を中心にデザインを刷新したのが大きな特徴だ。

 今秋登場のiPhone 17シリーズでは、従来まで存在した大画面モデル「Plus」が消滅したため、画面サイズの大きさを条件に製品を選ぶと、筆頭がこの「iPhone 17 Pro Max」、次いで新登場の「iPhone Air」という序列になっている。価格は最小容量の256GBで19万4,800円からと、お値段もかなりのハイエンドぶりだが、全部入りかつ大画面を求めるユーザーには唯一無二の製品といえる。

 今回は、筆者が購入した実機(シルバー、256GBモデル)をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、従来モデルである「iPhone 16 Pro Max」と比較しつつチェックする。

駆動時間は増加もボディはより大きく、より重く

 まずはそのiPhone 16 Pro Maxとの比較から。

iPhone 17 Pro MaxiPhone 16 Pro Max
発売年月2025年9月2024年9月
サイズ78.0x163.4x8.75mm77.6x163x8.25mm
重量233g227g
SoCA19 Proチップ
(6コアCPU、6コアGPU、16コアNeural Engine)
A18 Proチップ
(6コアCPU、6コアGPU、16コアNeural Engine)
メモリ12GB8GB
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB256GB/512GB/1TB
画面サイズ/解像度6.9型/2,868×1,320ドット(460ppi)6.9型/2,868×1,320ドット(460ppi)
Wi-FiWi‑Fi 7Wi‑Fi 7
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
側面ボタンサイドボタン
音量ボタン
アクションボタン
カメラコントロール
サイドボタン
音量ボタン
アクションボタン
カメラコントロール
防水防塵IP68IP68
生体認証Face IDFace ID
駆動時間/バッテリ容量ビデオ再生: 最大39時間
ビデオ再生(ストリーミング): 最大35時間
ビデオ再生: 最大33時間
ビデオ再生(ストリーミング): 最大29時間
オーディオ再生: 最大105時間
備考MagSafe対応MagSafe対応

 この比較表からも分かるように、まず目立つ違いが、ボディサイズおよび重量の変更だ。筐体デザインの変更にともなってボディはひとまわり大きくなり、また厚みは0.5mmも増している。4年前のiPhone 13 Pro Maxは厚み7.65mmだったので、そこから1mm以上増していることになる。完全に歯止めが効かなくなってしまった印象だ。

 また気になるのは重量だ。Pro Maxシリーズは2年前のiPhone 15 Pro Maxでそれ以前から10g近く軽くなる快挙を成し遂げたのだが、今回再び以前の水準に逆戻りしてしまった。次期モデルでは、本製品と同時発売の薄型軽量モデル「iPhone Air」のノウハウがフィードバックされるなどして、重量増が食い止められるのを願うばかりだ。

 一方で、新モデルのたびに恒例となっているSoCのアップデート(A18 Pro→A19 Pro)と、8GBから12GBへと増量されたメモリを除けば、スペックに大きな違いはない。またLightningからUSB Type-Cへの変更や、カメラコントロールの追加といった、過去2モデルにみられた大掛かりなハード面の変更もない。ラインナップに新たに2TBモデルが追加されているのが目立つくらいだ。

 そんな中、特筆すべきは駆動時間で、ビデオ再生時間は従来の最大33時間から39時間へと大幅に延びている。バッテリ容量は非公表だが、海外での検証によると4,600mAhから5,088mAhへと増量されているとのことで、省電力化のノウハウの蓄積で駆動時間が伸びたのではなく、物理的に容量が増えただけのようだ。筆者のように、駆動時間はそのままで構わないのでそのぶん軽量化してほしいと考えるユーザーは、おそらく少数派なのだろう。

前面の見た目は従来モデルと変わりはない。iOS 26がプリインストールされている
背面デザインは大きく様変わりしており、カメラハウジング部が横一列に拡大されたほか、下部パネルも継ぎ目のある設計へと変更された
左側面にはアクションボタンと音量ボタンを搭載。物理SIMカードスロットは廃止された
右側面には電源ボタンとカメラコントロールを搭載。従来と変更はない
底面にはUSB Type-Cポートおよびスピーカーが配置される。ちなみに充電速度は従来よりも高速化している
カメラは従来と同じく3レンズ構成。レンズはハウジング部からさらに突出している
重量は実測231g。やや先祖返りし重くなった格好だ

ベンチマークスコアは順当にアップ

 セットアップの手順は従来通りで、特に奇をてらったフローはない。前回紹介したiPhone Airと同様、発売時点でiOS 26がプリインストールされているが、新たなアニメーションエフェクトは完全にオフにはできないので、気になるようならば設定で「透明度を下げる」をオンにするなどして緩和させるとよい。

ホーム画面およびプリインストールアプリの一覧。iOS 26の「Liquid Glass」デザインを採用している。従来までのデザインに完全に戻す方法はない

 実機を手に取った率直な感想は、とにかく「デカく重い」ということだ。特に重量については、従来モデルに慣れていると、わざわざ持ち比べなくとも違いがはっきり分かる。また厚みの増加も相当なもので、そのせいでずんぐりむっくりしたイメージが強い。大柄なスマホが苦手だと、これまで以上に抵抗があるだろう。

 賛否両論ある背面の継ぎ接ぎデザインについては、なにぶん好みに依存する部分が大きく、本稿ではその是非については論じないが、MagSafeの吸着位置を把握するのに役立っていた林檎マークが下方向に移動し、その役割を果たさなくなってしまったのは少々解せない。どのような過程でこのデザインがありと判断されたのかは興味のあるところだ。

 また気になるのはカメラのハウジング部のデザインだ。背面から盛り上がっている部分が、従来は左側だけだったのが横一列に変更されており、これでデスクなどに置いた時にガタつかなくなった……かと思いきや、レンズ自体はそこからさらに出っ張っており、ガタつきは相変わらずだ。ハウジング部をより厚くしてでも、レンズが段差にならないデザインにしたほうが、モデルチェンジの成果として打ち出しやすかったのではと思う。

左が本製品、右が従来のiPhone 16 Pro Max。サイズはわずかに大型化している
背面のデザインは大きく変更されている。個人的には林檎マークの位置が下にずれ、必ずしもMagSafeの中心位置を指し示さなくなったのが気になるところ
左側面。SIMカードスロットが廃止されているほか、断面がやや丸みを帯びているのが分かる
右側面。こうして比べると厚みも明らかに増している
上が本製品、下が従来のiPhone 16 Pro Max。幅および厚みの増加がよく分かる
横に並べた状態。厚みが増しているほか、全体的に丸みを帯びているのが分かる
ベゼル部は、周囲のチタニウムらしき銀色の部分が目立つものの、幅自体は変わっていない
上方向から見たところ。レンズ部が突出しているため、レンズ側を下にすると安定せずガタつく。この問題は従来モデルから変わっていない

 ベンチマークについてはおおむね2割前後の性能向上が見られる。とはいえSoCが強化されただけでなく、メモリ容量が1.5倍に増量されていることを考えると、この結果に驚きはない。GPUが4割伸びているのと同じくらいの伸びが、ほかの項目で見られてもおかしくないように思う。

Google Octane 2.0では、本製品が「118775」、iPhone 16 Pro Maxが「103859」。本製品が14.4%高い
3DMark Wild Life Extremeでは、本製品が「5604」、iPhone 16 Pro Maxが「4624」。本製品が21.2%高い
Geekbench 6(CPU)では、本製品が「3712/9567」、iPhone 16 Pro Maxが「3382/8409」。本製品が9.8%/13.8%高い
Geekbench 6(GPU)では、本製品が「45714」、iPhone 16 Pro Maxが「32319」。本製品が41.4%高い。今回試したベンチマークアプリの中では最も大きな差が付いている

表示性能は文句なしだが画面の反射に要注意

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は従来モデルと同じく460ppiで、電子書籍を表示するデバイスとしては表示性能は最高峰の水準にある。もっともこれは前回紹介したiPhone Airも含め、ほかのiPhone 17シリーズでも同様であり、買い替えにあたって解像度が論点になることはないだろう。ちなみに画面幅は従来と同じ72.5mmなので、コミックなどの表示サイズは同等となる。

 スマホのように縦方向に長いディスプレイでは、コミックなど固定レイアウトのコンテンツを表示した時に上下のスペースが余りがちだが、最近はこれらの余白をメニューやオプションの表示で上手く活用するよう各アプリが工夫を凝らしており、かつてのように間延びした印象は受けにくくなっている。とはいえ画面を横向きにして見開き表示をするのは難しく、単ページ表示が基本であることに変わりはない。

テキストを表示した状態。画面が上下に長いため1行の文字数はかなり多い
従来のiPhone 16 Pro Max(右)との比較。画面サイズおよび解像度が変わっていないため、1行あたりの文字数および行数はまったく同じだ
画質の比較。左が本製品、右がiPhone 16 Pro Max。どちらも460ppiで差は見られない
コミックを表示した状態。天地に大きな余白が生じるが、これは昨今のスマホに共通する傾向だ
従来のiPhone 16 Pro Max(右)との比較。テキストと同様、違いは見られない
画質の比較。左が本製品、右がiPhone 16 Pro Max。こちらもテキストと同様に差は見られない
画面幅は72.5mmと、iPhone 16 Pro Maxと同じ。ちなみにiPhone Airは69mmなので、本製品のほうがひとまわり大きく表示できる

 ディスプレイについて見ていくと、True Toneディスプレイの採用やコントラスト比、広色域ディスプレイ、最大120Hzの可変リフレッシュレートといった画面周りの特徴は、従来と変わっていない。唯一、屋外でのピーク輝度が2,000cd/平方mから3,000cd/平方mへと向上しており、屋外で閲覧する場合は有利に働くかもしれない。

 一方、実機を使ってみて違和感があったのが、従来モデルに比べて画面の反射がきついことだ。製品ページで仕様を見る限り、反射防止コーティングなどの加工に違いはないのだが、実際に真横に並べると、本製品のほうが明らかに画面の反射がきつい。気になるようならばマット仕様の保護シートを貼って対処するとよいだろう。

天井の蛍光灯の反射の比較。iPhone 16 Pro Max(右)よりも本製品(左)のほうが明らかに反射がきつい

 このほか電子書籍関連で使える機能としては、アクションボタンを使った即時起動が挙げられる。本体左側面のアクションボタンに電子書籍アプリの起動を割り当てておくことで、どの画面からでも電子書籍アプリの一発起動が可能になるというものだ。「ブック」アプリやKindleアプリなど、よく使うアプリを登録しておくとよいだろう。ちなみにページめくりなど個別の操作は、このアクションボタンには残念ながら割り当てられない。

本体左側面のアクションボタンに電子書籍アプリを割り当てておけば一発起動が可能になる
アクションボタンはデフォルトでは消音に割り当てられている(左)。設定画面で任意の電子書籍アプリに変更しておく(中央)。長押しすることで一発起動が可能になる(右)

最大のライバルはiPhone Air?

 以上のように、電子書籍を読むためのスマホとしては最大級の画面サイズと高解像度ゆえ読みやすく、またアクションボタンでの一発起動などほかのスマホにない利点もある反面、デバイス自体が重いこと、またフラグシップモデルならではの価格の高さなどが欠点という、従来と同じ結論になる。

 そんな本製品のライバルは、Pixel 10 Pro XLのような他社フラグシップモデルよりも、同じiPhoneファミリーの「iPhone Air」だろう。画面サイズは6.5型と本製品より一回り小さいものの、通常のProシリーズとこのPro Maxシリーズの中間サイズながら、重量は165gと本製品より68gも軽く、長時間手で持っても疲れないときている。

左が本製品(6.9型)、右がiPhone Air(6.5型)。画面サイズの差はごくわずかだ
背面。iPhone Airはシングルレンズゆえ、カメラ機能については本製品と大きな差がある
厚みの比較。iPhone Airは最薄部は5.64mmと、本製品(8.75mm)と3mm以上の差がある
テキストを表示したところ。1行あたりの文字数および行数はわずかに減るが、それほど大きな問題ではないだろう
コミックを表示したところ。本製品と比べると小さいが、Proシリーズよりは大きく表示できる

 一方でこのiPhone Air、カメラがシングルレンズ構成だったり、スピーカーがモノラルだったりと、ハードウェア的にもいくつか欠けている点がある。メモリ容量はPro Maxと同じ12GBだったりと健闘はしているのだが、ProおよびPro Maxから乗り換えると、要所要所でハードの制限を感じることはありそうだ。

 とはいえ、電子書籍ユースに耐えうる画面サイズを備えた扱いやすいスマホとしては本製品よりも適性は高く、前述のようなハードの制限が今後のモデルチェンジで解消されていけば、より評価は上がっていくと考えられる。今後、iPhoneというくくりで電子書籍に向いた製品を探すのであれば、Pro Maxシリーズと併せてこちらも要チェックと言っていいだろう。