山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
12.4型の大型有機EL搭載、日本に再上陸した久々の“ギャラタブ”「Galaxy Tab S8+」
2022年4月19日 06:16
Samsungの「Galaxy Tab S8+」は、Android 12を搭載した12.4型のハイエンドタブレットだ。12.9インチiPad Proに匹敵する大型の画面を備えつつも、12.9インチiPad Proよりも120g以上軽量なボディが特徴だ。
日本国内に7年ぶりに投入されるギャラタブこと「Galaxy Tab」である本製品は、標準でペンが付属するほか、カバー一体型キーボード「Book Cover Keyboard」がオプションで用意され、ノートPCライクに使うことも可能であるなど、ポテンシャルの高い製品だ。
今回はメーカーから借用した実機をもとに、12.9インチiPad Pro、さらに前回紹介したNECの12.6型Androidタブレット「LAVIE Tab T12」とも比較しつつ、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。
12.9インチiPad Proよりも細長い筐体。国内モデルは128GB限定
まずは12.9インチiPad ProおよびLAVIE Tab T12との比較から。前者はOSが異なるデバイス間での比較となるため、項目によっては比較がふさわしくない場合もある点に留意してほしい。
Galaxy Tab S8+ | LAVIE Tab T12(T1295/DAS) | 12.9インチiPad Pro(第5世代) | |
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発売 | 2022年4月 | 2022年3月 | 2021年5月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 285×185×5.7mm | 285.6×184.5×5.6mm | 280.6×214.9×6.4mm |
重量 | 567g | 約565g | 約682g |
OS | Android 12 | Android 11 | iPadOS 15 |
CPU | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 1 4nmモバイルプロセッサー | Qualcomm Snapdragon 870 3.2GHz(1コア)+2.42GHz(3コア)+1.8GHz(4コア)(計8コア) | Apple M1チップ 4つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した8コアCPU 8コアGPU 16コアNeural Engine |
メモリ | 8GB | 8GB | 8GB/16GB |
画面サイズ/解像度 | 12.4型/2,800×1,752ドット(266ppi) | 12.6型/2,560×1,600ドット(240ppi) | 12.9型/2,732×2,048ドット(264ppi) |
通信方式 | Wi-Fi 6(802.11ax) | Wi-Fi 6(802.11ax) | Wi-Fi 6(802.11ax) |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 10,090mAh | 約10.0時間 | 最大10時間 |
コネクタ | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
生体認証 | 顔認証、指紋認証 | 顔認証、指紋認証 | 顔認証 |
スピーカー | 4基 | 4基 | 4基 |
メモリカード | 対応(最大1TB) | 対応(最大512GB) | - |
価格(発売時) いずれもWi-Fiモデル | 11万5,500円(128GB) | 9万6,580円(256GB) | 12万9,800円(128GB) 14万1,800円(256GB) 16万5,800円(512GB) 21万3,800円(1TB) 26万1,800円(2TB) |
この表からもわかるように、本製品はNECの12.6型Androidタブレット「LAVIE Tab T12」とかなり近いスペックを持った製品だ。画面サイズはわずかに小さいものの、解像度は逆に若干高め。CPUは両者ともにSnapdragonのハイエンドSoCを採用しており、メモリは同じ8GBだ。詳しいベンチマークはのちほど紹介する。
ストレージは、海外向けモデルではラインナップされる256GBモデルは国内では用意されず、128GBオンリーの展開。最大1TBのメモリカードに対応するので、データの容量を増やしたければ、こちらで対応することになる。
筐体サイズおよび重量も「LAVIE Tab T12」と似通っている。中でも重量については、12.9インチiPad Proよりも約120g軽いのは大きな強みだ。これだけの差があると、両者を持ち比べた時の重量感はまったく違ってくる。
ただし本製品は画面のアスペクト比が16:10ということで、12.9インチiPad Proよりも短辺がかなり短いことは注意を要する。これは「LAVIE Tab T12」も同様で、ワイドサイズの動画を鑑賞するぶんには問題はないが、電子書籍ではこの短辺に合わせてページ全体が縮小されてしまい、12.9インチiPad Proとは表示サイズに大きな差がつく。詳しくは後述する。
実売価格は、公式サイトで案内されている3つのストア(Amazon、ビック、ヨドバシ)の中ではAmazonが本稿執筆時点では最安値で、11万5,500円。ストレージ容量が本製品の2倍ある「LAVIE Tab T12」よりも約2~3万円高価だが、本製品はペンが標準で付属するなどのアドバンテージもあるので、一概に高い安いは言い切れない。
顔認証と指紋認証に両対応。ベンチマークはLAVIE Tab T12よりも高速
ホーム画面は素のAndroidに近い構成。アプリはGoogleやMicrosoftのアプリはフォルダにまとめられており、同社純正のアプリがそのぶん目立っている。電子書籍アプリについてはプリインストールされておらず、自身で選んで導入することになる。
さて、実機を手に持った時に何よりもインパクトがあるのはやはり薄さと軽さだ。前述の「LAVIE Tab T12」の時もそうだったが、12.9インチiPad Proのようなずっしり感がない。筐体が5.7mmと薄型であることも、体感的に軽く感じる要因の1つといえそうだ。薄いとはいえアルミフレームを採用しているため、ひ弱な印象もまったくない。
生体認証は顔認証と指紋認証のどちらにも対応しており、指紋認証は画面内センサーを搭載する。ちなみに本製品は電源ボタンが上面の音量ボタンの隣に配置されているのだが、これはちょうど前面カメラと背面カメラに挟み込まれる配置で、結果的に電源ボタン、音量ボタン、前面カメラ、さらに背面カメラが、本体を横向きにした時に上面にくる位置に集中配置されるレイアウトになっている。かなりの密度の高さだ。
ベンチマークについてはどうだろうか。「Google Octane」では本製品が「46,961」、LAVIE Tab T12が「41,421」、12.9インチiPad Proが「63,572」。また「Wild Life Extreme」では本製品が「2.245」、LAVIE Tab T12が「1,223」、12.9インチiPad Proが「5,123」となっている。
このうちiPadはOSが異なるので参考程度に見ていただくとして、Snapdragon 870を採用したLAVIE Tab T12よりも本製品が高速というのは(実際に数値ほどの性能差があるかどうかは別にして)実際に使った感覚と一致している。いずれにしても、電子書籍ユースではまったく問題ないハイエンドなスコアであり、よりパワーを必要とするゲームなどの用途でも安心して使えるだろう。
別売のカバー一体型キーボード「Book Cover Keyboard」についてもざっとチェックしておこう。これはたたんだ状態では画面を保護するキーボード部と、背面のキックスタンド部の2パーツに分かれた構成で、本体とはマグネットで吸着させる。横に長い本製品のサイズを活かしてノートPCライクに使えるのは利点だ。
ただしキーの配列は日本語ではなくUSであること、また重量は本体を足すと実測1,075gと、かなりの重さになる点は注意したい。本製品はほかに手書きに特化した「Note View Cover」や、本体側面まで保護する「Protective Standing Cover」もラインナップされているので、用途に併せて選択したい。
一方のペン(Sペン)は別売ではなく標準添付される。ペンは実際に使ってみて初めてメリットを感じることも少なくないだけに、同梱されていることによって気軽に試せるのはありがたい。今回比較している2製品はいずれもペンは別売なので、なおさらだ。
電子書籍の表示サイズは12.9インチiPad ProよりiPad Air 4に近い?
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。
解像度は266ppiということで、表示性能は十分だ。なお画面モードを「鮮やか」に設定していると、電子書籍のカラーページがやや暗く沈んで見える場合があるので、もう1つの選択肢である「ナチュラル」に変更することをおすすめする。
このほか、電子書籍ユースには大きく影響しないが、リフレッシュレートも120Hzをサポートしており、スクロールなどの操作もスムーズだ。必要としない場合はリフレッシュレートを下げ、バッテリの消費を抑える設定も可能だ。
そんな本製品で気をつけたいのは画面サイズだ。前述のように本製品はアスペクト比が16:10と、4:3よりもかなり細長い。そのため電子書籍の表示時は短編に合わせてページが縮小され、12.9インチiPad Proよりも2まわりほど小さくなってしまう。本体を縦向きにして雑誌を表示した時も同様だ。
実際に並べてみると、12.9型と12.4型という数値の差以上に開きがあるので、購入を考えているならば予め織り込んでおくべきだろう。ちなみに前回レビューした10.9型のiPad Air(第5世代)と並べると、サイズ的にはむしろこちらに近いことがわかる。
本製品はそのぶん重量が軽く、軽快に扱える利点はあるのだが、画面サイズの大きさを最重要視するのであれば、このクラスのスタンダードである12.9インチiPad Proとはかなりの差があるので、その点は気をつけたほうがよい。12.9インチiPad Pro並もしくはそれ以上の画面を求めるならば、後述する本製品の上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」も視野に入れておきたい。
なお本製品はAndroidを採用していることから、多くの電子書籍ビューアアプリが対応している、音量ボタンを使ったページめくりに対応する。ただし一般的なAndroidタブレットの場合、音量ボタンは四隅のどれかに寄せて配置されているのに対し、本製品はかなり中央寄りで、持ち方を問わず非常に押しにくいのは差し引く必要がある。
どちらかというと本製品をディスプレイアームなどに固定し、以前紹介した外部デバイスを使って、本体に触れずにページをめくるほうがスマートだ。本製品はこのサイズにしては軽量とはいえ500gを超えており、片手で長時間持つのが難しいことに変わりはないので、こうした使い方も検討したい。
ライバルとなるのは上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」?
以上のように、表示サイズの大きさだけを追求すると12.9インチiPad Proにはかなわないものの、オプションのキーボード一体型カバーと、標準付属のペンを組み合わせ、2in1ライクな運用にも対応するなど、実用性は非常に高い製品だ。
また今回は試用していないが、最大3画面までの画面分割に対応していたり、サブディスプレイとしての運用が可能だったりと、アプリ側ではさらに幅広い運用が可能なので、さまざまな用途に使いたいユーザーには注目の1台と言えるだろう。
そんな本製品でライバルとなるのは、今回取り上げた12.9インチiPad ProやLAVIE Tab T12、さらにその姉妹モデルにあたるレノボの「Lenovo Tab P12 Pro」ではなく、6月に発売予定となっている本製品の上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」だろう。
こちらは画面サイズが一回り大きい14.6型で、スペックを見ると短辺のサイズが208.6mmとされている。12.9インチiPad Proの短辺は214.9mmとほぼ同等なので、電子書籍は12.9インチiPad Proと変わらないサイズでの表示が可能だと考えられる。こちらも実機を入手でき次第、あらためてチェックしたい。