山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

12.4型の大型有機EL搭載、日本に再上陸した久々の“ギャラタブ”「Galaxy Tab S8+」

「Galaxy Tab S8+」。実売価格は11万5,500円。海外で販売されているカラーバリエーションは国内向けには用意されずブラックのみ

 Samsungの「Galaxy Tab S8+」は、Android 12を搭載した12.4型のハイエンドタブレットだ。12.9インチiPad Proに匹敵する大型の画面を備えつつも、12.9インチiPad Proよりも120g以上軽量なボディが特徴だ。

 日本国内に7年ぶりに投入されるギャラタブこと「Galaxy Tab」である本製品は、標準でペンが付属するほか、カバー一体型キーボード「Book Cover Keyboard」がオプションで用意され、ノートPCライクに使うことも可能であるなど、ポテンシャルの高い製品だ。

 今回はメーカーから借用した実機をもとに、12.9インチiPad Pro、さらに前回紹介したNECの12.6型Androidタブレット「LAVIE Tab T12」とも比較しつつ、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。

12.9インチiPad Proよりも細長い筐体。国内モデルは128GB限定

 まずは12.9インチiPad ProおよびLAVIE Tab T12との比較から。前者はOSが異なるデバイス間での比較となるため、項目によっては比較がふさわしくない場合もある点に留意してほしい。

Galaxy Tab S8+LAVIE Tab T12(T1295/DAS)12.9インチiPad Pro(第5世代)
発売2022年4月2022年3月2021年5月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)285×185×5.7mm285.6×184.5×5.6mm280.6×214.9×6.4mm
重量567g約565g約682g
OSAndroid 12Android 11iPadOS 15
CPUQualcomm Snapdragon 8 Gen 1 4nmモバイルプロセッサーQualcomm Snapdragon 870
3.2GHz(1コア)+2.42GHz(3コア)+1.8GHz(4コア)(計8コア)
Apple M1チップ
4つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した8コアCPU
8コアGPU
16コアNeural Engine
メモリ8GB8GB8GB/16GB
画面サイズ/解像度12.4型/2,800×1,752ドット(266ppi)12.6型/2,560×1,600ドット(240ppi)12.9型/2,732×2,048ドット(264ppi)
通信方式Wi-Fi 6(802.11ax)Wi-Fi 6(802.11ax)Wi-Fi 6(802.11ax)
バッテリ持続時間(メーカー公称値)10,090mAh約10.0時間最大10時間
コネクタUSB Type-CUSB Type-CUSB Type-C
生体認証顔認証、指紋認証顔認証、指紋認証顔認証
スピーカー4基4基4基
メモリカード対応(最大1TB)対応(最大512GB)-
価格(発売時)
いずれもWi-Fiモデル
11万5,500円(128GB)9万6,580円(256GB)12万9,800円(128GB)
14万1,800円(256GB)
16万5,800円(512GB)
21万3,800円(1TB)
26万1,800円(2TB)

 この表からもわかるように、本製品はNECの12.6型Androidタブレット「LAVIE Tab T12」とかなり近いスペックを持った製品だ。画面サイズはわずかに小さいものの、解像度は逆に若干高め。CPUは両者ともにSnapdragonのハイエンドSoCを採用しており、メモリは同じ8GBだ。詳しいベンチマークはのちほど紹介する。

 ストレージは、海外向けモデルではラインナップされる256GBモデルは国内では用意されず、128GBオンリーの展開。最大1TBのメモリカードに対応するので、データの容量を増やしたければ、こちらで対応することになる。

 筐体サイズおよび重量も「LAVIE Tab T12」と似通っている。中でも重量については、12.9インチiPad Proよりも約120g軽いのは大きな強みだ。これだけの差があると、両者を持ち比べた時の重量感はまったく違ってくる。

 ただし本製品は画面のアスペクト比が16:10ということで、12.9インチiPad Proよりも短辺がかなり短いことは注意を要する。これは「LAVIE Tab T12」も同様で、ワイドサイズの動画を鑑賞するぶんには問題はないが、電子書籍ではこの短辺に合わせてページ全体が縮小されてしまい、12.9インチiPad Proとは表示サイズに大きな差がつく。詳しくは後述する。

 実売価格は、公式サイトで案内されている3つのストア(Amazon、ビック、ヨドバシ)の中ではAmazonが本稿執筆時点では最安値で、11万5,500円。ストレージ容量が本製品の2倍ある「LAVIE Tab T12」よりも約2~3万円高価だが、本製品はペンが標準で付属するなどのアドバンテージもあるので、一概に高い安いは言い切れない。

横向きにするとカメラが上部に来る配置。画面は12.4型、アスペクト比は16:10
ベゼル幅は上下左右で均等なので、縦向きでの利用にも違和感はない
12.9インチiPad Pro(右)との比較。天地は同等だが幅はかなりスリムだ
背面。カメラ部以外はどちらもほぼフラットだ。筐体はアルミ製
上下に重ねたところ。USB Type-Cポートの左右にスピーカーという配置は酷似している
厚みは本製品(左)のほうがわずかに薄い。ちなみに「LAVIE Tab T12」とはほぼ同等だ
ベゼル幅の比較。左が本製品、右が12.9インチiPad Pro。幅は同等だが、画面角のアールは本製品のほうがより直角に近い
カメラ部は見た目こそ似ていないが、どちらも2眼構成
左側面はスピーカーを搭載
右側面はUSB Type-Cポート、スピーカーを搭載
上面は電源ボタン、音量ボタン、カードスロットを搭載する
底面にはオプションのキーボードを磁力で吸着させるためのポゴピンを備える
カメラの形状は前回紹介した「LAVIE Tab T12」に酷似しているが、ボタンの配置などは大きく異なっており、一方がもう一方のOEMというわけではないようだ
カードスロット。最大1TBまで対応する

顔認証と指紋認証に両対応。ベンチマークはLAVIE Tab T12よりも高速

 ホーム画面は素のAndroidに近い構成。アプリはGoogleやMicrosoftのアプリはフォルダにまとめられており、同社純正のアプリがそのぶん目立っている。電子書籍アプリについてはプリインストールされておらず、自身で選んで導入することになる。

ホーム画面。Galaxy独自のアプリも多く、特に最下段のランチャーはアプリ名も表示されないのでややわかりづらい
プリインストールアプリ。電子書籍系のアプリはない
Galaxy独自のアプリは「Samsung」フォルダにまとめられている
Google製アプリもフォルダに集約されている
Microsoft製アプリ。LAVIE Tab T12にあったOneNoteはない
このほかGalaxy PicksというフォルダにはClip Studioもプリインストールされている

 さて、実機を手に持った時に何よりもインパクトがあるのはやはり薄さと軽さだ。前述の「LAVIE Tab T12」の時もそうだったが、12.9インチiPad Proのようなずっしり感がない。筐体が5.7mmと薄型であることも、体感的に軽く感じる要因の1つといえそうだ。薄いとはいえアルミフレームを採用しているため、ひ弱な印象もまったくない。

 生体認証は顔認証と指紋認証のどちらにも対応しており、指紋認証は画面内センサーを搭載する。ちなみに本製品は電源ボタンが上面の音量ボタンの隣に配置されているのだが、これはちょうど前面カメラと背面カメラに挟み込まれる配置で、結果的に電源ボタン、音量ボタン、前面カメラ、さらに背面カメラが、本体を横向きにした時に上面にくる位置に集中配置されるレイアウトになっている。かなりの密度の高さだ。

重量は実測565g。ちなみに後述のキーボード付きのカバー「Book Cover Keyboard」と合わせると1,075gとなる
顔認証と指紋認証を搭載。顔認証はメガネを外して登録するタイプ
指紋認証は専用のセンサースイッチではなく、画面内指紋センサーで認証を行う
カメラは、本体を横向きにした状態で上部に配置されている
電源ボタンは側面ではなく上面、音量ボタンと並んで配置されている。カードスロットもこの面だ

 ベンチマークについてはどうだろうか。「Google Octane」では本製品が「46,961」、LAVIE Tab T12が「41,421」、12.9インチiPad Proが「63,572」。また「Wild Life Extreme」では本製品が「2.245」、LAVIE Tab T12が「1,223」、12.9インチiPad Proが「5,123」となっている。

 このうちiPadはOSが異なるので参考程度に見ていただくとして、Snapdragon 870を採用したLAVIE Tab T12よりも本製品が高速というのは(実際に数値ほどの性能差があるかどうかは別にして)実際に使った感覚と一致している。いずれにしても、電子書籍ユースではまったく問題ないハイエンドなスコアであり、よりパワーを必要とするゲームなどの用途でも安心して使えるだろう。

「Google Octane」でのベンチマーク結果(いずれもChromeを使用)。左が本製品で「46,961」、中央がLAVIE Tab T12で「41,421」、右が12.9インチiPad Proで「63,572」
「Wild Life Extreme」でのベンチマーク結果。左が本製品で「2,245」、中央がLAVIE Tab T12で「1,223」、右が12.9インチiPad Proで「5,123」

 別売のカバー一体型キーボード「Book Cover Keyboard」についてもざっとチェックしておこう。これはたたんだ状態では画面を保護するキーボード部と、背面のキックスタンド部の2パーツに分かれた構成で、本体とはマグネットで吸着させる。横に長い本製品のサイズを活かしてノートPCライクに使えるのは利点だ。

 ただしキーの配列は日本語ではなくUSであること、また重量は本体を足すと実測1,075gと、かなりの重さになる点は注意したい。本製品はほかに手書きに特化した「Note View Cover」や、本体側面まで保護する「Protective Standing Cover」もラインナップされているので、用途に併せて選択したい。

 一方のペン(Sペン)は別売ではなく標準添付される。ペンは実際に使ってみて初めてメリットを感じることも少なくないだけに、同梱されていることによって気軽に試せるのはありがたい。今回比較している2製品はいずれもペンは別売なので、なおさらだ。

キーボード付きのカバー「Book Cover Keyboard」。キーボード部と背面のキックスタンドの2パーツに分かれている。
背面上部はペンを挿入する部分が大きく膨らんでいる
ペンが標準で付属するのは今回比較している2製品にはない強みだ

電子書籍の表示サイズは12.9インチiPad ProよりiPad Air 4に近い?

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。

 解像度は266ppiということで、表示性能は十分だ。なお画面モードを「鮮やか」に設定していると、電子書籍のカラーページがやや暗く沈んで見える場合があるので、もう1つの選択肢である「ナチュラル」に変更することをおすすめする。

 このほか、電子書籍ユースには大きく影響しないが、リフレッシュレートも120Hzをサポートしており、スクロールなどの操作もスムーズだ。必要としない場合はリフレッシュレートを下げ、バッテリの消費を抑える設定も可能だ。

リフレッシュレートは120Hzに設定されている。60Hzに下げることで電力消費を抑えられる
ディスプレイの画面モードは「ナチュラル」にしたほうがどぎつさを抑えられるようだ
コミックは単ページだと大きすぎるので、基本的に見開き表示で使うことになるだろう
紙のコミックとはほぼ同等サイズで快適に読める

 そんな本製品で気をつけたいのは画面サイズだ。前述のように本製品はアスペクト比が16:10と、4:3よりもかなり細長い。そのため電子書籍の表示時は短編に合わせてページが縮小され、12.9インチiPad Proよりも2まわりほど小さくなってしまう。本体を縦向きにして雑誌を表示した時も同様だ。

 実際に並べてみると、12.9型と12.4型という数値の差以上に開きがあるので、購入を考えているならば予め織り込んでおくべきだろう。ちなみに前回レビューした10.9型のiPad Air(第5世代)と並べると、サイズ的にはむしろこちらに近いことがわかる。

 本製品はそのぶん重量が軽く、軽快に扱える利点はあるのだが、画面サイズの大きさを最重要視するのであれば、このクラスのスタンダードである12.9インチiPad Proとはかなりの差があるので、その点は気をつけたほうがよい。12.9インチiPad Pro並もしくはそれ以上の画面を求めるならば、後述する本製品の上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」も視野に入れておきたい。

12.9インチiPad Pro(下)と並べると、ページサイズが2回りほど小さいことがわかる。これは天地が狭くページ全体が圧迫されることによるものだ
実は10.9型の第5世代iPad Air(下)と比べてもページの表示サイズにそれほどの差はないことがわかる
「DOS/V POWER REPORT」はA4の天地を切り詰めたA4変形判ゆえ、縦長の本製品では上下に大きな余白ができる。前回レビューしたLAVIE Tab T12と同じ現象だ
こちらも実は第5世代iPad Airとそれほど極端な差はない。ただしこれはA4変形版という特殊な判型が大きく影響している
単ページ表示と違い、見開きで横に2ページ並べると横長の画面にフィットし、上下に大きな余白ができる12.9インチiPad Pro(下)と表示サイズはほぼ等しくなる
単ページ表示。細かい文字も問題なく表示できる
見開き表示。こちらでも細かい文字が潰れることはなく、表示性能は優秀だ

 なお本製品はAndroidを採用していることから、多くの電子書籍ビューアアプリが対応している、音量ボタンを使ったページめくりに対応する。ただし一般的なAndroidタブレットの場合、音量ボタンは四隅のどれかに寄せて配置されているのに対し、本製品はかなり中央寄りで、持ち方を問わず非常に押しにくいのは差し引く必要がある。

 どちらかというと本製品をディスプレイアームなどに固定し、以前紹介した外部デバイスを使って、本体に触れずにページをめくるほうがスマートだ。本製品はこのサイズにしては軽量とはいえ500gを超えており、片手で長時間持つのが難しいことに変わりはないので、こうした使い方も検討したい。

音量ボタンは上面のかなり中央に寄った場所に配置されており、かつ「次へ」はより遠い右側ということで、この音量ボタンを使ったページめくりはかなりしづらい
ボタンによるページめくりは、むしろ外付けデバイスを使ったほうが快適に行なえる。写真は前回紹介したエレコムの「JC-XR05BK」
電源ボタンの2度押しに任意のアプリを起動するショートカットを割り当てられる。電子書籍アプリを割り当てておけば即起動できて便利だ

ライバルとなるのは上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」?

 以上のように、表示サイズの大きさだけを追求すると12.9インチiPad Proにはかなわないものの、オプションのキーボード一体型カバーと、標準付属のペンを組み合わせ、2in1ライクな運用にも対応するなど、実用性は非常に高い製品だ。

 また今回は試用していないが、最大3画面までの画面分割に対応していたり、サブディスプレイとしての運用が可能だったりと、アプリ側ではさらに幅広い運用が可能なので、さまざまな用途に使いたいユーザーには注目の1台と言えるだろう。

 そんな本製品でライバルとなるのは、今回取り上げた12.9インチiPad ProやLAVIE Tab T12、さらにその姉妹モデルにあたるレノボの「Lenovo Tab P12 Pro」ではなく、6月に発売予定となっている本製品の上位モデル「Galaxy Tab S8 Ultra」だろう。

 こちらは画面サイズが一回り大きい14.6型で、スペックを見ると短辺のサイズが208.6mmとされている。12.9インチiPad Proの短辺は214.9mmとほぼ同等なので、電子書籍は12.9インチiPad Proと変わらないサイズでの表示が可能だと考えられる。こちらも実機を入手でき次第、あらためてチェックしたい。