山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

2万円半ばで手に入る10.1型Androidタブ「MediaPad M5 lite」

ファーウェイ「MediaPad M5 lite」。LTE搭載モデルや、ペンを同梱する容量違いモデルなど複数のラインナップがある。端末情報には「MediaPad M5 lite 10」という表記も見られる

 ファーウェイの「MediaPad M5 lite」は、10.1型のAndroid 8.0搭載タブレットだ。Harman Kardonの4基のスピーカーや約7,500mAhの大容量バッテリを搭載し、スタイラスペンでの入力にも対応しながら、32GB/Wi-Fiモデルが2万円台半ばという、コストパフォーマンスに優れた製品だ。

 現在、電子書籍用途を中心に使える10型前後のタブレットとしては、フルHD解像度ながら32GBで15,980円という、コストパフォーマンス的には最強の呼び声が高いAmazonのFire HD 10が挙げられる。ただし重量約500gとヘビー級である上、実質的にAmazon専用ゆえ、ほかの選択肢を求めるユーザーはいるはずだ。

 やや上の価格帯となると、汎用性の高さでは折り紙付きである第6世代iPad(Wi-Fiモデル32GBで税別37,800円)が候補となるが、その中間、2~3万円のゾーンは、製品の数そのものが減っており、決め手に欠ける状況だ。

 その点本製品は、フルHDの10.1型Androidタブレットでありながら、Wi-Fiの32GBモデルで税別29,880円と、性能とコストのバランスに優れている。最小構成でもメモリを3GB搭載しているほか、最新のiPad Proと同じく上下左右のベゼル幅が等しく、縦向きでも横向きでも使いやすいという、昨今のトレンドもしっかりと抑えている。

 今回はもっとも安価な構成である32GBのWi-Fiモデル(BAH2-W19)をメーカーから借用できたので、前述のFire HD 10などと比較しつつ、電子書籍端末としての使い勝手を見ていく。

画面上部のインカメラ、下部のホームボタンなど、横向きを基本としたデザイン
とはいえベゼル幅は上下均等なので、社名ロゴなどを気にしなければ縦向きでの利用にも違和感はない
右側面。音量ボタンと電源ボタンを備える
背面右上にアウトカメラを備える。側面にはメモリカードスロットも見える
画面の左下にはUSB Type-Cポートと、最近ではめずらしくなったイヤフォンジャックを備える
ホームボタンはベゼルに埋め込まれている。物理的に押し込まれるタイプではなくタッチ式
画面上部のインカメラ。こちらもベゼル内に埋め込まれており目立たない
ベゼル幅は11インチiPad Pro(左上)と比べるとやや厚みがある

コスパに優れたスペック。大容量バッテリにも注目

 まずは冒頭で紹介した同じ10型クラスの製品との比較から。

【表】MediaPad M5 liteと類似モデルとの比較
MediaPad M5 liteFire HD 10(第6世代)iPad(第6世代)
発売2018年11月2017年10月2018年3月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)243.4×162.2×7.7mm262×159×9.8mm240×169.5×7.5mm
重量約480g約500g約469g
OSAndroid 8.0Fire OSiOS 12
CPUHUAWEI Kirin 659 オクタコア(4×2.36 GHz、4×1.7 GHz)クアッドコア(2×1.8GHz、2×1.4GHz)64ビットアーキテクチャ搭載A10 Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ
メモリ3GB(32GBモデル)
4GB(64GBモデル)
2GB2GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11a/b/g/n/ac
バッテリー持続時間(メーカー公称値)不明(7500mAh)10時間最大10時間
コネクタUSB Type-CmicroBLightning
メモリカード○(最大256GB)-
直販サイト価格(2019/1/1現在)
※いずれもWi-Fiモデル
32,270円(32GB)15,980円(32GB)
19,980円(64GB)
37,800円(32GB)
48,800円(128GB)

 この表では実売価格を32,270円としているが、これは直販サイトにあたる「ファーウェイオンラインストア楽天市場店」での価格が長らく更新されていないためで、各ショップでの実売価格は2万円台半ばまで下がっている。この価格を基準とするならば、Fire HD 10と第6世代iPad(第6世代)のちょうど中間に位置することになる。

 筐体サイズは両製品とほぼ横並びだが、スリムながら全長が長いFire HD 10や、全長や厚みは本製品の下を行くが幅がある第6世代iPadと比べると、トータルでコンパクトな印象だ。重量については、この両製品のほぼ中間で、それほど突出して軽い印象はない。

 メモリ容量は、32GBモデルは3GB、1つ上の64GBモデルは4GBということで、Androidタブレットの下位製品に多い2GBで妥協していないのは好印象だ。また製品ページには言及がないが、カードスロット(microSD)を搭載している点も強みだ。

 特筆すべきはバッテリ容量で、7,500mAhというのは、このクラスにしてはかなり多い。実際の駆動時間などのデータは公開されていないが、従来モデルに当たる「MediaPad M3 lite 10」および「MediaPad M3 Lite 10 wp」(ともに6,660mAh)からも1割以上増えており、プラス要因と言えるだろう。

 なお、この表にない特徴としては、スピーカーがほかの2製品が2基なのに対して本製品は4基であること、またiPadと同様、別売ながらペン(M-Pen lite)での手書き入力に対応することが挙げられる。またFire HD 10にはないLTEモデルをラインナップする点も強みだ。

Fire HD 10(下)との比較。ベゼル幅がせまいため本製品(上)のほうがコンパクトに見える
11インチiPad Pro(下)との比較。上下左右のベゼル幅が等しいという意味ではよく似た両製品だが、アスペクト比が異なるためルックスは大きく異なる。ちなみに第6世代iPadはこの11インチiPad Proの高さおよび幅とほぼ同じだ
10.1型としてはコンパクトな筐体だが、7.9型のiPad mini 4(下)と比べるとサイズ差は歴然
厚みの比較。左側はいずれも本製品で、右側は上からFire HD 10、11インチiPad Pro、iPad mini 4。iPadには負けるものの、とりたてて分厚いというわけではない

10型クラスにしてはコンパクトな筐体サイズ

 製品をパッケージから取り出してまず驚くのが筐体の小ささだ。本製品の画面サイズは10.1型だが、上下左右のベゼル幅がせまいため、それ以下のように錯覚してしまう。本連載で過去に取り上げたタブレットで言うと、Fire HDX 8.9など、9型前後の製品に近い印象だ。

 メタルユニボディの本体はひんやりと冷たく、剛性もかなり高い印象を受ける。11インチiPad Proは、軽く力を入れただけで本体がしなるが、本製品はそのようなことはない。ハードな使い方を考えているユーザーには最適だろう。

 ただし重量感はかなりある。第6世代iPad Pro(469g)や、上の写真で紹介している11インチiPad Pro(468g)との重量差は約10g程度なのだが、実際には50gくらいの差があるように感じる。実測だと見た目の筐体サイズが小さいため、そう錯覚しやすいのだろう。

 個人的に気になったのが、本体右側面にある音量ボタンと電源ボタンの位置だ。本製品を横向きにして両手で持った時、これらのボタンに誤ってふれてしまいがちなのだ。

 本製品と同様、これらボタンを右側面に配置したタブレットはいくつもあるが(前述のFire HD 10もそうだ)、本製品はボタンが上下どちらかに寄っているわけではなく、かなり中央寄りに配置されているせいか、持ち方を変える時にうっかり電源ボタンを押してしまい、画面を消灯してしまうことがたびたび起こる。

 これはある程度慣れで解決できる部分もあると思うが、今回製品を2週間ほど試用したなかでは、残念ながら慣れることができなかった。本製品を横向きで使う場合は、なるべく下のほうを持つように心掛けたほうがよさそうだ。

ファーウェイ独自のホーム画面。デフォルトではすべてのアプリがホーム画面に並ぶ、iOSと似たスタイルを採用する
設定を変更すれば、Androidでは一般的なアプリのドロアー表示にすることも可能だ
右側面の音量ボタンおよび電源ボタン。この写真だけではピンと来ないが、かなり中央寄りに配置されている
Fire HD 10(下)は、電源ボタンと音量調整ボタンがそれぞれ端に配置され中央は空いているが、本製品はボタン自体が中央寄りのため、本体を持ったときに電源ボタンをうっかり押しやすい
ベンチマークアプリ3DMark「Ice Storm Unlimited」によるスコアの比較。左が本製品、右がFire HD 10。これを見るかぎり、ほぼ同等の性能と見てよさそうだ

メニュー類はやや冗長だが設定で変更可能。画質は十分に合格点

 続いて電子書籍ユースを前提とした、画面まわりについて見ていこう。とくにことわりがないかぎり、電子書籍ストアはKindleストアを、表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を用いている。

 まず最初にチェックすべきなのは、「きちんと画面が横向きになるか」だ。というのも同社タブレットの7~8型のモデルは、縦向きでの利用を前提としているためか、Kindleストアなど特定の電子書籍ストアを起動すると、強制的に縦向きの表示に切り替わってしまうからだ。

 しかし本製品は、それよりも画面サイズがひとまわり大きい10.1型ということもあってか、そのようなことはない。この点はまず合格点だ。

 さて、使いはじめてすぐに感じたのが、設定画面などの文字サイズやマージンがやや大きめであることだ。もともと筆者は文字サイズもメニューもコンパクトな表示設定が好みなのだが、それを割り引いてもやや冗長に見える。せっかくの10.1型なのに、8型のタブレットを無理に引き伸ばして見ているかのようだ。

 これは設定画面で、表示モードを「デフォルト」から「小」にすることで解決できる。画面との距離が遠い状態、たとえばソファに座って膝の上に乗せて使うような場合はそのままでも問題ないだろうが、ベッドに寝転がったまま顔と画面の距離が近い状態で使う場合は、この方法を試してみてほしい。

設定画面で、表示モードを「デフォルト」から「小」にすることで、冗長な余白などを減らし、画面の情報量を増やせる
「デフォルト」(左)と「小」(右)の比較。サムネイルや余白がコンパクトになったことで天地サイズを活かした表示が可能になった。この例(Kindleストア)以外でも役に立つはずだ

 画質については、300ppiのラインにこそ達していないが、見開きでも十分な品質だ。もうワンランク上、たとえば2,560×1,600ドットなどを望むのは簡単だが、それによって本体の価格が1万円近く上がってしまっては、本製品の存在意義がなくなってしまう。現行のスペックが最適解だろう。

 またコミックの見開き表示におけるサイズにも余裕がある。さすがに11インチiPad Proに比べると絶対的なサイズでは負けるが、7.9型のiPad mini 4と比べるとサイズの違いは歴然で、なるべくコンパクトな筐体サイズで、コミックの見開き表示にこだわるユーザーには適した製品だと言えるだろう。

 さらに、コミックの読了後にすぐにアプリ上で続刊を購入できたり、サンプルを読み終えるとそのまま購入できるAndroidゆえのシームレスな購入フローも秀逸だ。電子書籍ユースでiPadと比較する場合は、これも大きなアドバンテージとなるだろう。

10型クラスとしてはコンパクトな筐体サイズ。ただし重量はそう軽いわけではない
Fire HD 10(下)との比較。ページのサイズはほぼ同じだが、筐体のコンパクトさと軽さにより本製品のほうが圧倒的にハンドリングしやすい
11インチiPad Pro(下)との比較。画面サイズおよびアスペクト比が異なるため、ページのサイズではかなりの差がある。筐体の横幅がほぼ同じなのもおもしろい
7.9型のiPad mini 4(下)との比較。画面サイズを優先するなら本製品、筐体の軽さを優先するならiPad mini 4といったところだろうか
テキストの画質比較。上段左が本製品(224ppi)、上段右がFire HD 10(224ppi)、下段左が11インチiPad Pro(264ppi相当)、下段右がiPad mini 4(326ppi)
コミックの画質比較。上段左が本製品(224ppi)、上段右がFire HD 10(224ppi)、下段左が11インチiPad Pro(264ppi相当)、下段右がiPad mini 4(326ppi)

 なお本製品は新しいiPad Proと同様、上下左右のベゼル幅が一定なので、雑誌などを縦向きに表示しても、横向き前提のタブレットを強引に縦で利用した場合にありがちな違和感は少ない。ワイド比率ゆえページ上下に余白ができることが、雑誌のデザインによっては多少気になるくらいだ。

 唯一気になる点があるとすれば、画面が光沢調ゆえ、蛍光灯などの映り込みがかなり激しいことだ。気になるようであれば、非光沢の保護フィルムを貼るとよいだろう。

雑誌コンテンツは、拡大せずに本文が読めるレベルだが、アスペクト比の関係で上下の余白が目立つ場合も

コミックの見開き表示に適したコスパのよい10型タブレット

 以上のように、細かいところでは目につく部分はあるものの、電子書籍の閲覧、とくにコミックの見開き表示に適した、コストパフォーマンスのよい10型タブレットと言える。8型クラスでは物足りないユーザーには、とくにおすすめできる製品と言えるだろう。

 個人的には、バッテリ容量を多少削って重量を30g減らし、大台である450gを切れば強力なアドバンテージになったと思うのだが、バッテリの容量は本製品の特徴の部分でもあり、致し方ないところだろう。次期モデルではそうした仕様も見てみたいところだ。

 ちなみに同じファーウェイの10型タブレットとしては、「MediaPad T5」という2万円台のエントリーモデルもあるが、メモリが2GBと少ないため、本製品のほうがおすすめだ。逆にワンランク上のモデルを狙うのであれば、12月7日にAmazon限定で発売された「MediaPad M5 10.8」は、メモリが4GBと余裕があり、解像度も高いため、視野に入れておきたいところだ(ファーウェイ、約4万円半ば10.8型WQXGAタブレットをAmazon限定で販売参照)。