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Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】

~7型に大型化、見開き表示も実用的な防水対応電子ペーパー端末

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Kindle Oasis(第9世代)。同名製品としては2代目に当たるが、Amazonの表記ルールでは「第9世代」となる。従来モデルは3色のラインナップだったが今回はブラックのみ
Kindle Oasis(第9世代)。同名製品としては2代目に当たるが、Amazonの表記ルールでは「第9世代」となる。従来モデルは3色のラインナップだったが今回はブラックのみ

 「Kindle Oasis(第9世代)」は、Amazon.co.jpが販売するE Ink電子ペーパー搭載の電子書籍端末「Kindle」シリーズの最上位モデルだ。ディスプレイ部が薄い従来モデルの形状を踏襲しつつ、Kindleシリーズとしては初となる7型ディスプレイを搭載し、かつ防水機能をも備えることが特徴だ。

 従来の「Kindle Oasis」は、着脱可能なバッテリ内蔵カバーにより、装着時は長時間駆動、取り外すと131gの軽量ボディという特徴を備えた製品だったが、今回のモデルではバッテリ内蔵カバーは廃止され、面影を留めるのはグリップ部に比べてスクリーン部が薄いという独特の形状、そしてページめくりが行なえる物理ボタンのみだ。

 ただし本製品には従来モデルになかった2つの大きな特徴を備える。1つは7型という、従来の6型よりもひとまわり大きい画面を搭載していること。もう1つは、Kindleシリーズとして初となる防水機能を搭載したことだ。大画面かつ防水機能を備えたE Ink端末をラインナップする楽天Koboシリーズを強く意識した仕様と言える。

 今回はまず前編として、基本的なスペックや外観のチェック、画面サイズの大型化による画質のチェック、さらに画面の大型化で可能になった見開き表示の実用性などをチェックしていく。なおAmazonの表記ルールではOasisとして2代目に当たる本製品はKindle Oasisの「第9世代」、初代に当たる従来モデルは「第8世代」とされているが、本稿では前者を本製品、後者を従来モデルと表記する。

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Kindle Oasis(第9世代)はスクリーン部が薄いボディが特徴
Kindle Oasis(第9世代)はスクリーン部が薄いボディが特徴
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 画面横にページめくりボタンを搭載する。左手で操作する場合は本体を180度回転させる
画面横にページめくりボタンを搭載する。左手で操作する場合は本体を180度回転させる
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 ページめくりのための物理ボタンを備える。Kindle Voyageと異なり突起があるのが特徴
ページめくりのための物理ボタンを備える。Kindle Voyageと異なり突起があるのが特徴
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 従来モデルでは電源ボタンとMicro USBポートが並んでいたが、本製品ではMicro USBポートが反対側へと移動したため、こちら側は電源ボタンのみ。防水機能の関係だろうか
従来モデルでは電源ボタンとMicro USBポートが並んでいたが、本製品ではMicro USBポートが反対側へと移動したため、こちら側は電源ボタンのみ。防水機能の関係だろうか
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 電源ボタンと反対側にはMicro USBポートが配置されている。充電時は隣りにあるLEDが点灯する
電源ボタンと反対側にはMicro USBポートが配置されている。充電時は隣りにあるLEDが点灯する
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 背面。グリップ部が膨らんだデザイン。アルミニウムの一体成型で剛性は高そうだ。ちなみに筐体全体に占めるグリップ部の面積は従来より広くなっている
背面。グリップ部が膨らんだデザイン。アルミニウムの一体成型で剛性は高そうだ。ちなみに筐体全体に占めるグリップ部の面積は従来より広くなっている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 画面部の厚みは公称3.4mm、実測で3.3mm。一般的に薄型と言われるスマートフォンの約半分ほどだ
画面部の厚みは公称3.4mm、実測で3.3mm。一般的に薄型と言われるスマートフォンの約半分ほどだ
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 グリップ部の厚みは公称8.3mm、実測で8.1mm
グリップ部の厚みは公称8.3mm、実測で8.1mm

従来モデルと見た目は似ているがまったくの別物

 まずは従来モデル、および競合に相当する「Kobo Aura H2O Edition 2」との比較から。

【表】Kindle Oasis(第9世代)と各モデルとの比較
Kindle Oasis(第9世代)Kobo Aura H2O Edition 2Kindle Oasis(第8世代)
発売月2017年10月2017年5月2016年4月
サイズ(幅×奥行き×高さ)159×141×8.3 mm172×129×8.8mm143×122×3.4~8.5mm
重量約194g約207g約131g+カバー約107g
画面サイズ/解像度7型/1,264×1,680ドット(300ppi)6.8型/1,080×1,440ドット(265ppi)6型/1,072×1,448ドット(300ppi)
ディスプレイモノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式IEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ約8GB(ユーザー使用可能領域:約6GB)
約32GB(ユーザー使用可能領域:約27GB)
約8GB約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB)
フロントライト内蔵(自動調整)内蔵(自動調整)内蔵(手動調整)
ページめくりタップ、スワイプ、ボタンタップ、スワイプタップ、スワイプ、ボタン
防水・防塵機能あり(IPX8規格準拠)あり(IPX8規格準拠)なし
バッテリ持続時間の目安数週間
明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用時
数週間数カ月
バッテリー内蔵カバー装着時、明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用時
発売時価格(税込)33,980円(8GB、キャンペーン情報つき)
35,980円(8GB、キャンペーン情報なし)
36,980円(32GB、キャンペーン情報つき)
38,980円(32GB、キャンペーン情報なし)
19,980円35,980円(キャンペーン情報つき)
37,980円(キャンペーン情報なし)
備考3Gモデルも存在-3Gモデルも存在

 冒頭にも記したように、本製品はKindleシリーズでは実質初の試みとなる仕様を2つ盛り込んでいる。1つは7型という画面サイズだ。従来のKindleは、かつて存在していた「Kindle DX」を除き、すべて6型という画面サイズを採用していた。これは文庫本と同等のサイズで、テキストコンテンツを読むには十分だが、コミックを読むには絶対的なサイズが不足していた。

 本製品では従来より画面サイズをひとまわり大きくすることで、よりコミックが読みやすい仕様に改められている。ライバルとなる楽天Koboは、防水機能を持つE Ink端末として6.8型の「Kobo Aura H2O Edition 2」、7.8型の「Kobo Aura ONE」の2製品をラインナップしており、サイズ的には前者がライバルと言えそうだ。

 重量は、さすがに従来モデルの131gにはかなわないが、200gを切っており十分に軽量だ。Kindleシリーズのなかで比較した場合もKindle Paperwhite(205g)よりも軽く、画面の大型化によって筐体自体が大きくなっていることを感じさせない。

 筐体サイズは、やや縦長のKobo Aura H2O Edition 2に対し、ボタン配置の関係もあって正方形に近いサイズであることが特徴だ。厚みについては、本製品はスクリーン部わずか3.4mm(公称値)という薄型設計であり、インパクトでは本製品が圧倒している。

 Kindleシリーズ初となる防水機能については、Kobo Aura H2O Edition 2と同じ「IPX8」等級に準拠している。これは風呂場やプールサイドでの利用を想定したもので、水以外の液体をかけたり、あるいは水中で長時間使えるわけではないが、生活防水などに比べるとはるかに上だ。防水機能については次回の後編で詳しくチェックする。

 バッテリの持続時間は「数週間」とあるが、製品ページには「一度充電すれば、最大6週間読書をお楽しみいただけます」と、より具体的な時間が記されている。本製品は従来モデルと違ってバッテリ内蔵カバーは用意されないが、筐体がひとまわり大きくなったことで本体グリップ部の容積は増えており、バッテリの搭載量そのものに不安はないと見られる。

 8GB/32GBという、容量の異なる2モデルが用意されるのも興味深い。ほかのKindleシリーズが4GBなので、容量が少ないほうでも単純に倍になっている計算だ。また32GBモデルは現行モデルではKindle Paperwhiteマンガモデルのみの仕様で、コミックを多数保存して持ち歩くにはもってこいだ。

 以上のように、ページめくりボタン、さらに上下どちらでも使えるデザインや通信まわりの仕様は従来モデルを踏襲しているが、最大の特徴である7型、防水機能は本製品独自のもので、また従来なかった32GBモデルも追加されている。同じOasisという名前を冠してはいるものの、製品としてはまったく別物と考えたほうがよさそうだ。

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 従来モデル(第8世代Kindle Oasis)(右)との比較。画面がひとまわり大型化しているが、画面横にボタンを備えるデザイン自体は共通だ。上下反転できる機構も変わらない
従来モデル(第8世代Kindle Oasis)(右)との比較。画面がひとまわり大型化しているが、画面横にボタンを備えるデザイン自体は共通だ。上下反転できる機構も変わらない
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 背面の比較。上が本製品、下が従来モデル。スクリーン部が薄い特徴は変わらないが、デザイン自体はかなり異なっている
背面の比較。上が本製品、下が従来モデル。スクリーン部が薄い特徴は変わらないが、デザイン自体はかなり異なっている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Kobo Aura H2O Edition 2(右)との比較。画面サイズはほぼ同等ながら、ボタン配置の関係で筐体の縦横比はかなり違って見える
Kobo Aura H2O Edition 2(右)との比較。画面サイズはほぼ同等ながら、ボタン配置の関係で筐体の縦横比はかなり違って見える
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Fire 7(右)との比較。対角線のサイズは同じ7型だが、縦横比が異なるためコミックなどでは本製品のほうがふたまわりは大きく表示される
Fire 7(右)との比較。対角線のサイズは同じ7型だが、縦横比が異なるためコミックなどでは本製品のほうがふたまわりは大きく表示される
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 iPad mini 4(右)との比較。こちらはほぼ同じ縦横比ということもあり、コミックなどの表示サイズは本製品のほうがひとまわり小さい程度だ
iPad mini 4(右)との比較。こちらはほぼ同じ縦横比ということもあり、コミックなどの表示サイズは本製品のほうがひとまわり小さい程度だ
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 旧来からのKindleユーザーのなかには、「画面サイズが大型化」と聞いてかつてのKindle DX(右)を思い出した人もいるかもしれないが、さすがに画面サイズの違いは歴然だ
旧来からのKindleユーザーのなかには、「画面サイズが大型化」と聞いてかつてのKindle DX(右)を思い出した人もいるかもしれないが、さすがに画面サイズの違いは歴然だ

操作のきびきび感が大幅に向上、メニュー周りのもっさり感も解消

 従来モデルに同梱されていたバッテリ内蔵カバーがなくなったことで、やや特殊だったパッケージの仕様はほかのKindleシリーズに近い仕様に改められている。同梱品などは違いは見られない。またセットアップの手順および画面についても「Kindle Unlimited」の広告が挟まるようになったくらいで、従来モデルと大きな変化はない。

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 製品パッケージ。説明書きは8カ国語対応で、従来モデルは化粧箱だったのが今回は黒箱をスリーブで巻く他モデルと同じ仕様に戻った
製品パッケージ。説明書きは8カ国語対応で、従来モデルは化粧箱だったのが今回は黒箱をスリーブで巻く他モデルと同じ仕様に戻った
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 開封。本体は透明な袋に封入されている
開封。本体は透明な袋に封入されている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 同梱品一覧。白と黒の小冊子に加えてUSBケーブルが添付される。Fireシリーズと違ってAC変換アダプタは同梱されない
同梱品一覧。白と黒の小冊子に加えてUSBケーブルが添付される。Fireシリーズと違ってAC変換アダプタは同梱されない
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 電源を入れてセットアップ開始。まずは言語を選択する
電源を入れてセットアップ開始。まずは言語を選択する
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 おなじみのオープニング画面。「木陰で本を読んでいる人」というモチーフこそ共通だがデザインは一新されている
おなじみのオープニング画面。「木陰で本を読んでいる人」というモチーフこそ共通だがデザインは一新されている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 「はじめましょう」の画面。特徴が端的にまとめられているが、なぜか防水機能についてはふれられていない
「はじめましょう」の画面。特徴が端的にまとめられているが、なぜか防水機能についてはふれられていない
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Wi-Fi設定のための画面。デザインは若干変わっているが機能としてはとくに違いはない
Wi-Fi設定のための画面。デザインは若干変わっているが機能としてはとくに違いはない
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 SSIDを選んでパスワードを入力する。第8世代Kindleで追加された、パスワードをAmazonに保存するためのチェックボックスが用意されている
SSIDを選んでパスワードを入力する。第8世代Kindleで追加された、パスワードをAmazonに保存するためのチェックボックスが用意されている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Amazon.co.jpで購入した場合はアカウントが自動的に表示される。量販店で購入した場合、また初期化して再セットアップを行なった場合はアカウントは手動登録となる
Amazon.co.jpで購入した場合はアカウントが自動的に表示される。量販店で購入した場合、また初期化して再セットアップを行なった場合はアカウントは手動登録となる
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 SNSのアカウントの登録画面。共有機能を使わなければスキップしてかまわない
SNSのアカウントの登録画面。共有機能を使わなければスキップしてかまわない
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Fireシリーズではおなじみの、定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」の広告が挟まるようになった
Fireシリーズではおなじみの、定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」の広告が挟まるようになった
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 チュートリアルが数ページにわたって表示される
チュートリアルが数ページにわたって表示される
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 チュートリアルが終わるとホーム画面が表示される
チュートリアルが終わるとホーム画面が表示される

 ホーム画面のデザインや操作方法は従来を踏襲しており、使っていて戸惑うことはないのだが、コミックなどのシリーズをまとめて管理できる機能が加わったことで、新しい操作も若干見られる。こちらについては本記事の後編で詳しく紹介する。

 さて、しばらく使って感じるのが、動作がひじょうにきびきびしていることだ。Kindleシリーズは新しいモデルが出るたびにレスポンスが向上しており、数年前の製品と比較するとあまりの違いに驚かされるが、従来のOasisだけはメニュー周りがかなりもっさりした印象があった。その点、本製品のきびきびした動きは際立っている。6ページめくるたびに行なわれるリフレッシュも、ほとんど気にならないほどだ。

 E Inkはその特性上、ページが切り替わるさいには、現在のページと次のページが入り交じるような表示になるわけだが、本製品はその入り混じった状態を表示する時間が短縮されており、小気味よくスパッと切り替わる。一見すると気づかないレベルだが、従来モデルを使い込んでいる人であれば間違いなく気づく変化だ。以下の動画で(目を凝らして)チェックしてみてほしい。

本製品(左)と従来モデル(右)のページめくり(タップ、スワイプ)の反応速度の比較。どちらもほぼ同程度で、連続した速い動きにも問題なく追従する
ただしよく見ると、本製品(左)がスパッと次のページへと切り替わるのに対して、従来モデル(右)は切り替えがワンテンポ遅れる傾向にあり、本製品が高速化されていることがわかる
こちらはボタンによるページめくり速度の比較。タップやスワイプと同様、こちらも小気味よく切り替わる。画面を長押しすることで連続してページをめくる「連続ページターン」も搭載する
本製品(左)とKobo Aura H2O Edition 2(右)のページめくり(スワイプ)の反応速度の比較。スワイプしてから反応するまでの速度、ページが書き換わる速度、どちらを取ってもその差は明らかだ

画面サイズの大型化により見開き表示が実用レベルに

 本製品は従来モデルに比べて画面サイズがひとまわり大きく、解像度は300ppiをキープしているため、細部の表現力は従来モデルなどと同等、かつ画面そのものが大きいので目に優しい。従来モデルと比較した画像は以下のとおりで、十分過ぎるクオリティだ。

 比較写真での各製品の並び順は以下のとおり。なおサンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を用いている。

  • 上段左: 本製品(7型/1,264×1,680ドット/300ppi)
  • 上段右: 第8世代Kindle Oasis(6型/1,072×1,448ドット/300ppi)
  • 下段左: Kobo Aura H2O Edition 2(6.8型/1,080×1,440ドット/265ppi)
  • 下段右: iPad mini 4(7.9型/1,536×2,048ドット/326ppi)
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。下段の左右こそ解像度に準じた差は感じるが、いずれも複雑な漢字やルビもきちんと描写されている
テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。下段の左右こそ解像度に準じた差は感じるが、いずれも複雑な漢字やルビもきちんと描写されている
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 コミック(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)の比較。こちらもテキストと同様、下段の左右こそ解像度に準じた差は感じるが、十分な表現力だ。200ppi以下だと現れる、鼻の左側の影がベタ塗りになってしまう症状も見られない
コミック(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)の比較。こちらもテキストと同様、下段の左右こそ解像度に準じた差は感じるが、十分な表現力だ。200ppi以下だと現れる、鼻の左側の影がベタ塗りになってしまう症状も見られない

 さて、画面サイズが7型に大型化したことによって、実用レベルへと変貌を遂げた機能が1つある。それは画面を横向きにしてのコミックの見開き表示だ。

 これまでのKindleシリーズも機能自体は搭載されていたが、6型での見開きはさすがにサイズ的に現実的ではなく、コミックの表示には事実上使えなかった。本製品は見開き表示にしても、1ページの表示サイズは5.5型スマートフォンと同等レベル、つまりiPhoneのPlusシリーズと同程度のページサイズを維持しているので、十分、とまでは言わないものの、実用レベルで見開きでの読書が行なえる。

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 見開きで表示した状態。文庫本感覚で読める
見開きで表示した状態。文庫本感覚で読める
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 画面方向の切り替えは設定画面からではなく、コンテンツのオプションにある「ページ」→「画面方向」で行なう。行間や余白の設定画面と同じところにある、と覚えておくとあとから探しやすい
画面方向の切り替えは設定画面からではなく、コンテンツのオプションにある「ページ」→「画面方向」で行なう。行間や余白の設定画面と同じところにある、と覚えておくとあとから探しやすい
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 これまでのモデルも見開き表示は可能だったが、6型ということでページサイズが小さく実用性は低かった。写真はKindle Paperwhite
これまでのモデルも見開き表示は可能だったが、6型ということでページサイズが小さく実用性は低かった。写真はKindle Paperwhite
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 見開き表示に切り替えた状態でのディティールの比較。上段左が本製品、右が従来モデル、下段左がFire 7、右がiPad mini4。さすがに単ページ表示に比べるとピントがぼけたようになるが、左下のFire 7のようにジャギーが目立つ状態になるわけではなく、サイズさえ許容できれば十分実用的だ
見開き表示に切り替えた状態でのディティールの比較。上段左が本製品、右が従来モデル、下段左がFire 7、右がiPad mini4。さすがに単ページ表示に比べるとピントがぼけたようになるが、左下のFire 7のようにジャギーが目立つ状態になるわけではなく、サイズさえ許容できれば十分実用的だ
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 本製品は7型ゆえ、見開き表示でも1ページのサイズは5.5型相当を実現している。5.2型のトリニティNuAns NEO [Reloaded](右)と比較しても、本製品のほうがひとまわり大きいことがわかる
本製品は7型ゆえ、見開き表示でも1ページのサイズは5.5型相当を実現している。5.2型のトリニティNuAns NEO [Reloaded](右)と比較しても、本製品のほうがひとまわり大きいことがわかる
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 従来モデル(下)との比較。従来モデルはページサイズは4.7型相当といったところだろうか
従来モデル(下)との比較。従来モデルはページサイズは4.7型相当といったところだろうか
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 Fire 7(下)との比較。本製品のほうがふたまわりは大きい。ちなみにFire HD 8との比較だと、本製品のほうがわずかに小さくなるが、解像度は本製品のほうが圧倒的に上で実用性は高い
Fire 7(下)との比較。本製品のほうがふたまわりは大きい。ちなみにFire HD 8との比較だと、本製品のほうがわずかに小さくなるが、解像度は本製品のほうが圧倒的に上で実用性は高い
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 iPad mini 4(下)との比較。こちらはさすがに本製品のほうがふたまわりは小さい。iPad miniでの見開き表示が小さすぎると感じるようであれば、本製品での見開き表示はあきらめたほうがよいだろう
iPad mini 4(下)との比較。こちらはさすがに本製品のほうがふたまわりは小さい。iPad miniでの見開き表示が小さすぎると感じるようであれば、本製品での見開き表示はあきらめたほうがよいだろう
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 テキストコンテンツも意外にバランスよく表示できる。ちなみにいったん横向きでの表示に設定を変更すると、コミック、テキストを問わずすべてのコンテンツがこの向きで表示される
テキストコンテンツも意外にバランスよく表示できる。ちなみにいったん横向きでの表示に設定を変更すると、コミック、テキストを問わずすべてのコンテンツがこの向きで表示される

 ただし、使い勝手はまだまだ改善の余地がある。1つは、画面を横向きに設定した場合も、ホーム画面などは縦向きのままであること。さらに向きの変更がコンテンツのオプション画面から切り替える仕組みなので、ひんぱんに切り替えるのがかなり面倒なことだ。Androidのクイック設定パネルやiOSのコントロールセンターのように、どの画面からでも切り替えが行なえるのがベターだろう。

 もう1つは、右綴じの書籍を表示したさい、ボタンの役割とページの進行方向が逆になるということだ。通常の持ち方では、上ボタンが次ページ、下ボタンが前ページへの移動に割り当てられている。しかし見開き表示を行なうために端末を90度回転させた場合も、この役割がそのまま維持されるので、画面に向かって左側のボタンを押すと、ページがめくられずに逆に戻る格好になる。画面の左側をタップするとページがめくられるので、画面タップとボタンで、真逆の動きをすることになる。

Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 この写真で親指がかかっている左側のボタンを押すと、ページをめくるのではなく戻る動作になってしまう。その直上をタップした場合はページがきちんとめくられるだけに違和感がある
この写真で親指がかかっている左側のボタンを押すと、ページをめくるのではなく戻る動作になってしまう。その直上をタップした場合はページがきちんとめくられるだけに違和感がある
Amazon「Kindle Oasis(第9世代)」レビュー【前編】 設定からボタンの役割を入れ替えることもできるが、通常時も入れ替わった状態になるので悩ましい
設定からボタンの役割を入れ替えることもできるが、通常時も入れ替わった状態になるので悩ましい

 もちろん設定画面で2つのボタンの役割を入れ替えることもできるのだが、そうすると通常時もボタンの役割が入れ替わった状態で使わざるをえないので悩ましい。もっとも望ましいのは、画面を横向きに表示する場合は、コンテンツが右綴じだと自動的にボタンの役割が入れ替わる、というギミックだろう。

 以上のように、まだまだブラッシュアップの余地はあるものの、大きな画面を持ちながら横向きにしても単ページ表示しかできない楽天Koboと比べた場合の、大きなアドバンテージと言える。コミックにおける見開き表示には確実にニーズはあるはずなので、今後の進化に期待したいところだ。できれば画面自体がさらにもうひとまわり大きくなってくれると、筆者個人としては言うことなしだ。

従来モデルと異なり万人受けする製品。防水機能は次回チェック

 以上、ファーストインプレッションをお届けしたが、個人的には200gを切りつつ見開き表示が可能な端末が出てきたことがひじょうに喜ばしい。筆者自身、コミックを読むにあたって、既存のKindleシリーズの画面サイズでは実質的に見開き表示が使い物にならないため、結果として7~8型クラスで解像度が十分にある軽量タブレット、すなわちiPad mini 4に頼らざるを得なかったのだが、今後は本製品の出番が増えそうだ。

 また、動きが全体的にきびきびしており、使っていてもストレスがたまらないのは好印象だ。見開き表示のような特定の機能は、興味がない人にとってはメリットになり得ないが、端末自体のレスポンスがよいのは誰もが恩恵を受けられるポイントであり、画面が大きく見やすいことと併せて、万人受けする製品であることは間違いない。従来モデルがどちらかというと特定のユーザーにしか受けない作りだったのとは好対照だ。

 次回の後編では、本製品のもう1つのセールスポイントである防水機能や、コミックのシリーズ管理など、今回ふれられなかった新機能についてチェックしていきたい。

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