山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー

~10.1型のWUXGA化でより電子書籍向きに

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー Fire HD 10(第7世代)。従来の16GBモデルがなくなり、32GBと64GBのモデルがラインナップされる。なお海外ではマリンブルー、パンチレッドも含めた3色展開だが日本国内ではブラックのみ販売される
Fire HD 10(第7世代)。従来の16GBモデルがなくなり、32GBと64GBのモデルがラインナップされる。なお海外ではマリンブルー、パンチレッドも含めた3色展開だが日本国内ではブラックのみ販売される

【お詫びと訂正】初出時に、Fire HD 10(第6世代)としておりましたが、正しくは第7世代になります。お詫びして訂正させていただきます。

 「Fire HD 10(第7世代)」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonが提供するデジタルコンテンツを楽しめる10.1型タブレットだ。同社のタブレットFireシリーズのラインナップのなかではもっとも大きな画面を持ちつつ、32GBモデルで18,980円、64GBモデルでも22,980円と、従来モデルから大幅に価格を引き下げたリーズナブルな価格が特徴だ。

 Fireシリーズの各製品はほぼ年1回のペースで定期的にモデルチェンジされているが、この10型モデルについては昨年(2016年)は新製品の投入は見送られ、今回のモデルが2年ぶりの新製品となった。メインストリームはあくまで7~8型とはいえ、電子書籍の見開き表示を行なう場合や、雑誌など判型の大きいコンテンツを表示するさい、さらに動画再生などの用途において、この10型はぴったりの製品と言える。

 今回は発売前の製品を借用できたので、それをもとにレビューをお届けする。ハードウェアは市販モデルと同等だと考えられるが、ソフトウェアは発売時点でバージョンアップが行なわれる可能性があるので、その点は差し引いてお読みいただきたい(本稿執筆時点のバージョンは5.5.0.0)。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 製品外観。従来と同じく、通常では縦向きで使うことを想定したカメラ配置
製品外観。従来と同じく、通常では縦向きで使うことを想定したカメラ配置
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 横向きでも使えるが、画面比率が4:3でなく16:10のため、かなり横長の印象。ちなみに幅と高さは従来モデルとまったく同一
横向きでも使えるが、画面比率が4:3でなく16:10のため、かなり横長の印象。ちなみに幅と高さは従来モデルとまったく同一
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 上部には電源ボタン、Micro USBコネクタ、イヤフォンジャック、音量ボタン、さらに側面にはmicroSDスロットが用意される。これらボタン類の並び順は従来モデルと同じだ
上部には電源ボタン、Micro USBコネクタ、イヤフォンジャック、音量ボタン、さらに側面にはmicroSDスロットが用意される。これらボタン類の並び順は従来モデルと同じだ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー スピーカーは側面に2基搭載。横向きにした場合に左右に分かれる合理的な配置だ。使ったかぎりではこちらが(下向きではなく)上向きになるよう持ったほうが音が聞こえやすい
スピーカーは側面に2基搭載。横向きにした場合に左右に分かれる合理的な配置だ。使ったかぎりではこちらが(下向きではなく)上向きになるよう持ったほうが音が聞こえやすい

CPUやメモリ、画面解像度などあらゆる点で進化

 まずは従来モデルとの比較から。10型前後のタブレットの代表格である10.5インチiPad Proについても参考までに比較する。

【表】Fire HD 10(第7世代の)スペック
Fire HD 10(第7世代)Fire HD 10(第5世代)10.5インチiPad Pro
発売2017年10月2015年9月2017年6月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)262×159×9.8mm262×159×7.7mm250.6×174.1×6.1mm
重量約500g約432g約469g
CPUクアッドコア1.8GHz×2、1.4GHz×2クアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×264bitアーキテクチャ搭載A10X Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ
メモリ2GB1GB4GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)10.1型/1,280×800ドット (149ppi)10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi)
通信方式IEEE 802.11ac
バッテリ持続時間(メーカー公称値)10時間8時間最大10時間
スピーカー2基4基
microSDカードスロット○(最大256GB)○(最大200GB)-
価格(発売時)18,980円(32GB)
22,980円(64GB)
29,980円(16GB)
32,980円(32GB)
69,800円(64GB)
80,800円(256GB)
102,800円(512GB)

 現行のFireシリーズはコストパフォーマンス重視のラインナップであるため、原則年1回行なわれるモデルチェンジでもそれほど劇的な進化は見られないのが常だ。7~8型のモデルはそれが顕著で、ベンチマークを取ってもまったく代わり映えしないこともしばしばだ。

 しかし今回のFire HD 10(第7世代)は、2年前に発売されたFire HD 10(第5世代)と比較して、CPU、メモリ、画面解像度とそれぞれ明確に進化しているほか、バッテリの持続時間も伸び、さらにはmicroSDの最大容量もほかのFireシリーズに準じて200GB→256GBに増えるなど、あらゆる点で進化が見られる。この表にはないが、同じ第7世代のFire 7/Fire HD 8と違ってWi-Fiが11acに対応しているのも特徴だ。

 なかでももっとも大きな変化が、画面解像度の向上だろう。従来のFire HD 10は、10型であるにもかかわらず解像度が1,280×800ドット止まりだったことから、大きな画面を活かして電子書籍の見開き表示を行なおうにも、解像度不足で細かい文字がつぶれるという、やや本末転倒な仕様だった。本製品は解像度が1,920×1,200ドットに向上しているので、十分な品質が期待できる。電子書籍だけでなく、動画やゲームでも恩恵があることだろう。

 一方でネックとなるのは重量で、従来の約432gから約500gへと増えており、10型クラスのタブレットとしてはややヘビー級だ。本製品にはWi-Fiモデルのみのラインナップで、使用するのはおもに自宅内になると考えられるので、外出時に持ち歩くにあたって重くて困ることはないだろうが、それでも長時間両手で持って読書したり、動画を観たりする場合には少々つらい。

 また本体の厚みについても、従来の7.7mmから9.8mmへと、約2mm厚くなっている。現行のFire 7は厚みが9.6mm、Fire HD 8が9.7mmということで、Fireシリーズとして見たときに辻褄は合っているのだが、廉価モデルに当たるiPad(第5世代)ですら7.5mmなので、最近のタブレットやスマートフォンを使っているユーザーからすると、厚いと感じる機会は多そうだ。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 従来モデルこと第5世代Fire HD 10(右)との比較。幅×高さはまったく同じであるため、こうして並べると違いがわからない
従来モデルこと第5世代Fire HD 10(右)との比較。幅×高さはまったく同じであるため、こうして並べると違いがわからない
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 背面の比較。従来モデル(右)は反射が強く滑りやすいピアノ調の加工が特徴的だったが、本製品は今春発売された第7世代のFire HD 8などと同じ仕様となる
背面の比較。従来モデル(右)は反射が強く滑りやすいピアノ調の加工が特徴的だったが、本製品は今春発売された第7世代のFire HD 8などと同じ仕様となる
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー ボタン、コネクタ類の配置は従来モデル(下)とまったく同一。厚みは本製品のほうがプラス約2mmほど分厚い
ボタン、コネクタ類の配置は従来モデル(下)とまったく同一。厚みは本製品のほうがプラス約2mmほど分厚い
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 背面のAmazonロゴは布などの繊維がひっかかりかねないほど角が鋭い。第7世代のFire HD 8にも見られた特徴だ
背面のAmazonロゴは布などの繊維がひっかかりかねないほど角が鋭い。第7世代のFire HD 8にも見られた特徴だ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 第7世代Fire HD 8(右)との比較。サイズこそ異なるがデザインや質感はそっくりで、スピーカーの配置も踏襲している
第7世代Fire HD 8(右)との比較。サイズこそ異なるがデザインや質感はそっくりで、スピーカーの配置も踏襲している
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 10.5インチiPad Pro(右)との比較。10.1型の本製品とほぼ等しい画面サイズだが、縦横比が異なるのでかなり印象を異にする
10.5インチiPad Pro(右)との比較。10.1型の本製品とほぼ等しい画面サイズだが、縦横比が異なるのでかなり印象を異にする
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー かつてハイエンド路線として展開していたFire HDX 8.9(下)との比較。本製品は横向きにしたさいにカメラが上ではなく左または右に来るため、カメラが上に来るFire HDX 8.9に比べて筐体は横長だ
かつてハイエンド路線として展開していたFire HDX 8.9(下)との比較。本製品は横向きにしたさいにカメラが上ではなく左または右に来るため、カメラが上に来るFire HDX 8.9に比べて筐体は横長だ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 厚みの比較。いずれも左が本製品、右は上から順に第5世代Fire HD 10、第7世代Fire HD 8、10.5インチiPad Pro、Fire HDX 8.9。こうして比べるとかなりの厚み(9.8mm)があることがわかる
厚みの比較。いずれも左が本製品、右は上から順に第5世代Fire HD 10、第7世代Fire HD 8、10.5インチiPad Pro、Fire HDX 8.9。こうして比べるとかなりの厚み(9.8mm)があることがわかる

パッケージおよびセットアップ手順は従来と同様

 では開封してみよう。

 従来の第5世代モデルは背面のピアノ調加工が特徴だったが、今回の第7世代モデルは今春発売された第7世代のFire HD 8やFire 7とほぼ共通の、プラスチック感の強い筐体が特徴だ。パッケージについては同様のフラストレーション・フリー仕様となっている。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 外箱は従来と同じフラストレーション・フリー・パッケージ仕様
外箱は従来と同じフラストレーション・フリー・パッケージ仕様
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー ミシン目に沿って開封する
ミシン目に沿って開封する
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 同梱物一覧。従来と同じく、各国語版の保証書とスタートガイド、USBケーブル、USB-ACアダプタが付属する
同梱物一覧。従来と同じく、各国語版の保証書とスタートガイド、USBケーブル、USB-ACアダプタが付属する
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー USB ACアダプタはFire HD 8/Fire 7に同梱されていた5Wタイプではなく、9Wタイプが同梱される。コンセント面にはPS57CPというモデルナンバーが印字されている
USB ACアダプタはFire HD 8/Fire 7に同梱されていた5Wタイプではなく、9Wタイプが同梱される。コンセント面にはPS57CPというモデルナンバーが印字されている

 セットアップ手順も同様で、従来と大きく変わるところは見当たらず、また一般的なタブレットのセットアップのフローと変わらない。それゆえ初めてタブレットを購入する人でも戸惑うことはないはずだ。以下、スクリーンショットで紹介する。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 電源を入れてセットアップ開始。まずは言語を選択
電源を入れてセットアップ開始。まずは言語を選択
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー Wi-Fiが検索される。従来と比べると「戻る」の隣にあった「後で」という選択肢がなくなっている
Wi-Fiが検索される。従来と比べると「戻る」の隣にあった「後で」という選択肢がなくなっている
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー SSIDのパスワードを入力する。詳細オプションからはプロキシやDHCPのオン/オフが設定できる
SSIDのパスワードを入力する。詳細オプションからはプロキシやDHCPのオン/オフが設定できる
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー Amazonのアカウントを入力して登録する。今回は試していないが、Amazonのサイトから購入した場合は名前がすでに登録されておりそのまま続行できる
Amazonのアカウントを入力して登録する。今回は試していないが、Amazonのサイトから購入した場合は名前がすでに登録されておりそのまま続行できる
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 同じアカウントにひもづけられているバックアップがクラウド上に存在する場合は、復元するか否かを尋ねられる
同じアカウントにひもづけられているバックアップがクラウド上に存在する場合は、復元するか否かを尋ねられる
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 4項目のオプションが表示される。内容を確認し、必要に応じてチェックを外したのち次へ進む
4項目のオプションが表示される。内容を確認し、必要に応じてチェックを外したのち次へ進む
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー SNSへの接続画面。とくに問題なければそのまま「続行」をタップして次に進む
SNSへの接続画面。とくに問題なければそのまま「続行」をタップして次に進む
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」の広告が表示される。不要であれば右下の「いいえ、けっこうです」をタップして次に進む
定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」の広告が表示される。不要であれば右下の「いいえ、けっこうです」をタップして次に進む
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 以上でセットアップ完了。数ページにわたるチュートリアルが表示される
以上でセットアップ完了。数ページにわたるチュートリアルが表示される
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー ホーム画面が表示された。なおセットアップ完了後にアップデートの配信があったため、このあとの画面はソフトウェアバージョン5.5.0.0となっている
ホーム画面が表示された。なおセットアップ完了後にアップデートの配信があったため、このあとの画面はソフトウェアバージョン5.5.0.0となっている

従来モデルに比べて性能は約25%向上、もっさり感も解消

 Fireシリーズに採用されているAndroidベースのOS「Fire OS」は、本製品登場とほぼときを同じくして新しいバージョンへとアップデートされている(5.4.0.0→5.5.0.0)。操作性などで大きな違いは感じないが、ホーム画面の左側に「FOR YOU」という画面が新設されているのが目を引く。ただしこれは従来の「最近のコンテンツ」の名称を変更した上でレコメンド要素を追加したもので、天気や気温表示などが加わってはいるものの、全体的な使い勝手は従来と変わらない。

 Fireシリーズ共通の特徴である、既読位置を同期するWhisperSync、ブルーライトを抑制するBlue Shade、空きストレージ領域にコンテンツを自動ダウンロードするOn Deckといった機能も変わらず搭載する。個人的にはOn Deckについては余計なお世話という印象が強いのだが、合わなければ設定画面からオフにしておけばよい。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー バージョン5.5.0.0のホーム画面。従来の「お買い物」が「ストア」に改められているがあくまでも文言ベースの変更のようだ
バージョン5.5.0.0のホーム画面。従来の「お買い物」が「ストア」に改められているがあくまでも文言ベースの変更のようだ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 利用履歴や個人の好みにあわせたコンテンツを一覧表示してくれる「For You」タブが新設されている。位置情報に基づいた天気や気温、最近使ったコンテンツが表示されるほか、下段には購入傾向に基づいたレコメンドも表示される
利用履歴や個人の好みにあわせたコンテンツを一覧表示してくれる「For You」タブが新設されている。位置情報に基づいた天気や気温、最近使ったコンテンツが表示されるほか、下段には購入傾向に基づいたレコメンドも表示される
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 「For You」タブの上段は、Webサイトのローテーションバナーのように入れ替わる。手動で左右にスワイプして切り替えることもできるが、コンテンツページ自体を切り替える操作とかぶっているためやや使いづらい印象だ
「For You」タブの上段は、Webサイトのローテーションバナーのように入れ替わる。手動で左右にスワイプして切り替えることもできるが、コンテンツページ自体を切り替える操作とかぶっているためやや使いづらい印象だ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー スマートフォンなどではおなじみ、ブルーライトをカットする「Blue Shade」機能も搭載する
スマートフォンなどではおなじみ、ブルーライトをカットする「Blue Shade」機能も搭載する
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 先日スタートしたプライム会員限定の読み放題サービス「Prime Reading」も利用できる
先日スタートしたプライム会員限定の読み放題サービス「Prime Reading」も利用できる
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 空きストレージ領域にコンテンツを自動ダウンロードする「On Deck」。機能の詳細は前回のFire HD 8の記事に譲るが、まれにほかの操作とバッティングして性能を低下させることがあるので、筆者個人はオフにしている
空きストレージ領域にコンテンツを自動ダウンロードする「On Deck」。機能の詳細は前回のFire HD 8の記事に譲るが、まれにほかの操作とバッティングして性能を低下させることがあるので、筆者個人はオフにしている

 さて、ユーザーとして気になるのは、ハードウェアの強化によって、本製品の処理速度がどれだけ向上したかだろう。ベンチマークアプリ「Ice Storm Extreme」による比較は以下のとおりで、従来モデルと比べるとスコアはおおむね25%増しとなっている。

 実際に使っていても、従来モデルでよく見られたスクロール時のもたつきは大幅に減少しており、快適性は段違いだ。本稿執筆中にしばらく従来モデルを使ってみたが、本製品を使ったあとだと、あまりのもっさりぶりに耐えられなかったほどだ。画面を切り替えるさいのプチフリーズに似た症状が見られなくなったのも大きい。

 もっとも、ハードウェアが大幅に進化したとはいえ、かつてFireがラインナップしていたSnapdragon搭載のハイエンドモデル「Fire HDX 8.9」ほどの突出したスペックではなく、「Ice Storm Unlimited」による同製品とのスコア差は2倍近くある。

 おそらく、モデルチェンジにあたってまず画面解像度を上げるというテーマがあり、それにあわせてCPUやメモリを見直した結果、エントリーモデル以上、ハイエンドモデル未満という今回のスペックに収まったのだろう。

 ただ、価格を踏まえて考えると、本製品のコストパフォーマンスのよさは際立っている。同じ32GBモデルで比較した場合、従来モデルが32,980円(32GB)であるのに対し、本製品は18,980円(同)と、1万円以上も安価だ。

 さらに前述の「Fire HDX 8.9」は47,180円(同)と、性能だけでなく価格までハイエンドだったため、その半額どころか3分の1に届こうかというリーズナブルな価格で購入でき、かつ実用レベル以上の性能を持つ本製品のコストパフォーマンスのよさは、これまでの10型前後のモデルのなかで最強と言えるだろう。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー ベンチマークソフト「Ice Storm Extreme」による測定結果。左が本製品、右が従来モデル。総合スコアだけでなく下段の個別のスコアもほぼ等しく25%前後増しとなっている
ベンチマークソフト「Ice Storm Extreme」による測定結果。左が本製品、右が従来モデル。総合スコアだけでなく下段の個別のスコアもほぼ等しく25%前後増しとなっている
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー こちらは本製品(左)を、かつてのハイエンドモデルであるFire HDX 8.9(右)とベンチマークソフト「Ice Storm Unlimited」で比較したもの。Fire HDX 8.9は3年前(つまり第4世代)に当たるモデルだが、それでも約2倍のスコア差がある
こちらは本製品(左)を、かつてのハイエンドモデルであるFire HDX 8.9(右)とベンチマークソフト「Ice Storm Unlimited」で比較したもの。Fire HDX 8.9は3年前(つまり第4世代)に当たるモデルだが、それでも約2倍のスコア差がある

 なお、使っていて少々気になるのは、本体の背面、カメラを中心としたエリアが長時間使っていると熱を帯びることだ。とくに動画を長時間再生している場合は顕著で、手持ちだとかなり気になる。熱くてふれられないほとではないが、常時握りしめているのはつらい温度なので、手で持たずにスタンドに立て掛けたり、保護ケースで熱を緩和させるなどの工夫が必要だ。どうしても手で持たざるを得ない場合、熱くなったら本体の上下を反転させ、ふれる手を切り替えるのも効果的だ。

高解像度化で小さい文字や細い線もつぶれず表示可能

 電子書籍ユースで重要なポイントとなる解像度についてもチェックしよう。

 従来のFire HD 10は、10型であるにもかかわらず解像度が8型と同じ1,280×800ドットだったが、本製品は解像度が1,920×1,200ドットに向上しているため、十分な品質が期待できる。画素密度も224ppiと、10.5インチiPad Proの264ppiにかなり近いところまで来ている。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 10.1型、かつWUXGA(1,920×1,200ドット)であるため見開き表示に適する
10.1型、かつWUXGA(1,920×1,200ドット)であるため見開き表示に適する
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 8型のFire HD 8(下)と違って、見開き表示でも窮屈さを感じない
8型のFire HD 8(下)と違って、見開き表示でも窮屈さを感じない

 実際にコミックを見開きで表示した状態で、細部をズームアップしたのが以下の写真だ。

 さすがに前述のハイエンドモデル「Fire HDX 8.9」(339ppi)にはおよばないものの、従来モデルや第7世代Fire HD 8と比べると、その表現力の差は歴然だ。ここでは電子書籍で比較しているが、Amazonビデオで動画を視聴するさいも、WUXGAならではの品質で楽しむことができる。

 比較写真での各製品の並び順は以下のとおり。単ページ表示ではなく、見開き表示での画質比較である点に留意してほしい。

  • 上段左: 本製品(10.1型/1,920×1,200ドット/224ppi)
  • 上段中: 10.5インチiPad Pro(10.5型/2,224×1,668ドット/264ppi)
  • 上段右: Fire HDX 8.9(8.9型/2,560×1,600ドット/339ppi)
  • 下段左: 第5世代Fire HD 10(10.1型/1,280×800ドット/149ppi)
  • 下段中: 第7世代Fire HD 8(8型/1,280×800ドット/189ppi)
  • 下段右: 第7世代Fire 7(7型/1,024×600ドット/171ppi)
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー コミック(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)の比較。顕著なのが鼻の左側の影で、200ppi以下の3製品(いずれも下段)は線がつぶれているのに対し、本製品を含む上段の3製品は線もしっかり描写されている。本製品(上段左)は、10.5インチiPad Pro(上段中)ほどのメリハリはないものの十分な品質だ
コミック(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)の比較。顕著なのが鼻の左側の影で、200ppi以下の3製品(いずれも下段)は線がつぶれているのに対し、本製品を含む上段の3製品は線もしっかり描写されている。本製品(上段左)は、10.5インチiPad Pro(上段中)ほどのメリハリはないものの十分な品質だ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。解像度の差をそのまま反映したディティールで、細い線もしっかりと描写されている
テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。解像度の差をそのまま反映したディティールで、細い線もしっかりと描写されている

 また雑誌など、判型の大きなコンテンツを表示するさいにも強みを発揮する。10.1型という画面サイズはB5サイズの雑誌と比べると実際にはかなり小さいのだが、従来モデルよりも高解像度であるため、本文の注釈などの細かい文字も苦にせず読み取れる。これまでのFireシリーズはラインナップ上、こうした使い方ができるモデルが存在しなかっただけに、用途によっては重宝することだろう。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 雑誌と比べると表示サイズは小さいが、従来であれば解像度不足で文字がつぶれていたところ、本製品では高解像度化で小さな文字も苦にせず読み取れるようになった
雑誌と比べると表示サイズは小さいが、従来であれば解像度不足で文字がつぶれていたところ、本製品では高解像度化で小さな文字も苦にせず読み取れるようになった

実質14,980円で購入可能でコスパは抜群。Alexa対応にも期待

 以上見てきたように、「Fireシリーズといえば廉価モデルでスペックは二の次」という先入観を改めるべき製品だ。

 エントリーモデルと呼ぶにはあまりにもスペックが充実しているため、中級者でも納得だろう。なにより、ただでさえ安価なところ、プライム会員ならクーポン利用でさらに4,000円安くなるため、32GBモデルであれば実質14,980円で買えてしまうのが恐ろしいところだ。

 どのようなユーザーにニーズがあるか見ていこう。まず従来のFire HD 10を使っているユーザーだが、これは買い替えを強くおすすめする。ボタンやコネクタ類の配置がまったく同じで使い勝手が変わらないことに加えて、画面の解像度は上がり、さらに従来モデルのもっさり感が解消されるなど、メリットだらけだからだ。唯一、若干厚く重くなる点だけが懸念材料ということになる。

 現在Fire HD 8やFire 7を使っているユーザーで、電子書籍で見開き表示をしたい、動画をさらに高い解像度で楽しみたい人にもおすすめできる。10.1型ともなると筐体サイズはそこそこ大きく、Fire HD 8やFire 7をそっくり置き換えるには向かないので、コミックおよび動画視聴専用のデバイスとして併用するのがベターだろう。

 製品ページには小さくしか書かれていないが、Fire HD 8/Fire 7が90日保証なのに対して、本製品は1年保証というのも利点だ。

 一方、とくにAmazonのコンテンツにこだわりがなく、漠然と10型前後のタブレットがほしいと考えているユーザーの場合は、必要なアプリがきちんと用意されていることが確認できれば、魅力的な製品と言えるだろう。

 iOSやAndroidに比べると、Amazon Appストアのラインナップは決して多いとはいえないだけに、それさえクリアされれば間違いなくお買い得だ。

 最後になったが、年内に日本投入が予告されているAmazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」と、それに搭載される音声アシスタント「Alexa」が国内で解禁されれば、本製品でもAlexaの機能が利用可能になると予想される。

 本製品はFire HD 8/Fire 7と違ってAlexa利用時にハンズフリーモードが使えるメリットがあり、そうした意味でも本製品は注目に値する。こちらについてはAlexaが国内で使えるようになったのち、機会があればあらためて紹介したい。

2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 本製品はAmazon.comではむしろ「Alexaをハンズフリーで使えるタブレット」として大きくアピールされている(画像はAmazon.comの製品ページより)
本製品はAmazon.comではむしろ「Alexaをハンズフリーで使えるタブレット」として大きくアピールされている(画像はAmazon.comの製品ページより)
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー ハンズフリー対応なので、純正カバーと組みあわせて常時立て掛けた状態にしておけば、画面が消えた状態で呼びかけても反応する
ハンズフリー対応なので、純正カバーと組みあわせて常時立て掛けた状態にしておけば、画面が消えた状態で呼びかけても反応する
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー 本製品をAmazon.comのアカウントでセットアップすれば、現在でもAlexaが利用できる。現状では英語のみとなるが、いち早くAlexaを試してみたい人にはおすすめだ
本製品をAmazon.comのアカウントでセットアップすれば、現在でもAlexaが利用できる。現状では英語のみとなるが、いち早くAlexaを試してみたい人にはおすすめだ
2万円切りの格安タブレット「Amazon Fire HD 10(第7世代)」をレビュー Alexaの設定画面。ハンズフリーモードに設定できるほか、起動ワード(Alexaに呼びかけるさいの言葉)も変更できる
Alexaの設定画面。ハンズフリーモードに設定できるほか、起動ワード(Alexaに呼びかけるさいの言葉)も変更できる
Amazon.comのアカウントでセットアップした本製品を用い、レストランの検索やタイマーのセット、解除をAlexaで行なっている様子。現時点では日本語は対応せず英語のみとなる
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