山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon「Fire HD 10」

~10.1型ながら29,980円から購入可能な格安タブレット

Amazon「Fire HD 10」。本体色はブラックのほかホワイトをラインナップする

 「Fire HD 10」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonが提供するデジタルコンテンツを楽しめる10.1型タブレットだ。従来の「Fire HDX 8.9」を上回り、Fireシリーズのラインナップの中ではもっとも大きな画面を持ちつつ、16GBモデルで29,980円、32GBモデルでも32,980円と、リーズナブルな価格設定が特徴だ。

 こと電子書籍ユースにおいては、雑誌など大判サイズのコンテンツの表示や、コミックの見開き表示などが無理なく行なえることが期待される。今回は上位モデルにあたる「Fire HDX 8.9」のほか、9~10型クラスでの競合となるiPad Air 2などとも比較しつつ、本製品の使い勝手をチェックしていきたい。

製品外観。10型オーバーのタブレットとしては珍しく、縦向きでの利用を意識したカメラ配置
もちろん横向きでも使えるが、カメラの位置がサイドになること、また画面比率が4:3でなく16:10のため、かなり横長の印象
端子やボタンはほとんどが上部に集中しているのは第5世代Fireシリーズの他製品と同じ。左から音量ボタン、イヤフォンジャック、リセットホール、Micro USBコネクタ、電源ボタン
側面には第5世代モデルの特徴であるmicroSDカードスロットを搭載。128GBまで対応する。Fire HD 8と同様、隣には背面カメラがある
スピーカーは本体側面に2基搭載。横向きにした場合に左下と右下に来る合理的な配置だ
背面のAmazonロゴはモールドではなくシルク印刷。Fire HD 8をそのまま拡大したかのような外観

ずばり「Fire HD 8の大画面版」

 まずはFireシリーズのほかのモデルとの比較から。

Fire
(第5世代)
Fire HD 8
(第5世代)
Fire HD 10
(第5世代)
Fire HDX 8.9
(第4世代)
発売年月2015年9月2015年9月2015年9月2014年11月
サイズ(最厚部)191×115×10.6mm214×128×7.7mm262×159×7.7mm231×158×7.8mm
重量約313g約311g約432g約375g
OS(発売時)Fire OS 5Fire OS 5Fire OS 5Fire OS 4
CPUクアッドコア1.3GHz×4クアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×2クアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×2クアッドコア 2.5GHz
RAM1GB1GB1GB2GB
画面サイズ/解像度7型/1,024×600ドット(171ppi)8型/1,280×800ドット (189ppi)10.1型/1,280×800ドット (149ppi)8.9型/2,560×1,600ドット(339ppi)
通信方式802.11b/g/n802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac
内蔵ストレージ8GB (ユーザー領域5GB)8GB(ユーザー領域4.5GB)
16GB (ユーザー領域11.6GB)
16GB(ユーザー領域11.6GB)
32GB (ユーザー領域26GB)
16GB(ユーザー領域9.9GB)
32GB(ユーザー領域24.3GB)
64GB(ユーザー領域52.9GB)
バッテリ持続時間(メーカー公称値)7時間8時間8時間12時間(書籍のみの場合18時間)
カメラ前面、背面前面、背面前面、背面前面、背面
microSDカードスロット-
価格(発売時)8,980円
(プライム会員価格 4,980円)
19,980円(8GB)
21,980円(16GB)
29,980円(16GB)
32,980円(32GB)
40,980円(16GB)
47,180円(32GB)
53,280円(64GB)
カラーバリエーションブラックブラック、ブルー、オレンジ、ピンクブラック、ホワイトブラック

 本製品を一言で言い表すならば「Fire HD 8の大画面版」という表現になるだろう。画面サイズが10.1型であることを除けば、CPUやメモリ、Wi-Fiの対応規格、microSD対応など、まったく同じスペックである。厚みも7.7mmと同一、さらに筐体のデザインまで共通で、8型を10.1型に引き伸ばしただけと言っても支障はない。

 ただし内蔵ストレージについては、Fire HD 8が8GB/16GBモデルだったのに対し、本製品は16GB/32GBモデルと、1つ上の容量帯にシフトしている。また本体色も、Fire HD 8はブラック、ブルー、オレンジ、ピンクの計4色だったのが、本製品はブラックとホワイトの2色と、異なるラインナップとなっている。競合となりうる製品のラインナップを踏まえたものだろうか。

 やや首を傾げざるを得ないのが、画面サイズが8型から10.1型へと大型化しているにもかかわらず、画面解像度は同じ1,280×800ドットで、結果として画素密度が低下してしまっていることだ。149ppiという画素密度は、Retina以前の初代iPadやiPad 2(9.7型/1,024×768ドット/132ppi)とほぼ同等であり、プライム会員限定で4,980円で販売されているエントリーモデルの第5世代「Fire」より下である。実際の表現力については、後ほど詳しく検証したい。

 続いて画面サイズがよく似た他社製品とも比べてみよう。サイズが一回り小さい「iPad Air 2」のほか、同じ10.1型で今年発売になったモデルとして、ソニー「Xperia Z4 Tablet」、NEC「LAVIE Tab E(TE510/BAL)」、ASUS「ZenPad 10(Z300C)」とも比べてみよう。例によってOSの違いなどもあり、スペックの中には直接比較できない項目もあるので、あくまでも参考として見てほしい。

Fire HD 10(第5世代)iPad Air 2Xperia Z4 TabletLAVIE Tab E(TE510/BAL)ZenPad 10(Z300C)
メーカーAmazonAppleソニーNECASUS
発売年月2015年9月2014年11月2015年6月2015年7月2015年8月
サイズ(最厚部)262×159×7.7mm240×169.5×6.1mm167×254×6.1mm247.4×171.9×8.99mm251.6×172×7.9~8.9 mm
重量約432g約437g約389g約522g約510 g
OSFire OS 5iOS 8→9Android 5.0Android 5.0Android 5.0
CPUクアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×264ビットアーキテクチャ搭載A8Xチップ、M8モーションコプロセッサQualcomm Snapdragon 810 Octa-core 2.0GHz/1.5GHzMT8165 1.70GHz(4コア)Atom x3-C3200
RAM1GB2GB3GB2GB2GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,280×800ドット (149ppi)9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi)10.1型/2,560×1,600ドット(299ppi)10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)10.1型/1,280×800ドット (149ppi)
通信方式802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n802.11b/g/n
内蔵ストレージ16GB(ユーザー領域11.6GB)
32GB (ユーザー領域26GB)
16GB
64GB
128GB
32GB16GB16GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値)8時間8時間約15時間(Wi-Fi Web閲覧時)約12時間(Web閲覧時)約8時間
microSDカードスロット-
価格(2015/10/5時点)29,980円(16GB)
32,980円(32GB)
53,800円(16GB)
64,800円(64GB)
75,800円(128GB)
75,880円33,800円26,800円

 スペックがもっとも近いのは、実売2万円台後半のASUS「ZenPad 10」で、解像度は同一ながらメモリはこちらの方が多く、逆にWi-Fiは5GHz帯非対応で重量も約78g重かったりと、本製品と比較すると一長一短だ。またNECの「LAVIE Tab E」は実売3万円台ながら解像度は1,920×1,200ドット、メモリ2GBと本製品よりハイスペックだが、こちらも重量は本製品より約90gも重い。iPad Air 2およびXperia Z4 Tabletはほぼすべての項目において本製品を上回るスペックだが、価格も相応に高い。

第5世代Fireシリーズの3製品。左から、Fire、本製品、Fire HD 10
上がFire HDX 8.9、下が本製品。画面の縦横比は同一(16:10)だが、Fire HDX 8.9は横、本製品は縦向きを前提としたレイアウト(カメラ位置が異なる)ため、外観は大きく異なる
左が本製品、右がiPad Air 2。画面サイズは本製品の方が大きいが、縦横比の関係で横幅はiPad Air 2の方が広い
厚みの比較。いずれも左側が本製品、上段右が第5世代Fire、中段右がFire HDX 8.9、下段右がiPad Air 2。Fireシリーズとしては薄いが、iPad Air 2には劣る

画面のレイアウトは10.1型に最適化、横向きでも無理のない表示が可能

 外箱は第5世代Fireに共通する真紅のパッケージで、同梱品もFire HD 8と共通。同じFire OS 5を採用していることから、セットアップまわりのプロセス、さらにホーム画面の構成も、前回までに紹介した「Fire」や「Fire HD 8」と変わらない。

 もっとも、ホーム画面やライブラリは、画面の広さに合わせてレイアウトが最適化されており、1画面で表示できるサムネイルやアイコンの数も増加している。特に横向きでの表示にかなり無理があったFireやFire HD 8と比べると、本製品は横向きでの一覧性が大きく向上している。本製品は全長が262mmとかなり長く、横向きで持った方がバランスがよいことも踏まえると、横向きで使う機会の方が多くなるだろう。

第5世代Fireのパッケージに共通する真紅のパッケージ
裏面。英語表記の上に日本語シールが貼られている
スリーブを外して開封する
同梱物一覧。各国語版の保証書とスタートガイド、USBケーブル、USB ACアダプタが付属
USB ACアダプタはFire HD 8と共通の形状
セットアップの最初の画面。画面サイズが大きいこともあり、レイアウトにはかなり余裕がある
縦向きで、ホーム画面をFire HD 8(右)と比較したところ。下段のアイコンが本製品は4段、Fire HD 8は3段と、本製品の方が余裕がある
同じく縦向きで、本のライブラリ画面をFire HD 8(右)と比較したところ。本製品の方が表示できるサムネイル数は縦横ともに増加している
横向きで、ホーム画面をFire HD 8(下)と比較したところ。1段に表示できるアイコンの数が1つ多いほか、全体的にレイアウトに余裕がある。メニューのフォントも画面サイズに合わせて一回り小さくなっているのが分かる
同じく横向きで、本のライブラリ画面をFire HD 8(下)と比較したところ。横に並ぶサムネイルの数は1つ多くなり、また下の段もサムネイルほぼ全体が表示できるようになっている

 動作については、Fire HD 8と同じく、動きはヌルヌルしているものの、画面遷移などにおいてはひっかかりを感じることがあり、Fireシリーズの上位モデルに当たるFire HDX 8.9と比べるとレスポンスの差はかなりある。CPUやメモリ容量(本製品は1GB、Fire HDX 8.9は2GB)の差もあるだろうが、第5世代Fireで採用されたFire OS 5のホーム画面に表示される「おすすめ」が読み込み待ちとなるケースも多く、こちらの影響も少なからずありそうだ。

 ちなみにベンチマークソフト「Quadrant Professional Ver.2.1.1」での比較は以下の通りで、ほかのFire HDシリーズとはほぼ同等だが、上位のFire HDX 8.9と圧倒的な差があるという、おおむね予想通りの値を示している。

製品名OSTotalCPUMemI/O2D3D
Fire HDX 8.9(第4世代)Fire OS 423850914091785271674982326
Fire HD 10(第5世代)Fire OS 5872228368845438174852484
Fire HD 8(第5世代)Fire OS 5820825814833440354502408
Fire HD 7(第4世代)Fire OS 4628117103756340093792353
Fire(第5世代)Fire OS 5576918461356741313092375

固定レイアウトのページでは9.7型のiPadより表示面積は小さくなる

 さて、電子書籍ユースにおいて本製品に期待されるのは、やはり誌面サイズが大きな本、具体的には雑誌を表示することだろう。Fireシリーズという選択肢に限れば、これまでもっともサイズが大きいのはFire HDX 8.9(8.9型)だったため、10.1型の本製品はこれを上回る面積で電子書籍を表示できることになる。

 以下は、小社刊「DOS/V POWER REPORT」の最新号と、同誌の電子版を表示した状態の本製品を並べたものだが、面積的にはおよそ半分といったところだ。原寸表示とまではいかないが、8.9型のFire HDX 8.9よりも、広い面積での表示が可能だ。

「DOS/V POWER REPORT」最新号の紙版(右)と比較したところ。原寸表示には及ばないが、Fire HDX 8.9よりは大判だ
こうして上に置いてみると、表示サイズはおよそ半分であることが分かる

 ただし、本製品は画面比率が16:10と細長いことから、画面比率が4:3の製品、具体的にはiPad Air 2などと比べた場合、対角線の長さでは上回る本製品が、実際の表示サイズでは逆に小さく表示されるケースが発生する。固定レイアウトのページをなるべく大きく表示したい目的で製品をチョイスする場合は、画面サイズだけで判断しないよう、注意が必要だ。

9.7型のiPad Air 2(右)と比べた場合、iPad Air 2の方が二回りは大きく表示される
Androidタブレットでは珍しい画面比率4:3のNexus 9(8.9型、右)と比べても、実表示サイズはほぼ同等だ

 では見開き表示についてはどうだろうか。本製品を横向きにしてページを見開きで表示すると、おおむね文庫サイズのコミックに近いサイズになる。コミックと同等サイズでの表示は無理だが、それなりに読めるサイズと言っていいだろう。

上が本製品での見開き表示、下が実際のコミックで同じページを表示した状態の比較。本製品の方が2回りは小さいが、文庫サイズのコミックと考えればそう極端な違和感はない

 ただ、ここでネックになるのが解像度である。冒頭でも述べたように本製品の解像度(149ppi)は、8型の「Fire HD 8(189ppi)」や7型の「Fire(171ppi)」よりもさらに下である。

 実際に表示性能の違いを比較したのが以下の写真だ。前回までと同様、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「大東京トイボックス 10巻」で、テキストの文字サイズはおおむね小説本と同等になるよう合わせている。いずれも見開き表示での画像を切り出したもので、1ページを全画面表示にした場合ではないので注意して欲しい。

・左:本製品(10型/1,280×800ドット/149ppi)
・中:Fire HDX 8.9(8.9型/2,560×1,600ドット/339ppi)
・右:iPad Air 2(9.7型/2,048×1,536ドット/264ppi)

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。本製品(左)はFire HDX 8.9(中)iPad Air 2(右)に比べてドットが目立つほか、細い線はかすれがち
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)の比較。右上の吹き出し内のテキスト、および口元の曲線などを見ると、解像度の違いが顕著だ

 以上のように、グラビアなどの画像を表示するならまだしも、文字サイズが小さい本文を読むのであれば、Fire HDX 8.9(339ppi)やiPad Air 2(264ppi)、あるいはE Ink端末であるKindle VoyageやKindle Paperwhite(いずれも300ppi)をチョイスした方が、目の疲れは少なくて済む。本製品は競合製品に比べて「価格が安い」という利点があるため一概に優劣はつけられないが、長時間の読書となると目の疲れへの影響も大きい。1日のうちどれだけ本製品に触れるかによっても、この辺りの判断は変わってくることだろう。

自炊データのビューアとしても最適

 ところで本製品を始めとする第5世代Fireシリーズは、自炊データのビューアとしてもうってつけだ。前回Fire HD 8のレビューでも紹介しているように、Kindleストアで購入した本はmicroSDに保存できないという制限があるが、自炊した本(PDFもしくはZIP圧縮JPGなど)についてはこうした制限がないからだ。

 中でも今回紹介しているFire HD 10は画面サイズが大きく、見開き表示にも無理がないので、画像2枚を並べての見開き表示はもちろんのこと、フラットベッドスキャナを使って見開き単位で取り込んだ自炊データの表示にも適している。前述のように解像度はお世辞にも高いとは言えないが、実売価格が16GBモデルで29,980円と安価なこともあり、自炊用に少しでも画面の大きなタブレットが欲しいと考えているユーザーにとっては、選択肢の1つになるだろう。

 ちなみに自炊データのビューアアプリとしては、Amazon Androidアプリストアで購入できる「Perfect Viewer」(299円)がおすすめだ。これにPDFプラグインを追加すれば、microSDに保存した大量の自炊PDFを快適に読めるようになる。右開きの設定など、縦書きの本やコミックを読むための設定も用意されており、何より設定画面は全て日本語なので扱いやすい。

 もっともこのアプリはネットワーク上のファイルの読み込みにも対応しているので、わざわざmicroSDにファイルをコピーしなくとも、自宅内であればNASなどに保存した自炊データをLAN経由で直接読み出せる。自宅ではLAN経由、出先に持ち出す際はmicroSDと、使い分けると良いだろう。主なスクリーンショットを以下に掲載しておくので、利用に当たって参考にしてほしい。

「Perfect Viewer」(299円)にPDFプラグインを追加すれば、自炊データを表示する環境を整えられる。Googleドライブへの設定バックアップなど、一部の機能が使えないのはご愛嬌
LAN上を含む複数のフォルダから読み込んだ自炊データを本棚ライクに表示できる。ZIP圧縮JPG、PDFともに、1ページ目の画像がサムネイルとして取り込まれる
ページを見開き表示したところ。背景色はデフォルトのグレーのままだが、白や黒など目立たない色に変更することも可能だ
タップ位置の割当は自由に変更できる。これはデフォルト値のままだが、本棚に戻る機能や、表示を1ページずらすのに使う「ページ移動」などを追加で割り当ててやると便利だ
設定項目は多岐に渡っており、最初はどこを設定すればよいか迷う。ひとまずは「右綴じ」「自動見開き表示」「最適表示」あたりを必須の項目として押さえておき、あとは使いながら変更していくとよいだろう
画面のタップ位置の割当のほか、デフォルトでは画面下部に表示されるツールバーについてもさまざまなアイコンを配置できる。タップ位置で割り当てられなかった機能はここでアイコンを配置しておくと良い
ハードウェアキーにも機能を割り当てられるので、音量ボタンを使ってページをめくることも可能だ

限られた予算の中でなるべく大きい画面サイズを求めるユーザー向けの製品

 今回のFire HD 10を始めとする第5世代Fireシリーズは、高額なタブレットには手が出せないユーザーに対し、最先端のスペックではないが一通りの機能は揃った製品をリーズナブルな価格で提供するという方向性が明確だ。第3~4世代のFireではハイエンドな性能を持つHDXシリーズがラインナップされるなど、全方位的な品揃えをしていたが、この第5世代は改めてFireシリーズの原点に立ち返った製品と言える。

 中でも今回のFire HD 10がターゲットとするのは、限られた予算の中で、なるべく大きい画面サイズを求めるユーザーということになる。高解像度のFire HDX 8.9を選んだ方が長期的な満足感は得られるだろうが、価格は約1万円プラスとなり、さらにもう1万数千円プラスするとiPad Air 2なども選択肢に入ってくる。このサイズのタブレットを使いこなせるか自信がない場合、本製品を入門機としてチョイスするのは、悪い選択ではないだろう。

 特にFireシリーズについては、プライム会員であれば月1冊無料で電子書籍が読めるという従来の特典に加え、Amazonプライムビデオが無料で利用可能になるなど、付加価値が増えつつある。Fireシリーズのデメリットであるアプリ数の少なさは依然として解消されていないが、microSDが使えるようになったことで、汎用性自体は以前に比べて上がっている。

 問題があるとすればやはり解像度で、もし価格が数千円プラスになっても解像度がもうワンランク高いという選択肢が存在していれば、個人的にはそちらをお勧めしているだろう。ただ、コミックではなくテキスト本が中心で、なおかつフォントサイズをかなり大きめに設定して読むのであれば、本製品の解像度でもそれほど支障はないはずで、このあたりはコンテンツおよび使い方で評価が変わってくると思われる。

 なお前回のFire HD 8のレビューで詳しく触れているが、Kindleストアで購入した本はmicroSDに保存できず、必ず内蔵ストレージに保存しなくてはいけないため、多数の本を持ち歩きたいユーザーは、容量がより大きい32GBモデルをチョイスすることをお勧めする。価格差も3,000円差とわずかなので、投資した額に見合った満足感を得られるはずだ。

(山口 真弘)