山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

楽天「Kobo Aura ONE」

~7.8型の大画面、防水機能も搭載したE Ink電子ペーパー端末

Kobo Aura ONE

 「Kobo Aura ONE」は、楽天Koboが販売するE Ink電子ペーパー採用の電子書籍端末だ。他社を含めて6型という画面サイズがほぼ標準であるE Ink電子ペーパー端末の中では異色となる、7.8型の大型パネルを搭載しつつ、IPX8等級の防水機能を備えるなど、最上位モデルと呼ぶにふさわしい製品に仕上がっている。

 現在、E Ink電子ペーパーを搭載した読書端末を複数ラインナップしている国内の事業者には、Amazon(Kindle)と、楽天(Kobo)がある。このうちKindleは、画面サイズはいずれも6型で、解像度や重量、ページめくりボタンの有無といった違いによるラインナップを展開している。これに対してKoboは、画面サイズの違い、および防水機能の有無という、Kindleとはまた違った差別化ポイントでユーザーへの訴求を行なっている。

 今回の「Kobo Aura ONE」は、iPad mini(7.9型)とほぼ同じ7.8型の画面を備えつつ、これまでKoboシリーズの弱点だった厚みも6.9mmと、他社と比較しても遜色ないレベルに仕上げている。さらに既存の「Kobo Aura H2O」譲りの防水機能も搭載するなど、特徴ある設計をさらに推し進めた仕上がりとなっている。

 今回は、同社ストアから購入した国内向けモデルを用い、既存の防水モデル「Kobo Aura H2O」やスタンダードモデルの「Kobo glo HD」、さらに競合となるAmazonのKindleシリーズの中から、製品特徴や価格帯などの共通項の多い「Kindle Voyage」と比較しつつチェックしていく。

カラーバリエーション展開はなくソフトブラック1色のみ。充電などのステータスを表すLEDが前面右上に、Koboのロゴが左下に印字されている
これまで本体上面にあった電源ボタンは裏面の左上に移動した。意匠としてはKindle Voyageに近い。連続30秒押すことで従来のリセット穴の代替としても機能する
底面はMicro USBコネクタのみで、リセット用の穴がなくなっている。またKobo Glo HDで非搭載となったメモリカードスロットは今回も搭載されていない
背面はほぼ全面に渡っておうとつのある滑り止めのラバーで覆われている。向かって右上にKoboのロゴがある

7.8型大画面にして230gと軽量。厚みもわずか6.9mm

 まずは従来のKoboシリーズとの比較から。

【表1】Koboシリーズの比較
Kobo Aura ONEKobo Glo HDKobo Aura H2O
発売月2016年9月2015年7月2014年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ)195.1×138.5×6.9mm115×157×9.2mm179×129×9.7mm
重量約230g約180g約233g
画面サイズ/解像度7.8型/1,404×1,872ドット(300ppi)6型/1,448×1,072ドット(300ppi)6.8型/1,080×1,430ドット(265ppi)
ディスプレイモノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ約8GB約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB)約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB)
メモリカード-microSDカード
フロントライト内蔵(自動調整)内蔵
防水・防塵機能あり(IPX8規格準拠)-あり(IP67規格準拠)
バッテリ持続時間※公称値約1カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時)約2カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時)約7週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時)
発売時価格(税別)22,800円12,800円19,980円

 本製品の特徴はなんと言ってもその画面サイズだ。現行のE Ink電子ペーパー搭載の汎用タイプの読書端末で、6型でない製品と言えば6.8型のKobo Aura H2Oくらいだが、今回のKobo Aura ONEはそれらを大きく上回る7.8型の画面サイズを備えている。解像度も300ppiを維持しているので(1,872×1,404ドット)、単にサイズありきで引き伸ばしただけではなく、画素数そのものが増加しており、高精細な表示を可能にしている。容量が8GBと、従来の倍あることも特徴だ。

 重量が230gと、サイズの割に軽いことも特徴だ。従来の6.8型モデル「Kobo Aura H2O」が233gだったことを考えると、1インチ大きい画面サイズでありながらそれを下回る重量は、持ち比べると数値の差以上に軽く感じられる。ちなみに本製品とほぼ同じ画面サイズのiPad mini 4(Wi-Fiモデル、7.9型)は298.8gなので、約70gも軽いことになる。もちろん片手でも余裕で持てる軽さだ。

 またIPX8規格準拠の防水機能を備えているのも特徴だ。従来のKobo Aura H2OはIP67規格準拠ということで、防水だけでなく防塵にも対応していたが(ちなみに先日発表になったiPhone 7もこのIP67対応である)、IPX8は防水のみである。それゆえ完全な上位互換ではないが、防水性能だけを見ると規格上は従来のKobo Aura H2Oよりも強化されたことになる。どの程度使える機能なのかは、後ほど詳しく検証する。

 なお外見上の特徴としては、これまで本体上面中央にあった電源ボタンが裏面右側へと移動したほか、LEDは前面右上へと移動するなど、配置が大きく変わっていることが挙げられる。電源ボタンの配置はKindle VoyageやかつてのFireタブレットに近く、これまでのKoboシリーズのボタン配置に慣れたユーザーからすると、若干戸惑いもありそうだ。

 画面については、ベゼルとの間に段差がないフラットなデザインとなっている。Koboシリーズで段差のない製品と言えば、かつての「Kobo Aura」以来なので、約3年ぶりの復活ということになる。段差がなくなることで本体のスリム化には繋がるが、画面を伏せた場合にキズがつきやすいほか、ベゼルに沿って指先で上下になぞることで前面ライトの光量を調整できるKoboならではのインターフェイスが使いづらくなっており、一長一短といったところだ。

現行のKoboシリーズの比較。左が本製品、中央がKobo Aura H2O、右がKobo Glo HD
7.9型のiPad mini 4(右)とは画面サイズがほぼ同じだ
Kindle Voyage(右)とは、ベゼルと画面の間に段差がないことや、自動調光機能、電源ボタンの位置、価格帯など共通項が多い
かつてのKindle DX(右)との比較。本製品も6型端末に比べるとかなり大きいが、Kindle DXに比べるとかなり小ぶりであることが分かる
厚みの比較。いずれも左が本製品で、右は上から順にKobo Aura H2O、Kobo Glo HD、Kindle Voyage、iPad mini 4。これまでKoboシリーズの弱点だった厚みが解消されていることが分かる
正面右上にステータスLEDを搭載する

 ちなみにKindleシリーズの中で、ベゼルと画面の間に段差がないことや、自動調光機能、電源ボタンの位置、価格帯など本製品との共通項が多いKindle Voyageと比較した場合は以下の通りで、画面サイズや防水機能のほか、内蔵ストレージについては本製品に分がある。いっぽうのKindle Voyageはページめくりボタンを搭載することが特徴だ。なお製品ページ上の価格はKoboが税別、Kindleが税込み表記であるため、Koboは消費税をプラスする必要がある。比較の際は注意したい。

【表2】Kobo Aura ONEとKindle Voyageの比較
Kobo Aura ONEKindle Voyage
発売月2016年9月2014年11月
サイズ(幅×奥行き×高さ)195.1×138.5×6.9mm162×115×7.6mm
重量約230g約180g
画面サイズ/解像度7.8型/1,404×1,872ドット(300ppi)6型/1,072×1,448ドット(300ppi)
ディスプレイモノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ約8GB約4GB
メモリカード-
フロントライト内蔵(自動調整)
防水・防塵機能あり(IPX8規格準拠)-
ページめくりタップ、スワイプタップ、スワイプ、ボタン
バッテリ持続時間※公称値約1カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時)数週間(明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用)
発売時価格22,800円(税別)23,980円(Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル)(税込)
備考-3Gモデルもあり

画面やメニューは細かいマイナーチェンジが多数

 セットアップの手順自体は従来のモデルと大きくは違わない。キーボードのデザインが変更されたことで隣のキーとの区切りが分かりにくくなり、ミスタイプが起こりやすくなっているのが多少気になるが、手順そのものは特に問題は感じられない。

 ただし、SSIDの入力などでキーボードを使った際、端末のレスポンスがいまいち早くないことに気が付く。本製品の最大の問題点はここなのだが、これについては詳しく後述する。なお以下のスクリーンショットにおけるソフトウェアバージョンは、本製品が4.0.7523(2016/9/2)、Kobo Aura H2Oが3.19.5761(2015/12/29)である。

パッケージ。化粧箱に入った書籍のイメージ
内箱を開封したところ。構造は簡素ながら高級感がある
同梱品一覧。ケーブルのほか、リーフレットや保証書が同梱される。過去ほとんどの製品に付属していたスタートアップマニュアル(冊子)はなくなった
パッケージから出した直後の画面。従来は有線接続が必須であるかのように誤解しかねないデザインだったが、今回は分かりやすく改められている
まずは言語を選択する
セットアップ方法を選択。本稿執筆時点ではPC経由のセットアップに不具合があり、セットアップ方法はWi-Fiのみとなっている
ネットワークの検索が実行される。SSIDが表示されたらタップしてパスワードを入力する。従来に比べてキーの領域を示す背景色がなくなっており、ミスタイプを誘発しやすい
恒例のファームウェアアップデート。今回はなぜかここでバッテリ切れとなり、充電を余儀なくされた。完了すると再起動する
楽天会員IDとパスワードを入力してログインする
ログインするとホームが表示され、合わせて最近追加または読んだ本が自動的にダウンロードされる。以上でセットアップは完了

 ホーム画面は従来と変わらぬデザインで、操作方法も違いは見られないが、メニューなどで細かなマイナーチェンジは散見される。例えばホーム画面では、左下の「ライブラリ」をタップした際に表示されるメニューが変更され、「ライブラリ」にあった「プレビュー」や、「ストア」にあった「気になる本」が削除されている。利用頻度が低いために削ったのか、機能削除など何らかの明確な意図があるのか、詳細は不明だ。

 中には気になる変更もある。それはライブラリ設定から「ダウンロード済みの本のみ表示」というメニューがなくなったことだ。これにより、ライブラリの画面で、ダウンロード済の本だけを抽出して表示する方法が失われたことになる。

 Koboの場合、ライブラリから本をダウンロードした際、Kindleのようにライブラリの先頭に移動してくれないので、ライブラリの中から改めてそれらを探す作業が必要になる。従来であれば、ダウンロード済の本だけを絞込表示することで、ダウンロードした本を探す手間を減らせたのだが、今回の変更でそれが不可能になってしまった。せめてダウンロードと同時にライブラリの先頭に移動するようにして欲しいものだ。

上が本製品、下がKobo Aura H2O(以下同じ)。ホーム画面下部「ライブラリ」の「本」が「すべての本」に改められ、また「プレビュー」は削除された。ちなみに隣の「ストア」も「気になる本」が削除されるなど変更が見られる
どちらかというと改悪と言えるのが画面上部のクイックメニューで、Wi-FiのSSIDが表示されなくなり「オン」、「オフ」のみの表記になったほか、同期を行なった年月日表記から年が省かれた。わざわざ情報量を減らす必要性を感じないのだが、何か理由があるのだろうか
キーボードの比較。背景色がなくなって見た目はスッキリしたが、境界が分かりにくくなったことに加えて、動作がもっさりしていることもあり、タップミスを誘発しやすい
左が本製品、右がKobo Aura H2O。ライブラリ設定から「ダウンロード済みの本のみ表示」、「リスト表示に表紙画像を含める」というメニューがなくなり、項目名は「ダウンロード管理」へと改められた。これによりダウンロード済の本だけを表示する方法が失われたことになる

 本製品の1つの特徴である自動調光機能についてもチェックしておこう。これはセンサーによって明るさを自動調整するという、Kindle Voyageに似た機能だが、Kindleと比較しても、画面の明るさはかなりダイナミックに変化する傾向があるようだ。

 またこれに加えて本製品ではiOSの「おやすみモード」に似た、ブルーライトをカットするモードを備えており、設定した時間帯には画面が黄色くなる。かなり露骨な電球色なので、初めて使うとかなり驚かされる。いかに前面ライトがあると言ってもE Ink端末でブルーライトを気にする必要があるかは疑問符の付くところで、不要であれば設定画面からオフにしてやると良いだろう。

左が本製品、右がKobo Aura H2O。自動調整スイッチが追加されたほか、下段に新しくナチュラルライトにまつわる設定項目が追加されている
設定画面でも、ライトおよび電源まわりの項目が増えている。また暗証番号によるロック機能も新たに搭載された
ナチュラルライトはかなり黄色く、E Inkらしからぬ色合いに驚かされる。なお前面ライトは自動調整のほか、従来と同じく画面左のエッジを上下になぞって光量を調整することも可能だ

画質は良好ながら挙動はやや問題あり

 では気になる表示性能について見ていこう。7.8型の本製品は、コミックなどの単行本をほぼ同じサイズで表示できることが特徴だ。文庫本サイズである6型は、コミックを読むにはどうしても窮屈な印象が否めなかっただけに、コミック派には朗報だろう。このサイズであれば、画面の小ささを理由にE Ink電子ペーパー端末を敬遠する必要はないと言っていい。

7.8型の画面を持つ本製品は単行本とほぼ同じサイズ
同じページを比較したところ。一回り小さいものの、違いを気にせずに読めるレベルだ

 では実際の表示品質はどうだろうか。本製品はKobo Glo HDと同じく、E Ink電子ペーパーとしては現行品でもっとも高精細な300ppiのパネルを採用している。6型のKobo Glo HDが1,072×1,448ドットのところ、本製品は1,404×1,872ドットと画素数が増えているため、同じコンテンツを表示した場合、従来よりも高精細な表示が可能になっている。

 ただしテキストの場合はまだしも、コミックの場合は元々の画像が引き伸ばされるだけなので、複数のコンテンツを試した限りでは、逆にぼけたように見えることがほとんどだ。将来的に高解像度のコンテンツが投入されればこの問題は解消するだろうが、そうなると挙動がより遅くなることが予想されるので、現実的には厳しいだろう。300ppiのKobo Glo HDと変わらず過不足のないレベル、と考えておいた方が良さそうだ。

 なおE Inkのコントラストは、従来モデルとはかなり変化している。パネルは従来のKobo Glo HDおよびKobo Aura H2Oと同じCartaなのだが、従来は薄いベタ塗りや細い線が白く飛んでしまっていたのが、本製品では細部がしっかりと描写されるようになった。競合のKindleは中間色のグレーはやや濃すぎるきらいがあるので、本製品の方がバランスが取れている印象だ。

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を、本製品のフォントの標準サイズに合わせて品質を比較した画像。左から順に、本製品(300ppi)、Kobo Glo HD(300ppi)、Kobo Aura H2O(265ppi)、Kindle Voyage(300ppi)。解像度通りの順当な品質
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)の品質を比較した画像。上段左が本製品(300ppi)、上段右がKobo Glo HD(300ppi)、下段左がKobo Aura H2O(265ppi)、下段右がKindle Voyage(300ppi)。喉元の斜線に見られるように本製品はややぼけたように表示される傾向がある。またほかのKoboシリーズに比べると頬の斜線など中間調がやや濃く出る

 と、ここまで見ると、極端な画質向上はないにせよ、画面の大きさを活かしてコミックを読むにはぴったり……という結論になりそうなのだが、積極的におすすめしにくい理由が2つある。1つは操作時のレスポンスがあまりよくないこと、もう1つはE Inkにつきものの画面の白黒反転が目立ちやすいことだ。

 まず操作時のレスポンスについてだが、ページを連続してめくる際は、現行のKobo Glo HDやKobo Aura H2Oと極端な差は感じられないのだが、試した限りでは最初の1ページ目に限って、操作を行なってから端末が反応するまでワンテンポ遅れる傾向があり(後述の動画参照)、結果的にもっさりしているように感じられてしまう。キーボードでの文字入力や、設定画面でさまざまな画面を開いて閉じる操作を繰り返す際も、この傾向が強い。

 これら挙動については、Koboシリーズだけを使い続けているユーザーはあまり気にならないかもしれないが、Kindleとの比較になると顕著な差がある。詳しくは動画で確認して欲しいが、特にKindleシリーズの中でも突出してレスポンスが高速というわけではないKindle Voyageとの比較でも、その違いは一目瞭然だ。

ページめくりの様子をKobo Glo HD(右)と比較したところ。全体的に大きな差はないが、最初の1ページのみ、本製品の方がワンテンポ遅れていることが分かる。ちなみにページを連続してめくった際の空振りは、どちらの製品でも発生している
コミックのページめくりの様子をKindle Voyageと比較したところ。レスポンスに大きな差があることに加えて、本製品はコミックにおいては設定にかかわらず1ページごとの白黒反転が強制的に発生するため、かなり目障りだ

 もう1つ、上の動画でも明らかだが、コミックで1ページごとに白黒反転するのも、漫画読みにはつらい点だ。Kindleの白黒反転は6ページに1回しか発生せず、それほど気にならないのだが、本製品は設定にかかわらず1ページごとに白黒反転が発生する上、画面の大きさが災いして余計に目障りに感じられる。

 実はKoboの白黒反転が目障りに感じられるのには、画面の「書き替わり方」の違いも影響している。ページめくりの様子を撮影した動画をコマ送りすると分かるのだが、KindleとKoboは同じE InkのCartaを採用しているものの、コミックでページをめくった際の「描き替わり方」がまったく異なる。具体的には以下の通りで、Koboは途中で次ページが完全に反転したページが挟まるため、ユーザーの目には「点滅」したように認識されやすいのだ。


Kobo:前ページ→(両ページが混在)→次ページの白黒反転状態→(両ページが混在)→次ページ
Kindle:前ページ→(両ページが混在)→次ページ


 さらにKoboの場合、ページめくりの後半まで前ページと次ページの内容が混在しているのに対し、Kindleはページめくり半ばからほぼ次ページの内容が判別できるため、結果として次ページの内容を早く把握できる。ページめくりが完了するまでの時間は実はKoboもKindleも大差ないのだが、Kindleは操作のレスポンス自体も高速なので、それらの合わせ技でKoboよりもきびきびと動くように感じられるのだ。代表的なコマを抽出したものを以下に挙げるので参考にして欲しい。

ページが切り替わる様子をコマ撮りしたもの(上段がKobo、下段がKindle。左→右の順)。Koboは3コマ目で白黒反転した次ページが表示され、そこから再び前ページの内容を表示しつつ切り替わるのが特徴。いっぽうのKindleは前ページが消えつつ次ページが現れるという奇をてらわない動きで、5コマ目でほぼ次ページの内容が表示できている

 こうした挙動面での問題に加えて、コミック用途にあたって機能面で惜しいのが、見開き表示に対応しないことだ。画面サイズがほぼ同じiPad miniでは解像度の高さを活かしてコミックを見開きで読むことも可能で、筆者もそうした使い方をしている1人なのだが、本製品は90度単位での表示回転機能を備えているにもかかわらず、コミックなどで2ページを左右に並べることはできない。正面下部のロゴを除けば横向きで使うことにも違和感のない本体デザインなだけに、なんとももったいない印象だ。

従来モデルから改良された防水機能は実用性も十分

 もう1つのセールスポイントである、防水機能についても触れておこう。本製品はIPX8規格準拠の防水機能を備えており、水がかかっても本体が故障することがない。具体的には、水深2mで最大60分の使用が可能とされている。防水機能のないKindleシリーズなどと比べた場合、これは大きなメリットだ。

 防水機能と言えば既存の「Kobo Aura H2O」も対応しているが、実際に使い比べると挙動はずいぶんと異なっている。「Kobo Aura H2O」は画面に水滴が付くとそれを感知してポップアップが表示され、水滴を拭うまで実質フリーズしたままの状態だった。つまり「水に濡れても故障しない」というだけで、お世辞にも「水に濡れても快適に操作できる」わけではなかった。

 しかし本製品では、画面に無数の水滴が付いた状態でも、ページめくりなどの基本操作は問題なく行なえる。もちろん多少の誤動作はあるし、画面全体を水の膜で覆ったり水中に浸けたままの状態ではさすがに操作を受け付けないが、水滴を拭いてほぼ乾いた状態にしなければ動作しなかった「Kobo Aura H2O」とは明らかに挙動が異なる。防水タブレット並の使い勝手を期待して従来の「Kobo Aura H2O」を買ってがっかりした人も納得できるはずだ。以下の動画で詳しく紹介しているので参考にして欲しい。

 なお本製品は画面とベゼルの間の段差がないため、段差に水滴が残ることもなく、付着した水滴を拭うのは容易なほか、端子をゴムキャップで覆う構造だった「Kobo Aura H2O」と異なりゴムキャップなしで防水性能を維持できるとのことで、取り回しも向上している。防塵機能こそなくなったものの、高く評価したいポイントだ。

IPX8規格準拠の防水機能を搭載する。余談だが、従来の「Kobo Aura H2O」で設定画面にあった「水滴の付着を自動検知」という項目は、本製品では省かれている。ユーザーに利用するか否かを選択させなくて済むほど、実用性が向上したと解釈して良さそうだ
従来の「Kobo Aura H2O」で、最初に乾いた状態でページめくりを確認した後、画面に水をかけ、再びページめくりを行なおうとする様子。ページをめくることができず、反応しても意図しない動きをする
上記動画と同じ手順を本製品で行なっているところ。こちらは多少の誤動作はあっても、実用レベルでページをめくれていることが分かる
ただし水に完全に浸かった状態では、いかに本製品と言えども操作は不可能

機能は文句なしだが使い勝手と品質面が課題

 以上ざっと使ってみたが、大画面、高解像度、薄型軽量、防水……などなどセールスポイントとして挙げられている箇所はどれも魅力的であり、実用性も高い。中でも画面の大きさはコミックを中心としたユーザーが待望していたもので、競合製品が事実上存在しないことから、画面サイズを重視して製品を選ぶのであれば、本背品が唯一の選択肢ということになる。

 ただし前述のように、これらさまざまな利点よりも挙動のもっさり加減が目立つ現状から、積極的に高い評価は付けにくい。コミックではなくテキストコンテンツであれば体感的にもかなり緩和されるのだが、本製品の大きな画面サイズはコミックでこそ活きるものであり、それらが決して快適でないのは、非常にもったいない印象だ。

 また、ライブラリの奥深くにある本を探しにくかったり、本のソート順がおかしかったりと、多くの本を快適に管理し、呼び出して読むための仕組みには、依然多くの問題点がある。この辺り、ライバルのKindleもツッコミどころは山のようにあるのだが、いかんせんKoboのレベルが低いため、比べれば比べるほどKindleがマシに見えてくるのが実情である。筆者は常々、スペックなどで可視化できない部分へのこだわりこそがその製品の実力であり、ファンを増やすための秘訣だと思っているのだが、そうした意味でもKoboにはもう少し、ユーザビリティの向上に注力して欲しいと思う。

 なお本製品は、本稿執筆時点ではPC経由でのセットアップが行なえない不具合があるほか、ライブラリ内に大量のコンテンツがあると一部が読み込めなかったり、また筆者は未確認だがバッテリが異常に消耗する症状があったりと、不具合らしき症状はネット上でも多数報告されている。かつてのKobo Touchほどではないにせよ、検証が甘いまま世に出てしまった印象が強い。本稿執筆時点で本製品は品切れ中だが、こうした品質面が解消されたことを確認してから入手するのでも遅くはないというのが、今回試用した結論だ。早期の改善に期待したい。