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Amazon「Fire HD 8」

~プライム会員なら16GBモデルが8,980円で入手可能な8型タブレット

Amazon「Fire HD 8」。16GBモデルと32GBモデルが用意される。従来モデル(第5世代)は4色のラインナップだったが、今回のモデル(第6世代)はブラックのみ

 「Fire HD 8」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonが提供するデジタルコンテンツを楽しめる8型タブレットだ。従来の同名モデルに比べてメモリが1.5倍に増量される一方、価格は同じ16GBのモデルが21,980円から12,980円へと40%以上もの値下げを実現し、さらにプライム会員はクーポン利用で4,000円引きで購入が可能という、高性能さとリーズナブルさを両立したモデルだ。

 Amazonのタブレット「Fire」シリーズは、Androidをベースとしながらも、Amazonのサービスに特化した設計を特徴としている。Google Play ストアを公式にはサポートせず、純正のアプリストアはお世辞にもラインナップが充実しているとは言えないので、その一点において敬遠するユーザーも少なくないだろうが、Amazonはプライムビデオやミュージック、Kindle Unlimitedなど、ここ1年前後で新サービスを続々と追加しており、これらがあればほかは不要というユーザーにとっては、1台でそれらをまかなえるFireシリーズは、その親和性の高さとコストパフォーマンスの良さにおいて、魅力的な存在と言えるだろう。

 特に今回のモデルは、同社が「基礎から再設計した」と銘打っていることからも分かるように、従来の第5世代モデルとはまったく特性の異なるモデルに仕上がっている。これにはちょっとした「事情」があるようなのだが、それについてはのちほど詳しく紹介するとして、従来モデルのおよそ40%引き、クーポン利用でなんと60%引きとなる圧倒的な安さは、新規ユーザーはもちろん従来モデルを所有しているユーザーにとっても見逃せないはず。今回は従来の第5世代モデルのほか、継続して販売される7型のエントリーモデル「Fire」との比較を中心に本製品をチェックする。

製品外観。カメラの配置を見る限り、通常では縦向きで使うことを想定した設計のようだ
横向きにした状態。スピーカーは向かって下部、左右にレイアウトされており、動画視聴時はこのスタイルになる。電子書籍ではかなり横長になるため違和感がある
第5世代モデルから搭載されたmicroSDスロットを引き続き搭載する。隣には背面カメラがある
スピーカーは側面に2基搭載。横向きにした場合に左下と右下に来る合理的な配置だ。これらの意匠は第5世代モデルを継承している
背面のロゴはモールド加工。従来モデルの特徴だったピアノ調の塗装ではなく、Fireと同じ梨地の表面処理が特徴

メモリは50%増加も、一部スペックは従来モデルから先祖返り

 まずはスペック周りの比較から。

Fire HD 8(第6世代)Fire HD 8(第5世代)Fire(第5世代)
発売年月2016年9月2015年9月2015年9月
サイズ(最厚部)214×128×9.2mm214×128×7.7mm191×115×10.6mm
重量約341g約311g約313g
CPUクアッドコア最大1.3GHzクアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×2クアッドコア1.3GHz×4
メモリ1.5GB1GB1GB
画面サイズ/解像度8型/1,280×800ドット(189ppi)8型/1,280×800ドット(189ppi)7型/1,024×600ドット(171ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ16GB(ユーザー領域11.1GB)
32GB(ユーザー領域25.3GB)
8GB(ユーザー領域4.5GB)
16GB(ユーザー領域11.6GB)
8GB(ユーザー領域5GB)
バッテリ持続時間(メーカー公称値)12時間8時間7時間
microSDカードスロット
価格(発売時)12,980円(16GB)
15,980円(32GB)
19,980円(8GB)
21,980円(16GB)
8,980円
カラーバリエーションブラックブラック、ブルー、オレンジ、ピンクブラック

 Fireシリーズは年1回のモデルチェンジのたびに、筐体デザインを含めて仕様が一新されるのが特徴だ。従来の「Fire HD 8」(第5世代)は、Fire史上最薄とされる厚み7.7mm、さらに11ac対応の高速Wi-Fiが特徴だった。

 ところが今回の第6世代モデルは、厚みが9.2mmに増え、またWi-Fiは11ac非対応(11a/b/g/n)と、部分的に先祖返りしている。廉価なタブレットでは5GHz非対応の製品も多く、その中で11ac対応というのは明らかにオーバースペックだったので、11nに対応していれば実用上の問題はないが、このようにスペックが部分的に後退していることは押さえておく必要がある。重量も311gから341gへと増えており、8型のAndroidタブレットと比較して軽量な部類だったのが、今回のモデルチェンジで平均的な値となり、特徴が失われた格好だ。

 一方でメモリは「50%増強」とあるように、1GBが1.5GBへと増えている。2GBには及ばないものの、これが後述する操作のスムーズさに大きく影響していると考えられる。またなによりも、従来は8GBモデルで19,980円だったのが今回は16GBで12,980円と、従来の第5世代モデルの後継として捉えた場合、驚くほどの低価格化を成し遂げている。バッテリの長寿命化も特徴で、従来に比べると明らかに減少のスピードが緩やかなのも、本製品の特徴と言っていいだろう。

従来の第5世代モデル(右)との比較。幅および高さはまったく同一だ。カメラの配置なども違いはない
背面の比較。ピアノ調の塗装が特徴だった従来モデル(右)から一新されている
7型のFire(右)との比較。縦横比はFireの方がやや細長く、本製品では縦に4つ並ぶアイコンがFireでは5つ並ぶ
背面の比較。ロゴのモールド加工、梨地の表面などそっくりだ
7.9型のiPad mini 4(右)との比較。画面サイズはほぼ同じながら縦横比が異なるため見た目はまったく異なる
上記3製品の厚みを本製品と比較したところ。写真右側、上から第5世代Fire HD 8、Fire、iPad mini 4。Fireとはほぼ同等だが、ほかの2製品にははっきり分かるほど差をつけられている

実はFire HD 8ではなく「Fire 8」?

 では早速製品を見ていこう。明るいオレンジのパッケージは従来同様だが、第5世代のFire HD8/10で採用されていた箱ではなく、エントリーモデルのFire(7型)と同じフック掛け対応のフラストレーション・フリー・パッケージを採用する。またボディは従来のピアノ調の塗装とは正反対のマット調の質感が特徴であるほか、上部の電源ボタンやコネクタの配置は、従来の第5世代Fire HD 8よりもFireそっくりだ。

 と、ざっとチェックしてみて、この製品は従来の第5世代Fire HD 8の後継というより、Fireの8型と表現した方が良いことに気づく。おそらくこれまでFire系列とFire HD8/10系列は異なるベンダーが生産していたのを、今回からは8型モデルもFire系列のベンダーが生産するようになり、質感やボタン類の配置がFireを踏襲することになったのだろう。そう考えれば、一部スペックが先祖返りしていることや、パッケージの仕様がFireとそっくりであること、またカラーバリエーションが廃止されたことも説明がつく。

 この説を裏付けるもう1つの証拠として、端末オプション欄に書かれた、本製品の端末モデル名が挙げられる。ここには本製品のモデル名である「Fire HD 8」ではなく、実際には存在しない「Fire 8」というモデル名が表示されている。おそらく当初はこの型番で開発がスタートし、リリース前に「HD」に変更されたのではないだろうか。確かにこの製品、Fire 8として見ると仕様がパワフルすぎ、従来のFire HD 8(第5世代モデル)との差もなさすぎることから(一部スペックが先祖返りするとはいえ)Fire HD 8に繰り上がったのも理解できる。この仮説、いずれも状況証拠でしかないが、大きくは外していないのではないだろうか。

箱に収められていた従来モデルとは異なり、第5世代Fireと同じフラストレーション・フリー・パッケージ仕様
裏面。従来モデルでは英語表記の上に日本語シールが貼られていたが、本製品では直接印刷されている。相応の生産ロットが見込まれるということだろうか
ミシン目に沿って開封する
同梱物一覧。各国語版の保証書とスタートガイド、USBケーブル、USB-ACアダプタが付属。この辺りは従来と同様だ
USB ACアダプタは従来モデルとは異なり、第5世代Fireと共通する形状
端末オプションの画面。端末モデルの欄に、「Fire HD 8」ではなく「Fire 8」というモデル名が固定値として表示されている。開発の途中段階まではこの型番だったのだろうか

 次いでセットアップ手順について見ていこう。セットアップ画面のデザインはオレンジを基調とした見慣れない画面へと変更されている。これはFire OSのバージョンアップによるもので、従来モデルを初期化して再セットアップした場合でもこれと同じ画面になるのだが、多くの人にとっては初めて見る画面だろう。フロー自体はとくに違いはなく、Amazonのサイトで購入した場合はアカウントが登録済みなのも従来通りだ。

セットアップ画面は内容こそほぼ同一ながら、従来モデル(右)とはデザインが一新されている。まずは言語を選択
Wi-Fiが検索される。特に従来と相違点はない
Wi-Fiのパスワード入力画面。新しく追加された詳細オプションからはプロキシおよびDHCPのオンオフが設定できる
Amazonのサイトから購入した場合は名前がすでに登録されておりそのまま続行できる。右の従来モデルはいったん初期化しているため名前を入力する必要がある
クラウド上にバックアップが存在する場合は復元するか否かを尋ねられる
オプション画面。新たに「位置情報サービスを有効にする」という選択肢が追加されている。ちなみに説明にあるマップなるアプリは本稿執筆時点では存在していない
SNSへの接続画面。デザイン以外の相違点はないが、詳細な説明が追加されていることが分かる。この画面でセットアップは完了

画面デザインは変更なし。従来に比べて操作のサクサク感が際立つ

 Fire OSを共通して採用するFireシリーズは、製品ごとの大きな操作性の違いはなく、本製品においてもそれは例外ではない。ホーム画面から左右スワイプで切り替えられる「本」、「ビデオ」、「ゲーム」などのカテゴリは従来と同じだ。

ホーム画面。従来から変更はなく、ウェブ(Silk)やドキュメント、写真はここからアクセスできる。新しく入手したコンテンツがある場合はアイコン上段にサムネイルが表示される
最近使用したコンテンツは、ホーム画面の左側に独立した画面として表示される
「本」画面。上段には購入済みコンテンツが、その下にはおすすめ商品などがジャンル別に表示される。ここでは従来モデル発売時にはまだサービスインしていなかったKindle Unlimitedのおすすめ商品が表示されている
「ビデオ」画面はプライムビデオを含むAmazonビデオのおすすめおよび視聴中コンテンツなどが表示される
「ゲーム」画面では、購入済みゲームがあれば上段にそのアイコンと他のプレイヤーが出した注目の実績、下段にはおすすめ商品が表示される
「お買い物」画面では、Amazonストアで過去に購入した製品やおすすめ商品、ベストセラーなどが表示される。カテゴリの中でここが唯一の非デジタル系ストアとなる
「アプリ」画面では、購入済みのアプリのほか、ベストセラー、カテゴリ別のおすすめアプリなどが表示される。ここも特に従来との違いはない
「ミュージック」画面。従来モデル発売時にはまだサービスインしていなかったプライムミュージック関連のメニューが表示される
画面を上から下にスワイプすると、Androidとほぼ同じデザインと機能を持つ通知領域が表示される。従来あった「Bluetooth」がなくなり、同じ位置に「Blue Shade」が追加されている。なおBluetoothは機能自体は変わらず搭載されている
設定画面。項目も含めて従来との違いは見られない
ロック画面などに表示されるキャンペーン情報は、設定でオフにすることも可能。Kindle(のキャンペーン情報ありモデル)にはない機能だ

 もっとも、画面の見た目は同じでありながら、しばらく使ってみると、従来の第5世代Fire HD 8に比べると明らかに挙動がきびきびしていることに気づく。従来モデルは「本」や「音楽」、「動画」といったタブを切り替えたり、上下スクロールを行なうたび、ワンアクション待たされるイメージが強かった。当時のレビューでは「バックグラウンドで何らかの処理を行っている際にレスポンスが停滞する感覚」と表現しているが、何をするにもひっかかる感覚があり、使う上でストレスの原因となっていた。

 しかし本製品ではそれらのひっかかる感覚が、皆無と言っていいレベルに改善されており、使っていてもストレスの度合いがまったく異なる。前述のメモリ容量の増加、およびチューニングの成果だと考えられるが、この点だけでも、従来の第5世代モデルのユーザーは、本製品に乗り換える価値があるといっていいだろう。

 ただ面白いことに、ベンチマークテストを行なうと、こうした体感速度の向上はあまり反映されない。本製品の性能は、エントリーモデルのFireよりは上ではあるものの、従来の第5世代Fire HD 8に比べるとほとんどの項目が低めに表示される始末だ。新しいFire OSにアップデートした従来の第5世代モデルは依然として操作時の引っ掛かりがあるのだが、そうした症状もこのベンチマークの結果には現れていない。そんなわけで体感速度とはかなりの乖離があるのだが、公正を期すため、それら結果を掲載しておく。

【表1】Ice Storm Extremeによる測定結果
Fire HD 8(第6世代)Fire HD 8(第5世代)Fire(第5世代)
Score359865553328
Graphics Score306462592893
Physics Score921878557030
Graphics test 116.7FPS34.9FPS13.8FPS
Graphics test 211.1FPS22.3FPS11.6FPS
Physics test29.3FPS24.9FPS22.3FPS
【表2】Quadrant Professional Ver.2.1.1による測定結果
Fire HD 8(第6世代)Fire HD 8(第5世代)Fire(第5世代)
Total690688135542
CPU208342877217879
Mem535385363308
I/O586437643703
2D413439424
3D206525532395

300ppiの製品には及ばないが実用レベルの表現力。液晶はやや青みが目立つ

 続いて解像度をチェックしよう。ここでは以下の4製品について、テキストおよびコミックの解像度を比較してみたい。テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「大東京トイボックス 10巻」で、テキストの文字サイズはおおむね文庫本と同等になるよう合わせている。

・上段左:本製品(8型/1,280×800ドット/189ppi)
・上段右:第5世代Fire HD 8(8型/1,280×800ドット/189ppi)
・下段左:第5世代Fire(7型/1,024×600ドット/171ppi)
・下段右:iPad mini 4(7.9型/2,048×1,536ドット/326ppi)

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。解像度の差をそのまま反映したディティール。本製品(上段左)と従来モデル(上段右)は色味を除いて違いはないことが分かる
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)の比較。こちらもやはり解像度そのままのディティールの違いがある。細部の表現力は300ppiのiPad mini 4(下段右)にはまったく及ばないが、それでも171ppiのFire(下段左)に比べるとまだ健闘している

 以上のように、解像度の違いがそのまま反映されており、特筆すべき点はない。すなわち、300ppiオーバーの製品には及ばないが、エントリーモデルのFireに比べると表現力の差は歴然としており、テキストなら文庫本と同等のフォントサイズ、およびコミックは単ページ表示なら、実用レベルにあるという結論になる。ただし見開き表示にするとここからさらに表示サイズが小さくなるため、とくにコミックでは実用的ではないだろう。

 ところで、上2つの比較画像を見れば一目瞭然なのだが、本製品は画面全体がやや青みがかっているのが特徴だ。かつてのKindle Fire HDX 7のような目に刺さるような青みではないものの、従来モデルと並べた場合、画面の色だけで機種を見分けられるほどの違いがある。用途からしてあまり色味にこだわる製品ではないが、ほかのタブレットと併用している場合は、気になることがあるかもしれない。

左が本製品、右が従来モデル。こうして左右に並べると、本製品の方が青みがかっていることが分かる
ブルーライトをカットする「Blue Shade」機能。最近はさまざまなタブレットや電子書籍端末がこの機能を搭載しており、本製品も色の濃淡の調整のほか、スケジュール起動などが設定できる

 なお、画面の色味に関係したところでは、本製品はブルーライトをカットして目の疲れを緩和する「Blue Shade」機能を搭載しているのが特徴の1つだ。オンにした状態ではかなり濃い目の黄色だが、実際に使っていると目が慣れてくるのでそれほど違和感はない。バッテリ駆動時間が延びる利点もあるので、ライフスタイルに合わせて活用すると良いだろう。

Kindle本のメモリカードへの保存が可能に。最大200GBを持ち歩き可能

 ところでFire OSのバージョンアップによって新たに可能になったのが、メモリカードへのコンテンツの保存だ。従来モデルが発売された時点では、カードスロットこそ搭載されていたものの、保存できるのは動画や音楽、写真などであり、電子書籍を保存することは不可能だった。

 その後のバージョンアップにより、これらが可能になったため、大量の電子書籍をメモリカードに保存して持ち歩くという使い方が可能になった。最大容量である200GBのメモリカードを追加すれば、これまでとは比較にならない大量の本をローカルに保存し、電波状況のよくない浴室内や外出先などで、ネットワークにつながずとも読むことができる。もちろん動画や音楽についても保存できるので、プライムビデオで視聴予定の動画をメモリカードにダウンロードしておけば、こちらもネットワーク接続なしで視聴できる。

 これらはFireシリーズのこれまでの使い方を激変させる目玉機能なのだが、細かく見ていくと、まだ作り込みが甘いと感じる箇所もなくはない。例えば保存先にメモリカードを指定していて、容量がいっぱいになった場合、その旨をきちんと知らせてくれるのは良いのだが、自動的に保存先を内蔵メモリに振り替えるなどの対応は行なってくれない。

 また、長期間使用されていないコンテンツをクラウドに退避させる「インスタントクラウド保存」機能は、あくまでもローカルからクラウドへの移動だけで、内蔵メモリとメモリカードの間を相互に移動する機能は用意されていない。利用頻度を考えるとそれほど大きな問題ではないが、将来的にこれらがサポートされるようになれば、ヘビーなユーザーにとっても、使い勝手はさらによくなるだろう。

Kindle本などをメモリカードに保存できるようになった。最大200GBのmicroSDカードに対応するので、これまでとは比較にならない量のコンテンツをローカルに保存できる
ビデオや音楽についてもメモリカードに保存できる。とくにビデオなどは電波状況の悪い場所での視聴には重宝するだろう
ストレージの設定画面。ここで保存場所を内蔵メモリからメモリカードに切り替えられる。インストール済みのアプリをメモリカードに移動する機能もある
使用量も参照できる。ビデオや本といったカテゴリーごとに容量を表示できるので、コンテンツを削除して容量を空けたい場合などの参考になる
容量がいっぱいになるとこのような表示が出る。内蔵メモリからメモリカード、あるいはその逆にコンテンツを移動する機能はないようだ

画面のギラツキは対策が必須。スピーカーも割り切りが必要

 以上のように、かなり使える製品というのが筆者の評価なのだが、実際に使っているうちにやはり相応の品質だと感じられる部分もなくはない。ここまで触れられなかった3つのポイントを挙げておこう。

 1つは画面のギラつきだ。本体背面の滑りやすいピアノ調の塗装は廃止されたものの、画面は依然としてグレア調で外光の映り込みは激しく、動画の鑑賞時にはかなり目障りだ。指紋もつきやすいので、利用にあたってはこれらを抑える保護フィルムなどが、実質必須になると考えた方がいい。

 またスピーカーは、本体を横向きにした際に本体下部の左右にきちんとレイアウトされるのは良いのだが、音質はさすがに良いとは言えない。本体の素材のせいか、プラスチック感の強い空間で反響しているような、こもった音になる。内蔵スピーカーはあくまでおまけということで、イヤフォンないしはヘッドフォンを使った方が良いだろう。ここもある程度の割り切りが必要とされる部分だ。

 やや困りモノなのが音量調整で、音量が「1」でもそこそこ音が大きく、かといって1段階下げると音量がゼロ、つまりミュート状態になってしまう。筆者の知る限り、これは海外製のタブレットによく見られる傾向で、現状では音量調整機能を内蔵するイヤフォンやヘッドフォンを使って対応するしかない。今後のモデルチェンジではぜひ改善をお願いしたいポイントだ。

クーポン利用で4,980円の「Fire」と比べてもコストパフォーマンスは本製品が上

 以上のように、気になる点が皆無というわけでは決してないが、利用に支障をきたすような致命的な欠点があるわけではなく、価格を考えるとかなり優秀な製品だ。単に安さだけを重視するならば、クーポン利用で4,980円になるFireという選択肢もあるが、一定の性能を担保しつつ、クーポン利用で8,980円で入手できる本製品は、コストパフォーマンスの高さではFireを上回るといっていいだろう。

 では実際にどんなシーンにフィットするだろうか。例えば現在1台のタブレットを外出時と自宅向けとで兼用している場合、自宅向けに本製品を導入してAmazonのサービスを利用するための専用機とし、従来のタブレットを外出専用にするというのは、良い活かし方だろう。また1台のタブレットを家族で使い回している場合に、本製品を追加して1人1台体制にするのも悪くない選択肢だ。Amazonでの買い物履歴や電子書籍・動画などの購入状況を、家族に見られたくないという人にとっては、限られた予算で入手可能な本製品は、格好の候補ということになる。

 なお新規購入ではなく、Fireおよび第5世代Fire HD 8からの買い替えに値するかという問いに対しては、ともに「Yes」というのが筆者の意見だ。Fireと比較すると解像度の差は一目瞭然であり、第5世代のFire HD 8と比べると動作のひっかかりが明らかに減少している。もちろん買い替えにはコストも掛かるので利用頻度にもよるだろうが、これらの製品を日々活用していて欠かせないのであれば、本製品に買い替えることで、より快適なAmazonサービスの利用が可能になるはずだ。