週末カジュアルPCゲーム部
生と死がテーマの重厚なストーリーと、ほどよいデフォルメのキツネオープンワールド「THE FIRST TREE」
2021年5月1日 09:05
- STEAM版:1,000円
- EPIC Games Store:980円
今回紹介するのは、2017年にリリースされたインディーズの3Dアクションゲーム「THE FIRST TREE」。日本語字幕に対応し、PS4やSwitchなどのゲーム機でもリリースされている。開発、発売はアメリカのゲームクリエイターDavid Wehle氏だ。
主人公はキツネの姿となり、オープンワールドのフィールドを探索して、光の玉や光の柱に触れることで、父と息子の物語が展開する作り。物語の展開時には、人間の男性ジョセフが自身の父親との若い頃の想い出や出来事を、レイチェルという女性に語る事で物語は進行していく。
キツネによるフィールド操作にリアリティはないものの、かわいらしいキツネのアクションは見ていて癒される。アクションについても、二段ジャンプのタイミングがちょっとシビアな場合がある程度で、普通にプレイしていればすぐに慣れるだろう。
本作の最大の特徴の1つが、敵とのバトルが一切ない点だ。本作は父と息子の物語を楽しむのが主軸となっているため、キツネとタヌキのバトルなどは特に用意されていないので、「オープンワールド=敵とのバトル」という図式が苦手な人でも楽しめる。一方で、物語の内容は「生と死」という、比較的重めの内容がテーマとなっているため、注意が必要だ。
2017年にリリースされ、各家庭用ゲーム機にも移植された異色のオープンワールドを早速プレイしてみることにしよう。
ゲーム開始前にまずはオプションの設定項目をチェック。解像度は出力ディスプレイをチェックして自動で変化するので、今回は4,096×2,160ドットの4K解像度設定でプレイした。画質設定はデフォルトで上から2番目の「Very High」だったのでこちらも最上位の「Ultra High」に変更。アンチエイリアスの設定もデフォルトはオフだったので、こちらも「8x」に変更している。
その他に画質に関する設定はないため、「字幕」のチェックボックスのみ有効にしてゲームをスタート。暗い闇が開けるとそこには1匹のキツネが横たわっていた。
ゲームの操作はシンプルで、キツネの操作は前後左右に移動し、マウスや右アナログスティックで視点を変更、ボタン類はダッシュと通常歩行の切り替え、ジャンプ、アクションの3種類で、ジャンプは2段ジャンプが可能、アクションボタンはフィールド上の光の柱に向かった際に出現する、土に埋まった何かを掘り起こすのに使用したり、その場にいる何かに対してアクションするボタンとなっている。
謎解き要素も用意されているが、謎というほどのものではなく、越えられない岩や壁をどうやって越えるか、といった程度で、分かりにくい謎解きについては、その周囲にヒントがビジュアルで提示されるため、あまり迷うことなく進められる。
一方で、進む方向が明確なうちはいいのだが、プレイ時には何度か進むべき道が見えなくなる場合があった。特にオープンワールドにおいて、多少登りにくい山や崖をジャンプ連打で無理矢理登るような無理なプレイをしている人の場合、本来行けない場所に到達してしまい、最終的に目に見えないシステムガードの壁に遮られてしまい、それが理由で行くべき道を見失ってしまう場合があるので、無理なく行ける範囲での移動を心がけた方がいいだろう。
また、ゲームが詰むような難解な仕掛けは用意されていないので、行き先が分からなくなったら、とりあえずフィールド内で今移動できる範囲をウロウロして回るのがいいだろう。
システム的にはほどよくデフォルメされたキツネを操作して、トゥーンレンダリングによる木々や草原、岩山などの野生のフィールドをうろつき回るだけでも十分に癒される。ほかの動物が出現する場合もあるが、基本的にプレーヤーと関わる動物や植物はほとんど登場しないので、見かけても眺めて、その動きを観察することくらいしかできない。
フィールドはストーリーの進捗状況毎にステージが切り替わるような作りになっているが、いずれのステージも敵は出現せず、特に時間制限もないため、気に入ったフィールドがあったら、その中を延々と走り回って遊ぶといった楽しみ方もできる。
また、基本的に野生のフィールドだが、たまに建造物や家具、雑貨などの人工物が転がっている場合がある。これらを使った、なるほど、と思わせる演出としては、こうした人工物が出てくる場合、その手前の物語の中でこうした人工物が登場しており、語られれた内容とリンクした人工物が登場する場合が多いことだ。
例えば、想い出話の中で、15歳の時に家の車を黙って乗り回しているところで、警察に出くわして捕まった話が出た時は、その周囲にパトカーの残骸のような物が転がっていた。また、掘り起こした雑貨と想い出話がリンクしているといったように、物語に関連した人工物が大自然のフィールドに不自然に転がっているところに、本作の物語の真実が隠されている。
物語の根幹のテーマは「生と死」だ。物語を進めていくと、ジョセフとその父親との関係や、父親がどうなったか、そして話し手のジョセフと聞き手のレイチェルとの関係性なども明らかになってくる。ストーリーがメインのゲームのため、これ以上のネタバレはやめておくが、人によっては「生と死」について深く考えさせられるだろうし、ジョセフとレイチェルの関係を知って思わず涙がこぼれてしまう人もいるだろう。筆者はジョセフに対するレイチェルの言葉でちょっと画面が見えなくなってしまった。
物語の内容及び長さという点で言えば、本作はそれほど長大なストーリーではない。言ってみれば短編集のうちの1本くらいの内容だ。ゲームとしても、進むべき道が明確なら1時間半くらいでクリアできそうな内容となっている。文字の代わりにゲームのビジュアルを使った演出を入れることで、非常に見応えのあるストーリーとして昇華されている点については素直に賛美を送りたい。
また、BGMについてもピアノ調の物静かなトーンのBGMが常にかかっており、大自然の雰囲気を音でも満喫できるいい音源が使われている。音については大自然の風の音や草原の葉っぱのこすれた音、木々の囁きなど色々な音が鳴らされており、大自然の再現度はかなり高い印象だ。
一方でゲームとして見た場合、光の柱はストーリーに直結する重要なチェックポイントだが、フィールドのいたるところに落ちている光の玉は獲得数がカウントされるのみのため、この手の収集物マニアの人たちは、是非全フィールドの全光の玉の完全制覇を目指してほしいところだ。本作のフィールドはかなり広大な上に、光の玉の取得に関してはジャンプアクションのテクニックが必要な場面も多い。1度ストーリーをクリアした後、フィールド内の光の玉集め目的で2回目をプレイしてみるのもアリなくらい手応えがある。
とはいえ、本質が物語であることにかわりはない。ちょっと手軽に物語を楽しみつつ、ほどよいデフォルメされたキツネのジャンプアクションをライトに楽しむという点においても本作は非常に魅力的な1本に仕上がっている。ゴールデンウィークの癒しの1本として楽しんでみるのも悪くはないだろう。
本作は2017年リリースと少し前のソフトで、画面デザインもトゥーン調のビジュアルということもあってか、あまり負荷は高くない。今回4K解像度で全ての表示設定を最高品質の状態でプレイしてみたが、ミドルレンジのGPUで、60fps前後のフレームレートを維持できた。ミドルレンジ以上のGPUを搭載したゲーミングPCなら快適に動くことは間違いない。
RAM:8GB
GPU:N/A
ストレージ容量:N/A(実測値2.25GB)
RAM:DDR4 16GB
GPU:GeForce GTX 1660(6GB)
ストレージ:TS256GMTE220S