山田祥平のRe:config.sys

スマートデバイス、その新しいコーデ

 スマートフォン、タブレット、モバイルPCが現代スマートライフの3種の神器として認識されるようになって久しい。タブレットとスマートフォンの中間のファブレットなどという分類もある。だが、Microsoftも、その全ての画面でWindowsを提供しようとするなど、その境目は曖昧になりつつある。実用の先にあるのはファッションコーディネートだ。

スマートデバイスのサイズと目方

 デバイスは大中小を揃えておくと便利だ。例えばモバイルPCといった限られた範疇でも、15型超、13型前後、10型前後といった具合の3種類があれば完璧だ。

 その日の用事の種類に応じてどれか1台を持ち出す。会議室での長時間のミーティングが想定されるなら、机の上で使えることが保証されるので12型、数泊の出張で宿泊先のホテルの部屋での作業が必要ならより広い画面を求めて15型超、移動が多く電車の中での使用など、ある程度の機動性が求められるなら10型といった具合だ。以前は複数台のPCの内容を同期させるために、さまざまな工夫が求められたが、今は、クラウドサービスが充実してきたことで、ほとんど何も考えずに複数台運用ができるようになっている。

 同じような理由で、スマートフォンも大中小を揃えておき、その日に応じて使い分けると便利なのにと思う。スマートフォンだってPCと同様にクラウドを介して内容を同じにできるからだ。たとえば女性なら、ドレスアップしてパーティにでもでかけるなら最低限のことができる小さなスマートフォンがいいが、日常的には中サイズのものが使いやすく、旅行などでは地図を参照したりするために大きいサイズのものが欲しいと考えるのではないか。

 でも、SIMの入れ替えというのは結構面倒くさい。さらにLINEのようなサービスを日常的なコミュニケーションツールとして使っていると、端末を取っ替え引っ替えするのが難しくなってしまう。別の端末でログインしたとたん、前の端末のデータが消えてしまうからだ。

 ただ、この大中小の原則は、スマートフォンやタブレットなど、PCでの作業の多くが他のデバイスでもできるようになって、その用途の区分けが曖昧になってきている今、ちょっと考え直さなければならないとも思っている。もちろんPCは汎用で万能なので、それさえあればほとんどの作業に困らない。まさに大は小を兼ねる。

大きくなれば小さなもの、小さくなれば大きなものを求める勝手

 個人的にはスマートフォンは大きなものに限ると思い、ずっと「GALAXY Note」を使ってきた。途中、一回り小さな「GALAXY S」に鞍替えした時期もあるが、そのあとまたGALAXY Noteに戻している。この5.7型画面は絶妙なサイズだと思ってきたし、今もそれを否定するわけではない。

 でも、最近は、どうせPCを持ち歩いているのだから、スマートフォンはもう少し小さくてもいいのかなとも思うようになってきた。4型では小さすぎたが、今は5型程度が主流になってきている。本体サイズをコンパクトにするために、搭載バッテリ容量が犠牲になって、バッテリ運用時間が落ちる懸念があるが、それも、昨今のプロセッサの進化や、省電力機構によって1日の使用ではほぼ不便を感じなくなってきている。

 モバイルバッテリは欠かせないという方も多いようだが、それは、全てのことをスマートフォンで済ませようとするからだ。ぼくは、ちょっとやっかいだと思う作業についてはスマートフォンで始めたとしても、すぐに白旗をあげ、モバイルPCを開いてしまう。結果として素早く作業が終わると同時にスマートフォンを使う時間も短くなる。だから、バッテリのことではあまり困らなくなってきている。現時点で常用しているGALAXY Note 3は、もうすぐ2年目を迎えるくらいのロートルになってしまった古い機種だ。バッテリが交換できるというメリットが捨てがたく、予備のバッテリをいつもポケットに忍ばせているのだが、その出番がくることはめったにないくらいだ。それに、モバイルPCはいざとなれば頼もしい大型モバイルバッテリでもある。

 今、スマートフォンは大型化の一途をたどり、4型前後の画面を持つものは珍しくなってきているが、「iPhone 6」が以前よりも大きなものとなり、さらに大きなiPhone 6 Plusが出たことで、その反動として、もっとコンパクトな以前のiPhoneが再認識されているようにも感じる。

気付きを与えるWatchデバイス

 携行するスマートデバイスの組み合わせにおける画面サイズには、何か関係があるんじゃないかと思うこともある。例えば大きなPCを携行している日はカバンも重くなる。その出し入れが億劫で、どうしてもスマートフォンに作業を頼りたくなる。いろいろなことをスマートフォンでやろうとするから、どうしても画面サイズは大きい方がいいと思うようになる。

 一方、機動性の高いモバイルPCを携行している日は、その出し入れを躊躇しないから、スマートフォンは気付きを与えてくれるだけでいい。何があったか通知されれば、それに対してPCで反応すればいいわけだ。Android Wearを入手して以来、スマートフォンの通知が腕に届くようになり、ポケットの中のスマートフォンさえ取り出さずに、腕で気が付き、PCを取り出すということも多くなった。もうすぐ「Apple Watch」も発売されるようだが、iPhoneユーザーが、このデバイスをどのように使っていくのかが気になっているところだ。

「これだけデバイス」をやめてみよう

 結局のところ、今の時代、すべてを1台にまとめる「これだけデバイス」というのは考えにくい。やはり、デバイスは組み合わせて使ってこそ、いろんなシーンで活きてくる。いつもいうようにデバイスは掛け算で考えた方がお得だ。

 人間は、特定の場所に丸1日中いるわけではないし、オンとオフもある。さらに1日の中でも、通勤途上に業務中、そしてアフターファイブと状況は変化する。それに対応するにはやはり最低でも2種類のデバイスが必要だし、それらを連携させるだけで世界は変わる。

 世の中の一般的な人々は、たぶん、モバイルPCの時代を経験しないで、いきなりスマートフォンを使うようになり、これだけで十分だと思うようになったんじゃないだろうか。アーリーアダプタ層は、実際に使ってみたらあまり十分じゃなかったので、少し大振りのタブレットに移行したかもしれない。さらに、タブレットをPC的に使いたいと思うようになり、外付けのキーボードをいっしょに持ち歩くなどで、モバイルPCとスマートフォンの組み合わせよりも、総重量が増えてしまっているようなケースも散見される。これでは本末転倒だ。

 しかも、多くの場合、スマートデバイスは常に買い換えの対象として考えられる。でも、本当は、壊れて使えなくなってしまったのでもない限り、愛用してきたデバイスをリストラする必要なんてないのだ。新しいデバイスは買い増しの対象として考えればいい。そして、組み合わせて使うことを考えよう。新しいスマートフォンに機種変更しても、使い古したスマートフォンの使い道はきっとある。SIMなしで使っても便利な場面があるはずだ。

 ただ、家族や友人にお古として譲り渡すことはおすすめしない。2年近く前のデバイスの、いいところも悪いところも知り尽くしているのは自分自身だ。分かっているから許せることも、分かっていない人には理解してもらえないだろう。だから、自分のデバイスとしての再就職先を考えるのが望ましい。

 手持ちの全てのシャツが同じ色柄という方は少ないと思う。パンツやジャケットにしても、ネクタイでも、カバンでも、用途は同じなのに、いろいろなバリエーションを揃えてTPOに合わせて組み合わせるのは当たり前だ。スマートデバイスも、そういう扱われ方をしてもいい時期まで成熟してきているように感じている。

(山田 祥平)