山田祥平のRe:config.sys

なぜデスクトップは散らかるのか

 Windowsが標準で備えている仮想デスクトップの機能を使えば、1つの物理的なディスプレイを複数あるかのように見せかけることができる。常に見えるところに置いておきたいウィンドウが多過ぎる今、小さなディスプレイしかないノートPCを駆使するための有効なツールだ。

ないものはないからデスクトップを強引に増やす

 デスクトップが狭過ぎて作業効率が異様に悪い。最近、特にそう感じることが多くなった。PCを使っているときに続々と届くメールやメッセージ、それらに返事を書くには予定表を参照しなければならないし、調べもののために開いているブラウザもあれば、執筆中の原稿や企画書もある。気がつくと、画面の裏に何が開いているのか、自分でも把握できなくなっている。もう、15.6型前後の画面1枚では限界だと感じる。

 ノートPCのUSB Type-Cポートに外付けモニターをつなげば、ケーブル1本で2枚目の画面を物理的に増設できる。ノートPCと並べれば、かなり作業がラクになる。でも、モバイルモニターを常時持ち歩いているわけじゃない。

 Windowsのデスクトップの広さはワークスペースの広さそのものだ。物理的にモニターを増やせば、その分デスクトップが増える。並べた外付けモニターに視線を移動すれば、そこには必要な情報が見つかるはずだ。というか、見つけたいから置いておく。

 狭い机の上に大量の書類を広げて作業している状況を想像してみよう。書類の下に別の書類が隠れているかもしれないし、そもそも必要な資料がすべて揃っているとも限らない。

 最近、外出先でノートPCを使っているときに、そういうことを特に感じるようになった。つまり問題は「情報量」ではなく、それを同時に視界に置けないことにある。だったら、仮想デスクトップを積極的に使ってみようと思い立った。

タスクバーは同じものを1つ

 仮想デスクトップを使えばデスクトップを仮想的に増やして作業領域を増やすことができる。仮想的に増やすだけなので、物理的なデスクトップを増やすほどの便利さはないかもしれないが、使いようによってはずいぶん効率が高まる。何よりも物理的なスペースが必要ない。

 2枚目の画面を増やすのは簡単だ。そのとき作業中のデスクトップでWindows+Ctrl+D を叩けばいい。叩くごとに追加されて、追加されたデスクトップに移動する。追加したデスクトップは、Windows+Tabで表示されるタスクビューで一覧できる。

 また、この画面でもデスクトップの追加ができる。もしかしたらタスクバーにタスクビューボタンが表示されているかもしれない。それを押しても同じことができる。デスクトップから別のデスクトップにウィンドウを移動するのも簡単だ。

 1枚しかないモニターを使って、複数枚のモニターを仮想的に実現しているわけだ。物理的なモニターなら、視線を移動するだけで切り替えができるが、仮想モニターではそうはいかない。切り替えはタスクビューで指定するか、Windows+Ctrl+左右方向キーを使う。

 細かい設定については設定アプリの[システム]-[マルチタスク]で指定する。特に意識しておくといいのは[デスクトップ]の項目だ。ここで「タスクバーに、開いているすべてのウィンドウを表示します」を「すべてのデスクトップ」か「使用しているデスクトップでのみ」を指定する。

 タスクバーに並ぶボタンは同じだが、「使用しているデスクトップでのみ」ではウィンドウが開いていることを示すインジケータが点くのはそのアプリのウィンドウが使用中のデスクトップに開いているときだけだ。

 一方、ここを「すべてのデスクトップ」にすると、追加したどのデスクトップを表示していても、タスクバーの表示は変わらない。すべてのデスクトップのすべてのアプリのウィンドウを対象に何が開いているのが分かる。

 どのデスクトップにどのウィンドウがあるかなんて覚えていられない。だからタスクバー操作で自動的に目的のデスクトップに移動したい。そして、開いているアプリのボタンにポインタを重ねると、デスクトップに関わらずサムネールが表示され、選択すると、そのウィンドウが存在するデスクトップに移動し、そのウィンドウがアクティブになる。

視線じゃなくて指でデスクトップを移動

 仮想モニター、すなわち仮想デスクトップの追加によって、ノートPCでの作業はかなりラクになる。慣れてくれば、開いている仮想デスクトップが異なるウィンドウ間のドラッグ&ドロップによるコピーも簡単だ。作業中にメールの到来が気になったときに、ふと、視線を移動して受信トレイを眺めるといったときも、Windows+Ctrl+方向キーで瞬時に移動できる。首を動かさなくていい分ラクかもしれない。

 一時的に作ったデスクトップが不要になったら簡単に閉じることができる。そこに開いているウィンドウがあってもデスクトップを閉じれば、自動的に隣のデスクトップに移動する。

 追加したデスクトップには通常「デスクトップ1」「デスクトップ2」「デスクトップ3」と連番がつくが、名前も自由につけられる。でも、名前をつけなければならないほど多くのデスクトップを開いてもあまり意味はないように思う。壁紙の画像を変えるくらいで十分だろう。ただし単色背景はすべてのデスクトップに反映されてしまう。

 追加したデスクトップは、Windowsの再起動時も継続して使うことができる。さらに、可能な限り、以前のセッションで開いていたウィンドウを再現する。これは設定アプリの[アカウント]-[サインインオプション]-[再起動可能なアプリを自動的に保存し、再度サインインしたときに再起動する]がオンになっている場合に機能するが、思い通りにいくかどうかは運次第ともいえる。

 自動復元されるアプリは「アプリケーションの回復と再起動(Application Recovery and Restart: ARR)」というAPIに対応したものに限られるのだそうで、OS標準のエクスプローラーやメモ帳、ペイントなどのモダンアプリ、そしてブラウザ、いわゆるOfficeアプリなどがある。しかも、デスクトップ1にすべてのウィンドウが戻って開いてしまうのが標準的な挙動だ。

【表】仮想デスクトップのショートカットキー
内容キー
デスクトップを追加Windows+Ctrl+D
デスクトップを切り替えWindows+Ctrl+← / →
一覧表示(タスク ビュー)Windows+Tab
現在のデスクトップを閉じるWindows+Ctrl+F4

自力でウィンドウを並べるのは職人技

 なぜ、こんなにワークスペースとしてのデスクトップが狭く感じるようになったのか。

 想像するに、これはウィンドウの文化とタブの文化の対立によるものじゃないかと考えている。いろんな意味で過渡期なのだ。

 タブ派の代表選手はブラウザやAdobe Acrobat Readerだ。これらは1つのアプリが複数のドキュメントを開き、タブで切り替える。このUIはかつてのMDI(Multiple Document Interface)に源流がある。いわゆる親ウィンドウの中に複数の子ウィンドウがあるという形式だ。

 その後、親ウィンドウの中で子ウィンドウが迷子になる案件が続出し、時代はSDI(Single Document Interface)へと移行した、というかアプリは1つのドキュメントを開くという昔の当たり前に戻った。だが、今度はデスクトップが散らかって困るという声が高まり、MDIとSDIのいいとこ取りをしたタブUIが生まれたという経緯がある。いつの世もデスクトップは狭かったのだ。

 今、ExcelやWordなどのOfficeアプリはSDIで、タブ派とは一線を画している。その一方で、ブラウザのタブUIで使うGoogleの各種アプリはPWA(Progressive Web Apps)の仕組みを使ってSDIでの利用をするように誘導している。

 今後はデスクトップというワークスペースをどのように使うかという機能、すなわち、自力でウィンドウを並べて作業する職人技は、AIの介入によって、自動構成されるようになるのだろう。

 大事なのはPCとのセッションで、自分が何をしたいかだ。そのために必要なものはAIが用意してくれるし、開いてくれる。ローカルAIはそういうことに頭を使ってくれるようになるのだろう。

 生成AIが注目されているが、実は一番先に変わるのは、こうした地味なウィンドウ配置なのかもしれない。まあ、頭のいい人は、自分で開いたウィンドウを全部把握しているのだろうから、そんな機能は余計なお世話かもしれないが。