山田祥平のRe:config.sys

思い出重視の位置情報 ~旅に出るならGPSログをとろう

 コロナは終わったことにして、もっと積極的に外出してみようという動きが高まってきた。夏休みシーズンということもあり、直近で海外/国内旅行を計画している方も少なくないだろう。プライバシーの課題は残るものの、旅行などで初めての土地を訪れたときには、散策した軌跡をあとで振り返りたいと思うことがある。

位置情報を記録して旅の足跡をたどりたい

 ほぼ毎日、せっせと自宅近所をウォーキングしていたのは2006年頃だったと思う。ガーミンの単体GPSデバイスGeko201をポケットに入れ、そのトラックログ機能を使って歩いた軌跡を記録し、自宅に戻ったところでPCに接続し、アルプス社の地図ソフト「プロアトラスSV3」という、地図データをPCローカルにおけるアプリに吸い取って、足跡を眺めていた。実に楽しかった。スマホ前夜の時代の話だ。

 そのうち、自宅近所にスポーツジムができて、そこに入会してからは、もっぱら屋内でトレッドミルを使うようになったので、GPS携行の屋外ウォーキングからは遠ざかってしまっていた。

 ウォーキングマシンは進むイメージがないのでつまらない。やっぱり外をうろうろ好き勝手にあの路地、あの曲がり角と散策するのが楽しい。それに、せっかく機械でトレーニングしているのに、そのコミュニケーション機能が貧弱で、歩いた距離や時間、その負荷などを記録することができないのがちょっと腹立たしかった。

 当時から15年以上が経過した今、このジムには今なお会員として在籍していて、それなりに足繁く通っている。

 係の人に名前を申し出て体組成計で計測すると、結果をWebで参照できるようにしてくれ、その履歴を残すくらいのことが、目立ったデジタル化と言えばデジタル化で、ほかのマシンでの筋トレや、トレッドミルのトレーニング結果などは何も残らない。

 マシンにサインインしてトレーニングを始め、結果をクラウドに保存するというのが難しいなら、せめて、トレーニング終了後に、画面にQRコードでも表示されて、それを読み取ると、記録が残せるくらいのことはできてもよさそうなのだが、それもかなわない。

 これはジムの方針というのもあるが、マシンのメーカーが付加価値を提案することができていないようにも感じる。センシティブなデータだけに難しいのかもしれないが、この先はもうちょっと積極的にDXを進めてほしいものだ。

 今さらながら、エゴサしたりしてみると、当時はカメラについても撮影した写真への位置情報付加にいろいろチャレンジしていたようだ。

 GPSを一眼レフカメラに外付けして撮影したり、GPS付きカメラを積極的に選んだりもしていた。

 撮影した写真のEXIF情報の1つとして、位置情報を書き込むために、いろいろと奮闘してきたのだが、最終的にはスマホアプリとの連携に落ち着いて今に至っている。ニコンのカメラとスマホアプリのSmartBridgeの組み合わせは、いろいろな不具合に悩みながらも、個人的には今も唯一無二のベストソリューションとして愛用している。当然、スマホで撮影した写真には位置情報が付加される。

スマートウォッチのGPSを活用する

 最近は、GPS内蔵のスマートウォッチも選択肢が増えてきた。スマートウォッチ単体で屋外ワークアウトのGPSによる位置情報遷移をトラックログとして記録し、スマホの画面で確認できるというものだ。スマートウォッチローカルに地図をダウンロードして軌跡等を表示できるものもある。

 ただ、スマートウォッチの多くはかなりガチなトレーニングを想定しているようで、カジュアルな利用についてはあまり考慮されていない印象も受ける。たいていの場合、いったんワークアウトをスタートすると、そのデータ画面が表示されたままで、通常の時計表示には戻せなかったりするのだ。これは日常を密かにロギングするには向いていない。

 そもそも、トレーニングメニューには、数十種類のエクササイズがあるのに、その中には、散歩とか街歩き、旅といった軟弱な項目がない。

 そんなものはトレーニングじゃないと言われればそれまでだが、朝起きてから、観光地を巡り、電車に乗り、タクシーや地下鉄にも乗り、巨大なショッピングモールを歩き廻り、レストランで食事もする。GPSが捕獲できないところにいる場合はしょうがないにしても、旅行などに出かけてから戻るまでの旅程すべてをカバーする方法を、今いろいろと模索中だ。

 それだけバッテリが持ちこたえてくれるかというのも課題だ。複数のスマートウォッチを腕に付けるのが煩わしくて、計測中のままカバンに放置して携行すると、計測を終了してしまう場合もある。

 そもそも、こうした記録は、Googleマップのタイムラインが便利で、あの日何をしていたっけといったときには重宝しているのだが、位置情報の誤差がそれなりにあるのを覚悟する必要がある。毎日こまめに修正を加えるのも大変だし、それでもライフログとして有用なので、補助的に使いたい。

 スマートウォッチの機種ごとにまちまちだが、トレーニングメニューとして、全地形対応車、ウォーキング、ハイキング、汎用の屋外ワークアウトといったものを使えば、とりあえずGPSログはとれる。

 想定としては、歩きはもちろん、自転車に乗ったり、階段を上ったり降りたり、GPSの電波が途絶える店内やビル内、そして地下に潜ったり地下鉄に乗ったり、人間の移動速度を遙かに超える交通機関などでの移動も含んだログが欲しいのだ。もちろん、一箇所に静止しているときにはログの取得も一時停止してほしい。

スマホで位置情報を追跡

 これがスマートウォッチの仕事かと言えば難しいところなので、それとは別に、久しぶりにスマホアプリでもGPSログを取得してみようといろいろ実践中だ。少なくとも15年以上前に、ガーミンのGeko201でできていたことくらいはやりたい。

 かつては、GoogleのMy Tracksというアプリがあって、シンプルにGPSのトラックログを取得できて便利だったのだが、残念ながら2016年に利用できなくなってしまった。

 その後継として使えるアプリにはいろいろなものがあるが、現状ではGeo Trackerというアプリでいろいろと試しているところだ。

 目標としては旅などのために家を出たところから、帰宅するまでのすべての行程をログとして保存することだ。

 スマートウォッチのコンパニオンアプリにしても、GPSログ専用アプリにしても、ログデータをGoogleマップなどの地図に軌跡として表示するにはスマホを使う。いや、使うしかない。

 そもそも、スマートウォッチのコンパニオンアプリの多くはタブレットすらサポートしていないし、データをクラウド保存しているのにPCのWebブラウザで確認することもできない。どうせなら、足跡を大きな画面のデバイスで見た方が楽しいのにだ。

 かろうじて、Google Pixel WatchはFitbitダッシュボードをブラウザで使うことができて、50型の大画面TVにPCを接続すれば、全画面で旅の足跡を確認できる。PC用のアプリがなく、ブラウザもサポートしない多くのスマートウォッチにはそれができないのだ。

 さすがに方法はある。独自のトラックログをGPX形式のファイルにエクスポートし、Googleマップのマイマップ機能を使って読み込ませればいい。

 同じことは、FitbitのWebアプリでもできるが、これにはまた一手間必要だ。書き出し形式がフィットネスデバイスで使われるTCX形式なので、心拍などのヘルスデータなども含まれ、さらにGoogleマップに読み込ませて軌跡を表示するには、何らかの方法でGPX形式に変換する必要があるなど、ちょっとしたノウハウが必要だ。

 もっとも、FitbitのWebアプリが地図表示に使う地図はGoogleマップそのものだから、それでもいいと言えばいいのだが、表示の雰囲気がちょっと違う。なんともモヤモヤする展開だ。

 いずれにしても、PCでできないことがとにかく増えている。これについては以前もここで書いたが、なんとなく敬遠されているPCがちょっとかわいそうに感じる状況は変わっていない。このままでいいはずはないのだが。