山田祥平のRe:config.sys

サイバーショットのGPSとAVCHDで取材カメラをリニューアル




 カメラは光景を記録する道具だ。フィルムの時代には光景だけが記録されてたが、デジタルの時代となり、EXIFデータとして、撮影日時や絞り、シャッタースピードなども記録されるようになった。そして今は、写真を撮った位置の情報も記録される。こうしてデジタルイメージはますます饒舌になっていく。

●撮影位置を素早く測位

 普段の持ち歩き用コンパクトカメラを買い換えた。直近まで愛用していたのは「LUMIX DMC-ZX1」で、購入したのは昨年8月末だった。つまり、ほぼ半年で入れ替えることになった。

 今回購入したのはソニーの「サイバーショットDSC-HX5V」だ。購入する気になったのは、この製品がGPSを内蔵していることと、フルHDのAVCHDが撮影できるからだ。今後購入するコンパクトカメラはGPSを内蔵しているものだけを選ぼうと思っていたのだが、この春は、その条件を満たすものとして、この製品とパナソニックのLUMIX DMC-TZ10が発売された。手元には2008年秋に購入したGPS内蔵のCOOLPIX P6000があるが測位の遅さにちょっとウンザリしていたので、GPS内蔵といっても飛びつくわけにはいかない。

 購入前にいろいろ調べてみると、DSC-HX5VはGPSアシストデータに対応しているという。衛星の状態を取得したデータをカメラに転送しておくことで、測位時にその情報が使われてスピーディに現在位置を取得できるという。さらに方位にも対応し、どの向きで写真をとったのかも記録することができる。撮影した位置の緯度、経度、高度、方向をあとで知ることができるのだ。これらの点を評価して購入に踏み切ることにした。サイバーショットはこの春からメモリースティックだけでなく、SDHCにも対応するようになった点も、ちょっと早いタイミングでの買い換えの背中を押した。

 パッケージから製品を取り出してバッテリを装着、電源を入れてGPSに測位させてみた。都内の屋外で約30秒程度で位置を特定する。このくらいなら待てる。この時点ではまだアシストデータがない状態だ。

 製品には「PMB」と呼ばれるソフトウェアが添付されている。静止画、動画をまとめて管理できるユーティリティで特筆すべき点はない。取り込んだデータをカレンダー形式で管理できるというものだ。

 このソフトで写真を見ると、位置情報が書き込まれた写真には緑のマークがついている。それらの写真を選択し、別のプログラムである「マップビュー」で開くと、Googleマップでその撮影位置を確認できるようになっている。マップビューは単独での起動も可能で、そのウィンドウに写真をドロップするとGoogleマップで位置を確認できる。ただこの操作はPMBからのものしか受け付けないので、あまり便利さを感じない。

 位置情報つきの写真を地図で表示するソフトウェアとしては、フリーのものがたくさんある。ぼくがよく使うのは「GMM2.exe」や、「」、最近のものでは、「画像位置情報取得ツール」などだ。また、ニコンのカメラのユーザーなので、「viewNX」もインストールしてある。このソフトもGoogleマップ表示に対応し、ニコンのサイトからダウンロードして無償で使える。個々のソフトごとに、それぞれ特徴があって使い分けている。

 PMBの「マップビュー」には、1つ致命的な欠点がある。写真を取り込まないとマップビューを使えないのだ。つまり、メモリカードリーダーなどにメモリを装着し、ザッとブラウズするといった使い方ができない。旅行先などで昼間に撮った写真をザッと見るときに、ついでに位置情報も確認したいような使い方ができない。

 それでもPMBが必要なのは、今のところ、このカメラが記録した方位の情報を地図上で確認するには、このソフトウェアを使うしかないからだ。また、動画データにも位置情報が記録されるが、その情報を確認できるのもPMBだけだ。

 ちなみにGPSの測位は15秒ごとに行なわれる。仮に時速300kmで走る新幹線内で測位ができたとして、測位結果に間違いがなかったとしても、15秒後には1kmぐらい進んでいることになる。でもまあ、通常の使用において不便を感じることはないだろう。

●アシストデータで測位時間を短縮

 さて、期待のGPSアシストデータだが、これは衛星の起動情報、概略位置や健康状態といった最新情報を測位時に利用することで、測位時間を短縮することができる。データには1カ月の有効期限があり、インターネット経由でデータをダウンロードし、カメラに転送しておく。転送にはやはりPMBが必要で、カメラをUSBメモリに接続すると自動的に転送されるほか、メモリカードリーダーに装着したメモリカードにデータを書き込むこともでき、そのカードをカメラに装着すると自動的に転送されるようになっている。

 アシストデータがあると、測位時間は半分以下に短縮されるようだ。ちょうど、携帯電話のGPS機能が、基地局のデータなどを使って短時間で測位ができるのと似たような仕組みだ。1カ月に1度なので、メモリカードからPCにデータを転送する際についでに一手間かけるだけで済むのだが、できれば、PMBのインストールなしで単独で転送できるユーティリティが欲しかったところだ。

 ちなみに、GPSが測位できない状況の場合、最後に測位に成功した位置の情報が書き込まれる仕様となっている。つまり、成田空港で測位に成功し、飛行機に乗ってサンフランシスコに移動し、現地に到着して測位に成功しないまま撮影した写真には成田空港の位置情報が書き込まれるということだ。それを回避するためには、バッテリをいったん抜くしかない。建物の中や地下スペースでのイベントなどを撮影する場合に、前もって屋外で測位しておき、屋内での撮影には、そのデータを使うといった使い方もできるので便利は便利なのだが、振る舞いがわかっていないとややこしいことになる。出先で最初に撮った写真に自宅のジオタグがついているといったことにならないように注意したい。

●けっこう使えるスイングパノラマ

 この製品には、今どきのコンパクトカメラとして、さまざまな機能が搭載されているが、中でもスイングパノラマは特に気に入った。カメラを撮りたい被写体の端に合わせ左から右へとパンニングすると、複数の画像を撮影し、それが合成されて1枚のパノラマ写真になるというものだ。設定で、右から左、下から上、上から下などでも撮影ができる。このカメラには35mm換算で25~250mmという、かなりの広角から望遠までをカバーするレンズが装備されているが、そのワイド端でも足りないくらいに広い範囲を撮りたい場合に重宝する。

 また、ISO感度をAUTOにしておくと、場所の明るさに応じて125~800までが自動的に設定される。このカメラはISO 3200まで設定できるのだが、AUTOの上限は800となっている。暗いところでの撮影時には、明示的に設定してISO感度を上げればいいのだが、モードの1つである「人物ブレ軽減」と「手持ち夜景」がけっこう使える。これは、一度のレリーズで複数枚の連写を行ない、それを合成して被写体ブレやノイズを軽減するというもので、その効果は劇的といってもいい。また、シーンセレクションの1つとして、「高感度」というモードも用意されている。こちらは連写をして合成するような小細工をせずに、明るさに応じて3200まで感度が上がるようになっている。これらの機能も用途に応じて使い分ければいい。

 静止画、動画ともに、画質には大きな不満はない。毎日持ち歩いて、1回のレリーズでできるだけ多くの情報を記録する取材用カメラとして、これは使い物になりそうだ。満足感としてはかなりいいセンをいっている買い物ができたと思う。