山田祥平のRe:config.sys

また速くなって役に立つUSB Type-C、Thunderboltも高速化

 USB4 Version 2.0が発表され、その表記ガイドラインが改定されるなど、周辺がざわついている。詳しい仕様も発表されたばかりだ。どうなるのだろうかなどと気にしていたら、今度はThunderboltのアップデートだ。はてさてこの先、混沌とした状態は、いったいいつになったら収まりを見せるのだろうか。

新しくなったThunderbolt

 Intelが次世代のThunderbolt規格についての情報を公開した。ただ、その名称についてはまだ発表されていない。順当にいけばThunderbolt 5なのだが、そうはならないのか。実に慎重だ。現行の最新ThunderboltはThunderbolt 4で、対応ケーブルには、多くの場合、稲妻マークとともに4や3という数字がプリントされている。

 皮肉なことに、今は分かりやすくてユーザーフレンドリーなはずのUSB Type-Cケーブルが最もややこしいという状況になっている。何しろ、無印のUSB Type-Cプラグを持つケーブルを見かけたら、

  • USB 2.0用ケーブル(480Mbps)
  • USB 3.xのGen 1用ケーブル(5Gbps)
  • USB 3.xのGen 2用ケーブル(10Gbps)
  • USB 3.2 Gen 2x2用ケーブル(20Gbps)
  • USB4用ケーブル(40Gbps)
  • USB4 Version 2.0用ケーブル(80Gbps)
  • Thunderbolt 3用ケーブル(40Gbps)
  • Thunderbolt 4用ケーブル(80Gbps)

のうち、どれなのかを何らかの方法で調べる必要がある。購入時のパッケージに書いてあるかもしれないが、パッケージから出してしまうとすぐに分からなくなってしまう。

 さらに、これにUSB PDの対応電力の違いもあり、そのケーブルは100均で買えるものから1万円近いものまであるし、アクセサリやスマホ、タブレットといったデバイスに同梱されているものもある。

 救いはThunderboltの場合そのケーブルに明確なマークがついていることがほとんどな点で、USB Type-Cプラグを持つケーブルの中では最も分かりやすいと言ってもいい。

 新しいThunderboltはUSB4 Version 2.0をベースに、これまでの2倍相当である80Gbpsの伝送帯域を実現するそうだ。要するにUSB4 Version 2.0のフルスペックバージョンで、Thunderbolt 4がUSB4のフルスペックバージョンだったのと似た関係にある。

 興味深いのは、送信2レーンで80Gbps、受信2レーンで80Gbpsを、レーン割り当ての切り替えで送信3レーンで120Gbps、受信1レーンで40Gbpsといった再割り当てができることだ。これによって、高解像度モニター接続などのための広い帯域を確保することができる。

 Thunderbolt 4では1ポートあたり4Kモニター2台の接続が可能だが、120Gbpsはその3倍幅広い。理屈では4Kモニター6台、あるいは、ずっと高いリフレッシュレートでの接続ができる。広帯域での接続ができるようになれば、8Kモニターのような超高解像度モニターの常用も視野に入ってくるだろう。

 うれしいのは、これまでのThunderbolt 4対応パッシブケーブルが、1m以下のものならそのまま使えるということだ。ケーブルはそのままで帯域が倍速化される。すごくトクした気分だ。

 新しいThunderboltをThunderbolt 5などと呼ぶことにしたら、またまたややこしいことになる。だが、エンドユーザーから見たときに、新しいThunderboltの利用には対向する対応機器の入手だけでよく、ケーブル類はそのままでいいというのは分かりやすくていい。

過渡期は続くが誰もが気軽に使えるThunderbolt

 とまあ、当面、過渡期は続くだろう。それを見越していたのかどうか、サンディスクがおもしろいデバイスをリリースした。今月末の発売が予定されているウエスタンデジタルによるSanDisk ProfessionalブランドのPRO-G40というSSDだ。

 Thunderbolt 3とUSB 3.2 Gen 2の両方に対応し、Thunderbolt 3を利用すると最大2,700MB/sの読み出しと1,900MB/sの書き込み、USB 3.2 Gen 2を利用すると1,050MB/sの読み出しと1,000MB/sの書き込みになる。しかも、IP68の防塵/防水、3mの高さからの落下耐性、4,000ポンド(約1.81t)の耐衝撃性を備えるヘビーデューティ仕様だ。

 同社のProfessionalブランド製品は、Mac用にmacOS HFS+ファイルシステムでフォーマットされているため、WindowsでNTFSとして使うには、いろいろとおまじないをして再フォーマットが必要だ。久しぶりにdiskpartコマンドなどというものを使った。10年前にWindows 8が出るときに、USBメモリでWindows 8を使えるWindows to Goを試したとき以来だ。

 パッケージにはThunderbolt 3ケーブルが同梱されている。もちろん両端はUSB Type-Cケーブルだ。エンドユーザーは、どんな機器にこのSSDをつないでも、ベストエフォートで最も高速な伝送レートが得られるというわけだ。

 実際、Thunderbolt 4ポートに接続して速度を測ってみると、シーケンシャルリードで3,000MB/s超、つまり3GB/sを超える速度が出た。仕様が2.7GB/sだから1割増しだ。この会社の製品はいつもいい意味で期待を裏切るので好きだ。

 ただ、40Gbpsだの80Gbpsだのと派手な値で大騒ぎしていても、外付けSSDをPCにつなぐといった用途では24Gbps程度にしかならないのはちょっとくやしい。パソコン内部に実装したM.2 NVMe SSDでもその倍程度だ。それでも実際に使ってみると、これはこれでびっくりするほど高速だ。日常的に大容量のファイルを扱う必要がある動画系のクリエイターには重宝する高速デバイスになるはずだ。

 もはやThunderboltは特別なスポーツカーのような存在ではなく、誰もが気軽に扱える存在になったのだと痛感する。数十GBならクラウドでなんとかなるが、数百GBのデータ量を日常的にクラウドで扱うのは大変だ。やはり大容量の高速ストレージを必要とする作業は、まだまだたくさんありそうだ。さらに、同時多発的な伝送を引き受けるドックのようなデバイスの存在感が高まっていくのだろうか。いずれにしても転送レートの高速化はうれしい限りだ。

 Thunderboltに対する不満は、その詳細な仕様がUSBのように完全なオープンになっていないことだ。誰もがいつでも気軽に無料で読めるような仕様書は公開されていない。とは言え、あったとしても、よほどの物好きでない限り誰も読まないだろう。だから、100均ショップでThunderboltケーブルが売られるような日は来ないとたかをくくっている。

 一般名詞と化した「USB」はいろいろと世間を騒がせているし、ヤバい製品も見かけるのだが、Thunderboltを名乗って粗悪な製品が作られることもなさそうだ。ややこしいところはUSBにまかせてしまう。それがブランディングの強みであり、Thunderboltという名前を捨てないIntelの上手いところだ。