山田祥平のRe:config.sys

USB Type-Cケーブルの長さとしなやかさと色分けはコーデの基本

 USBテクノロジーはスマートライフ領域において、あらゆる用途に使われるようになった。だが、そのケーブル選びは難しい。USBやThunderboltの規格世代はもちろん、その規格に準拠するための長さや伝送損失等の制限もあり、使い勝手のいいケーブルが必ずしも性能的に優れたケーブルであるとは限らない。

充電とデータ伝送は別の機能

 現状のUSB規格が混沌としているのはご存じの通りだ。データ通信に加えて、充電用途も重要な役割になっている今、誰もが必要としている規格なのに、その全容が難しすぎる。USBはもうあきたと言われそうだが、いくらでも話はある。

 今のところ、最も汎用的な全部入りのUSBケーブルはThunderbolt 4ケーブルだ。Thunderbolt 4は、インテルによるUSB4のブランドで、USB4のフルスペックに準拠していることが保証される。

 全部入りといっても、最新の充電規格としてUSB PD EPRが240W対応し、それにともなってType-Cケーブルの仕様も2.1になったが、Thunderbolt 4ケーブルの規格上限はまだ100Wまでなので、正確には全部入りではなくなってしまった。ただ、240W対応のケーブルがたとえ万能であったとしても、その取り回しも素晴らしいとは限らないし、誰もが必要としているとも限らない。

 ケーブルを選ぶさいの大事な要素としては、その長さがある。長さの選定にさいしては、その用途をしっかりと想定する必要がある。

 しかも、長さは対応規格に左右される。両端Type-Cのパッシブケーブルの場合、データ伝送帯域の規格ごとに、

  • USB 2.0 → 4m
  • USB3 Gen 1 → 2m
  • USB3 Gen 2 → 1m
  • USB4(Thunderbolt 4) → 80cm

がそれぞれの上限となっている。高帯域ほど短くなる。

 つまり、機能を優先し、全部入りを確保してUSB4(Thunderbolt 4)ケーブルを選ぶと、長さは80cmを超えることができないわけだ。80cmという長さはそれなりに使い勝手がいいのだが、それでは短すぎると感じることも多い。もちろん80cmでも長いと感じることもある。

 例えば、充電だけを目的としたケーブルとして使いたい場合を考えてみよう。その場合、データ転送の速度を気にする必要はない。ベッドで寝転んで充電しながらスマホを使うには、コンセントの位置にもよるが2mくらいのケーブルが欲しい。

 出張先のホテルなどで、ベッドサイドにコンセントがなかったりするときはさらに長いケーブルがあると便利だ。ぼくはそんなときのために3mのケーブルをスーツケースの中に入れてある。

 充電だけを目的とするならデータ転送速度を気にする必要はない。だからUSB 2.0のケーブルで十分だ。それでいいなら4mのケーブルが使える。データ伝送速度に目をつぶれば、今、最もバリエーションに富んでいるのがUSB 2.0のUSB Type-Cケーブルだ。通信速度が480Mbpsに制限されるが、長さの自由度は高い。

 先日、ニコンが「NX Tether」というアプリをリリースした。カメラとPCをケーブルで接続し、撮影した画像を片っ端から転送するためのユーティリティだ。PCからカメラをリモートコントロールして撮影することもできる。

 接続にはUSBケーブルを使うが、ニコンのカメラは最新世代のZ9でさえUSB3のGen 1、つまり5Gbps対応だ。このスペックでデータ転送しようと思うと、ケーブルは2mに制限される。

 2mはまずまずの長さだが、ノートPCなどを机上に置いた状態でケーブル接続したカメラを使って撮影するにはちょっと足りない。だが、480MbpsのUSB 2.0でガマンすれば4mまで伸ばせる。これなら取り回しの自由も倍になる。

 たまたま手元で使っているニコンのZ fcのRAW画像のサイズは約20MBだ。よほどの連写をしない限りは、それほどストレスを感じることなく伝送できる。伝送速度よりも使い勝手を優先するならUSB 2.0ケーブルがいいということだ。

テッキーはケーブルの色で「コーデ」する

 NHKによる「ケーブルの配線美」にフォーカスした番組「ケーブルアート~あなたの知らない美の世界~」を見た。インターネットプロバイダー大手のIIJが協力したとのことで、同社の白井データセンターキャンパスとIIJグループのインフラ構築会社「ネットチャート」が取材に全面協力したそうだ。

 IIJに問い合わせたところ、ケーブルはCAT.6で、通常より細径でしなやか、絡まりにくいケーブルを、ネットチャートがメーカーと共同開発したものだそうだ。大量のケーブルを配線してもサーバーの吸排気を塞ぎにくく、また、絡まりにくいので施工もしやすいIIJエンジニアお気に入りのケーブルとのことだ。

 整然と配線された色とりどりのケーブル群は実に美しかった。でも、普通はこうはいかない。冒頭の写真は20年以上、見て見ぬふりをして放置した机の下の配線だ。先日、机をどかして露呈した。捨てて手元にはもうないはずだったUSB 2.0の標準ケーブルもたくさん見つかった……。そして無駄なケーブルを処分した。とぐろを巻くケーブルほぼすべてだ。

 ケーブルは、念のためとつい長いものを選びがちだが、それがこういう結果を生みやすくする。必要な長さのケーブルをその場で作れればどんなにいいかとも思うが、一般人にとってはそういうわけにはいかない。

 番組映像を見た感じでは、ケーブルはずいぶんやわらくて取り回ししやすそうだった。ケーブルの色もたくさんあった。ケーブルの硬さ、色、太さは使い勝手に大きな影響を与える。USBケーブルに比べてネットワークケーブルはやっぱり先輩なのだろうか。バリエーションの点ではUSBケーブルはとてもかなわないように思う。

 何よりも大きな問題は、色々なケーブルがあるにしても、こうした触感などを想像できる要素がスペックとしてほぼ明記されていないことだ。

 規格ごとに制限のある長さはもちろんだが、そのしなやかさ、丈夫さ、素材、さわりごこち、色、eMarkerの有無とあるならその内容など、知りたい情報はたくさんあるのに分かりにくい。しかもスペック表だけでは伝わりにくいし、エンドユーザーに対するベンダー側のコミュニケーションの努力もあまり感じられない。

 最近入手したMOTTERUというメーカーの製品は「断線に強く100W充電対応 USB3.2 Gen2x2 Type-C to Type-Cケーブル 1m 温度センサー搭載 2年保証 (MOT-CBCCU3G100)」とアピールしていた。スペックとしては「ナイロンメッシュ製」とあるだけなので大きな期待はしなかったのだが、その触感は想像以上にいい。せめて製品ページにケーブルのフィーリングが想像しやすいよう、視覚的に分かりやすく提示されていたらよかったのにと思う。

 100W対応で若干太い感じはあるのだが、Gen 2採用に温度センサーまで搭載ということで、USB4のフルスペックを必要としない利用なら十分に実用的だ。現状で流通しているポータブルSSDなどはGen 2があればほぼ困らないだろうが、60Wケーブルではそれをわずかに超えるPPS対応のときに困るケースがある。だからこのスペックが意味がある。

 また、Gen 1、Gen 2ケーブルはeMarker実装なら、仕様上、ベストエフォートだがAltモードのThunderboltケーブルとしても使えるからつぶしもきく。

 ちゃんと考えてある製品だという印象を持った。実際に手にしても、太さの割にはしなやかだ。ただし色はブラックだけだ。他のケーブルとごっちゃになったらもう終わりだ。願わくばスペックをそのままで色のバリエーションを増やしてほしい。用途や機能ごとに自分なりに色で区別したいからだ。

 おしゃれなケーブルを必要としているのは、テッキーも同じなのだ。見えるeMarkerとしての色識別はテッキーならではのおしゃれの一環とも言える。

 一方、エレコムはブルー・オレンジ・グリーン・ピンク・パープル・シルバー・イエローの7色展開でUSB4対応ケーブルを発売する。春に発売された24インチiMacのカラーにあわせての多色展開だ。これはこれで悪くない方向性の製品だと思う。

 もっともそれでSKUが増えて価格が高止まりしては困る。実に悩ましい。

用途が決める機能美

 プラグ部分の形状なども重要な要素だ。L字型のプラグは、ポートの方向に対して奥または手前の垂直方向にケーブルを引き出したいときに有利だ。ケーブルがポートと同方向に出ると邪魔になることもある。

 ただ、モバイルバッテリのポートは例外だったり、装置側の配置によって隣のポートが使えなくなったりもするので、片側がL字プラグ、片側がI字プラグのようなケーブルが使いやすい。

 Ankerのように、様々な素材のケーブルを用意し、異なる触感と耐久性を各種取りそろえているベンダーもある。個人的には、Ankerのメッシュ素材のケーブルが好きだ。ナイロン素材のものも頼もしく感じる。

 スペックが上がるにつれて黒く太く無骨になっていく傾向のあるケーブルだが、同社の「PowerLine III」など、Ankerの製品は華奢に見えても丈夫な印象がある。「PowerLine III Flow」など、従来のケーブルにはないやわらかさを実現したケーブルもいい。

 また、「cheero Type-C to Type-C Smart Flexible Cable(CHE-271)」なども、曲げやねじれを想定したユニークな短いケーブルとして重宝している。

 結局のところ、そのケーブルを何に使うのかを考えて製品を選ぶことが大切だ。何も分からないから最高スペックのThunderbolt 4ケーブルを買っておけば間違いないというのは真理ではあるが、それがすべてではない。