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ディスプレイの台座だと思った? 残念、PCでした! デルの台座型PC「OptiPlex 7070 Ultra」

デル「OptiPlex 7070 Ultra」

 冒頭の写真を見て、これがPCであることを一発で当てられる人はそう多くはないだろう。この「OptiPlex 7070 Ultra」は、USB Type-Aポートを3基、Type-Cポートを2基、またRJ-45ポートなどを備えた、れっきとしたデスクトップPCである。

 PCであることがわかったとしても、設置方法となると、皆目見当がつかない人が大半のはずだ。この製品、ディスプレイスタンドに内蔵し、外部からまったく見えなくなるよう設計された「ゼロ フットプリント」を売りとしている。

 一般的に、デスクトップPCはケーブルの配線が乱雑になることが多いが、本製品はディスプレイから伸びる電源ケーブルを除けば、その他の配線は外部からほぼ見えない。さらにキーボードとマウスもワイヤレス仕様であるなど徹底している。

 今回はこのデル「OptiPlex 7070 Ultra」を借用できたので、具体的な設置方法のほか、ベンチマークを含めてチェックしていく。

モジュール式で高い柔軟性。インターフェイスも充実

 まずはスペックを紹介しよう。なお今回借用した機材は、現時点では同社サイトのBTOで選択できない仕様が含まれているため、現在選択可能なモデルを欄外に記している。

OptiPlex 7070 Ultra注釈
OSWindows 10 Home(64ビット)日本語
本体サイズ256.2×96.1×27.7mm
重量525g(最小重量)
CPUCore i7-8665UBTOでは以下のいずれかを選択可能
Core i3-8145U
Core i5-8365U
メモリ16GB DDR4 2,666MHzBTOでは以下のいずれかを選択可能
4/8GB
ストレージNVMe 512GBBTOでは以下のいずれかを選択可能
M.2 256GB PCIe NVMe Class 35 SSD
2.5インチ 500GB 7200rpm SATA HDD
おもな外部端子側面
USB 3.1 Gen2 Type-C(DisplayPort Altモード対応)
USB 3.1 Gen2(PowerShare対応)
オーディオ ジャック
底面
USB 3.1 Gen2 Type-C(DisplayPort Altモード/電源供給対応)
USB 3.1 Gen1(SmartPower対応)
USB 3.1 Gen2(SmartPower対応)
RJ45

 本製品はオールインワンPCにありがちな低スペックではなく、第8世代のインテルモバイルUプロセッサを搭載するなど、性能を重視したモデルだ。CPUだけでなく、最大64GBのDDR4 RAMと最大2台の1TB SSDを(現時点ではBTOで選択できない構成もあるが)搭載可能としている。

 ディスプレイは別パーツ扱いだが、本製品をわざわざ他社のディスプレイと組み合わせる選択肢は考えにくく、BTOでの同時購入が事実上必須とみてよいだろう。ちなみにディスプレイなしの最小構成価格は88,980円、24型USB-Cディスプレイ(P2419HC、スタンドなしモデル)セットでの最小構成価格は142,980円となっている。

 本製品が完全にディスプレイと一体化せず着脱が可能なのは、モジュール単位でのバージョンアップを可能にするというコンセプトによるものだ。ディスプレイだけを交換したり、またディスプレイをアームに装着する場合はスタンドから外してディスプレイの背面に装着できるなど、柔軟性を持たせた設計が特徴だ。

 インターフェイスは、USB Type-Aポートを3基、Type-Cポートを2基搭載するなど、ボディサイズからは考えられないくらい豊富だ。ただしそのうち3基は本体底面にあり、スタンドに装着するとアクセスしづらくなるので、配線時はそれらを考慮する必要がある。

 ディスプレイとの接続は、USB Type-CのDisplayPort Altモードを使う。つまり映像信号を伝送しつつ、電源はディスプレイ側から供給を受ける仕組みだ。これにより、本体とディスプレイの間はType-Cケーブル1本で済む。あとはディスプレイに電源ケーブルをつなぐだけでよい。

 なおWi-Fiまわりのスペックについては同社サイト上に情報はないが、実機では「Intel Wi-Fi 6 AX200 160MHz」ということで、Wi-Fi 6(802.11ax対応)であることがわかる。

製品本体
「2001年宇宙の旅」のモノリスのような外観。表面にはわずかにカーブがある
一式に含まれるのはPC本体とキーボード、マウスの3点で、ディスプレイはBTOでのオプションという位置づけ
本体は500mlペットボトルよりもわずかに大きいサイズ
背面。この面のみ樹脂ではなく金属で、CPUに負荷をかけるとかなり熱くなる
底面。Type-CポートはDisplayPort Altモード対応で、電源供給に対応する。Type-Aポートは一方がUSB 3.1 Gen1、もう一方がUSB 3.1 Gen2と仕様が異なる
設置時はこの面が上部になる。右端には電源ボタンがある
右側面(上)にはオーディオ ジャック、Type-Cポート、Type-Aポート(USB 3.1 Gen2)を搭載。こちらのType-Cポートは電源供給には対応しない。左側面(下)にはセキュリティネジ、ケンジントンスロットを搭載
ワイヤレスマウスとキーボードは1つのUSBドングルで動作する

ねじ止め不要で設置可能。静粛性も高い

 設置方法を簡単に紹介しておこう。まず最初にディスプレイスタンドのカバーを外し、そこに本体をはめ込む。ねじ止めの必要はなく、先に上部を差し込み、下部をストッパーにはめ込むことでパチンと留まって固定される。

 続いて本体底面にUSB Type-Cケーブルを差し込み、カバーの穴から出しておく。なおUSB Type-Cポートは側面にもう1基あるが、DisplayPort Altモードと電源供給に両対応するのは底面側のみなので、ディスプレイとの接続はこちらを使う。併せて、キーボードとマウスを使うための無線USBドングルを、USB Type-Aポートに差し込んでおく。

 あとは本体を装着したスタンドカバーを、再度ディスプレイ本体に取り付け、スタンド上部に露出している電源ボタンを押してやればPCが起動する。見た目にはディスプレイの電源ケーブル1本だけでPCが駆動しているように見えるのが面白い。

 駆動中はファン音もほとんどせず、非常に静か。電源ボタン横の排気口に手をかざすとほんのり温かい風が出ているのが分かる程度で、静かなオフィスでの利用には最適だろう。負荷テストを行ったところ、90℃を超えた時点でファンが回り、冷却を行うことが確認できたが、通常利用ではほとんどお目にかからない。

 ちなみにディスプレイ(P2419HC)は高さ調整はもちろん、左右のスイング、上下の角度調整、さらに90度の回転にも対応しており自由度は高い。ベゼル幅も狭く、別のディスプレイと並べてマルチディスプレイ環境を構築するのにも向くだろう。

まずはディスプレイスタンド部のカバーを外す。ロックを外し、上方にスライドさせるだけ
本体をカバー部に装着する。ネジ止めなどは不要で、はめ込むだけで固定される
ディスプレイとの接続に使うType-Cケーブルは前もって挿し、引き出せるようにしておく
本体を装着したカバーをスタンドに戻す。ねじ止め不要で取り付けられる
ディスプレイ(P2419HC)本体をスタンドに取り付ける
Type-Cケーブルをディスプレイに差し込む
ディスプレイについては電源ケーブルが必要だ
スタンド上部の電源ボタンを押すとPCが起動する
起動した状態。正面から見るとディスプレイの電源ケーブルしか見えない
背面。高さ調節のほか90度回転させることも可能だ

安定した性能、スタンド内蔵ながら熱対策も優秀

 ではベンチマーク結果を紹介しよう。今回は世代が比較的近い、筆者私物のThinkPad X1 Carbon (2019)と比較する。比較対象機の主要スペックは以下の通りで、OSはWindows 10 Proにアップグレードしている。

・Core i7-8565U(1.80GHz、8MB)
・メモリ16GB LPDDR3 2133MHz
・SSD 256GB(M.2 2280 PCIe NVMe)OPAL対応

OptiPlex 7070 UltraThinkPad X1 Carbon(2019)
PCMark 10
PCMark 10 Score4,010.03,730.0
Essentials8,4897,695
App Start-up score12,5378,306
Video Conferencing score6,7817,084
Web Browsing score7,1977,746
Productivity6,8096,206
Spreadsheets score7,8067,220
Writing score5,9415,335
Digital Content Creation3,029.02,951
Photo Editing score3,6603,437
Rendering and Visualization score1,9701,903
Video Editting score3,8553,931
3DMark v2.10.6797
Time Spy440379
Fire Strike1,0771,141
Sky Diver4,6064,100
CINEBENCH R15.0
CPU1,5741,403
CPU(Single Core)442400
SSDをCrystalDiskMark 6.0.2で計測
Q32T1 シーケンシャルリード2,142.53,053.9
Q32T1 シーケンシャルライト1,222.41,614.5
4K Q8T8 ランダムリード1,237.6757.3
4K Q8T8 ランダムライト486.9349.7
4K Q32T1 ランダムリード368.7349.4
4K Q32T1 ランダムライト485.7363.1
4K Q1T1 ランダムリード48.044.9
4K Q1T1 ランダムライト107.5128.5

 スコアはいずれのベンチマークも順当で、特に予想外のスコアはないが、HWiNFO64を用いてチェックしたところ、PCMarkでのテスト中に、サーマルスロットリングが何度か発生しているのを確認した。

 もっとも、PCMarkでのテスト開始から終了までに各Coreごとに1~3回発生するかしないかという頻度で、かつ発生を見落とすほど持続時間も短いので、実質気にする必要はない。むしろ筐体が覆われるハンデがありながら、熱対策は優秀と言っていいだろう。

 念のため、本製品をスタンドから取り外して横置きにした状態と、スタンドに取り付けたままファンを使って側面の吸気口に送風を行う状態、この2パターンで再検証してみた。

 結果は以下のとおりで、横置きではサーマルスロットリングの発生率は微減程度で、スコアにもほぼ影響はないが、ファンありではサーマルスロットリングが完全に解消され、かつほとんどのスコアが上昇している。

設置方法通常設置横置き通常からの増減(%)通常設置(ファンあり)通常からの増減(%)
PCMark 10
PCMark 10 Score4,0104,012100.05%4,073101.57%
Essentials8,4898,48399.93%8,601101.32%
App Start-up score12,537.012,685.0101.18%12,963.0103.40%
Video Conferencing score6,7816,76199.71%6,846100.96%
Web Browsing score7,1977,12098.93%7,17299.65%
Productivity6,8096,834100.37%6,945102.00%
Spreadsheets score7,8067,842100.46%8,001102.50%
Writing score5,9415,957100.27%6,029101.48%
Digital Content Creation3,0293,02499.83%3,071101.39%
Photo Editing score3,6603,64799.64%3,670100.27%
Rendering and Visualization score1,9701,975100.25%2,031103.10%
Video Editting score3,8553,84299.66%3,888100.86%

 本製品は両側面から吸気して上面から排熱するという、縦置きが前提のエアフローなので、本体を横置きにしてエアフローが機能しづらくなるよりは、スタンドに取り付けたまま送風で対処したほうが、冷却には効果的なようだ。

 もっとも、スコアが上昇するといっても最大3%程度なので、性能を上げる目的でこうした対策を行う必要性はあまり感じない。ただ利用にあたって、側面の吸気口をうっかり塞がないようにだけ、気をつけたほうがよいだろう。

スタンド両側面の吸気口はうっかり覆わないよう注意したい

通常利用はもちろんサイネージなどでの利用もありか

 本製品は、PCの置き場所にスペースを割けない環境や、ケーブルをすっきりさせたいニーズにぴったりだが、PC本体が外部から見えにくい構造を活かして、サイネージや受付、あるいは店頭デモ機としての利用も考えられる。

 本製品は、各種ポートや電源ボタンこそ外部に露出しているとはいえ、スタンド自体に不自然な厚みもなく、PCを内蔵しているようにはとても見えない。それゆえ悪意を持った第三者がPCに悪戯をしようと考えても、本体そのものがどこにあるか特定されず、手出しされにくいというわけだ。

 またUSBポートへのアクセスも容易なので、例えばUSBメモリ内に保存したデモムービーを再生するなどの用途にも対応しやすく、サイネージなどとの相性は良好だ。ケンジントンスロットの搭載など、盗難防止についても配慮されており、スタンドに装着した状態のまま取り付けが可能なのもよい。

 現時点ではマウントやスタンドについては複数がラインナップされているのに対し、ディスプレイは実質1製品のみということで、ディスプレイのラインナップ充実は喫緊の課題といえるが、それらの選択肢が増えれば、モジュール式の強みはさらに活かせるようになるだろう。今後が楽しみなフォームファクタと言えそうだ。

背面。普通のディスプレイに見える
横から見るとType-Cケーブルの存在に気づくが、あらかじめ構造を知っていなければ、PCがどこにあるのか想像もつかないだろう
Type-Cケーブルはやや余るので、いったん装着してから不要なぶんを巻き取ってやるとよい