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パナソニック、Webカメラで「こころと身体の元気度」を測定するサービス

きもちスキャン

 パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社は、モバイルノートPC「レッツノート」2019年夏モデル、および働き方改革支援サービス「きもちスキャン」について記者発表会を実施した。

 本稿では、発表会レポートとして、同社の働き方改革支援サービスについて紹介する。レッツノート新製品の詳細については、既報(モダンスタンバイに対応した新レッツノート「CF-SV8/LV8」)を参照されたい。

業務内容を可視化する「しごとコンパス」

 パナソニックでは、働き方支援サービスを2017年より開始しており、「可視化サービス」を2018年より提供してきた。2019年4月より、支援サービスのバージョン2として、可視化サービス改め「しごとコンパス」を提供している。

 登壇したパナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 営業企画部 部長の中島功太郎氏は、働き方改革を成功させるには、「社員の幸せ」と「会社の成長」の両方が必要になると説明。

 労働時間の短縮、生産性向上などだけを目的に実施しても失敗につながってしまうと述べ、社員自らが「仕事の見える化」で時間の効率的な再配置を行ない、本来の業務時間を拡大するとともに、創出された余剰の時間で新たなビジネスや新スキルの会得に挑戦するというかたちで、社員の自発的な向上心を生み出すことが成功のカギであるとした。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 営業企画部 部長 中島功太郎氏
パナソニックの働き方改革支援サービス
働き方改革の成功には「社員の幸せ」と「会社の成長」の両方が必要
成功のカギは社員の自発的な向上心

 しごとコンパスでは、社員と会社の「働く」をポジティブな方向へ転換させるサービスとして提供されており、PCの操作ログを見える化することで、長時間労働の抑制や生産性向上などを実現。すでに13,000台以上の端末で稼働実績があるという。

 2019年4月より働き方改革関連法が施行されたことで、罰則付きの残業時間上限規制が導入され、企業に対して社員の労働管理が厳しく求められるようになったほか、2020年の東京五輪に向け、首都圏の公共交通機関の混雑予想から、在宅業務などテレワークの導入拡大が進められていることを紹介。しごとコンパスでは、バージョンアップによってそれらの需要をサポートする機能が追加されている。

 具体的には、本当の就業時間と社員の申告した時間の乖離を「見える化」する機能で、アプリケーション単位で操作時間を記録し、勤怠管理システムと連携することで、これまではグレーな扱いで業務認定されていなかった作業なども業務としてカウントできるとしている。

 パナソニック社内での導入事例では、ファイルの命名規則を作り、作業ファイル名から業務を分類することで、減らせる業務を見つけ出して本来業務に使える時間を増やすことができたという。

しごとコンパス
社会背景
バージョンアップ内容
導入事例

活動量から元気度を可視化する「きもちスキャン」

 今回新たに提供される「きもちスキャン」は、しごとコンパスのオプションサービスとして提供されるもの。7月よりサービス提供が開始される予定。

 きもちスキャンは、これまでストレス推定サービスとして何度か披露されていたもので、パナソニック独自の「非接触バイタルセンシング技術」を応用し、レッツノートで「こころと身体の健康度」を測定するというもの。

 具体的には、レッツノートに搭載されたWebカメラで顔の映像を撮影し、血管の容量変化によって光の反射が変動することを利用し、独自の画像ノイズ除去技術を用いて脈拍を測定。その脈拍レベルの変動から自律神経の活動量を推定し、元気度を割り出すという。

 測定した元気度をもとに、ユーザーへ休憩を促したりするなどのアドバイスを行ない、セルフケアを推進するほか、管理者向けにはグループ全体のデータが提供され(個別データは開示されない)、部門ケアの参考にも役立てられる。

 心拍数からの活動量推定や、提示されるアドバイスなどについては、一般社団法人 日本疲労学会が開発に協力しているという。

 同社モバイルソリューションズ事業部 開発センター 所長の栂尾幸一郎氏は、日々の業務のなかで、状態をきめ細かに把握することで、働き方や健康のセルフマネジメントを推進できるとアピールした。

 サービスの利用にあたっては、Webカメラモジュールとの調整が必要な関係から、レッツノートの「CF-SV7/8」および「CF-LV7/8」が必須となっている。

同社モバイルソリューションズ事業部 開発センター 所長 栂尾幸一郎氏
新たなメンタルケアマネジメントスタイル
きもちスキャン
仕組み
脈拍レベルから元気度を推定
ユーザーと管理者の両方にデータを提示
測定の様子

 日本疲労学会理事で、放送大学 客員教授/横浜国立大学 名誉教授の小泉淳一氏は、同学会では、疲労を「肉体的/精神的活動または疾病によって生じた独特の不快感」と「休養願望を伴った活動能力の減退状態」というかたちで定義していると説明。

 外的ストレスに対し、身体は中枢自律神経線維網が免疫系/内分泌系/自律神経系を調整することで対応しようとするが、疲労というのはその調節がしきれなくなった状態であるとした。

 このうち、自律神経系については、欧米の共同研究成果として1996年に心拍数の変動から自律神経活動を推定する指標が発表されており、今回のきもちスキャンでもそれが活用されているという。自律神経系は交感神経と副交感神経の2つがあるが、ともに活動の低下が自律神経の活動低下につながり、両方が下がっている状態がもっとも活動が低いことになる。

 小泉氏は、こころスキャンのように、非接触でストレスとストレス反応に起因する自律神経活動低下の程度、ひいては疲労の程度が推計できるというのは、大きな進歩になるとした。

疲労とは「肉体的/精神的活動または疾病によって生じた独特の不快感」と「休養願望を伴った活動能力の減退状態(パフォーマンスが統計的有意に低下した状態)」
身体は中枢自律神経線維網が免疫系/内分泌系/自律神経系を調整して対応しようとする
心拍数から自律神経の活動推定できる
実測例
一般社団法人 日本疲労学会 理事 小泉淳一氏
「CF-SV8」EURO DRESSモデル
CF-LV8