.biz

日本HP、部品製造を低コスト化する新方式の業務用3Dプリンタ

~他社製3Dプリンタよりも10倍の生産量

Multi Jet Fusion技術採用の3Dプリンタ(写真)と、日本HP代表取締役社長執行役員の岡隆史氏(左)、HP Inc.3Dプリンティングビジネス担当 プレジデントのステファン・ナイグロ氏(中央)

 株式会社日本HPは20日、同社の3Dプリンティング技術「Multi Jet Fusion」による業務用3Dプリンティングソリューションの提供を発表した。

 Multi Jet Fusionは、ボクセル単位(3Dにおけるピクセル)で製造を可能とする技術で、従来の3Dプリント技術よりも高速で高品質な部品を作成できる。製造業などはこの3Dプリンタを導入することで、大幅なコストダウンを図れるとしている。

 国内では武藤工業株式会社とリコージャパン株式会社とパートナー契約を結び、Multi Jet Fusionを採用する3Dプリンタ「HP Jet Fusion 3D 4200」および「同3200」の展開を図っていく。前者は8月販売予定で価格は約3,800万円、後者は11月販売予定で価格は未定。

HP Jet Fusion 3D 3200

従来の3Dプリンタより10倍の生産能力を備える

 日本HPは今回の発表に合わせて、都内で記者発表会を開催。HP Inc.で3Dプリンティングビジネス担当でプレジデントを務めるステファン・ナイグロ氏と、日本HP代表取締役社長執行役員の岡隆史氏らが登壇して説明を行なった。

 ナイグロ氏はMulti Jet Fusionによる3Dプリンタについて、“第4次産業革命”に相当する革新的な技術であると豪語。1970年代から2010年代までに起きた第3次産業革命では、生産のオートメーションやITの発展が遂げられたが、今回はすべてがデジタル製造になる時代として、2進数の“0と1”だけでものができあがることで製造業の変革につながり、世界経済が一変すると述べた。

 その理由として、3Dプリンティング市場が2021年には181億ドル(約2兆円)規模にまで成長すると見込んでおり、製造業は3Dプリンティング技術で部品の調達を行なうことで、12兆ドル(約1,300兆円)規模以上に成長すると予測している。

 HPによれば、Multi Jet Fusion技術を使った3Dプリンタでは、他社製のものと比べて1日あたりのパーツ生産量が10倍もあり、パーツあたりのコストも最大50%削減できるという。また、6インチから110インチまでのプリント幅を持つ高い拡張性や、21μmの解像度によるボクセル単位の製造が可能になる。

 同技術採用の3Dプリンタを導入した部品製造などを行なっている米Forecast3DはMulti Jet Fusionによる製造は、CNC(コンピュータ数値制御)や射出成形に比べて、低コストであり生産スケジュールを1~2週間も短縮できたという。

Multi Jet Fusionは第4次産業革命を引き起こす
3Dプリンティング市場は2021年には181億ドル規模に
Multi Jet Fusion対応3Dプリンタでは他社製と比べて10倍の生産能力がある
部品の製造がアナログからデジタルに変わることでコストが減少
3Dプリンタ自身の部品を3Dプリンタが製造
従来の部品製造と3Dプリンタによる部品製造の違い

 Multi Jet Fusionでは、プラスチックの粉末素材と、フュージング/ディテーリングエージェントという2種類インクを使用するというインクジェットで30年以上培ってきた技術によって部品を作成するが、これは他社にはない完全に新しいものとしており、ボクセル単位での制御はHPのみとしている。

 Multi Jet Fusionはまだ発展段階にあり、将来的にはさらなる応用が可能という。ナイグロ氏はその例として、ボクセルレベルで回路が組み込まれたチェーンを作ることで負荷検知を行なえるIoTなチェーンを作ったり、通常は黒いギアだが摩耗してくると次のレイヤーである黄色が現われ、さらに摩耗すると赤が見えてくるといったボクセル単位ならではの部品を製造できるとしている。さらに金属材料といった新素材の研究も行なっているという。

将来的な構想

 日本HPの岡氏は、日本HPは製造業向けのワークステーションで市場の40%を、大型デジタル印刷機や輪転機で70%という大きなシェアを持っており、今回のMulti Jet Fusionによる3Dプリンタの展開は日本の市場にも合致していると自信を見せる。

 岡氏は3Dプリンティングによる部品の製造が可能になることで、製造業に変革が訪れ、日本の製造業の強化にもつながっていくとの見解を示した。

Multi Jet Fusion技術によって製造された部品