イベントレポート

Windows 8.1 Updateの詳細

 Microsoftは、米・サンフランシスコで開催された開発者向けカンファレンスBuild 2014において、Windows 8.1 Updateを正式に発表した。すでに、MSDNとTechNetのサブスクライバーダウンロードでアップデート用のモジュールや英語版の RTM with UpadateのISOファイル等が公開されている。一般向けには米国時間の4月8日に配布開始となる。ここでは、関係筋から入手したバイナリをもとに、現時点で分かっている情報をお伝えしたい。

Windows Updateとして提供されるWindows 8.1 Update

 Windows 8.1 Updateは、Windowsのバージョンを上げるものではない。Update後もバージョンはWindows 8.1と同様の「Version 6.3.9600」のままとなっている。具体的なアップデートの実体は、1つのWindows用更新プログラムと、3つの「Feature Pack」、そして、1つのWindows用修正プログラムで構成されている。このことは、アップデート後のWindows Updateで更新履歴を確認すれば分かる。

 Windows 8から8.1へのアップデートでは、ストアアプリを使ってのアップデートとなっていたが、今回は、おそらくWindows Updateによる更新として現環境をアップデートするものになると思われる。ただし、重要な更新として提供されるのか、オプションの更新プログラムとして提供されるのかは現時点では分からない。

Windows Updateの更新履歴。KB2919355が今回のUpdateだ。適用にかなりの時間がかかったために、いったん取り消したのだが、その履歴も残っている
Update後にバージョンを確認したが、これまでと同じだった

 藤本恭史氏(日本マイクロソフト Windows 本部本部長)によるブログで明らかにされているように、Windows 8.1 UpdateはKB2919355が、その本体のようだ。64bit版Windows 8.1用の更新ファイルは約700MBで、この中にこれまでの更新がすべて含まれるという。また、同ブログで言及されているように、Windows 8の環境からでも、Windowsストアからこのアップデートを入手することができるようだ。

 言わばService Pack 2ともいえるUpdateだが、多くのユーザーは、まさに知らないうちにアップデートを適用してしまうことになるだろう。このUpdateにより、Windowsは1GBのメモリと16GBのストレージで稼働するようになるという。Windows 8および8.1のシステム要件としては、メモリ1GB(32bit)または2GB(64bit)、HDDの空き領域が16GB(32bit)または20GB(64bit)だったので、実際の環境にクリーンインストールを試してみないことには、その結果は分からない。

タスクマネージャでメモリ使用量を確認してみた。Outlookなどが稼働中だが、これまでより大幅にコミットチャージが減っているように感じられる

 ただ、タスクマネージャーなどで確認してみると、典型的な状態の環境で、以前よりもメモリのコミットチャージが半分程度になっていることが分かる。メモリはあったらあっただけキャッシュで使い切るという点は従来同様で、リソースは潤沢にあるにこしたことはないが、Microsoftでは、このUpdateによってOEMがローコストデバイスをより作りやすくなるとしている。

クラシックデスクトップアプリとストアアプリをシームレスに往来

 アップデート後のスタート画面を見て、すぐに気がつくのは、スクリーンの右上だ。今まで自分のアイコンが表示されていた位置に検索とパワーのボタンが表示されていることだ。パワーボタンをタップすると、スリープ、シャットダウン、再起動のショートカットメニューが表示される。これらはチャームの設定にあった電源ボタンと同じものだが、チャームを出して設定をタップしてという手順を省略することができるようになった。

 ただし、InstantGo対応機ではパワーボタンは表示されないようだ。このあたりの区別には、ちょっとしたこだわりを感じる。InstantGo機は簡単にシャットダウンできてはいけないという主張が聞こえてくるようだ。

 クラシックデスクトップ環境に移動すると、タスクバーにストアのストアアプリがピン留めされているのに気がつく。タップすると、クラシックデスクトップからダイレクトにストアアプリを開くことができる。

スタート画面の右上にはパワーと検索のボタンが装備された
パワーボタンをクリックするとショートカットメニューが表示され、すぐにシャットダウンやスリープに移行できる
デスクトップのタスクバーにストアがピン留めされている。他のストアアプリも好きなようにピン留めすることができる
タスクバーにピン留めしたストアをタップするとモダンUIでアプリが開く

 そして、さらに気がつくのは、ストアアプリを開いた直後、ストアアプリが表示されている状態で、上部にはタイトルバー、下部にはクラシックデスクトップのタスクバーが、表示されていることだ。また、タイトルバーの右端には閉じるボタンと最小化ボタンが用意されていることが分かる。まるで最大化された従来型アプリのようだ。

 もし、マウスやタッチパッドが接続されている環境であれば、マウスポインタをスクリーン上部に突き当てればタイトルバー、下部にもっていけばタイトルバーやタスクバーがいつでも再表示される。それだけで、マウスの移動量はずいぶん短くなるに違いない。

マウスポインタをスクリーン下部にもっていくとタスクバーが表示され、タスクを切り替えることができる。従来の左側タスクリストも健在だ
マウスポインタをスクリーン上部にもっていくとタイトルバーが表示される。右端に閉じるボタンと最小化ボタンが用意されている

 ストアアプリのタスクバーで最小化ボタンをタップすると、もとのクラシックデスクトップ環境に戻る。最小化なのでアプリは終了したことにはなっていない。マウスポインタをボタンに重ねると、まるでデスクトップアプリであるかのようにそのサムネールが表示される。

 これらのふるまいは、タスクバーのプロパティで設定することができる。「Windowsストアアプリをタスクバーに表示する」という項目が用意され、ここがデフォルトでチェックされているようだ。

デスクトップでは、タスクバー上のボタンにポインタを重ねると、他のデスクトップアプリ同様に起動済みのアプリのサムネールが表示される
タスクバーのプロパティには「Windowsストアアプリをタスクバーに表示する」が新設されている

マウスとキーボード操作を改善

 細かい点ではあるが、Wi-Fiネットワークの一覧において、接続先の長押しや右クリックで表示されるショートカットメニューが復活、「ネットワークの削除」などが、その場で簡単にできるようになっている。8.1でなくなってしまっていた機能だ。一度記憶させたネットワークを忘れさせるのは大変で、こんな記事まであったくらいだ。まるで不便だという声がMicrosoftに届いているかのようだ。

 マウスとキーボードによる操作が改善されているのは、今回のUpdateの特徴だ。タッチに対応した環境ばかりではないことを考慮し、例えば、マウスポインタをスクリーン上部に突き当てて静止させると、ストアアプリにもタイトルバーが表示されることはすでに説明した通りだ。

 ストアアプリに新設されたタイトルバーには、通常のウィンドウと同様に、左端にコントロールメニューがある。キーボード操作ならAlt+スペースで表示されるし、マウスで右クリックしても同じショートカットメニューが表示される。ここに「左に分割」「右に分割」が用意され、スクリーンを分割して複数のアプリを同時に表示することができる。もちろん、左右どちらかにスナップさせたあとは、区切りのバーをドラッグすることで分割位置を変更することもできる。タッチでは簡単にできたことだが、マウス操作が煩雑になりがちだったところが、随分整理されていることが分かる。

 また、スタート画面では、表示されているタイルを右クリックすると、ショートカットメニューとして、「スタート画面からピン留めを外す」、「タスクバーにピン留めする」、「アンインストール」、「サイズを変更する」が表示され、その場で操作ができるようになった。これまでは、右クリックしても、タッチで長押ししたときと同様に、下部にアプリケーションメニューが表示されていたので、マウスの移動距離が長く手間がかかっていた。これもまた、細かい点ではあるが、マウス操作を考慮した改良だ。

 ちなみにSkyDriveも、OneDriveと名前が変わっていることを追記しておきたい。

ネットワークの接続先を右クリックするとショートカットメニューが表示される。8.1になって、この機能がなくなっていた
ストアアプリもタイトルバー左端のコントロールメニューで、左右スナップができる
真ん中のバーをドラッグすることでサイズも自由になる
スタート画面のタイルをマウスで右クリックすると、ショートカットメニューが表示されるようになった

バージョンアップもシームレスに

 Windows 8のRTMが2012年8月、8.1の公開が2013年10月、そして、ほぼ半年が経過したところで今回のUpdateと、Windowsは、Microsoftのいうところのラピッドリリースを重ねている。しかも、Windows Updateでユーザーが強い意識をもたなくても自然にアップデートできる。4月9日は、4月の第2火曜日で、いわゆる月例セキュリティ更新プログラムの公開日でもある。つまり、ユーザーは、毎月恒例のアップデートの一環としてバージョンアップを済ませてしまうかもしれない。

 今後、Microsoftがこの方式でOSの改良をエンドユーザーにもたらすようになれば、例え有料のメジャーアップデートのときにも、ユーザーの環境は最新のものになっていて、バージョンアップのリスクを最低限のものにすることができるかもしれない。そして、そのことがOS環境の断片化を回避することにつながる可能性もある。

(山田 祥平)