トピック

DeNAがdynabookのモバイルノートを社内標準機として導入した理由

~AMD Ryzenがもたらす、重量875g(最軽量構成時)で高性能かつ長時間駆動、そしてコストの低さ

株式会社ディー・エヌ・エー IT本部 IT戦略部 エンプロイーエクスペリエンスグループの馬場田健一氏(右)と同エンジニアの秋葉慶吾氏(左)

 株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、従業員が利用するPCとして、AMD Ryzen™シリーズを搭載するDynabook株式会社のモバイルノートPC「dynabook GA83」を100台以上導入した。どういった点を評価して、この製品を選んだのか?その経緯を担当者に聞いてきた。

AMD Ryzen 7000シリーズ搭載のビジネスモバイルノートPC「dynabook GA83」

 DeNAは、スマートフォンやブラウザ向けゲームの開発/運営を主軸としつつ、ソーシャルメディアの運営、ヘルス・メディカル関連事業、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」やB.LEAGUE所属のバスケットボールチーム「川崎ブレイブサンダース」の運営を中心としたスポーツ事業など、さまざまな事業を手がける。

 同社従業員はほとんどがPCで業務を行なっている。そのDeNAが、新たに導入したのが、dynabook GA83だ。DeNAでは、同製品をすでに100台以上導入しており、今後もさらに数を増やす計画だという。

dynabook GA83

 dynabook GA83は、性能に妥協することなく、気軽に持ち出せる圧倒的な軽さや優れた堅牢性、長時間のバッテリ駆動を目指したビジネスモバイルノートPC「dynabook G」シリーズの法人向けモデルだ。

 薄さ17.9mm、重量約875g(最軽量構成時)と、13.3型フルHD液晶搭載モバイルノートPCとしては薄型で軽量なボディは、軽さと強度を兼ね備えるマグネシウム合金製。カバンへの収納性に優れるのはもちろん、持ち歩く時の負荷を軽減すると同時に、落下や振動、加圧など自社基準の厳しい耐久性試験にも耐える優れた堅牢性も兼ね備えているため、安心して持ち歩ける。

 なお、今回DeNAが導入したモデルの重量は約956gとなっている。

 プロセッサには、AMD Ryzen™ 7 7730UプロセッサまたはAMD Ryzen™ 5 7530Uプロセッサを選択可能。冷却/放熱技術や筐体設計技術、高速化処理技術を駆使したDynabookの独自技術「エンパワーテクノロジー」も適用し、AMD Ryzen™ 7000シリーズのピーク性能をより長時間安定して引き出せる点も見逃せない特徴だ。

 それでいて動画再生時は約7.0~9.5時間、アイドル時は約13~23時間の長時間バッテリ駆動(※JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)で計測)を実現しているのは驚異的とすら言える。

dynabook GA83は、AMD Ryzen™ 7 7730UプロセッサまたはAMD Ryzen™ 5 7530Uプロセッサを選択可能

 このほかにも、顔認証カメラと指紋センサー、カメラへのプライバシーシャッター搭載といったセキュリティ機能や、HDMI出力や有線LANポートも含めた豊富な拡張ポートの用意、「AIカメラエフェクター」、「AIノイズキャンセラー」、「ワンタッチマイクミュート」などのオンラインコミュニケーションに便利な機能の搭載など、法人向けモバイルノートPCとしての基本性能も申し分ない。

軽さとバッテリ駆動時間を重視して製品をチェック

 ではなぜ、DeNAはdynabook GA83を社内の標準機として導入することになったのか。その経緯について、同社IT本部 IT戦略部 エンプロイーエクスペリエンスグループの馬場田健一氏と、同エンジニアの秋葉慶吾氏に話を伺った。

 2人はいずれも、いわゆる情報システム部門に相当する部署に所属。同社社員が利用するPCなどの機器選定や、OS/アプリケーションへのパッチ導入などの保守運用管理、従業員からの問い合わせ対応などを行なっている。

 DeNAは、ゲームの開発・運用をはじめとしたインターネット/IT関連企業ということもあり、従業員がPCを利用する割合が高く、利用時間も一般的な企業のPCよりも長いそうだ。それだけPCへの負荷が大きいと消耗も早く、DeNAではPCを2~3年という比較的短い期間で入れ替えている。多くの従業員がリモートワークを行なっており、オフィスへの出社率は3割程度。半数近くの従業員が常にPCを持ち歩いている。

 それまで利用されていたノートPCは、重量が1.5kgほどと重かったため、特に女性の従業員から持ち運びに負担がかかるという声も多く寄せられていた。

 また、PCの平均負荷が高いことでバッテリの消耗も激しく、ある程度使っていると30分のオンラインミーティングでもバッテリが持たなくなるという声も多く挙がっていたそうだ。

 そういった従業員の声を受けて、馬場田氏と秋葉氏は、軽さとバッテリ駆動時間の2点を特に重視しながら、3カ月ほどの期間をかけて新たなPCを選定した。

マシンの選定にあたっては実機を借りてさまざまな検証を行なった

 今回の選定では、国内外の10社からPCを取り寄せて検証を行なっている。検証内容としては、まずは互換性。従業員が利用しているアプリが正常に動作するのはもちろん、DeNAで利用しているメジャーな管理ツール、セキュリティツールなどが正常に動作することを確認。

 バッテリ駆動時間についてもさまざまなテストを行なったそうだが、その1つがZoomを使ったテストで、dynabook GA83では3.5時間ほどZoomを連続利用してもバッテリが切れることはなかったという。

 このほかにも、ベンチマークテストでプロセッサやストレージのパフォーマンスを検証したり、実際の実機を使ってみてキーボードの打鍵感やデザイン的なところなども細かくチェックし、最終的に選定されたのがdynabook GA83だった。

 馬場田氏によると「軽快に持ち歩けるボディの軽さや堅牢性、AMD Ryzen™ 7000シリーズ搭載による優れたパフォーマンス、長時間のバッテリ駆動といった点が特に大きかった」とのことだが、最終的に選定された理由はそれだけではなかった。

最軽量構成時で約875gという軽さなので、持ち運びも楽

細かな部分の完成度の高さも選定要因

 たとえば、dynabook GA83のディスプレイは180度開閉し、水平にまで開いて利用できる。これは対面でのプレゼンや打ち合わせなどに便利だが、馬場田氏はそれ以外の利点もあると教えてくれた。

 「実は過去に、ディスプレイが180度開かないノートPCで無理やりディスプレイを開こうとして破損する例が何度かありました。dynabook GA83ならディスプレイが180度開くので、そういった心配がありません」(馬場田氏)。

180度開くディスプレイは、使い勝手だけでなく、壊れにくさにも寄与しているという

 また、DeNA社内ではネットワーク接続にほぼ100%無線LANが利用されているが、Wi-Fi 6E準拠の無線LANを内蔵するdynabook GA83ではネットワーク切れなどの問題も発生していない。

 そして、従業員が有線LANポートを使うことはまれなのだが、PCが納入されて最初にキッティングを行なう時には有線LAN経由でインストールを行なうため、管理者にとって有線LANポートが備わっているのは非常にありがたいのだという。

多めのインターフェイスも特徴。左側面に、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、HDMI出力、USB 3.2 Gen1、マイク入力/ヘッドフォン出力
右側面に、Nano SIMスロット(オプション)、microSDカードスロット、USB 3.2 Gen1、Gigabit Ethernet
キッティングを行なう時には有線LAN経由でインストールを行なうため、有線LANポートはありがたいと馬場田氏

 ZoomなどのWeb会議アプリ利用時に、マイクで拾った音声からバックグランドノイズを除去する「AIノイズキャンセラー」や、カメラで捉えた人物の明るさや位置を補正したり背景を加工する「AIカメラエフェクター」なども、リモートワークで便利に活用できる機能として注目したそうだ。

 このほか、キーボードやタッチパッドについて馬場田氏は、個人的な感想と前置きしながら「打鍵感やタッチパッドともに使いやすい」と感じたそうだ。

 キーボードやタッチパッドの使い勝手の印象は個人差が大きい部分だが、従業員が利用するPCの保守管理を行ない、常日頃からさまざまなPCに触れている馬場田氏や秋葉氏の印象は、基準として大きな意味を持つはずだ。

最終的にはQCDを重視してAMD Ryzen™シリーズ搭載のdynabook GA83を選択

 DeNAで導入機器を選定する場合、「QCD(Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)」を最重視して選定を行なっているそうだ。実際、今回dynabook GA83は、QCDのバランスが高いレベルにあったという。dynabook GA83のQCDバランスを高めている大きな要因は、AMD Ryzen™ 7000シリーズを搭載している点だと、馬場田氏。

 まず大きな理由として馬場田氏が挙げたのがコストだ。パフォーマンスがほぼ同じ場合でも、AMD製プロセッサを搭載するPCの方が、競合製プロセッサ搭載PCに比べて安い場合が多く、dynabook GA83についてもそれは当てはまる。購入数が多くなるほど価格差は大きくなるため、企業にとって無視できない事実だ。

 とはいえ、コストは最初のきっかけでしかなかったという。

 実は馬場田氏は、選定を行なう前まではAMD製プロセッサについて、正常に動作しないアプリがあるのではないかというネガティブな先入観もわずかにあったそうだ。しかし、実際にdynabook GA83を検証すると、社内ツールや従業員が利用するアプリなど、すべて問題なく動作することを確認できた。

 そして、dynabook GA83は、従業員からも非常に好評を得ているという。

 「すでに100台以上のdynabook GA83を導入して従業員が使っていますが、スペックに関する不満はないですし、快適に使ってもらっています」(馬場田氏)。

 また秋葉氏によると、dynabook GA83は、一般ビジネス職だけでなく、ゲーム事業部やセキュリティ事業部などでも利用されているが、優れたパフォーマンスを考慮し、従来までの社内PCではスペック的に耐えられなかった業務にも導入していく予定という。

ビジネスPCでのシェアを大きく伸ばしている「AMD Ryzen™」シリーズ

日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 部長の楊博光氏(左)と同セールスエンジニアリング担当マネージャーの関根正人氏(右)

 今回、dynabook GA83にも搭載されているプロセッサ、AMD Ryzen™シリーズについて、日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 部長の楊博光氏と、同セールスエンジニアリング担当マネージャーの関根正人氏にも話を聞いた。

 ここ数年、AMD Ryzen™シリーズ搭載PCは法人市場でもシェアを大きく伸ばしている。楊氏によると、IDC調査でAMD Ryzen™シリーズ搭載のノートPCは国内シェアが12%程度に達しているという。5年ほど前は1%にも満たなかったことを考えると、かなりのペースでシェアを伸ばしている形だ。

 その原動力となっているのが、AMD Ryzen™シリーズが採用するCPUアーキテクチャ「Zen」だ。

 Zenは、AMDが4年の歳月をかけてゼロから作り上げたCPUマイクロアーキテクチャだ。2017年に登場した初代AMD Ryzen™シリーズで初めて採用され、現在では第5世代となる「Zen 5」を採用した「AMD Ryzen™ AI 300」シリーズが投入されている。

 AMD Ryzenの躍進を支えているのが、その優れた性能と電力効率の高さにある。

 関根氏によると、Zenは世代を重ねるごとにクロックあたりの処理能力を10%以上高めているという。それを可能としているのが、Zenアーキテクチャの改良と、台湾の半導体製造企業、TSMCの最先端プロセステクノロジだ。

 「我々は以前よりTSMCのユーザーで、その最先端プロセステクノロジを利用できる立場です。そのため、より微細なプロセステクノロジでAMD Ryzenを製造することで、性能を高めつつ半導体のサイズを小型化し、電力効率も高められるのです」(関根氏)。

 さらに関根氏は「dynabook GA83が搭載するAMD RyzenはZen3ベースで、これはスーパーコンピュータのTOP500で世界一となる”Frontier”に採用されているEPYCプロセッサと同じアーキテクチャです。世界一のスーパーコンピュータと同じアーキテクチャのCPUコアが6個も入っていると考えれば、性能の高さに納得いただけると思います」と説明。

 加えて最先端の微細なプロセステクノロジで製造することで消費電力も低くなり、バッテリ駆動時間を延長できるため、ノートPCのプロセッサとして最適だと胸を張る。

 同時に、AMDが持つGPUテクノロジもAMD Ryzenの魅力を高める要因となっている。

 AMDは「RDNA」と呼ばれるグラフィックスアーキテクチャをベースとするGPU「Radeon」シリーズを手がけている。AMD Ryzen™シリーズは、そのRDNAをベースとするGPUを内蔵。これにより、統合プロセッサながら優れたグラフィックス描画性能を実現している。

 先ほどDeNAの馬場田氏が、dynabook GA83をより高いパフォーマンスが要求される業務にも使っていきたいと説明したのには、Radeonシリーズの優れたCPU処理能力だけでなく、GPUの優れた描画能力も背景となっている。

 楊氏も、「ZoomやMicrosoftのTeamsに限らず、実は今ではオフィスアプリなど業務で使われているアプリの多くが積極的にGPUを活用してパフォーマンスを高めています。この点もAMD Ryzenにとってビジネスでも強みになる」と説明した。

 また、近年は企業でのAI活用が拡がりつつあるが、この点について楊氏は「現在はAIはまだ創世記」としつつも、Microsoft製品を始め、さまざまなアプリでAI活用が広まり、今後はPCの性能基準としてAI処理能力が重要になってくると指摘。そして、AI処理もGPUの得意分野で、CPUを利用するよりも高性能かつ低消費電力でAI処理が可能という点もAMD Ryzenの強みになると強調した。

 最後に、今回AMDが法人市場にどのように取り組んでいこうと考えているのか、楊氏と関根氏に聞いてみた。

楊氏: とにかく、お客様の満足度を上げるということに尽きます。今回DeNA様に採用していただきましたが、今後も引き続き採用していただけるように、Dynabook様とも連携してサポートさせていただき、リピーターになっていただければと思います。そして、お客様が求めているスペックや安心感をお客様と密に連携してご提供できるのがAMDの強さと考えています。

関根氏: 我々AMDは半導体ベンダーですが、エンドユーザーのお客様にも直接出向いて説明させていただくのも1つの安心感だと考えています。それと、AMD Ryzen以降はロードマップ通りに製品をご提供できています。まさにその部分でお客様の安心感、信頼関係につながっていると考えていますし、今後ともそういった部分を背景に、さらにシェアを伸ばしていきたいと思います。

dynabook GA83は高レベルでAMD Ryzenをまとめ上げたモバイルノートだ

 以上の通り、dynabook GA83についてまとめると、元々高性能なAMD Ryzenをさらに高いレベルでまとめ上げたモバイルノートだと言える。Dynabook独自のエンパワーテクノロジーにより、AMD Ryzenの持つ高い能力を遺憾なく発揮できるだけでなく、堅牢性、最軽量構成時で約875gという軽さ、そして最大約9.5時間(動画再生時)/約23時間(アイドル時)駆動のバッテリ時間(※JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)で計測)まで実現させたのは驚異的とすら言える。

 加えて、コストに敏感な企業が大量導入する際にもネックにならない価格となっている。あと1年足らずでやってくるWindows 10のサポート終了を前にPCの入れ替えを検討している企業/ユーザーに本稿が参考となれば幸いだ。