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MSIノートPCイメージキャラクター「美星メイ」の新MV、実はMSIのNVIDIA StudioノートPCで制作されていた

3Dグラフィックスを使ったMVはどうやって作られているのか?

 MSIのノートPCイメージキャラクター/オフィシャルVTuberの「美星メイ」。MSIノートPC製品の紹介はもちろん、ゲーム実況、歌ってみた、料理等の企画動画・配信、さらにはMSIのTGSブースイベントへの出演など、精力的に活動を行なっている。その美星メイが新たなMV(ミュージックビデオ)を公開した。実はこのMV、自身がプロモーションするMSI製のクリエイター向け最新ノートPCを使って多くの部分が制作されるという面白い試みを経て完成に至っている。

 本稿ではこの美星メイの新作MVの制作の裏側に迫る。モーションを担当したデザイン・グラフィック制作会社のスタジオポッセ、映像の演出や編集を担当した個人クリエイターのミズナイオリ氏に話を伺った。

 3Dグラフィックスで表現されたキャラクターが歌い、踊るMVは今や人気ジャンルの1つだが、どうやって作られているのか、気になっている方も多いことだろう。またNVIDIA Studio認証済み、しかもCore Ultraを搭載する最新のMSIノートPCなら、本格的なMV制作が可能なのか。これから3Dでの映像制作を行なうには、どのようなPCがベストなのかも合わせて伺った。

【3D MV】 SOS / Covered by 美星メイ 【歌ってみた | MSIオフィシャルVTuber】【シャニマス】

繊細なモーションを表現するスタジオポッセ

 モーション(キャラクターの動き)の調整を担当するスタジオポッセは以前から美星メイのプロジェクトに深く関わっており、デビュー時に3Dモデルの制作を担当している。今回のMVで使った3Dモデルも同社が以前制作したものだ。

 今回のMVでは、モーション自体はmobiusP氏が同じ楽曲を使った別のMV用に制作したものをベースにさせてもらっている。実際に動かすモデルが異なるため、mobiusP氏が制作したモーションをそのまま美星メイに適用すると、不自然な仕上がりになってしまう。そこで美星メイに合わせたモーションの調整が重要になる。

 この調整作業を行なったのがスタジオポッセ所属のアニメーターである菊地宏佳氏だ。今回の作業には、MSIの最新ノートPC「Prestige 16 AI Studio B1Vシリーズ」(型番:Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP)を使用してもらった。

 本製品はCPUにCore Ultra 7 155H(16コア、22スレッド)、GPUにGeForce RTX 4060 Laptop GPU、メモリ32GB、16型で(2,560×1,600ドット)の高解像度液晶とハイエンド仕様だ。

 また、MSIのノートPCでは、製品名に"Studio"と付く製品は原則として"NVIDIA Studio認証”を受けている点にも注目。この認証を受けているPCは、クリエイティブアプリ向けにチューニングされた”Studio”ドライバが導入されており、ハードの作りもクリエイターの作業を意識したものとなっている。

スタジオポッセのアニメーター菊地宏佳氏。今回はモーションの調整を担当している
スタジオポッセは美星メイの3Dモデル制作を担当。美星メイのプロジェクトでは、このモデルをチューニングしながらさまざまな動画や静止画などで使っていく。3Dモデルだがあえて2Dっぽく仕上げてあるのがポイント
作業にはPrestige 16 AI Studio B1Vシリーズ(型番:Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP)を使用した。Intel最新CPUのCore Ultra 7 155Hと、NVIDIAの定番GPU、GeForce RTX 4060 Laptop GPUを搭載するハイスペックノートPCだ

--今回のMV制作において3Dモデルの調整を担当されたとのこと。どのような作業をされたのか、詳しくお聞かせください。

菊地氏:今回の3DキャラクターのMV制作では、題材となる楽曲のアクターモーション(モーションアクターと呼ばれるリアル演者の動き)のデータを3Dキャラクターに流し込んで、アニメーションを編集する作業を担当しました。指のポーズデータを作ったり、アクターモデルとキャラクターモデル(美星メイ)の体格差から起こる身体との衝突を改善したり、細かいノイズの除去などを行ないました。

--3Dキャラクターを使ったMV制作は、今回のように分業して進めることが多いのでしょうか。

菊地氏:そうですね。3Dキャラクターがなければモデラーが入りますし、そのモデルの元になるデザインを作るためのデザイナーが入ることもあります。今回は最初から3Dモデルとモーションデータがありましたので、アニメーターの私と動画を編集するミズナイオリ氏の作業がメインとなりました。

--今回の作業で使用したソフトと作業内容を教えてください。

菊地氏:今回は別のスタジオでモーションアクターさんが取ったデータを使わせていただきました。そのデータを「MotionBuilder」と呼ばれるアニメーション編集ソフトで3Dキャラクターに流し込みます。アクターさんが実際に踊って撮ったモーションをリターゲットと呼ばれる工程を経て、キャラクターライズ化という骨を定義化して共通規格に持って行くことで腕や腰、頭の動きなどをリンクさせて美星メイの3Dモデルとモーションを同期させます。これが流し込みという作業になります。

棒人間のようになっているのが人間のモーションデータ。MotionBuilderを使ってこれをキャラクターに合うように調整していく

菊地氏:単純に流し込んだだけですと、指であったり、体格の違いからノイズ(に見える箇所)やめり込みなど不都合が残ってますので、キャラクターの骨格と言えるヒューマノイドの”リグ”を調整していきます。

 たとえば、指でハートマークを作るアニメーションがありますが、未編集のデータを美星メイの3Dモデルに流し込んだ場合、きれいなハートにならなかったので、それを調整したり腕の位置を直したりといった作業を全編に渡って行ないます。

指の形や腕の位置など全編に渡って編集

菊地氏:次は、動画編集を担当するミズナイオリ氏が「Unity」をメインに使うことを踏まえて、MotionBuilderで編集したアニメーションデータをUnityでも稼働するように調整します。

 Unityには美星メイの髪の毛やスカートが揺れる設定も組み込まれており、問題なく動くか確認し、これらを全部セットにするパッケージング化を行なってミズナイオリ氏にお渡ししました。同じUnityの環境であれば、揺れモノが乗った状態で踊っているデータがそのまま素材として使える状態になります。

MotionBuilderのアニーメーションデータをUnityで読み込み、髪の毛やスカートの揺れが問題なく動くか確認してミズナイオリ氏に渡した

--今回の作業で特にこだわったポイントはどこでしょうか?

菊地氏:一番気を遣ったのは指のアニメーションですね。MotionBuilderで調整した指の動きをUnityに読み込ませた際に、最初はちゃんと再現できていませんでした。Unityには、人体に不自然な回転情報を制限することで人間らしいアニメーションを提供するヒューマノイドアバターというシステムがあるのですが、それが悪い方向に働いてしまって。回転制限がかかることで親指の反りであったり、手首も若干制限がかかってしまった結果、こちらの想定したハートマークが出せませんでした。

ヒューマノイドアバターの回転制限がかかることでMotionBuilderではできていたハートマークができなくなってしまったという(上)。調整後(下)は綺麗なハートに

菊地氏:そのため、ヒューマノイドアバターを止めて、ジェネリック式を採用することにしました。そうすることで指の動きは想定通りになりましたが、揺れモノなど各種スクリプトはヒューマノイドアバターを使うことを推奨しているので、うまく動くか心配でしたが、検証の結果、問題ありませんでした。ハートマークは一番の見せ場ですので、こちらが想定した完全な状態でミズナイオリ氏に提供できるようにがんばりました。

--MVでの表情の変化はどちらが担当されたのでしょうか?

菊地氏:いただいたモーションに表情データは入っていないのですが、美星メイの3Dモデルを制作した際に作った表情のパターンがあります。喜怒哀楽や、あ、い、う、え、おの口パクなどがあり、これらをミズナイオリ氏が適宜選択して付けるという流れになっています。

表情のパターンは感情や口の動きに合わせて複数用意されており、Unity上から選べるようになっている

--MSIのPrestige 16 AI Studio B1Vシリーズを作業に使ってみて、どのように感じましたか?

菊地氏:MotionBuilderもUnityも処理は重いのですが、Prestige 16 AI Studio B1Vでは問題なく動作しました。性能不足のPCでは、アニメーションデータの編集や動画編集で時折フレームが飛んだり、固まったりといったことが起きます。2分ほどのアニメーションデータも問題なく再生できましたので、かなり快適ですね。

 それと、ノートPCのフラットなデザインのキーボードは使いにくい印象があったんですが、これは単体のキーボードと遜色ないキーの大きさです。それからこれは本当に微妙な感覚なんですが、キー同士の間隔もちょうどよく、誤入力せずに問題なく使えました。

CPUにはCore Ultra 7 155H(16コア、22スレッド)、GPUにはGeForce RTX 4060 Laptop GPUを搭載と高いスペックを備える。EVOロゴはIntelお墨付きの“高性能ノート”であることの証だ
クリエイター向けの性能、特徴、機能性を持つNVIDIA Studio認証済みでもあるため、NVIDIA Studioドライバが標準でインストールされている
キーボードは日本語配列。テンキーやバックライトも備わっている

--2,560×1,600ドットで色域がDCI-P3相当という色の再現性も高いディスプレイはどうでしょうか?

菊地氏:普段はフルHD解像度のモニターを2台使って作業しています。Prestige 16 AI Studio B1Vを立ち上げて最初本当に驚いたのが、色彩が非常にきれいで、特に黒がハッキリ出ている点です。液晶モニターには、暗い部分のコントラストが曖昧なものもあります。3Dのライティング判別にも色味は非常に重要な部分になりますが、これなら実用的に問題ないと感じました。解像度の高さについては、MotionBuilderのUIにある大量の小さな文字が潰れずに認識できるのが素晴らしいですね。

解像度は2,560×1,600ドットと高い。リフレッシュレートは60Hz

--高負荷時の動作音はどうでしょうか?

菊地氏:正直に申し上げますと、CPUの稼働率が上昇すると駆動音はけっこう出ている気がしますが、さほど大きくはないという印象です。負荷がかかっていない場面では、全くもって静かですね。

ゲーミングノートPC向けに開発された強力な冷却システム「Cooler Boost 3」を搭載。底面にある2基のファンで吸気を行ない……
背面と側面から排気してCPUとGPUを効率よく冷却し、高負荷な状態が長時間続いても快適に動作するようになっている
18.95mmの薄型ボディだが、右側面にはGigabit Ethernet、SDカードスロット、ヘッドセット端子を搭載
背面にはHDMI出力、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2 Type-C(映像出力、USB PD対応)、Thunderbolt 4端子とインタフェイス類も充実

--最後にクリエイター用のPCを探している方に向けて、PC選びのポイントを簡単にアドバイス願います。

菊地氏:作業する内容の効率化につながる性能を起点にPCを探すのがいいと思います。たとえば、グラフィッカーであれば、モニターの解像度であったり、発色のレベルを重要視します。動画編集者やアニメーターであればGPUとメモリですね。少なくともPrestige 16 AI Studio B1Vのスペックがあれば、今回のようなMV制作を十分対応することは可能です。実際に今回の作業工程は、全く問題なくこなすことができました。

ハイスペック環境だからできる表現を提案。映像制作担当のミズナイオリ氏

 スタジオポッセが制作した3Dモデルとモーションのデータ、さらに、別の音楽担当クリエイターが制作した楽曲データを受け取って、MVを仕上げたのがミズナイオリ氏だ。

 ミズナイオリ氏は映像制作、作曲、DJ、VJ、イベントオーガナイズとマルチに活動している個人クリエイター。今回の作業には、MSIの最新ノート「Stealth 14 AI Studio A1Vシリーズ」(型番:Stealth-14-AI-Studio-A1VGG-2001JP)を使用してもらった。

 この製品はCPUにCore Ultra 9 185H(16コア、22スレッド)、GPUにGeForce RTX 4070 Laptop GPU、メモリ64GB、SSD 2TB、14型で(2,880×1,800ドット)の高解像度パネルと、コンパクトなボディにハイスペックを凝縮したモデルとなっている。

 この機種もNVIDIA Studio認証を受けたクリエイター向けのモデルなのだが、MSIでは”クリエイティブゲーミングノートPC”と銘打っており、ゲームプレイもできるクリエイター向けモデルという位置付けだ。ゲームとクリエイティブではCPU、GPU、ストレージの性能、堅牢性などの面で重視されるスペックが重なることも多いため、MSIは両方狙える製品を打ち出してきたというわけだ。

 このノートPCを使ってMV制作はどのように進んだのだろうか? ミズナイオリ氏に聞いた。

個人クリエイターのミズナイオリ氏。映像制作は実写、3Dとも行なっているという
作業にはStealth 14 AI Studio A1Vシリーズ(型番:Stealth-14-AI-Studio-A1VGG-2001JP)を使用した。14型サイズながらIntel最新CPUのCore Ultra 9 185Hを搭載するかなりのハイスペックノートだ

--今回のMV制作において演出や映像の編集を担当されたとのこと。どのような作業をされたのか、詳しくお聞かせください。

ミズナイオリ氏:担当したのは、キャラクターを立たせるライブのステージと、そのバックに映している映像の制作、そして受け取った音楽とモーションデータを合わせて、光源を当てるといった作業を経て、1本のMVに編集する作業になります。

--今回の作業で使用したソフトと作業内容を教えてください。

ミズナイオリ氏:メインで使っているのはUnityです。さらに、ステージのバックに流れる映像の制作にAdobeのAfter Effects、細かい画像素材の処理でPhotoshop、最終的な映像の調整などでPremiere Proを使っています。

Unityをメインに映像制作を行なっているという

--今回の作業で特にこだわったポイントは?

ミズナイオリ氏:今回使用したStealth 14 AI Studio A1Vは、ノートPCとしてはとんでもなく高いスペックなので、Unityでも最も負荷の高いHDRPという環境で作業しました。だからこそ可能なライトの当て方やキャラクターの立て方とかに一番こだわりました。

 せっかくハイスペックのノートPCを使うので、MSIさんと相談して行く中で、当初想定していた演出よりもリアル寄りの表現を提案させていただきました。このスペックだからできる表現にしたいと思ったんです。

超ハイスペックノートPCを使うので、よりリアルな演出を目指そうと提案したミズナイオリ氏

ミズナイオリ氏:ステージの下にライトの光を反射させると処理の負荷がかなり高くなります。普段だとこの手のライトは事前に(映り込みを絵として)書き込んで処理を軽くさせるんですが、今回は全部リアルタイム処理でライトを当てることができました。合わせてキャラクターにもリアルタイムでライトを当てることができたので、立体感やリアリティの向上につながっていますね。

CPUにはCore Ultra 9 185H(16コア、22スレッド)、GPUにはGeForce RTX 4070 Laptop GPUを搭載と14型のサイズとは思えないハイエンド構成。こちらもNVIDIA Studio認証済みだ

--スタジオポッセでは表情を付けず、データだけ用意されたとのことでしたが、ミズナさんが表情を付けるときに気にかけた点はあるのでしょうか

ミズナイオリ氏:映像を動かしながら、こんな感じかなとリアルタイムで付けました。元のMVを見過ぎると先入観にとらわれてしまいそうだったので、参考程度にしてあとはもう自分のオリジナルで作らせていたただきました。演出についても美星メイなら、こんな感じのステージで歌うのかな、というのを考えながら入れていきました。

--今回に限らず、3Dキャラクターを使ったMVを使っているときにこだわっている点はありますか。

ミズナイオリ氏:最初から最後までライティングの戦いだと思っています。いくら背景が豪華でも照明の当て方が下手だと盛り上がりに欠けてしまいます。私の場合は、ライトをもう少しこっちから当てようみたいな作業が全体の6割ぐらいを占めますね。

ライティングに最もこだわるというミズナイオリ氏

ミズナイオリ氏:今回のノートPCだとリアルタイム処理のライトを20個ぐらい使ってもスペック的にはあり余るぐらいです。UnityをHDRPという重い環境で使うのであれば、これぐらいのスペックがあるといいですね。やっぱりスペックが不足しているとライトの数を減らしたり、リアルさを低くしたりとか、どうしても制限される部分が出てくるので。

--カメラワークとかの演出よりも圧倒的にライトに時間をかけるんですね。

ミズナイオリ氏:といいますか、ライトを軸にカメラも考えている感じでしょうか。最初にカメラワークはある程度、こんな感じかなと作ってしまいます。そのあとに、カメラに合わせたライティングを入れていきます。カメラがこっち向いているから、ライトはこちらから当てようみたいなのを繰り返して、そこに時間がかかってしまいますね。ここは音が一気になくなるポイントなのでライトを落としてステージの上からだけにしようとか。

--After Effectsの動作はどうでしたか?

ミズナイオリ氏:After Effectsは、搭載メモリをあるだけ使うのですが、Stealth 14 AI Studio A1Vは、64GBあるので快適に制作できましたね。特にリアルタイムプレビューが可能な時間はメモリ容量に左右されるので、64GBあれば確認作業がラクになります。

ステージの背景に映し出される映像の制作にAfter Effectsを利用しているという

--Premiere Proはどうでしょう?

ミズナイオリ氏:私の場合、Premiere Proはちょっとした色合いや明るさの調整ぐらいで、あとはタイムラインに動画を並べて、書き出して納品という本当に最終工程にだけ使っている形ですが、それでも4Kでのプレビューがぬるぬる動いてスゴイと思いましたね。GeForce RTX 4070 Laptop GPUを搭載していることもあって、GPUを使ったMP4形式への書き出しもとても速くて驚きました。

--Stealth 14 AI Studio A1Vのキーボードや重量感などはどうでしたか?

ミズナイオリ氏:これまでノートPCはあまり触ってことがなくて、昔の経験だとノートPCのキーボードはちょっと使いにくかったんですけど、これはストロークが深くて、押し心地がよかったですね。

 そして、ハイエンドなデスクトップPCと遜色のない性能を持ちながら、重量が軽いのがとてもいいですね。14型なので持ち運び用途で使う人が多いと思うのですが、このサイズにこれだけのスペックと1.7kgの軽さをよく実現できたなと。

ゲーミングデバイスで知られるSteelSeries製のキーボードを採用。発光色やパターンの管理が可能なバックライトも内蔵している

--2,880×1,800ドットの解像度でOLED(有機EL)、リフレッシュレート120Hzのディスプレイは使ってみてどうでしたか?

ミズナイオリ氏:ディスプレイの広さ、作業できるスペースの広さはとても大事で、2,880×1,800ドットなんで、とても広く使えるってのは高評価です。120Hzのリフレッシュレートは今回あまり活かせませんでしたが、これだけの解像度があれば、外に持って行ってもデスクトップPCのように作業できるのがいいですね。

 動画制作でも音楽制作でも出先でノートPCを使って作業することはあります。本機の標準設定だとバッテリ駆動時は稼働時間を優先してパフォーマンスがそれなりに制限されるので、出先でもフルパフォーマンスで作業したいのであれば付属のACアダプタを一緒に持ち歩きたいと感じました。

14型のOLED(有機EL)パネルを採用。2,880×1,800ドットと高解像度でDCI-P3相当の広色域を持ち、ハイレベルな黒の表現が求められるDisplayHDR True Black 500も取得している
右側面にはThunderbolt 4、USB 3.2 Gen 1、ヘッドセット端子を搭載
左側面にはUSB 3.2 Gen 2 Type-C(映像出力対応)、HDMI出力を備える

--実際に作業する中で動作音が気になることはありましたか?

ミズナイオリ氏:先ほども言った通りあまりノートPCを触ったことはありませんが、CPUやGPUに負荷がかかる作業をしても、静かだと思いますね。ホントに静かな場所だとうるさく感じるかもしれませんが、自宅で作業する分には気になりませんでした。

底面にある冷却システムには、高性能放熱板とヒートパイプを組み合わせた「Vapor Chamber Cooler」を採用。高負荷な状態が長時間続いても安定して動作する

--最後にクリエイター用のPCを探している方に向けて、PC選びのポイントを簡単にアドバイス願います。

ミズナイオリ氏:クリエイティブな作業をするのであれば、高いスペックのPCを買った方がいいと思います。仕事道具にするなら妥協はするなと。以前古いPCから新しいPCに変えた時、仕事の効率がとんでもなく上がりました。ちょっとした処理の待ち時間で集中力がパッと切れてしまったりするので、それが減るというのは、とても大事なんですよ。フォルダを開いたり、動画開いたりするたびにちょっと待ったりするのって、やっぱり蓄積するとやる気がなくなってしまいます。

 その点、今回のStealth 14 AI Studio A1Vはストレスをほとんど感じませんでしたね。モチベーション維持のためにも、高スペックのPCが重要だと思います。

2台のクリエイター向けノートPCの性能をクリエイティブ、AI、ゲームの面からチェック!

 最後に、今回クリエイターのお二人に使っていただいた2台のノートPCの性能を確認していこう。比較対象として、2020年に登場したハイエンドゲーミングノートPCのMSI「GE75 Raider(GE75-10SFS-011JP)」を用意した。CPUにCore i9-10980HK(8コア、16スレッド)、GPUにNVIDIA GeForce RTX 2070 SUPERを備えたモデルだ。各PCの詳細なスペックは以下の表にまとめている。

【主なスペック】
モデルPrestige 16 AI Studio B1VStealth 14 AI Studio A1VGE75 Raider
CPUIntel Core Ultra 7 155H(16コア/22スレッド)Intel Core Ultra 9 185H(16コア/22スレッド)Intel Core i9-10980HK(8コア/16スレッド)
メモリLPDDR5 32GB(オンボード)DDR5 64GB(32GB×2)DDR4 16GB(8GB×2)
GPUNVIDIA GeForce RTX 4060 Laptop GPU(GDDR6 8GB)NVIDIA GeForce RTX 4070 Laptop GPU(GDDR6 8GB)NVIDIA GeForce RTX 2070 SUPER(GDDR6 8GB)
OSWindows 11 Home

 まずは、定番のベンチマークとしてCGレンダリング処理を通じてCPUの性能を測定する「Cinebench 2024」、一般的な処理を実行してPCの基本性能を測定する「PCMark 10」、3D性能を測定する「3DMark」の結果だ。

Cinebench 2024の結果
PCMark 10の結果
3DMarkの結果

 CPU性能を測定するCinebench 2024では、Core Ultra 9 185HとCore Ultra 7 155Hはコア数は同じだが、動作クロックは前者の方が高いため、マルチコア性能、シングルコア性能のいずれにおいてもStealth 14 AI Studio A1Vがトップになった。しかし、ここで注目していただきたいのは、最新の2機種とGE75 Raiderのスコア差だ。この数年間でノートPCのCPU性能は飛躍的な進化を遂げており、それがはっきりと数値に表れている。

 PCMark 10は総合性能を見るStandard、Webブラウジングなど普段使いの軽めの作業負荷を想定したEssentials、オフィスアプリでの作業を想定したProductivity、クリエイティブワークを想定したDigital Content Creationの各項目を測定。いずれのテストでも最新世代の2機種はGE75 Raiderに対してスコアを伸ばしており、特にDigital Content Creationにおいて顕著な差を見せた。

 ゲームにおける3Dグラフィックス性能を測定する3DMarkでは、GeForce RTX 4070 Laptop GPUを備えるStealth 14 AI Studio A1Vトップ。注目は、アッパーミドルクラスGPUのGeForce RTX 2070 SUPERを備えるのGE75 RaiderとミドルレンジGPUのRTX 4060 Laptop GPUを搭載するPrestige 16 AI Studio B1Vのスコアが近いこと。2世代前のアッパーミドルクラスGPUを搭載したマシンを最新世代のミドルレンジクラスGPUを搭載したマシンは時に上回るほどの性能を持っている。

 クリエイティブアプリでの性能はどうだろうか。実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicを動作させてさまざまな画像処理を実行する「Procyon Photo Editing Benchmark」を試してみた。

Procyon Photo Editing Benchmarkの結果

 このテストでも世代の差が分かる結果となった。今回の2台は画像処理にも強いと言え、とりわけStealth 14 AI Studio A1Vの性能が高い。

 近年ではクリエイティブワークにおいても何かと話題になるAI処理の性能も確認しよう。さまざまな推論エンジンを実行する「Procyon AI Computer Vision Benchmark」と画像生成のStable Diffusion 1.5を実行する「Procyon AI Image Generation Benchmark」を実行した。

Procyon AI Computer Vision Benchmarkの結果
Procyon AI Image Generation Benchmarkの結果

 AI Computer Visionは、Core Ultraに内蔵されているAI処理特化プロセッサのNPUに対応しているのがポイント。CPUよりもNPUの方が3倍以上もAI処理に強いことが分かる結果だ。GE75 RaiderのCore i9-10980HKはNPUを搭載していない。また、AI処理をNPUが担当すればCPUとGPUには余力が生まれるので別の処理も並行しやすくなる。今後NPU対応のアプリは大幅に増加する見込みなので、Core Ultra搭載PCの優位性がさらに向上するだろう。

 AI Image Generationは、Stealth 14 AI Studio A1Vが良好な結果を示した。Prestige 16 AI Studio B1VはGE75 Raiderに届かなかったが、旧世代とは言え格上のCPU、GPUを搭載したGE75 Raiderに対して検討していると見ることができる。

 せっかく最新世代のGeForceを搭載しているので、実ゲームも試しておこう。定番FPSの「Apex Legends」、重量級の代表格「サイバーパンク2077」を用意した。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した。

Apex Legendsの結果
サイバーパンク2077の結果

 Apex Legendsは、最新世代の2機種はフルHD解像度なら最高画質設定でも高リフレッシュレートのディスプレイを活かせるフレームレートを出せる。不満を感じることはないだろう。

 サイバーパンク2077はGeForce RTX 40シリーズを搭載するPrestige 16 AI Studio B1VとStealth 14 AI Studio A1Vは、アップスケーラーとフレーム生成を組み合わせたDLSS 3に対応しているのに対して、GeForce RTX 2070 SUPERのGE75 RaiderはアップスケーラーだけのDLSS 2まで。そのため、フレームレートに大きな差ができている。最新世代と旧世代のこうした機能面の差がパフォーマンスの差に直結する場面があることは覚えておいてほしい。

最新世代のノートPCがクリエイターの可能性を解き放つ

 最新世代CPUのCore Ultraはメニーコアで幅広い処理に強く、NPUも内蔵しているのでこれから増えるであろうAIアプリにも備えられる。GPUのGeForce RTX 40シリーズは、多くのゲームを快適にプレイできるパワーがあるのはもちろん、クリエイティブ系アプリの対応も多く、AV1のハードウェアエンコードも可能と機能面も充実。これらを両方備える、Prestige 16 AI Studio B1VとStealth 14 AI Studio A1VはPCはクリエイティブワークを含む全方位に優れたノートPCだ。

 さらに今回の2機種はNVIDIA Studio認証を受けており、とりわけクリエイティブアプリの動作は期待できる。実際にスタジオポッセの菊地氏がPrestige 16 AI Studio B1Vを、ミズナイオリ氏がStealth 14 AI Studio A1Vを使って想像以上に快適に作業ができたと語っており、プロクリエイターの業務に耐えうることが分かった。

 クリエイティブワークは作業部屋にこもって大きなデスクトップPCで、というスタイルにこだわらなくてもよい時代が来ている。Prestige 16 AI Studio B1VやStealth 14 AI Studio A1Vを使えば、時に作業部屋で、時にリビングで、客先で、旅行先で、クリエイティブな作業を行なえる。空いた時間にゲームを楽しむのもいい。時代に合わせたスタイルでクリエイティブワークに取り組んでみてはいかがだろうか。