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ビジネスPC市場に異変あり! 時代を掴み、急成長するMSIノートはどこが違う? 最新モデル「Summit E13 Flip Evo」実力チェック

~テレワークだからこそ使いたいワンランク上の仕事環境

MSI「Summit E13 Flip Evo」

 テレワークの普及に伴い、モバイルノートPCのニーズが増加している。そこで求められる性能、機能の水準は、これまでより上だ。ビジネス向けに積極的にモバイルノートを展開しているのは、高い開発力を持つ大手PCメーカーという印象が強いのだが、近年、新しい光を放っているブランドがある。台湾のMSIだ。

 同社はPCパーツメーカーの老舗で、近年では国内のゲーミングノート市場で一大勢力を築いた。とはいえ、MSIのビジネスノートは派手なゲーミングノートからLEDを省いたような変化球ではない。それまでの同社製品で培われた高性能と高耐久をベースに、ビジネスパーソンのリアルなニーズに応える仕様を徹底的に盛り込んだ直球勝負の意欲作である。

 この記事では、そのMSIが4月に投入したばかりの最新ビジネス向けモバイルノート「Summit E13 Flip Evo」をチェックするとともに、販売会社であるキヤノンマーケティングジャパンの大井氏に、押しのポイントを伺った。

使うほどに見えてくる、全方位でワンランク上を目指したこだわりの仕様

外観はオーソドックスなA4モバイルノート。しかし、その細部にはユーザー目線に立ったさまざまな工夫がこらされており、徹底的な実用志向の仕上がりになっている

 Summit E13 Flip Evoは、13.4型液晶を搭載した2in1スタイルのノートPC。CPUはTiger Lakeこと第11世代Coreプロセッサー。今回使用したのは、Core i7-1185G7(4コア/8スレッド、最大4.8GHz、Iris Xe Graphics)、メモリ16GB、SSD 512GB、液晶解像度1,920×1,200ドットのモデルだ。

 最新のモバイルノートとして、総じて高めのスペックと言える。厳しい目でテレワーク用のPCを選ぶ方に取っても、まずは問題のないレベルではないだろうか。ちなみにメモリ32GB(オンボード)のモデルもラインナップされている。筆者は、3年、4年先まで見据えてPCを選ぶのであれば、メモリは今必要な容量の倍を見ておいて損はないと考えている。この辺りからも性能に対するMSIのこだわりが垣間見える。

 外装はCNCミルドと呼ばれるコンピュータ制御の精密加工によって削り出されたもので、マットな手触りと金属の冷たさが上質感を演出している。試用した“インクブラック”モデルはつや消しの黒をベースに各辺にゴールドをあしらったデザイン。落ち着いた雰囲気のなかに華やかさがあり、“ワンランク上”というさりげない主張が醸し出される。このほか、ホワイトを基調とした“ピュアホワイト”モデルがラインナップされている。

 サイズは300.2×222.25×14.9mm。重量は約1.35kg。現在主流のモバイルノートとしては標準的なサイズと重さだ。

液晶部分を360度回転させてタブレットスタイルに変形。出先で資料を確認したり、電子書籍を読んだりする場合に役立つ
いわゆるテントスタイルでの運用も可能。このように置くことさえできれば映画やYouTubeを楽な姿勢で見ることができる

 ディスプレイが4K解像度じゃないの? と思う方もいるかもしれないが、解像度が高くなると消費電力が大きくなる。本機ではバッテリ駆動時間を重視した液晶パネルのチョイスと見るべきだろう。こうした選択の結果、スペック上のバッテリ駆動時間は最大18時間にも達する。また、縦横比が16:9のフルHD(1,920×1,080ドット)よりも縦の解像度が高い16:10のWUXGA(1,920×1,200ドット)である点はチェックしておきたい。縦方向を伸ばすのは昨今のトレンドで、縦型のビジネス文書やWebページを大きく表示できる、Excel、メールの行数を多く表示できるといったメリットがあり、作業がはかどる。

 低価格モデルでは品質を抑えられることが多い液晶パネルに関しても、本機は力が入っている。色域はsRGB相当をカバー。筆者はライター兼編集者という仕事柄クリエイター向けのPC環境も使うが、Adobe RGBやDCI-P3といった広色域はクリエイター環境には欲しいものの、ビジネス主体の環境には過剰という見方だ。sRGB相当というスペックは、Webページや各種ビジュアル資料を一定レベルの精度で表示できるので、情報収集やプレゼン資料作りの上でとても有効だと思っている。

 周囲の明るさに合わせてパネルの輝度調整を自動的に行ない、目の負担を軽減してくれる機能も搭載。この機能は社内、社外のさまざまな場所を移動して作業をするワークスタイルと相性がいい。場所を移動するたびに手動で輝度調整するのが現実的ではないことは、あらためて言うまでもないだろう。

フラットな状態にすれば、対面の相手に画面を見せながら説明しやすい
A4ファイルとのサイズ比較。ほぼ同寸だ
オン、オフ問わず持ち運べるサイズ、重量、そしてデザイン

実用にこだわって選ばれたインターフェイス群

 主なインターフェイスは、筐体右側面に、USB 3.1 Type-Cを1基、左側面にThunderbolt 4を2基とUSB 3.0 Type-Aを1基備える。Thunderbolt 4は高速なTBデバイスの接続用としてだけでなく、USB PD 3.0やDisplayPort 1.4a対応も含めた全部入りのUSBポートとして使えるので将来にわたって重宝するだろう。筐体の左右にType-Cポートを配置していることも実践的だ。出先では筐体の左右どちらかのスペースが使えないシチュエーションによく遭遇する。その場合に、使える側にUSBケーブルをサクッと挿せるのはじつに都合がよい。本体への充電は左側のThunderbolt 4ポートのみ対応する。

 Type-Aポートを1つ確保しているのもいい。Type-Cオンリーのシンプルな構成のPCがトレンドとは言え、じっさいのところまだまだType-Aのケーブルを利用するデバイスが世に溢れているのが現実。機材の更新スピードが遅いこともあるビジネスの現場ではなおさらで、Type-C変換アダプタをいちいち取り出すのはスマートではない。

 無線LANは最新のWi-Fi 6E対応。Bluetoothは5.2に対応する。加えて、microSDカードスロットも備えている。インターフェイス回りはポートのチョイスから配置まで、ビジネスパーソンのリアルなニーズを的確に押さえていると感じる。

本体右側面には、USB 3.2 Gen 2 Type-Cポートを1基とmicroSDカードスロットを備える。Webカメラのオン/オフスイッチもある
本体左側面には、Thunderbolt 4を2基とUSB 3.2 Gen 1 Type-Aを1基搭載
付属のACアダプタはType-C接続。小さめなので携帯も楽だ

独自設計のMSI Pen

 本機には、MSI独自設計のスタイラスペン、MSI Penが付属する。Microsoft MPP2.0に準拠しており、4,096段階の筆圧検知が可能、最大166度の傾斜角に対応するため表現力は高い。書き味は滑らかで、筆圧検知も繊細。筆者は手書き入力自体によくも悪くもこだわりがないので、ちょっとでも使いにくいと感じたペンデバイスはすぐに使わなくなる。はっきり言って、ペンを含めて、いくら先進的であろうと使いにくいデバイスで入力するのは、自分を機械に合わせてチューニングするようで大嫌いである。

 その点、MSI Penは紙に本物のペンで書くのとはちょっと違う感覚なのだが、書いていて気持ちがいい。この気持ちのよさこそが、入力デバイスの価値だと思う。よいキーボードしかり、よい万年筆しかり、仕事のモチベーションアップにつながるのだ。手書きメモを取ったり、プレゼン資料に手書きのイラストを入れたりする場合に、MSI Penがあるのとないのとでは大きな違いになるだろう。

付属のMSI Penは、なめらかな書き心地に加えて、4,096段階の筆圧検知によって手描きならではの多彩な表現が可能。単なる手描きメモ用、文字入力用ではなく、表現の幅を広めてくれるデバイスだ

 MSI Penはポインティングデバイスとしても利用できる。ペン先がディスプレイ表面近く(10mmまで)にあれば、接触していなくてもアイテムをプレビューできる“ホバープレビュー”機能も持っている。タッチパッドによるカーソル操作より直感的であるし、画面をタッチして指紋をつけたくない場合にもありがたい。

 さらに、MSI PenはノートPC本体とBluetooth接続することで、プレゼン用の簡易なクリッカーとして利用できる。ペンの頭についているボタンを1回押すとスライドの次のページに進み、2回連続で押すと前のページに戻る。“わざわざ別売のクリッカーを買う必要はないけど、ちょっと興味がある”という方は意外と多いのではないだろうか? そんな場合に、ちょうどいい。一度使えば分かるが、クリッカーがあるとプレゼンターの視点がプレゼン画面と客席以外から動くことがなくなるので、グッと“できる人感”が出てくる。

MSI Penはクリッカーとしても利用できる。試用機ではPower Pointのクリッカーとして問題なく使うことができた
MSI Penはマグネットで本体左側面に固定できる。ちょっとした移動のさいにはさっと取り付けるだけで済むので便利だ。さらに、MSI Penの電源は電池交換式ではなく充電式。付属のType-Cケーブルで充電できるので、予備の電池を気にしなくてもいい

 キーボードに関しては、残念ながら日本語キーボードを搭載した製品版が評価に間に合わなかったため、日本語版の配列をチェックできていない。ただ、打鍵感は悪くなく、キーを叩いたさいに底が沈む嫌な感じはなかった。

試用機は英語版キーボードだった。タッチパネルは大きめだ
キーボードは発光機能つき。暗い場所での打ち間違いを回避できる
さまざまな場所でPCを使うスタイルでは、セキュリティの管理が重要。その基本となるのが、生体認証機構。本機では、指紋認証に加えて顔認証にも対応。ユーザーの状況に応じて使い分けることができる

 テレワークに必須のWeb会議関連の機能についても抜かりはない。Webカメラは92万画素で、ノイズ除去機能を搭載しており、クリアな映像を撮影できる。本体右側面にはハードウェアスイッチを備えており、Webカメラの予期しない起動やハッキングを防ぐことができる。

 音声に関しても、AIを活用したマイク、スピーカーのノイズキャンセリング機能を搭載。アプリ由来の機能ではないため、基本的にどのWeb会議アプリでも使えるのが魅力だ。この機能は、付属ユーティリティのMSI Center for Business & Productivityで設定できる。

付属ユーティリティのMSI Center for Business & Productivityで、スピーカーとマイクのノイズキャンセル機能を設定できる

仕事も、普段使いもゲームもできる高い性能を発揮

 性能をチェックしてみよう。比較対象として、2016年頃に発売された、Core i5-6300U搭載のモバイルノートPCの結果も掲載する。8GBのメモリとSSDを装備しており、今でも似たようなスペックのPCを使っている方も多いことだろう。

PCMark 10の結果

 PCの基本性能をチェックするPCMark 10の結果は、2016年頃のPCに対して、全項目でSummit E13 Flip Evoが圧勝。総合スコアのPCMark 10、Webブラウジングなど、普段使いの快適さの指標「Essentials」、オフィスアプリの快適さの指標「Productivity」、動画や写真編集の快適さの指標「Digital Contents Creation」いずれも大きく差をつけた。

CrystalDiskMarkの結果

 アプリの起動やファイルコピーの速度に大きく影響するストレージの速度を計測するCrystalDiskMark 8.0.1でもNVMe対応のSSDを搭載しているSummit E13 Flip Evoが優位に立った。とくに、大きなファイルの読み出しに影響するシーケンシャルリードで大きな差をつけている。グラフでは目立ちにくいが、アプリ起動などの速度に影響するランダムリードでも35%も速い。

ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークの結果

 イマドキの高性能お仕事PCは、テレワークの合間に軽めのゲームが遊べるレベルの性能を持っている。ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、あえてデスクトップPC向けの高品質設定で測定してみたところ、4,818というスコアを記録。このスコアの評価は、全8段階で上から3番目の“快適”にあたる。一方、2016年のノートPCのスコアは“動作困難”判定だ。

 駆け足ではあるが、Summit E13 Flip Evoは普段使い、ビジネス、クリエイティブ、ゲームまで、全方位で旧型のモバイルノートから大きな進化を遂げていることが確認できた。このレベルの性能があれば、多くのユーザーが本機だけでPCを使う作業をすべてこなすことができるだろう。

付属ユーティリティのMSI Center for Business & Productivityでは、性能とバッテリ駆動時間のバランスを調整できる。ゲーミングノートやPCのマザーボードのようにファンコントロールまでできてしまうのはおもしろい。このほか、本機にUSB接続したiOSデバイスをミラーリングモニタとして試用するDuet Displayという機能もある

売り手に聞いた! こんな方に使ってほしい!!

 最後に、筆者とは違った視点からの意見をお届けしたい。MSIのノートPCの販売を手がけるのは、情報通信サービス大手のキヤノンマーケティングジャパン。同社のITプロダクト営業部大井正博部長にSummit E13 Flip Evoのポイントを伺った。

キヤノンマーケーティングジャパンの前身キヤノン販売時代から、30年にわたってPCの販売を手がけてきた大井正博部長

【Q】Summit E13 Flip Evoを使ってみて、まず魅力と感じたのはどこでしょうか?

【大井氏】ディスプレイ部を360度回転させてタブレットモードやスタンドモードとして使えるPCながらも、MSIならではのハイスペックなPCとして使用できることです。新幹線や飛行機を利用するときや、打ち合わせやコワーキングスペースなどノートPCを設置に苦労するような狭い場所でも、タブレットモードで利用できるほか、テントモードでタッチ機能を活かしたPCとして使用できるわけですが、性能を犠牲にしないので仕事もエンタメもストレスなくこなせます。

【Q】性能について、もう少し詳しく教えてください。

【大井氏】従来の2in1PCは一般的なノートPCよりスペックが低い印象がありますが、Summit E13 Flip EvoはMSIらしく想像以上にスムーズに動作しますね。Excel、Word、PowerPointやWeb会議ソフトなどを同時に複数起動しても動作が遅くなったり、固まったりすることがありません。限られた場所、時間でスムーズに仕事をこなすことを求められる現在では、重要なポイントだと思います。

【Q】MSI Penを使ってみて、どんな場面で有効だと思いますか

【大井氏】プレゼンテーションをするとき、クリッカーとして使えるのがとても便利です。また、直感的にメモを取ることもできるので電子メモ帳として使うこともあります。クラウドサインなどを行なう場合にもタッチパネル+MSI Penのおかげで契約書を直接サインすることもできます。

MSI Penは大井氏も“押し”の機能だ

【Q】カメラやマイクのノイズリダクションがウリの一つですが、その有効性はいかがでしょうか

【大井氏】現在、そして今後もビデオ会議を行なうことがひじょうに多いと思います。在宅でビデオ会議するときに、周りの雑音(子供の声や生活音など)をほぼノイズキャンセリングできるのはとても便利です。

【Q】Summit E13 Flip Evoはどのようなユーザー層に向いていると思いますか

【大井氏】持ち運びに便利なサイズで、ビデオ会議などもスムーズに動作、そしてマルチに使用できる柔軟性を持ち合わせているので、様々なビジネスパーソンにオススメできる1台です。

どんな場面でも使える点は、大きな強みだという

 MSI Summit E13 Flip Evoは見た目こそオーソドックスな2in1ノートながら、リアルなビジネスパーソンの使い勝手を考慮した要素が、これでもかと詰め込まれている。試用を始めたときはとりあえず触ってみるか、という感じだったが、使ってゆくうちに設計者がビジネスツールとして徹底的に作り込んでいることが見えてきた。

 性能、拡張性、モビリティ、プレゼン対応、クリエイティビティ、さらにはオフの時間のエンタメまで、ビジネスパーソンをさまざまな角度からフォローしてくれる。本機はビジネスを加速させたい人にとって心強い相棒となるはずだ。

型番A11MT-012JPA11MT-015JPA11MT-061JPA11MT-013JP
ホワイトインクブラックホワイトインクブラック
LCD13.4型WUXGA (1,920×1,200ドット)
GPUIris Xe グラフィックス
CPUCore i7-1185G7Core i5-1135G7
メモリー32GB16GB
ストレージ1TB SSD512GB SSD
キーボード日本語日本語英語日本語
Officeスイート------Microsoft Office Home & Business 2019
OSWindows10 ProWindows 10 Home
バッテリ駆動時間(JEITA2.0)最大18時間
本体質量1.35Kg
税込売価21万9,800円21万9,800円16万9,800円19万9,800円