レビュー
写真で見る、第3世代Ryzen Threadripper対応のsTRX4マザー「ROG Zenith II Extreme」
2019年11月19日 11:00
Zen2アーキテクチャのコアを採用し、IPCが大幅に向上した第3世代Ryzen Threadripper(以下TR)がまもなく市場に投入される。今回、ASUSの協力により、事前にこの第3世代TRに対応したsTRX4マザーボード「ROG Zenith II Extreme」を入手できたので、簡単に写真で見ていきたい。性能レビューについては後日公開する予定だ。
パッケージを手にしてまず驚くのがその重量。豊富な付属品もさることながら、マザーボード本体も非常に重く、これだけでゆうに2kg超えの17.3型ノートPCを手にしている印象。本製品はASUSの最上位に君臨するだけあって、手にしたときの満足度はかなり高い。当然のことだが、重量があるということは、それだけ支えられる高品質なPCケースも必要であり、華奢なPCケースとの組み合わせはおすすめしない。
M.2ヒートシンクや大型のチップセット用ファンシンクはもとより、VRM部にもファンを装備し、バックパネルI/O部に有機ELディスプレイを備えているなど、マザーボードとしてはかなりの重装備。ASUSはまだ価格を明らかにしていないが、豪華な作りからして10万円近くはしそうな印象である。
ケースに組み込まずにベンチ台で使用していることも想定しており、下部には電源やBIOS切り替え、スローモードといった、さまざまな操作が行なえるスイッチをひととおり備えている。冷却に気遣うユーザーに有用な温度センサー端子(センサーも付属)が搭載されているほか、ファンを6基増設できる拡張カード「Fan Extension Card II」が付属する点なども特徴だ。
ネットワーク周りも非常に強力。Wi-Fi 6モジュールをオンボードで搭載するほか、Aquantia AQC-107による10Gigabit Ethernet、Intel I211-ATによるGigabit Ethernetポートを装備。オーディオは独自コーデック「ROG SupremeFX S1220A」を中心に、ESSの9018Q2C DAC/アンプやニチコンのFine Goldコンデンサを採用。再生で120dBのS/N比、録音で108dBのS/N比を実現している。
ストレージ周りでは、オンボードで3基のM.2を備えるほか、独自の「ROG DIMM.2モジュール」により2基増設可能。すべてPCI Express 4.0に対応しており、ひじょうに高速なストレージシステムを構築できる。また、背面にUSB 3.2 Gen2x2(20Gbps)対応のUSB Type-Cを備えるほか、USB 3.1(10Gbps)のフロントピンヘッダも2基備えている。
本マザーボードは全面/背面ともに強固な金属製ヒートシンク/バックプレートで覆われているが、バックプレートやバックパネルI/Oカバー部にはイルミネーションRGBおよびOLEDディスプレイの信号線、VRMヒートシンクとチップセットファンシンクにはファンのケーブルが繋がれており、分解するのに一苦労する。戻す手順も複雑なので、よほどの分解マニアでないかぎり、これらのパーツを外すことはおすすめしない。
分解して驚くのは、やはり「ネイティブ16フェーズ」を謳う電源部だろう。電源部にフェーズダブラーを採用し、フェーズ数を増やすことで1フェーズあたりの負荷を低減させる「フェーズダブラー」設計は、2005年の「A8N32-SLI Deluxe」が初とされている。この設計は容易に電流量を増やしながらリップル低減を達成できるが、電源供給に遅延が生じるため、CPUのメニイコア化でCPU負荷が著しく変動する現代において再評価が必要になったという。そのためASUSは独自のネイティブ16フェーズコントローラをメーカーと共同で開発し、本製品に搭載している。
ROG Zenith II ExtremeではパワーステージにInfineonの「TDA21472」を採用している。いわゆるDrMOSの類で、ドライバーとハイサイド/ローサイドMOSFETを1パッケージに統合している。最大出力電流は70Aで、本機にはこれを16フェーズ搭載しているため、単純計算では1,120Aとなるが、後段のチョークコイルは45Aが上限のため、全体で720Aとなる。また、目立つところでは、チップセット用にも4フェーズの電源を備えているのがわかる。
さて、気になる「TRX40」チップセットだが、外観はSocket AM4に用いられる「X570」とまったく同じだった。つまり、X570はTRX40の機能制限版だ。X570チップセットは、CPUに内蔵されているI/Oダイと実質まったく同じものなわけだが、TRX40チップセットもまた然りというわけだ。逆に言えば、第3世代RTのI/Oダイは、メインストリーム向けの第3世代Ryzenプロセッサのそれとまったく同じだと思われる。もっとも、CPUとはPCI Expressで繋がれているだけなので、信号線の多少程度の違いだろう。
ともすれば、「第3世代Ryzenは(古い)X470チップセットと組み合わせられるから、第3世代RTは(古い)X399チップセットとも組み合わせられるのではないか?」という疑問が当然湧くわけだが、残念ながらAMD公式では「互換性は一切ない」のだという。つまり第2世代TRはTRX40チップセットと互換性がないし、第3世代TRはX399とも互換性がないわけだ。
ところがCPUソケット自体はSocket TR4をそのまま流用しており、編集部にあった第2世代TRをROG Zenith II Extremeで試したところ、難なく装着できてしまった。さすがに怖いので電源はつけていないが、搭載できてしまっている以上は、BIOSやファームウェアで第2世代TRを弾く仕組みが用意されているはずだ。X399に対する第3世代TRへの対応も同様だと思われる。
IntelのLGA115xソケットのように、同じパッケージの大きさでも、切り欠きの位置の違いで物理的に装着できないようになっていれば諦めもつくのだが、まったく同じソケットとなっている以上、Intelの200シリーズと300シリーズチップセットの関係のように、ハードウェアまたはソフトウェアの改造で互換性をもたせることはできそうではある(本当にピン互換がないのなら無理だが)。
さてROG Zenith II Extremeに対する筆者の評価だが、少なくともハードウェア面はさすがのハイエンドモデルだけあって、ASUS渾身の完成度を誇っている印象を受けた。ROGのExtreme系マザーボードは、普通のマザーボードでは得られない喜びと優越感を、手にした瞬間からもたらすのだが、本機もその期待を裏切ることは決してない。