パソコン工房新製品レビュー
ディスプレイやスピーカーにこだわりを感じる!GeForce RTX 3070 Ti搭載ゲーミングノートをレビュー
2022年10月6日 06:30
最新スペックのゲーミングノートPCはゲーム以外にも使える?
パソコン工房を展開するユニットコムより、ゲーミングPCブランド「LEVEL∞」の15.6型ノートPC「LEVEL-15FR171-i7-UASX」が発売された。
本機はCore i7-12700HにGeForce RTX 3070 Tiを合わせたゲーミングノートPC。スペック的には現状で最新モデルの取り合わせで、ヘビーなゲームを動かすのに十分な性能がありそうだと期待できる。
ただ本機の魅力はスペックだけではない。実際に使ってみると、オリジナルティのあるこだわりが感じられる部分もあり、ゲーミングPC以外にもマルチに使える製品だと分かる。お借りした実機をさまざまな視点から眺めていきたい。
14コア20スレッドのCPUを搭載したパワフルなノートPC
「LEVEL-15FR171-i7-UASX」のスペックは下記の通り。
【表1】LEVEL-15FR171-i7-UASXのスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-12700H (6-Pコア+8-Eコア/20スレッド、Pコア4.7GHz+Eコア3.5GHz) |
GPU | GeForce RTX 3070 Ti(8GB GDDR6) |
メモリ | 16GB DDR4-3200(8GB×2) |
SSD | 500GB(NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6型非光沢液晶 (1,920×1,080ドット/144Hz/X-Rite Factory Display Calibration) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | Thunderbolt 4×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.0×2 |
カードスロット | microSD |
映像出力 | HDMI×1、Mini DisplayPort×1 |
無線機能 | Wi-Fi 6、Blunetooth 5 |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
その他 | 前面200万画素カメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン端子、マイク端子 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約361×242×29.8mm |
重量 | 約2.4kg |
価格 | 25万9,800円 |
CPUは14コア20スレッドのCore i7-12700H、GPUはGeForce RTX 3070 Ti。ハイエンドとは言わないまでも、ゲーミングノートPCとしてはかなり高めのスペックだ。それでいて15.6型の本体は重量約2.4kgと標準的な範囲で収まっている。
ディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)で、最大144Hzのリフレッシュレートに対応。X-Rite Factory Display Calibrationによる色味の正確性も売りにしている。
Thunderbolt 4とUSB 3.1 Type-Cがそれぞれ1基で、Type-C形状の端子を計2基搭載。映像出力はHDMIとMini DisplayPortが1つずつ。ほかには音声入出力端子がヘッドフォンとマイクで別になっているのもゲーマーとしては嬉しい。
サイズ感は今時のゲーミングノートPCとしては標準的で、特に薄さや軽さを売りにはしていない。となれば、スペック通りの性能をしっかり発揮できるのが重要だろう。
なおカスタマイズにも対応しており、メインメモリは最大64GBにできるほか、国産高耐久メモリへの変更もできるのがユニーク。ストレージはSSDを最大2TBに増量できるのに加え、さらにM.2 NVMe SSDをもう1基追加(こちらも最大2TB)できる。
144Hzのディスプレイにマッチした高性能
次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、以下のアプリだ。
- PCMark 10 v2.1.2563
- 3DMark v2.22.7359
- VRMark v1.3.2020
- PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator
- ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
- FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
- Cinebench R23
- CrystalDiskMark 8.0.4」。
本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、「Power Modes」で動作モードの切り替えができる。設定は標準の「エンターテイメント」のほか、「パフォーマンス」、「静音」、「省電力」の計4つが選べる。今回は「PCMark 10 v2.1.2563」と「3DMark v2.22.7359」で4つのモードを切り替えてテストを実施した。
【表2】ベンチマークスコア | ||||
---|---|---|---|---|
動作モード | エンターテイメント | パフォーマンス | 静音 | 省電力 |
「PCMark 10 v2.1.2563」 | ||||
PCMark 10 | 6,928 | 6,946 | 6,705 | 5,986 |
Essentials | 10,551 | 10,480 | 10,452 | 9,749 |
Apps Start-up score | 15,429 | 15,205 | 15,318 | 14,765 |
Video Conferencing Score | 7,681 | 7,686 | 7,654 | 6,816 |
Web Browsing Score | 9,912 | 9,850 | 9,740 | 9,208 |
Productivity | 10,046 | 9,779 | 9,976 | 9,349 |
Spreadsheets Score | 13,325 | 13,469 | 13,105 | 12,295 |
Writing Score | 7,575 | 7,101 | 7,595 | 7,110 |
Digital Content Creation | 8,514 | 8,873 | 7,846 | 6,389 |
Photo Editing Score | 7,935 | 8,227 | 7,815 | 5,448 |
Rendering and Visualization Score | 13,470 | 14,435 | 10,732 | 9,952 |
Video Editing Score | 5,775 | 5,883 | 5,759 | 4,812 |
Idle Battery Life | 8時間13分 | - | - | - |
Modern Office Battery Life | 3時間22分 | - | - | - |
Gaming Battery Life | 1時間38分 | - | - | - |
「3DMark v2.22.7359 - Port Royal」 | ||||
Score | 6,089 | 6,470 | 6,071 | 4,230 |
「3DMark v2.22.7359 - Time Spy」 | ||||
Score | 10,192 | 10,744 | 9,262 | 7,290 |
Graphics score | 10,101 | 10,574 | 9,945 | 7,193 |
CPU score | 10,745 | 11,821 | 6,669 | 7,895 |
「3DMark v2.22.7359 - Fire Strike」 | ||||
Score | 23,194 | 25,219 | 19,596 | 17,241 |
Graphics score | 27,594 | 28,913 | 27,513 | 18,924 |
Physics score | 25,170 | 28,517 | 18,988 | 23,052 |
Combined score | 10,026 | 11,831 | 6,301 | 8,432 |
「3DMark v2.22.7359 - Wild Life」 | ||||
Score | 59,644 | 59,866 | 56,368 | 41,014 |
「3DMark v2.22.7359 - Night Raid」 | ||||
Score | 46,436 | 49,432 | 35,900 | 36,912 |
Graphics score | 91,784 | 94,238 | 79,763 | 70,350 |
CPU score | 12,221 | 13,381 | 8,722 | 9,994 |
「3DMark v2.22.7359 - CPU Profile」 | ||||
Max threads | 6,723 | 7,332 | 3,993 | 5,191 |
16-threads | 6,373 | 7,010 | 3,925 | 4,576 |
8-threads | 5,062 | 5,512 | 3,315 | 3,720 |
4-threads | 3,222 | 3,450 | 2,524 | 2,796 |
2-threads | 1,826 | 1,916 | 1,646 | 1,738 |
1-thread | 938 | 993 | 928 | 929 |
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」 | ||||
Score | 10,761 | |||
Average frame rate | 234.58fps | |||
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」 | ||||
Score | 3,095 | |||
Average frame rate | 67.46fps | |||
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6) | ||||
1,920×1,080ドット | 21,053 | |||
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質) | ||||
1,920×1,080ドット | 17,977 | |||
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質) | ||||
3,840×2,160 | 4,530 | |||
1,920×1,080ドット | 10,158 | |||
「Cinebench R23」 | ||||
CPU(Multi Core) | 13,065pts | |||
CPU(Single Core) | 1,719pts |
CPUはノートPCとしてはかなり優秀な結果が出ている。「Cinebench R23」では、シングルコアの性能の高さもさることながら、MP Ratioも7.60とPコアの数を上回る値が出ている。
また「3DMark」の「CPU Profile」では、シングルスレッドでCPUクロックが約4.7GHz、8スレッドでも約4.1GHzと粘っている。最大スレッドになると3.3GHz程度まで落ち込む瞬間もあるが、冷却はそこそこがんばれているようだ。
グラフィックス系も申し分なく、ゲーム系ベンチマークの中ではかなり重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で、4Kでも「やや快適」となっている。最近のゲームでも、本機の144Hzディスプレイを生かせる場面は多そうだ。
動作モードを変えての結果を見ると、静音ではCPUの落ち込みが大きく、省電力ではグラフィックス系の落ち込みが大きい。どちらも動作中の騒音は劇的に減っており、特にグラフィックス処理に関してはそれほど大きくは落ちないようなので、騒音を減らしつつゲームをしたければ静音を選ぶと良さそうだ。
バッテリ駆動時間は、オフィスユースでは3時間22分、アイドル時では8時間13分と大きな差が出た。公称では約6.1時間とされており、実テストでもアイドルで8時間持つのであればオフィスユースももう少し使えそうではある。ゲーミングに関しては1時間38分となっているので、基本的にはACアダプタを接続して利用すると思った方がいい。
SSDはIntel製の「SSDPEKNU512GZ」が使われていた。3D QLC NAND採用の「670p」シリーズの製品で、シーケンシャルリードは3GB/s超と十分に高速だ。
また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はディスプレイと同じフルHDで、画質はいずれも最高設定。
【表3】ゲームのフレームレート | |
---|---|
「Fortnite」 | |
平均 | 112.0fps |
下位90% | 93.5fps |
下位95% | 87.4fps |
下位99% | 66.8fps |
「Apex Legends」 | |
平均 | 119.1fps |
下位90% | 100.4fps |
下位95% | 97.1fps |
下位99% | 89.5fps |
「Fortnite」では、平均約112fps、下位99%で約67fpsとなった。ほぼ常時60fpsを超えているため、実際のプレイ感に何ら問題はない。ただ本機のディスプレイが144Hzであることを思うと、もう少しだけ画質を下げてフレームレートを稼ぐ方がいいかもしれない。
「Apex Legends」では平均約119fps、下位99%で約90fps。「Fortnite」よりフレームレートが高く、ハイリフレッシュレートを考慮しても現状で十分なように思う。もちろん好みに応じて少し画質を下げても構わない。
ディスプレイやサウンドにこだわり
続いて実機を見ていく。筐体は全面ブラックで統一されており、天面に「LEVEL∞」のロゴがある。ほかにはこれといったデザインはなく、フラットな天面で自己主張は控えめ。ゲーム用途のみならずビジネス用途にも活用できる外見だ。
天面は金属製。強めに押すと若干のへこみやたわみが出るものの、通常の使用であれば気にならない。極端に圧迫されるような状況でない限りは強度に問題はないだろう。ディスプレイ部も標準的な厚みに見えるが、ねじる動きに対してはかなり堅く、頑丈な作りだ。
畳んで手に持ってみると、15.6型なりの重さを感じる。片手で抱えるのに苦労するほどではないにしても、約2.4kgあるのでモバイル用途とは考えない方がいいだろう。
ディスプレイはフルHDの非光沢液晶で、パネル種別は非公開。上下左右から角度をつけて見てみたが、色相変化は感じられず、視野角も十分広い。スペックシート上でX-Rite Factory Display Calibrationを強調しているだけに、色味の良さには自信があるのだろう。実際、発色はとても良好で、ノートPCとしては上質な印象だ。
「X-Rite Color Assistant」というソフトもプリインストールされており、sRGBとRec.709の色空間に対応するプロファイルを選択できる。デフォルト設定で違和感はないのでゲームユースでは特に必要はないと思うが、映像系のクリエイティブ用途があるなら重宝するだろう。
ディスプレイの明るさは最高にするとまぶしいほどで光量は十分。逆に明るさを最低にすると、ディスプレイが点いているのか分からないくらいに真っ暗になる。ここまで暗くできるディスプレイは単体製品でも滅多に見かけないほどで、暗めの設定で使いたい人なら間違いなく好みの明るさに調整できるはずだ。
ただしバッテリが減って省電力モードになる際、標準設定だとディスプレイの明るさが自動で最低になり、いきなり真っ暗になって驚かされることになる。省電力モード時の挙動はあらかじめ調整しておく方がいい。
ゲーミングの性能としては、144Hzの応答速度の滑らかさは確かに実感できる。応答速度はスペック上で言及がないものの、高速なスクロールの表示でもそれほど残像感はなく、一般的なゲーミングディスプレイに劣るとは感じない。144Hzの描画は十分に生かせている。
キーボードはアイソレーションタイプで、テンキー付きのフルキーボードを採用。テンキーなど左側の一部のキーが少しだけ横方向に圧縮されているが、それ以外はスクエアな形状を確保している。キー配列もオーソドックスで違和感はない。カーソルキーがスクエア形状を保って配置されており、歓迎するゲーマーもいるだろう。
キーストロークはノートPCなりに浅いが、弱めのクリック感があり、打鍵感は良好。音も静かで、ゲームのみならずオフィスワークでも快適に利用できる。
キーボードバックライトも搭載し、全キー一律で色と明るさを調整できる。タッチパッドはかなり大きめで、横に広い。
端子類は、左側に2基のUSB端子とヘッドフォン端子があり、右側にGigabit EthernetとUSB Type-C、microSDカードスロットがある。ゲーミング用途を考えると、マウスを置く右側からはケーブル類が出ないようにしたいが、有線LANを使う場合は気になるかもしれない。
背面にはMini DisplayPortとHDMI、Thunderbolt 4が並ぶ。右側のUSB Type-CにはDisplayPortのマークがあるので、Thunderbolt 4と合わせて計4つのディスプレイ出力が使えるようだ。
スピーカーは底面手前側の左右に内蔵されている。音質はややこもり気味に聞こえるが、高音を控え目にして低音を目立たせる感じで、全体としてのバランスをうまくとっている。それ以上にすばらしいのがサラウンド感。音の定位感が驚くほど明確で、ステレオ感の強い音楽やゲームの音を聞くと、音が飛び出してくる印象で気持ちいい。
低音を含めたバランスとサラウンド感を追求した印象で、音を情報として受け取りたいゲームでの実用性を追求しているように感じる。また音楽や映像の視聴に使ってもサラウンド感のおかげで案外聴ける印象で、ノートPCとしてはかなり良質なサウンドになっている。
エアフローは底面吸気、背面と側面後方からの排気。低負荷時は耳を近づけてやっとファンが回る低い音が聞こえる程度で、騒音が気になることはまずない。
しかし高負荷時の騒音はかなり大きい。特にGPUの高負荷時には、ファンが高回転する甲高い音が大きく鳴る。ゲームプレイ中の音が小さいと、ファンの騒音にかき消されてしまうほどだ。内蔵スピーカーの音がいいだけに残念だが、3Dゲームのプレイ時にはヘッドフォンの使用を推奨する。
ACアダプタは最大230W出力。サイズもそれなりに大きいが、本体とほぼ同じ厚みになっており、収納は難しくはない。ただコンセントからACアダプタまでのケーブルはデスクトップPCと同等の太さなので、この点でも持ち運びにはあまり向かない。
ゲーミングに必要な性能をフォローしつつ、マルチな活用にも向く
一通り本機を触ってみて感じたのは、実用性重視の質実剛健な設計だ。筐体の頑丈さや冷却性重視のファンを見ると、まずは安定動作が第一というポリシーが見える。外見のシンプルさも、場所を選ばず使えるという意味で実用性重視と言える。
それでいてゲーミングへの配慮もある。ゲームに欠かせない要素であるサウンドは高音質なスピーカーで鳴らせるし、ディスプレイもこだわりを感じる。全部が最高級ではないものの、力を入れるべきところはしっかり質を上げているのが分かる。
本機と似たスペックで製品を探した時、重量や静粛性、デザインなど、1つ1つの要素を比較して本機がベストになるとは言わない。ただトータルで見た時に、ゲームをしっかりと安定動作させつつ、オフィスユースやクリエイティブ向けなど幅広い用途に活用できるよう配慮されているのが本機の魅力だ。
一見すると特徴のない地味なマシンだが、使ってみるとちゃんとポリシーが見える。キーボード部に貼られたシールの数がちょっと多すぎるようにも思うが(笑)、これが本機のこだわりを示す証でもある。1台のノートPCで何でも済ませたいという人が見れば、良さを感じる部分は意外と多いはずだ。