特集
メモリ・SSDの値下がりはAIバブル崩壊後?そのときは価格どころではない
~2028年まで逼迫と各社が予測、ただしその先も値下がりの保証なし
2026年11月2日 06:02
昨年(2026年)末にこんな記事を書いたわけだが、その後もメモリの価格高騰は止まらない。最近だと福田昭氏がこのような記事を書かれており、メモリベンダーにとっても、PCベンダーにとっても、エンドユーザーにとっても想定外の状況が続いているのが現状である。
これに関して編集部から、現在の状況について書いてほしいとの原稿の依頼が来たので、いろいろと調べてみた。
DRAMスポット価格はDDR5とNANDが上昇、DDR4は乱高下
まずは価格動向ということで、DRAM Exchangeに示された2026年4月から10月のスポット価格についてピックアップしたのが、以下のグラフ1である。
グラフ1の項目は、DDR5-16Gb(2G×8) 4800/5600とDDR4 16Gb(2G×8) 3200、それとMLC 64Gb 8GB×8の3つで、価格はSession Averageのものを利用した。
DDR4に関してはだいぶ暴れているのが印象的であるが、 DDR5についてはまぁ概ね右肩上がりという感じで、今のところ価格が安定しそうな気配がまったく見えない。
そもそも2025年中にトップ3社(Samsung、SK hynix、Micron)がDDR4の生産を終了させてDDR5に移行すると発表しており、DDR4は中国CXMTの独擅場になるかと思われたら、そのCXMTまでDDR4をやめてDDR5に移行することを発表した。
これによって買い占めが発生したのが2025年の4月頃である。PC向けはともかく、組み込み向けではまだ広範に使われている(何なら新規設計ですらDDR4を使うこともある)だけに、供給が止まるのは死活問題になりかねない。
それもあっていきなりDDR4が高騰したわけだが、その後トップ3社がDDR4の生産終了を撤回したことで一度は落ち着き始めた。
ところがエージェントAIの興隆に絡んでDDR5の需要が急速に拡大、供給が追い付かなくなった。そして、PC向けですらDDR4が再び脚光を浴びることになり、DDR4も需要に供給が追い付かなくなったため、異様な高価格になったわけだ。
ただ幸いにも主要な組み込み用途向けに関しては、(価格はともかくとして)供給に一応の目安が付いた(昨今の動向を鑑みて生産計画を見直し、生産量そのものを減らした組み込み機器メーカーが少なくない)ことで、ここ1カ月ほどは小康状態ではあるという感じか。
NANDフラッシュも同じで、MLC NANDも順調に価格が右肩上がりである。こちらもエージェントAIの興隆もあってそもそものNANDフラッシュの需要が増えていることもあり、この半年で倍以上に価格が高騰しており、しかも安定する気配がない。
秋葉原のDDR5メモリは32GBモジュールが6月から値上がり
ではPCマーケットはどうか?ちょっと僚紙のAKIBA PC Hotlineに連載されているサハロフ佐藤氏の価格動向記事から、DIMMとSSDの価格をピックアップしてまとめてみた。
まずDIMMであるが、グラフ2がDDR5 DIMM、グラフ3がDDR4 DIMMの価格動向である。金額は平均値(円/税込み)のものを利用している。
まずDDR5、低容量(8GB/16GB)モジュールに関しては比較的安定というか、それほど値上げしていない(というか、4月の時点でもう十分に価格が高い)が、 32GBモジュールに関しては6月以降じりじり値上がり傾向がはっきりしている。
DDR4に関しては比較的安定しているとはいえるが、そもそもDDR5-5600 16GB×2とDDR4-3200 16GB×2がほぼ同じ価格という時点でもうなんかおかしい。DDR5に比べればそれほど大きな変化はないが、それでも価格が下がる傾向は見られない。
グラフ2/3を容量1GBあたりの価格に直したのがグラフ4/5だ。
グラフ4がDDR5であるが、Speed Binの違いで価格差はあるし、多少上下に振れてはいるものの、大きく見ると8月に入って次第に容量あたりの価格が上がる方向になっているのが見て取れる。もう10月の時点では最安値でも1,800円/GBほどになっているが、このままの傾向が続くと年末には1,900円/GBを超えそうである。
一方DDR4(グラフ5)についていえば、変動が大きいもののDDR5ほどの価格上昇傾向は見えていない。なにせ一番容量単価が高いのがDDR4-2666 8GB×2というあたり、単に商品のダブつきや不足で容量単価が大きく振れているだけという気もする。容量が小さいから、わずかな価格変動でも大きく見えやすいだけ、と判断できる。
NVMe SSDの容量単価は半年前からほぼ横ばい
次にNVMe SSD。一覧だと105製品もあり、しかも同じメーカーでも複数のグレードが混在しているのでさすがに細かくラインナップしているとグラフが爆発する。
そこで、その105製品をI/F(PCIe 4/5)と容量(500GB/1TB/2TB/4TB/8TB)でまとめて平均値を取ったのがグラフ6である。細かくいえばブランドとか信頼性などの機能面での違いが価格差につながっているのだろうが、それを言い始めるとキリがないので今回は乱暴ではあるがまとめてしまっている。
さて、さすがにI/Fの違いでの価格差は明白で、PCIe 5対応だと数千円~1万円程度の価格上乗せがある。まぁ帯域が理論上倍になるから、この程度のプレミアが付くのは当然だろう。
ただおもしろいのは容量単価(グラフ7)を見ると、大体4万5,000円/TB程度に収束しており、これは半年前からさして変化がないことだ。
DDR5に比べると、まだ安定傾向にあるというのが現状だろう。 実のところエージェントAIでKVキャッシュをサポートするためのNANDフラッシュの需要も高まっているとはいえ、まだNANDフラッシュを本格的に使うというフェーズには入っておらず、現在の需要は「今後需要が高まる」と見越しての先行確保の意味合いが強い。
もちろんCPUサーバーの増加に伴うストレージ向けの需要は確実に増えているので、需要が減ることはあり得ないのだが、とりあえずメモリメーカーの増産(各メーカーとも、TLC NAND→QLC NANDへの転換などで出荷容量を増やす対応をすでに実施済みである)でなんとか賄えている。
そのため、そこまでコンシューママーケットに影響は及ぼしていないというか、もうすでに十分に影響を及ぼし切っているので、これ以上大きな動きにならないというのが正確な表現かもしれない。
Micronは2027年から2028年に需給がさらに逼迫すると予測
ではメーカーは今後の市場をどう見ているのか?トップ3社でいえば、Micronのみ決算時期が9月ということで、決算発表に合わせて今後の市場動向がほかの2社よりも詳細に出ている。
まず市場予測(Photo01)であるが、以下のような状況が予測されるとしている(というか、この予測を基に同社は戦略を立てていると暗に示唆している)。
- 2027/2028年のDRAMおよびNANDの需給状況は、2026年よりも遥かに逼迫すると予想。
- NANDは2026年の業界全体の出荷bit量の伸びが20%台前半で、Micronの従来の予測をわずかに上回る見込み。2026年全体でのMicronのNAND供給量の伸びは、業界平均を下回ると予測される。2027/2028年については、業界全体の出荷bit量の伸びは20%台半ばの伸びを示すと予想しており、業界全体で引き続き供給逼迫状態が続くと見込んでいる。
- DRAMは2026年の業界全体の出荷bit量の伸びが20%台半ばで増加すると予測。MicronのDRAM供給量は業界全体と同程度の伸びで増加すると見込んでいる。2027/2028年については、業界全体の出荷bit量が20%台前半の伸びを示し、どちらも業界全体で供給制約が続くと予想される。
- 2028年まで、業界全体のHBMのbit出荷量は従来のDRAMよりも速いペースで増加すると予想される。
その理由というか背景として示されているのが以下の画像だ。
要するに製造設備そのものが足りてないため、細かな改良や効率化を図っても生産量向上には限界があるという話だ(たとえばDRAMなら古い1αnmプロセスの製品を減らし、1βnmや1γnmの製品を増やすことで、ウェハの生産枚数そのものは増えなくても出荷bit量は増やすことができる)。
すでにトップ3社はいずれも大幅な投資を行なって工場の増設を開始しているが、何しろ建屋の建設からスタートしているだけに、実際にそれが稼働して生産量が本格的に増えるのは、早いものでも2027年半ば、多くは2028年後半以降となるのは致し方ない。
特に現在、3社とも最先端のプロセスはEUV露光を利用している関係で、そうでなくても奪い合いになっているEUV露光装置を追加で導入する必要があるから、どうしても建設開始から稼働までのリードタイムは長くならざるを得ない。 結果、2028年まではどう考えても供給が逼迫することは免れないというわけだ。
SamsungとSK hynixも2026年後半の供給不足を予想
残りの2社は、ここまで明確に予測を示していない。
以下の画像はSamsung Electronicsの2026年Q2のConference Callの際の資料だが、2026年後半の見通しについて「モバイルおよびPCでの需要が一部鈍化しているにもかかわらず、サーバー用DRAMとEnterprise SSD、およびHBMの需要拡大が加速しているため、市場では供給不足が続くと予想される」としている。
もう少し細かく説明しているのがSK hynixだ。
2026年Q2のEarnings Releaseのスライドからの抜粋になるが、まずMarket Outlookを見ると、2026年中のDRAMの需要の伸びは20%台半ば、NANDフラッシュは10%台後半になるとしている。
マーケット概観でいうとサーバー向け(SV)に関しては、「主要な巨大テック企業は、AIサービスの急成長と演算能力の不足を背景に、インフラ投資とメモリ調達を拡大している」としている。
その一方でPC/スマートフォン向けは現在メモリ調達の困難に起因して一時的に売上が調整局面に入っており、今後供給逼迫が緩和されてAIの導入がサービス分野に広がっていくことで、マーケット成長が徐々に回復すると見込んでいる。
興味深いのは続くCompany Planのスライドで、同社はすでに主要顧客を含む約10社とLTA(Long Term Agreement: 長期契約)を締結済みで、さらにそのほかの顧客とも話をしていると明言していることだ。
そして第3四半期の販売bit量増加は、DRAMが10%程度、NANDフラッシュは1桁%前半と、それほど増えない(というか増やせない)ことを示唆している。
キオクシアは2027年も需要が供給を上回ると予想
最後にキオクシアの2027年3月期の決算説明会資料から。
もうPC/スマートフォンは需要が低迷しているため(理由は価格高騰により生産量を絞らざるを得なかったから)、NAND需要は2025年比で横ばいないし微減であり、生産量の増分は全部エージェントAI向けに振り分けられる状況になっており、これは2027年も続くと予想している。要するに各社、生産bit量はがんばって増やすが、需要はこれを上回る勢いで増えている関係で 供給不足な状況は少なくとも2027年も続き、おそらく2028年まで回復しないと見ているわけだ。
長期契約で高値は続き、値下がりは見込めない
基本的に、今のエージェントAIの勢いが止まらない限りにおいて、メモリ高騰が短期的に解消される可能性は非常に低いというか、まぁ値段は下がらないだろう。
メモリベンダーからすれば、そもそも従来の価格が安すぎたという思いが確実にあり、実際にCPUとかGPUに負けない利益をたたき出している現状がむしろ妥当、というくらいの感覚なのは間違いない。
歴史的に見れば、DRAMは常に景気の動向に売れ行きが左右され、そして値段が低いままであった。不景気なときは値下げを強要され、にもかかわらず好景気のときにも値上げが許容されないという、なんか昨今の日本の給与水準とかライターの原稿料とかを連想させるようなパーツだったわけだ。
実際、値上げの機会は新規格の製品投入などに限られていた。だからこそ各社とも、この機会に「適正水準」まで価格を引き上げ、かつこれを維持する方向に舵を切った。
The Korea Heraldの10月20日の記事によれば、すでにSamsungは2027年の生産量の8割を契約済みとKB証券が推計しているそうだ。Micronも9月末の決算発表の際に、2027年の計画生産量の75%超が契約済みとしており、また先のスライドにもあったがSK hynixももう長期契約を複数のパートナーと締結している。
こうした長期契約のパートナーは必ずしもAI企業だけとは限らない。たとえば2026年7月、MicronはFordとLTAを締結したことを発表している。
DRAMやNANDを利用したい大口顧客にとって、現状スポット市場で製品を求めるのは入手リスクが非常に高い選択になっており、だから余裕のある企業は直接メモリメーカーと契約する方向になっている。
特に直近はエージェントAI関連の需要が高いから、そもそもスポット市場に必要な製品が出てこない恐れが高い。こうなるとこれまでにも増して契約(それも短期ではなくLTA)を結ぶかたちで入手を図ることになるが、これはメモリメーカーからすれば価格崩壊を起こさずに長期間安定して売上が立つことを意味している。
こうした状況では、どうしてもPCマーケットに供給される分が後回しになるのは致し方ないところだ。もちろんDIMMモジュールやNVMe SSDを製造しているベンダーはメモリベンダーと契約を結んでDRAMチップやNANDフラッシュチップを入手しているから、製品が途切れることはないだろう。
ただし、その価格は当然安くならない。メモリベンダーからすれば、エージェントAI向けより安く設定するべき理由がないからだ。 だから製品供給そのものは途切れないだろうが、価格が下がる可能性は非常に乏しい。
値下がりの条件はAIバブル崩壊、ただし影響は業界全体に
価格が下がる可能性があるとすれば、AIバブルの崩壊である。要するにエージェントAIを利用したサービスを提供しているベンダーへの資金供給が止まれば、そのベンダーはGPUなりAIプロセッサ、サーバーなどの購入を停止せざるを得ない。
そうなるとLTAを結ぼうが何しようが、いきなりDRAMなりNANDフラッシュなりがダブつく可能性が発生する。もちろんメモリメーカーもこの辺のリスクは織り込んでおり、ある程度のダブつきは自社で吸収する方向になるだろうが、吸収しきれないほどの崩壊が発生した場合は当然メモリの投げ売りの方向になるのは致し方ない。
問題はこの可能性がどの程度あるか?である。少なくともテック業界を見る限りは、2028年あたりまではこうした問題が起きないことを前提に事業計画が立てられている。
ただ金融業界の方を見てみると、たとえば10月23日にMetaのCDS(Credit Default Swap)に関してこんなニュースが流れている。
CDSというのは企業が債務不履行状態に陥った場合、代わりに返済を行なう保険であるが、債務不履行の確率が高いと見なされるとその保険料も当然上がる。アメリカの大企業のCDSの平均が大体60 basis point(0.6%: 保険料が債務金額の0.6%)なのに対し、Metaは直近で114.79~119 basis pointで、要するに倍になっているわけだ。
そのMetaに計算資源を提供しているCoreWeaveにいたっては、CDSが1,140 basis point(つまり保険料が11.4%に達した)という指摘までなされている。
CDSが1,000 basis pointsを超えるというのは一般的に「5年以内にデフォルト(債務不履行状態に陥る)にいたる可能性が5割を超える」と見なされており、割と危険水域に達している感が強い。
もちろんAIバブル崩壊が本当に起きた場合、影響はメモリ業界だけに留まらない。現在AIチップとメモリの両方が不足し、これに対応するためにファウンドリとメモリメーカーは急遽製造拠点を大量に増やしており、そこに向けて国内外の半導体製造装置や検査装置のメーカーが鬼のように装置を増産している。
また、基板とかパッシブ電気部品(特にMLCCなどのコンデンサ類)の需要も大きく増えており、関連する企業が生産量の強化に向けて動いている。バブルが崩壊すると、こうした流れが最悪全部急停止することになるので、洒落にならない不景気に陥る可能性もある。
そのあたりまで含めて予測するのは筆者の手に余る。とりあえずバブルが崩壊するとしてもハードランディングではなく軟着陸であってほしいと祈るのみだが、そんなわけで バブルが崩壊しない限りは価格が下がる可能性はまずないし、もしバブルが崩壊したらメモリ価格どころの話でなくなりそうな状況になりそう 、ということを現時点での結論としたい。


























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