やじうまミニレビュー

禁断のAMD B850拡張カード「ESP4B-850」がキタッ!M.2やSATA、USBを一挙増設!

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
MINISFORUMの「ESP4B-850 PCle to NVMe M.2 拡張カード」

 一般的なマザーボードやPCでは、M.2スロットは1~2基程度しか装備されていないことが多い。高級なマザーボードやかなり特殊な用途のミニPCで3~4基といったところだ。システムドライブ用に1基使うことを前提とする場合、残った1基のM.2スロットを余った小容量のM.2 SSDで埋めてしまうのはちょっともったいないと感じる。

 MINISFORUMの「ESP4B-850 PCle to NVMe M.2 拡張カード」(以降ESP4B-850)は、4基のM.2スロットを搭載することで大容量のストレージを利用できるようにした拡張カードだ。今回はこのESP4B-850の特異性と機能性、そしてWindows 11だけでなく、NAS用OS「TrueNAS」で利用したときの状況を解説していこう。

AMD B850を使ってPCとやりとり、環境を選ばず利用できる

 ESP4B-850は、長さ168mmでLowProfile対応のコンパクトな基板上に、4基のM.2スロットを備えている。ブラケットにはOCuLinkを装備しており、付属のケーブルを経由することでさらに4基のSATA接続対応のSSD/HDDを接続できる。またOCuLinkの隣にはUSB 3.2 Gen 2x2 Type-Cポートを装備し、高速なストレージなどの周辺機器を利用できる。多数のSSDやHDDを利用したいユーザーであれば、かなり気になる製品だろう。

基板の裏側からカバーを固定しているネジを外すと、4基のM.2スロット(ブラケット側に2基、カード先端側に2基)にアクセスできる
分厚い金属製のヒートシンクと冷却用のファンでM.2 SSDを冷却する
カバーも金属製でヒートシンクとしての役割を果たす
背面にはOCuLinkとType-Cポートを装備
OCuLinkに接続するSATAケーブルを同梱する

 拡張スロットを通じて複数のM.2スロットを増設できる拡張カードは、ESP4B-850のほかにも存在する。たとえばASUSの「HYPER M.2 X16 GEN 4 CARD」は、ESP4B-850と同様に4基のM.2スロットを搭載して4基のM.2 SSDを組み込める。

 HYPER M.2 X16 GEN 4 CARDでは、マザーボードがサポートするPCI Express x16スロットの帯域を分割する「PCIe bifurcation」という機能を利用している。それぞれのM.2 SSDに対して、PCIe bifurcation機能で分割した帯域幅をx4ずつ割り当て、PC側にM.2 SSDを認識させるという仕組みだ(x4×4で合計x16という計算)。

 こうした仕組み上、原則的にはx16の帯域幅に対応するCPU直結のPCI Express x16スロットでないと利用できない。

今回の検証で使用したEZDIY-FABの「Quad M.2 SSD PCIe x16 拡張カード」。PCIe bifurcationに対応したマザーボードであれば最大4基までのM.2 SSDを利用できる

 さらにいえば、このPCIe bifurcation機能、多くのマザーボードで普通に利用できる機能ではない。Ryzen対応マザーボードならサポートされることも多いのだが、Intel向けマザーボードで4基のM.2 SSDを利用できるのは上位モデルに限られる。

 同じようにPCIe bifurcationに対応するマザーボードで4基のM.2スロットが利用できる拡張カードはほかにも存在するが、おおむね同じ制限に縛られている。

 しかしESP4B-850では、PCとM.2スロットでやりとりを行なう部分(ブリッジ)にAMDのチップセットとして知られる「AMD B850」を組み込むことで、こうした制限に縛られることなくさまざまな環境で最大4台のM.2 SSDやSATA接続のSSD/HDDを接続できるようにした。利用できる拡張スロットにも制限はない。

ブラケット近くに装備しているAMD B850。本来はマザーボード全体を制御するチップなので、普通の拡張カードに載っているのはなかなかビックリする

 さっそく4台のM.2 SSDをESP4B-850に組み込み、新しい環境と古い環境のPCに挿して認識状況を検証したのが下の表である。

【表1】ESP4B-850に4台のM.2 SSDを組み込む
PC環境PCI Express x16スロット(x16)PCI Express x16スロット(x4)
自作PC1CPU: AMD Ryzen 9 7900X
マザーボード: ASUSTeK TUF GAMING B650M-PLUS
4基認識4基認識
自作PC2CPU: Intel Core i5-7600K
マザーボード: GIGA-BYTE GA-Z170M-D3H(Rev. 1.0)
4基認識4基認識
【表2】PCIe bifurcation対応拡張カードにM.2 SSDを4基組み込む
PC環境PCI Express x16スロット(x16)PCI Express x16スロット(x4)
自作PC1CPU: AMD Ryzen 9 7900X
マザーボード: ASUSTeK TUF GAMING B650M-PLUS
4基認識(PCIe bifurcation有効)1基認識
1基認識(PCIe bifurcation無効)
自作PC2CPU: Intel Core i5-7600K
マザーボード: GIGA-BYTE GA-Z170M-D3H(Rev. 1.0)
1基認識1基認識

 つまり、AMD向けのマザーボードだけではなく、古いIntel向けのマザーボードでも問題なく4基のM.2 SSDを認識し、ストレージとして利用できた。Windows 10をインストールした古めの環境でも試したが、やはり4台のM.2 SSDが認識された。しかも、利用する拡張スロットを選ばない。

 表の中の「自作PC1」で利用しているマザーボードはPCIe bifurcationをサポートするため、PCIe bifurcation対応のM.2スロット拡張カードでも最大4台のM.2 SSDを認識し、利用できる。しかしPCIe bifurcationをサポートしない「自作PC2」とPCIe bifurcationを無効にした自作PC1の環境では、1基のM.2 SSDしか認識できない。

 また、形状は同じでも、内部の接続レーンがx4までしか対応していないもう一方のPCI Express x16スロットでは、PCIe bifurcationが機能しないため、M.2 SSDを1基しか認識できない。これは自作PC1/2で共通している。こうしたマザーボードの対応状況や利用する拡張スロットを選ばず、正しく4基のM.2 SSDを認識できることが、ESP4B-850の最大のメリットといえる。

本来はPCIe bifurcation機能を利用できない拡張スロットにESP4B-850を挿してディスクの管理から状況を確認すると、4基のM.2 SSDがしっかり認識されていた

 4基までのM.2 SSDやSATA接続のSSD/HDDを利用できることを考えると、ファイルサーバーに向いたOS「TrueNAS Community Edition」で利用できるかどうかも気になる。今回は最新の安定版であるTrueNAS Community Edition 25.10.7をダウンロードしてインストールした自作PC2の環境に、4基のM.2 SSDと1台の3.5インチHDDを組み込んだESP4B-850を挿したところ、問題なく利用できることを確認できた。

TrueNASをインストールした自作PC2からESP4B-850の認識状況を確認すると、システムドライブ(名前: sda)以外に、4基のM.2 SSD(名前: nvme~)とOCuLinkを通じて接続した1台の3.5インチHDD(名前: sdb)が認識されていることが分かる

 ESP4B-850の長さは168mmと短く、Mini-ITX対応マザーボードを組み込めるPCケースなら問題なく対応できる。小さなMini-ITX対応マザーボードやMini-ITX対応PCケースと組み合わせて、M.2 SSDのみで構成する超小型のNASを作ってみるのも(筆者的には)非常に楽しそうだと感じた。

幅17cmのMini-ITX対応マザーボードに挿したところ、ESP4B-850がはみ出ることはなかった

4台のストライプ設定でもリードは7GB/s、ライトは6GB/s

 サーバーPCやTrueNASで使うならここで終わってもいいのだが、動画編集やAI処理のテンポラリドライブとして使うなら、転送速度も気になるところだ。実際に4台のM.2 SSDを組み込んだ場合の転送速度を簡単に検証してみよう。組み込んだのは下記の表にまとめた4基のM.2 SSDだ。いずれもPCI Express 4.0 x4対応の1TBモデルとなる。

4基のM.2 SSDを組み込んで実際の速度をチェック
【表3】SSDのリスト
メーカー名モデル名シーケンシャルリード/ライト(スペック)シーケンシャルリード/ライト(実測値)
MSISPATIUM M461 PCIe 4.0 NVMe M.2 1TB5GB/3.2GB3.2GB/3.1GB
Western DigitalWD_BLACK SN850 WDS100T1X0E7GB/5.3GB3.5GB/3.3GB
Hubei Yangtze Mason SemiconductorMC70007.4GB/6.5GB3.5GB/3.2GB
KingstonOM8PGP41024Q-A04.7GB/3.8GB3.3GB/3.2GB

 理想的には4基同じM.2 SSDを揃えたいところではあったが、自由になる機材の関係で、容量は同じだがスペックがばらけてしまっているのはご容赦願いたい。

 ただ、ESP4B-850にM.2 SSDを4基組み込んだ場合、1基ごとの帯域は最大でPCI Express 4.0 x2に制限される。PCI Express 4.0 x4のフルスペックで利用できるのは、x4対応の2基のスロット(SSD1/SSD2)だけを使ったときだ。

 実際に4基のM.2 SSDをESP4B-850に組み込んで、PCI Express 4.0対応の自作PC1に挿し、それぞれ1基ずつ認識させてCrystalDiskMark v9.0.3で計測したところ、シーケンシャルリード/ライト性能は3.1~3.5GB/sでほぼ同じだった。つまり、各M.2 SSDにおけるスペック上の差異は問題にならないはずだ。

 これらのことを踏まえてM.2 SSDが1台のシンプルボリューム、2/4台のストライプボリューム、そして記憶域から4台のM.2 SSDで作成したパリティ(RAID 5相当)ボリュームで、シーケンシャルリード/ライト性能を比較したのが下のグラフだ。

速度比較

 結果だが、1基は各M.2 SSDの検証結果と同じだ。2基のストライプボリュームは1基と比べるとほぼ倍で、ストライプボリュームらしい結果となった。ただ4基のストライプボリュームでも2基のストライプボリュームとほぼ同じ数値となり、少々物足りなさはある。ここはブリッジチップとして利用しているAMD B850の通信帯域の限界(PCI Express 4.0 x4)があるため、仕方のないところだ。

 現実として、4基のストライプボリュームでも速度はPCI Express 4.0 x4対応のM.2 SSDを単体で使っているときとほぼ変わらない。ESP4B-850を使っても「4基のM.2 SSDで超爆速テンポラリドライブ」を構築できるわけではない。とはいえ組み替えで余ってしまったM.2 SSDを何台か組み合わせれば、大容量のドライブが作れるのはまちがいない。動画編集だけではなく、Steamなどからダウンロードするゲームファイルの置き場所として使ってもよいだろう。

古いパーツでサーバーPCを作りたいユーザーにベストマッチ

 現状で複数台のM.2 SSDを組み込める一般ユーザー向けの拡張カードは、ほぼすべてがPCIe bifurcation対応環境でのみ利用できるモデルだ。そうした中、ESP4B-850が直販価格2万7,999円(11月6日時点のセール価格は2万2,399円)という比較的低価格ながらも環境を選ばず利用できる点は、大きなメリットといえる。

 筆者のように大容量のM.2 SSDを複数台組み込んで、小型のサーバーPCを作りたいユーザーにぴったりのアイテムだし、速度比較のところでも紹介したテンポラリドライブを作りたいユーザーにも向いている。

 そもそもPCパーツ全体がかなり高騰しているいま、パーツを買い集めて新PCを構築するのは現実的ではない。サーバーPCを作るにしても、パーツ箱に残っている古いCPUやマザーボード、メモリ(ホントに高い)を再利用できれば助かるわけで、そういった意味でも環境を選ばないESP4B-850の魅力は大きい、と筆者は思う。分かってくれる人がいればいいのだけれども。