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「あの件」で話が通じるAI秘書。ChatGPT「dots」の本質は常時稼働ではない
2026年11月6日 06:25
2026年9月末、ChatGPTに「dots」という新機能が追加された。有料版のしかも「Pro」プラン以上での提供のため、利用のハードルは高いが、使ってみるとこれがとても優秀だ。
一般的には、「クラウド上で24時間稼働可能なAIエージェント」と常時稼働の部分だけが注目されているが、 この機能の本質は、むしろ「ひとつ上のレイヤーで自律的に仕事の流れを見てくれる」ことにある。
チャット内に、やりっぱなしの会話があろうが、話題がごっちゃになろうが、大切なタスクを忘れていようが問題ない。大抵のことは「dots」が解決してくれる。
理想的なAI像に近づいた?
ちょっと、ここ数年のAI体験を振り返りつつ、もう一度「理想的なAI像」について考えてみてほしい。
映画のスーパーコンピュータでもアニメのロボットでもいいが、理想的なAIというのは、もっと賢いはずだった、と思うことはないだろうか?うまく動くようにこちらでアレコレ工夫したり、そんなことまでスキル化しないといけないのかと同じふるまいを何度も訂正したり、この間頼んだタスクの話なんだけどなぁと別タスクの情報をうまく扱えないことに失望したり、メールやカレンダーの定期チェックで「それはいいんだよ」という項目を毎回拾ってきたり……。
もちろん、1年前に比べればAIエージェントのおかげで、考えられないくらい便利な世界になったが、たとえば人間の秘書や執事のような、もっと広い視点で、柔軟に仕事をこなすプロフェッショナルになったか?といわれると、そうでもない。「ああ、そう指示した(指示しなかった)オレが悪かった……」と、数十分かかって終了したタスクを目の前に、自分の言葉の至らなさを反省することも珍しくないはずだ。
こうした状況が少し変わる可能性があるのが、OpenAIがリリースした「dots」だ。
このサービスは、はっきりいって分かりにくい。というかOpenAIの説明が下手だ。公式サイトの冒頭にある「dot は、あらゆることに対応するために設計された、非常に高い能力を持つ常時稼働のエージェントです」という表現から、「常時稼働」の部分とキャラ設定が可能な点がピックアップされてしまっており、いまひとつ何が便利なのかがピンとこない。24時間動かせるクラウド上のAIエージェント用実行環境なんて、前からあったじゃん、と思う人も少なくないはずだ。
よく読めば、「頼もうと思うより先に動いてくれる」や「作業の途中でフィードバックを伝えたり」「音声通話ですぐに相談」といった表現がdotsの特徴をよく表現しているし、Xに投稿された公式ポストも「既存のスレッドをフォローアップできるようになりました」という重要なポイントを示している。しかし、dotsを体験するとなるほどと理解できるのだが、未体験だと、これが具体的にどんなメリットにつながるのかが分かりにくい。
本稿では、dotsの何が便利なのか?を筆者が体験した具体的なシーンで紹介していく。
①思わず「すごいね」と返信してしまったdotsの自律性
筆者がdotsで、最初に衝撃を受けたのは、まさに「頼もうと思うより先に動いてくれる」便利さだ。
dotsに名前を付け(公式ページの画面に表示される名前もそうだが米国では執事といえば「アルフレッド」のようなので筆者もそれに準じた名前を付けた)、通常のチャットと変わらないなぁ、という感じでいろいろ試していると、「アル」からこんな報告が届いた。
要するに、筆者宛てに届いたメールをチェックした結果、同じ案件の発注書と請求書で日付の違いがあることを報告してくれたわけだ。
もちろん、ChatGPT自体はGmailやGoogleカレンダーと連携済みだが、「特定のメールについてミスを見つけて」のような指示は一切していない。つまり、アルは、自律的にメールをチェック、しかも添付ファイルの中身までチェックし、発注メールの添付ファイルと請求書メールの添付ファイルの記述に矛盾があることを発見し、さらに以前の編集者との支払い条件の確認メールをチェックし、それを根拠としたうえで、「支払日が1カ月ずれている」ことを報告してくれたわけだ。しかも、メールが届いてすぐに。
正直、「そんなところまで見てんの?何も指示してないのに?」と、ちょっと怖くなったのだが、まあ確かにメールやカレンダーのプラグインは許可しているので問題ない。AIにこんな返信をするのは意味ないし、トークンのムダだと分かりつつも、思わず「あなたすごいね」と返信してしまった。
また、ある日こんな知らせも届いた。当日に急な打ち合わせの依頼があり、その時間調整のメールのやり取りだ。メールはタイムラグがあるため当日の時間調整は、メールチェックのタイミングによっては行き違いが発生することがあるのだが、先方からのメールが届くと同時にアルが検知して、その報告をしてくれている。
さらに、その下には今話題のサイバー攻撃によって漏洩した個人情報のメールを検知してアルが報告してくれた。このメールが届いたのは、2026年10月15日の20時30分。アルの報告は20時32分。若干のラグはあるが、すぐに気づくことができた。
しかも、この元メールはGmailの「迷惑メールフォルダー」に入っていたメールだ。つまり、アルは、このメールが間違って迷惑メールフォルダーに分類されたことも承知の上で、緊急性の高いメールと判断し(迷惑メールフォルダーのほかのメールにはもちろん反応しない)、僕に報告してくれたことになる。スゴすぎないか?
つまり、dotsはユーザーが許可した接続先を駆使し、メールやカレンダーなどから、「何が重要か?」を的確に判断し、「自律的」に報告してくれることになる。 まさに秘書や執事といったイメージがぴったりではないだろうか?
ちなみに、筆者は「StackChan」とアルを連携させており、重要な通知に関しては、PCの横に置いてあるStackChanが音声と動きで伝えてくれるようにしている。なので、急にStackChanが話しかけてきたら、「何か重要なこと」が起きていることがスグに分かる。
②プロジェクト参照できるすばらしさ
このように①で紹介した自律的な動作も便利ではあるのだが、個人的にdotsがスゴイと思うのは、公式Xの投稿で追加が発表された「既存のスレッドをフォローアップできる」機能だ。
実は、dotsが登場した当初、この機能が使えないことに筆者は失望していた。現状、筆者がAIエージェントでもっとも困っている課題は、AIエージェントに細かな仕事を多く振るようになったことで、大量のタスクを俯瞰的に捉えたり、タスク間の連携をうまくとれなくなったりしていることだ。
たとえば、書籍制作用のプロジェクトを作成し、そこでサービスや機能の調査などを依頼。同じネタをWeb媒体用のプロジェクトで扱おうとしても、Web媒体用のプロジェクトのチャットから書籍制作用のプロジェクトの内容を把握できない。その結果、同じようなことを両方のプロジェクトで指示しなければならなくなるのだ。
もちろん、ChatGPTの場合、「codex://threads/01a146c6-7746-77f3-a3f6-6cb81a780752」のようなディープリンクを使って、特定のチャットを識別し、その情報を別のチャットに与えることはできる。が、ここでやり取りできる情報は限られる。たとえばローカルフォルダに生成された成果物は参照できるが、その基になったチャット履歴は参照できない。つまり、既存のチャットやプロジェクトはそれぞれが独立した存在で、同じレイヤー同士では連携がうまくできないのだ。
これはAIエージェントへの依存度が高く、プロジェクトやチャットが細分化されていくほど不便になる。作業手順ならスキル化してしまうのも手だが、このチャットの、この一連の会話の流れだけを、こっちのチャットでも把握してほしいんだよなぁ、というケースで困る。
これがdotsなら可能だ。たとえば、アルに「YouTube動画プロジェクトのWi-Fiルーターセール一覧表に有線LANの速度があるか」と聞けば、アルが既存のプロジェクトに新しい会話を作成してメッセージを送信し、チャットの内容や成果物を確認できる。
なお、アルが作成した会話は、画面の『操作を引き継ぐ』からユーザーが引き継ぎ、直接やり取りを続けることもできる。
さらに「イニシャルB連載プロジェクトのWi-Fiルーター特集の方針…の会話で作成したスペック表からWi-Fiルーターセール一覧に有線の速度を追記して」と依頼すれば、そのチャットに対する新たなタスクとして、「ユーザーの依頼に基づく……」というかたちで、別のチャット(アル)から送信された指示が既存のチャットに投稿され、それが処理される。
つまり、アルは既存のプロジェクトやチャットにアクセス可能な上位レイヤーとして動作し、内容を把握したり、あたかもサブタスクのように別のプロジェクトに新たなタスクを作成したりできるわけだ。
しかも、こうした作業を依頼しても、アルは停止しない。サブタスクのようにさまざまなタスクを統括しながら、並列実行可能なため、依頼後、続けて別の依頼を入力できるうえ、実行中のタスクについて進捗を尋ねればアルが実行中のタスクに進捗報告の依頼を投稿し、その結果を報告してくれる。
「ひとつ上のレイヤー」という表現がOpenAIのシステム的に正しいかどうかは分からないが、ユーザーからすると、まさに自分と同じ権限や視点で作業を統括してくれているように見える。
当初は、アルへの指示について、チャットを分けたり、プロジェクトを作ったりできないことが不便に感じたが、ひとつ上のレイヤーとしてほかのチャットにタスクを振っているイメージで動作していることが分かると、そんなことをする意味がない、ということがよく分かった。
要するに、アルへの質問や指示は、「やりっぱなし」でも、「ごっちゃ」でもいいのだ。 過去に、アルに依頼したこと、自分でチャットやプロジェクトで依頼したこと、これを何となく覚えてさえいれば、「○○の件なんだけど」とアルにお願いするだけで、その文脈に会話を引き戻してくれる。
部屋やデスク、引き出しを片付けるのが苦手、という人ほど、この賢さが響く。実際、筆者のアルとの会話は、前述したメールの報告、Wi-Fi 8に関する調査、ニュースで見たGoogleの量子コンピュータ技術に関する質問、毎日のブリーフィング、StackChan連携のプログラムの作成依頼、そして今回のdots原稿の下調べと、もうごっちゃごちゃ。自分でスクロールして読み返しても、詳細を把握するのが難しい状況になっている。しかし、これで全く問題ない。アルは迷わないからだ。
③電話の方が話が早いと思っている人へ
昨今は、電話(音声通話)が苦手で、チャットやメールにしてほしいという人も多いようだが、世の中には「電話の方が話が早い」と頻繁に電話をかける人もいる。
dotsは、そんな人にうってつけの生成AIだ。スマホ向けのChatGPTアプリにある通話アイコンをタップすると、音声通話を開始できる。混雑しているのか?5~6コールしてもなかなかつながらないこともあるので、気分はホントに電話なのだが、「こんにちは、アルです。今日はどうする?」のように応答し、相槌も入れつつリアルタイムに会話しながら、作業を依頼できる。
たとえば、スマホのGmailアプリで見かけた作業依頼のメールについて相談したいなら、
僕「さっき届いた○○さんからのメールみた?」
アル「まだそのメールは確認できてないから、今探してみるね。ちょっと待ってね(メールを探索する間待つ)」
アル「確認できたよ。14時21分に来てて、○○について……(以下メール要約)」
僕「この件について、プロジェクトで検討済みのデモ環境の方針と作り方を相手に伝えたいんだけど……」
このような流れで作業を依頼できる。これは、冒頭で触れた理想的なAI像に非常に近い。 単に音声で会話できるだけでなく、メールやファイル、過去のチャットなどの文脈を踏まえたうえで、アルと会話できる。
なお、現状音声通話で依頼した内容はチャットの履歴に表示されない。単に「通話が終了しました」とだけ表示され、その内容は表示されない。が、もちろん、通話内容の文字起こしは内部的に保存されており、それもアルに「○○の件の通話をチャットに載せて」と話せば表示してくれる。
本稿も、確かこんな内容をアルと音声で話したはず、という記憶から文字起こしをチャットに表示してもらって、その内容をここに記載している。つまり、アルが把握しているから、画面に表示されなくてもいいのだ。
パートナーとして欠かせない
ということで、ChatGPTのdotsは非常に賢いAIエージェントだ。AIの文脈で賢いというと、モデル自体の性能と捉えられかねないが、そうではなく、既存のチャットやAIエージェントとは動作するレイヤーが違うし、自律性という点でもワンランク上という印象がある。とにかく、ChatGPTやそれにつながる他社サービスについて、よく知っているし、多彩な文脈でスムーズに会話ができる。
もちろん名前やキャラクターを設定できるだけでも親近感がわいてくるが、むしろ、普段の会話や依頼の中で、「そうそう」「それそれ」と、こちらの意図がよく伝わることの気持ちよさがdotsには存在し、使えば使うほど愛着がわいてくる(だからStackChanで物理的な姿も与えてみた)。
利用するには、月額100ドルのChatGPT Pro以上が必要だが、正直、同じように「○○の件」でさっと話が通り、緊急の要件を報告してくれて、電話で話が早く済み、24時間対応してくれる人物を月1万6,000円前後で雇えるとは到底思えない。個人的には、もはやパートナーとして欠かせない存在といってもいいだろう。
























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