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「飛行機内の充電」に誤解の嵐?新しい規制内容、正しく理解していますか

 近年、モバイルバッテリの発火事故のニュースを目にする機会が増えている。それに伴い、公共交通機関でのモバイルバッテリの持ち込みや利用に関する規制が強化されている。その中でも特に厳しく規制されているのが航空機だ。

 そこで今回、航空機を利用して旅行する機会が増える夏休みを前に、航空機におけるモバイルバッテリに関する最新の規制内容を確認するとともに、航空機内での充電に関する状況をまとめて紹介する。

2026年4月24日よりモバイルバッテリに関する規制が強化

 モバイルバッテリの発火事故が、ここ数年多発している。中でも航空機での発火事故として強烈な印象として残っているのが、2025年1月に韓国で発生した、エアプサン 391便の火災事故だ。機内の手荷物棚に収められていた荷物内のモバイルバッテリから発火し、幸い死者は出なかったものの、航空機は全焼。この重大事故を受け、世界的に航空機へのモバイルバッテリの持ち込みや機内での使用に関する規制が大幅に強化されている。

 通常、航空機に関する規制は、安全で持続的かつ効率的な国際民間航空の運航を目的に設立された国連専門機関「国際民間航空機関(ICAO)」が定める国際基準に基づいて行なわれている。そのICAOは、昨今の航空機内におけるモバイルバッテリの発火事故多発を背景に、2026年3月27日に基準の緊急改定を行ない、即日適用した

ICAOは2026年3月27日、航空機へのモバイルバッテリの持ち込みに関する国際基準を改定し即日適用した

 日本における航空機に関する規制のルールは、国内の航空法とICAOが定める国際基準に基づいて国土交通省が定めている。そして、2026年3月27日のICAOの基準緊急改定を受け、「航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」および「航空法施行規則第194条及び航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示の運用について」の一部改正を実施。その結果、国内線、国際線を問わず、日本を発着する全ての航空機に対して、モバイルバッテリの機内持ち込みおよび機内での使用に関する新たなルールを2026年4月24日より適用し運用を開始した。その規制の内容は、以下にまとめた通りだ。

 なお、このルールは航空業界の自主規制ではなく、国土交通省からの指示に基づき法的に厳格運用されているため、乗客は必ず従う必要がある。

国土交通省は4月24日より日本発着の全ての航空機に対してモバイルバッテリの機内持ち込みおよび機内での使用に関する新たなルールを適用

2026年4月24日より適用開始となった、航空機のモバイルバッテリ規制

  1. 預入(受託)手荷物にモバイルバッテリを入れることは禁止。モバイルバッテリは必ず機内に持ち込む必要がある
  2. 機内に持ち込めるモバイルバッテリの容量は160Whまで。それ以上の容量のモバイルバッテリは持ち込み禁止
  3. モバイルバッテリがショートしないように保護して持ち込むこと
  4. モバイルバッテリは座席上の収納棚に収納せず、座席ポケットや手元で保管する
  5. モバイルバッテリの機内持ち込みは最大2個まで
  6. 機内での機内電源などを利用したモバイルバッテリへの充電禁止
  7. モバイルバッテリからほかの電子機器への充電禁止

 このうち、1から4までは従来より規制されていたルールで、5から7が4月24日より新たに追加された、ICAOが定める最新の国際基準に準拠したルールとなる。ここからは、それら新たに追加されたルールを細かくチェックしていこう。

モバイルバッテリの機内持ち込みは最大2個に制限

 航空機内へのモバイルバッテリの持ち込み個数は、4月24日以降、最大2個へと制限された。そのうえで、機内に持ち込めるモバイルバッテリの容量は160Whまでという規制も残っている。そのため正確には、航空機内へ持ち込めるモバイルバッテリは、容量160Wh以下のものを最大2個まで、となる。

 なお、モバイルバッテリの定義は、「ほかの電子機器を充電する目的のもの」と定められている。

航空機内へのモバイルバッテリの持ち込み個数は最大2個までに制限。容量は従来同様160Wh以下に制限される
モバイルバッテリは、ほかの電子機器を充電するものと定義

 同時に、ノートPCやデジタルカメラなどで利用する着脱式リチウムイオンバッテリについても規制が追加されている。そういったバッテリは「予備のリチウムイオン電池」とされ、容量100Wh以下のものであれば個数制限なく持ち込めるが、容量100Wh~160Whのものは最大2個まで、160Whを超えるものは持ち込みが禁止となる。

デジタルカメラやノートPCの着脱式リチウムイオンバッテリは「予備のリチウムイオン電池」として定義
このような容量100Wh以下のデジタルカメラ用リチウムイオン電池は個数制限なく持ち込める

 ここで注意したいのは、容量100Wh以下の予備のリチウムイオン電池は個数制限なく持ち込めるのに対し、モバイルバッテリは容量が100Wh以下であっても2個までしか持ち込めないという部分。とにかくモバイルバッテリは容量に関係なく最大2個しか持ち込めない、と覚えておこう。

 また、容量100Wh~160Whの予備のリチウムイオン電池の扱いにも注意点がある。それは、容量100Wh~160Whのモバイルバッテリと予備のリチウムイオン電池は双方合わせて2個までしか持ち込めない、という点だ。

 たとえば、100Wh~160Whのモバイルバッテリを1個持ち込む場合は、100Wh~160Whの予備のリチウムイオン電池の持ち込みは1個までとなる。100Wh~160Whの予備のリチウムイオン電池を2個持ち込むと、100Wh~160Whのモバイルバッテリは持ち込めなくなる(逆も同じ)ので要注意だ。

予備のリチウムイオン電池でも、容量100Wh~160Whのものは、モバイルバッテリと合わせて最大2個まで、容量160Wh超のものは持ち込み禁止。また、容量100Wh以下であってもモバイルバッテリは最大2個までしか持ち込めない

バッテリの容量は製品に記載されている

 モバイルバッテリや予備のリチウムイオン電池の容量は、製品本体の記載で簡単に確認できる。通常、バッテリには容量や給電能力などが記載されているので、そちらを確認すればいいだけだ。

 たとえば、下に示したモバイルバッテリの場合、「Battery Capacity」という項目に「34.56Wh」と記載されていることから、容量が34.56Whだと分かる。

こちらのモバイルバッテリでは、「Battery Capacity」という項目に「34.56Wh」と記載している

 また、以下はデジタルカメラ用のリチウムイオンバッテリだが、こちらも「7.4Wh」と記載されており、簡単に容量を確認できる。

このデジタルカメラ用リチウムイオンバッテリは、容量が7.4Whと記載されている

 しかし、中には「Wh」での容量表記のないバッテリが存在している。そういった製品でも、ほとんどの場合容量を「mAh」で表記している。「mAh」の容量表記があれば、「Wh」の容量に換算可能なので、通常はルールの範囲内であることが分かれば持ち込みを拒否されることはない。

 ただ、海外の空港では保安検査場で「Wh」の容量表記がないとの理由でバッテリの持ち込みを拒否されたという例もあるようなので、海外旅行に持って行くバッテリは、可能な限り「Wh」での容量表記のある製品を利用したほうが安心だ。

筆者手持ちのモバイルバッテリでは、容量の「Wh」表記がない製品はなかったが、「mAh」表記しかないものは海外旅行に持って行くのを避けた方が無難だ

 そして、気をつけたいのが容量表記のないバッテリだ。主に格安のバッテリやノーブランドのバッテリで多く見られるが、容量が判断できず航空機への持ち込みを拒否される場合がある。なによりそういった表記のないバッテリは粗悪品の可能性が高まるため、そもそも使用するべきではないだろう。

モバイルバッテリの航空機内での使用に関する規制

 6と7は、モバイルバッテリの航空機内での使用に関する規制だ。

 まず6のモバイルバッテリへの充電禁止。航空機の座席には、USB電源やAC電源が用意されていることが多いが、それらを利用し航空機内でモバイルバッテリを充電することは禁止されている。

 7は、モバイルバッテリから電子機器への充電禁止。モバイルバッテリにスマートフォンやノートPCなどの電子機器を接続して充電することも禁止されている。

 つまり、航空機内ではモバイルバッテリの使用自体が禁止されていたわけだ。航空機内にモバイルバッテリを持ち込んだ場合でも、一切使用することなく保管しておく必要があるので、気を付けたい。

航空機内では、機内電源を利用したモバイルバッテリへの充電やモバイルバッテリから電子機器への充電が禁止となる

 当然、機内でモバイルバッテリを充電したり、モバイルバッテリからスマートフォンを充電したりすることは規制に違反する行為となる。航空機を運航する航空会社は、機内で安全を脅かす行為に対して常に警戒しており、そういった行為が発覚した場合には、安全を脅かす行為として厳しく対応されることになるので、絶対に避ける必要がある。

モバイルバッテリ以外のリチウムイオンバッテリ内蔵機器の使用や充電はできるの?

 このように、航空機内へのモバイルバッテリの持ち込みや航空機内での使用が厳しく規制されているのは、モバイルバッテリに使用されているリチウムイオンバッテリが発火しやすい特性を持っているからだ。

 ただ、リチウムイオンバッテリを内蔵しているのはモバイルバッテリだけではない。スマートフォンやノートPC、携帯ゲーム機、ハンディファンなど、リチウムイオンバッテリを内蔵する機器は多数存在しており、そういった機器の航空機への持ち込みや航空機内での使用についての規制はどうなっているのか。

 今回、北九州空港を拠点に国内線および国際線を運航しているスターフライヤーの担当者にお伺いしたところ、規制が強化されたのはモバイルバッテリの航空機への持ち込みや、モバイルバッテリを介した航空機内での充電行為に限られているという。

 つまり、モバイルバッテリ以外のリチウムイオンバッテリ内蔵機器の航空機内への持ち込みや航空機内での使用、航空機内のUSB電源やAC電源を利用したそれら機器への充電は、現在のところ規制の対象外だという。

 スターフライヤーが運用している航空機は、全座席にUSB Type-AまたはType-CのUSB電源、およびAC電源が用意されている。そして、スマートフォンやノートPCをはじめとしたリチウムイオンバッテリ内蔵機器をUSBケーブルでUSB電源に接続して充電したり、AC電源にACアダプタを接続して充電する、といった行為は現時点では全く問題がないとのこと。

スターフライヤーは北九州空港を拠点に国内線および国際線を運航(写真: スターフライヤー提供)
スターフライヤーの航空機は、全座席にUSB電源およびAC電源が備わっている(写真: スターフライヤー提供)
Type-Aに加えてType-CのUSB電源を備えた座席もある(写真: スターフライヤー提供)
USB電源を利用してスマートフォンなどのリチウムイオンバッテリ内蔵電子機器の充電は規制対象外で、問題なく可能(写真: Anker提供)
AC電源も全座席に用意(写真: スターフライヤー提供)
このようにAC電源にACアダプタを接続してスマートフォンやPCを充電することも問題ない(写真: スターフライヤー提供)

 このルールはスターフライヤーだけでなくほか航空会社についても同様だ。そのため、スマートフォンやノートPCのバッテリ残量が少ないという場合には、座席備え付けのUSB電源やAC電源を利用して充電を行なうといいだろう。

 ちなみに、スターフライヤーの座席に用意されているUSB電源の出力は、Type-Aが最大10.5W、Type-Cが最大60W。特にType-Cはなかなかの高出力のため、スマートフォンだけでなく、多くのノートPCもType-C経由で充電可能。このあたりはかなり優れた利便性を備えているといえる。

 ただし、LCC(格安航空会社)の航空機のように、座席にUSB電源やAC電源を備えない場合もある。そういった航空機では、ルールに沿ってモバイルバッテリを持ち込んだとしても、航空機内でスマートフォンやノートPCなどの充電は行なえないため、航空機搭乗前に空港の充電スポットなどを活用して充電しておくことが重要だ。

スターフライヤーはAnker製USB充電ケーブルの貸出サービスを開始

 こういったモバイルバッテリの航空機内への持ち込みや使用の規制が強化されたことを受けて、スターフライヤーは新たなサービスを6月1日より開始している。それは、Anker製のUSB充電ケーブルを航空機内で貸し出すというサービスだ。具体的には、「Anker Prime 高耐久ナイロン USB-C & USB-C ケーブル 240W 0.9m」または「Anker USB-C & USB-A ケーブル (Flow)0.9m」の貸し出しが行なわれている。

スターフライヤー機内で貸し出されているAnker製のUSB充電ケーブル「Anker Prime 高耐久ナイロン USB-C & USB-C ケーブル 240W 0.9m」
同じく貸し出されている「Anker USB-C & USB-A ケーブル (Flow)0.9m」

 貸出ケーブルにこの製品を選定したのは、「USB認証を取得していることで第三者機関による安全性が明確になっていること」と「高耐久ナイロンの使用によって、機内での繰り返し使用に耐えられる優れた耐久性を備えていること」を主に重視してのことだという。

 そのうえで、今回の規制強化を受け、スターフライヤーの航空機全座席に用意しているUSB電源と高品質な充電ケーブルを利用して、安心してスマートフォンなどを充電してもらいたいとの思いから、Anker側と協議して製品を選定し貸出サービスを開始したそうだ。

 この貸出用USB充電ケーブルは、航空機の離陸後、ベルト着用サインが消灯している間に客室乗務員へ依頼することで借りられる。現在は汎用性の高いUSB Type-C対応ケーブルのみの貸し出しとなっているとのことだ。

充電ケーブルは、離陸後、ベルト着用サインが消灯している間に客室乗務員へ依頼することで借りられる(写真: Anker提供)

航空機での旅行時には、ルールを守ったモバイルバッテリの扱いを心がけよう

 このように、2026年4月24日以降、航空機へのモバイルバッテリやリチウムイオンバッテリの持ち込みと、航空機内での利用に関して規制が強化された。そして、先にも紹介したようにこの規制は、国土交通省からの指示に基づき法的に厳格運用されているため、乗客は必ず従う必要がある。しかもこれは、国内だけでなく全世界共通のルールとなっている。

 もしルールを逸脱してしまった場合はどうなるのか。たとえば、3個以上のモバイルバッテリを持ったり、制限以上の容量のモバイルバッテリを持った状態で空港に来てしまった場合はどうなるのか。当然規制に従って航空機には持ち込めず、預け荷物にも入れられず、そのモバイルバッテリは手放さないといけないのだろうか。

 この点をスターフライヤーの担当者に聞いてみたところ、そういった場合は破棄か別送を選べることが多いという。実際に、モバイルバッテリの持ち込みを拒否され、それが安価な製品だった場合には、破棄を選択する乗客が多いとのこと。

 ただ高価な製品などは別送が選択される場合もあるそうで、そういった場合には搭乗便の航空会社の判断で自宅などに別送してもらえるという(配送費については乗客負担)。とはいえそれは、日本国内のみに限られると考えるべきで、海外旅行時にはほぼ破棄になると考えた方がいいだろう。

 現状では、モバイルバッテリの航空機持ち込みに関する規制の内容や、モバイルバッテリ自体が危険物であるということについて、まだ利用者に十分浸透していないという。そのため、持ち込めると思って空港に持参するケースがまだかなり多く、上記のようなトラブルにつながっているそうだ。

 もちろん、規制の範囲内に収まるモバイルバッテリであれば、問題なく航空機内に持ち込み、旅行先で利用できる。旅行中はスマートフォンの充電がなかなか行なえず、モバイルバッテリが重宝する場面が多く、必需品といってもいい存在だ。そのためにも、航空機へのモバイルバッテリの持ち込みや航空機内での使用のルールをしっかり理解し、航空機に持ち込めるモバイルバッテリはどういったもので、手持ちのモバイルバッテリがその規制の範囲に収まるものなのか、事前に確認することが不可欠だ。そして、ルールに沿って楽しい旅を楽しんでもらいたい。