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コミュ障を自認する筆者が「Even G2」に頼った3つの理由

Even Realities「Even G2スマートグラス」9万9,800円

 筆者はコミュ障だ。これは卑下ではないし、医学的な意味でもない。いくつかコミュニケーションを阻害する性質を備えていると自覚しているという話である。

※本稿の「コミュ障」は、医学的な意味ではなく、筆者が日常的に感じている「会話の苦手さ」を指しています

 そんな筆者が今年もっとも注目しているアイテムがAIスマートグラスだ。注目している理由は「フリーハンドでさまざまな情報を取得、発信したい」という思いからなのだが、個人的に購入したAIスマートグラス「Even G2スマートグラス」を日常的に使用していて、コミュニケーションを阻害する性質をいくつか解決、もしくはサポートしてくれると感じる体験をした。

 というわけで本記事は「Even G2はコミュ障を救うのか?」というテーマで、その体験の実感についてお伝えしたい。

画面は70cmぐらいの距離で約13インチのサイズで表示される。緑一色の表示は、筆者が初めて購入したシャープ製オールインワンコンピュータ「MZ-2000」を思い出させる

居酒屋の喧騒の中でも会話が成立する

顔を上に向けると、スリープから目覚めて画面が表示。装着するとこのような感じで見える

 筆者のコミュ障たる所以は人見知りが主原因ではあるのだが、それよりもわりと切実な理由が1つある。居酒屋などのうるさい環境で人の声を聞き取るのが苦手なのだ。

 これがほかの人と比べて、どの程度違いがあるのかは自分では分からない。毎年健康診断を受けており、聴覚に問題はないと診断されている。相当集中すれば、居酒屋の喧騒の中でも聞き取ることはできる。ただちょっと気を抜くと、目の前の人の声を認識しづらくなるのだ。

 同じ場所にいるほかの人は会話が成立しているので、私がほかの人より喧騒の中で人の声を聞き取るのが苦手なのは間違いないと思う。ただ日常生活でそれが問題になることはないし、静かな環境での小さな音への気づきは逆にほかの人より鋭敏なので、特に心配はしていないし、医師に相談したこともない。それが私の能力なのだと受け止めている。

 さて少し前置きが長くなったが、 Even G2には「会話サポート」という機能がある。 これが居酒屋での会話に非常に便利なことに、先日の二次会(奇しくも「文章と生成AI」というイベントの二次会だ)で気がついた。

 Even G2の会話サポートを立ち上げたら、居酒屋のうるさい環境の中でも会話を結構正確に認識してくれたのだ。もちろん100%ではない。体感的には70〜80%ぐらいだと思う。しかしそれで十分だ。筆者が聞き取れていないのは聞き慣れない固有名詞などだが、それが分かるだけでも十分意味は通る。

これは実際に「文章と生成AI」の二次会で交わした会話のログ。うるさい環境でもしっかり認識されている

 また少し驚いたのは指向性を備えていることだ。テーブルには複数の人が座っていて、当然それぞれ気ままにしゃべっているのだが、私が顔を向けている人の声を中心に拾ってくれていた。周囲の声が混ざって、意味不明な言葉の羅列とならないのである。

 人と話していて、「え?」とか「は?」と聞き返すのは、やはり会話のリズムを崩してしまう。特にふたりではなく、3〜4人でしゃべっているときは、ほかの人は聞き取れているのに自分だけ聞き取れず、周囲に聞き直すというのはやはり恥ずかしい。さらに、ここで「ハハハ」などと愛想笑いをすると自己嫌悪に陥ってしまう。

 これまで忘年会や新年会にお呼ばれして参加したものの、周りの人の声が聞き取れず、なんとなく気まずくなって帰ってしまったことが何度かあった。Even G2があれば、今後はそのような寂しい帰途に就く必要はないだろう。

顔を相当上に向けなければ、画面になにが表示されているかは見えない

ノベルゲームのように数行前まで発言を振り返ることができる

 もうひとつ筆者には、コミュ障を自認する理由がある。それは考えが飛びがちなことだ。人と話しているとき……というか聞いているときに、次に聞きたい質問を考えてしまったり、周囲の会話に頭が引っ張られてしまうことがある。そうすると当然、目の前の人に目を向けていても、実際にはその人の言葉が頭の中をすり抜けてしまうことがあるのだ。

 その点、 Even G2であれば、直近の会話が常時数行表示されている ので、ふっと我に返ったときに自分の頭をすり抜けていた会話を遡れる。まるでノベルゲームのUIのような感覚で会話できるわけだ。これは目前の人の言葉をスルーしてしまいがちな筆者にとって、非常に便利で、かつ新鮮に感じられた体験であった。

会話サポートでは最大28文字×3行のテキストが目前に表示されている。数秒前の発言であれば振り返ることができるのだ

ハレの日の祝辞などが苦手な人に心強い「原稿表示」

 コミュ障……とは少し外れるかもしれないが、筆者には人付き合いという点で1つ苦い思い出がある。とある編集部に在籍していたころ、同僚の結婚式に主賓として招待され、「CLIE PEG-NX70V」(ソニーが販売していた携帯情報端末「PDA」)の画面を見ながら祝辞を読み上げ、まあまあな顰蹙を買ってしまったのだ。

「CLIE PEG-NX70V」の写真は残っていなかった。正確には筆者の「CLIE PEG-NX70V」が載っている雑誌なら手元にあるが、さすがに他社の雑誌なので転載できない。代わりに「CLIE PEG-TG50」の写真を掲載する

 当時、私よりふた回りぐらい上の年齢の方々はPDAの存在など知らなかったのだろう。少し大きな携帯電話に見えたのだと思う。実際、病院の待合室にてCLIEでダウンロード済みのログ(2ちゃんのPDAスレだ)を読んでいたときに、病院で携帯電話を使うなと怒られたこともあった時代の話だ(もちろんPHSカードは挿していなかった)。というわけで、携帯電話でメールなどを見ながら、祝辞を述べていたと勘違いされたわけだ。

 そこでEven G2である。 Even G2には「原稿表示」という機能がある。いまどきなら「プロンプター」と言った方が通りはいいかもしれない。 人生でたった一度しか経験していない、主賓として祝辞を述べるというときにEven G2があれば、数年に一度思い出しては「あぁあぁぁー」と頭をかきむしる夜を迎えることはなかったことだろう。いや、ほんとにあのときは、すいませんでした。ホントにホントに。

海外展示場でも「ライブ翻訳」で細かなニュアンスまで聞き取れそうだ

 さてコミュニケーションといえば「異文化コミュニケーション」も重要だ。筆者は英語が苦手なのだが、近々台湾で開催されるCOMPUTEXに取材に行くという大仕事を控えている。Even G2は居酒屋の喧騒の中でも会話を認識できるほど精度が高いので、海外展示会でも「ライブ翻訳」で細かなニュアンスまで聞き取れそうだ。

 相手の言っていることさえはっきり理解できていれば、こちらとしても「グレイト!」「ナイス!」「イエス!」「アイシンクソー!」「ハハン」などと自信満々で返答可能だ。これまで海外取材では声をかけられないように、絶妙なパーソナルスペースを確保しつつ愛想笑いしてブースを回っていたが、今年は例年のような肩身の狭い思いをせずに済みそうだ。

これはYouTube動画「Even Realities presents: The Big Dance.」をライブ翻訳でリアルタイム翻訳させたもの。数秒後には翻訳結果が表示される

Even G2と過ごした日々から見えてきたこと

 AIスマートグラスというジャンルを「未来的なハンズフリーデバイス」と考えていた筆者だが、思いのほかリアルなコミュニケーションこそ助けてくれるアイテムだといまは捉えている。大声が飛び交う居酒屋での聞き取りのサポート、会話履歴の表示、祝辞プロンプター、そしてライブ翻訳などの機能は、筆者のようにコミュニケーションになんらかの苦手意識を持つ人々が感じているストレスを、意外なほど実用的に取り除いてくれる。

左が個人的に購入した「Even G2 B」、右はEven Realitiesから借用した「Even G2 A」。フレーム形状が2種類、カラーが3種類、合計6種類の製品が用意されている

 もちろん前述の通り、現時点では完璧な製品ではない。とはいえ、喧騒の中での音声認識の精度は現時点で70~80%とお伝えしたが、これはソフトウェアの進化により、さらに向上していくはずだ。なによりも「70%でも意味が通る」という体験は、苦手な環境でのコミュニケーションの不安を軽減するには十分だった。

 また、本製品には「Even Hub」というアプリプラットフォームが用意されており、すでに多くのアプリが提供されている。今後どのようなアプリが出てくるのか本当に楽しみだ。立ち上がったばかりのプラットフォームのアプリを眺めていると、PDA黎明期のようなワクワク感が湧き上がってくる。

「Even Hub」ではAI、ライフスタイル、パフォーマンス、ヘルスケア、エンターテイメント、教育、音楽、旅行、ユーティリティ

 前述の通り今年はEven G2を装着してCOMPUTEXに向かう予定だ。COMPUTEXの開催地である台湾の居酒屋もなかなかの大きさの声が飛び交うが、今年はEven G2のおかげで会話と酒と料理をゆっくりと楽しめそうだ。

エンターテイメントのカテゴリーからはゲームもインストールできる。落ちものパズル、ブロック崩し、スネークなどレトロ楽しいゲームが目白押しだ