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ARグラスをモニター代わりに使う妙。XREAL One Proなら大型/モバイルモニターがなくてもいいことに気づいた

XREAL「XREAL One Pro」(直販価格8万4,980円)

 筆者は最近、メインモニターとして「ARグラス」を使用している。現在、物理的な画面で使っているのは、仕事場の43型有機ELと21型液晶。もちろんスマホやタブレットも使っているが、じっくり仕事をしたり、映像コンテンツを鑑賞したりするのはARグラスだ。

 SNSなどを見ていると筆者と同じようにARグラスを活用している方を見かけることが増えているが、最新のARグラスでどのように画面が見えて、どのような使い勝手が実現されているのか体験したことがない方のほうが多いことだろう。

 そこで今回は、7月24日に発売されたARグラス「XREAL One Pro」(直販価格8万4,980円)を例に、ARグラスがモニターの代わりとしてどれだけ使えるのか……という視点から体験レポートをお届けしよう。

XREALは単体3DoF対応ARグラスを2モデル販売中

 まずは「XREAL One Pro」の基本スペックについてお伝えしよう。本製品は、ソニー製0.55インチマイクロOLED(400万ピクセル、1080p[片目あたり1,920×1,080ドット]、120Hz、700cd平方/m)を搭載したARグラスだ。

製品を構成するのはARグラスとUSB Type-Cケーブルのみ。PC、スマホ、タブレット、ゲーム機に直結するだけで、3DoF対応ARグラスとして機能する

 独自開発の空間コンピューティング用プロセッサ「XREAL X1チップ」を内蔵しており、単体での3DoFに対応。また別売の「XREAL Eye」(直販価格1万3,980円)を装着すれば6DoFにも対応し、写真(1,600×1,200ドット)、動画(1,600×1,200ドット/60fps)も撮影可能となる。

空間コンピューティング用プロセッサ「XREAL X1チップ」
6DoFを可能とし、写真、動画撮影も可能な「XREAL Eye」(直販価格1万3,980円)を装着できる

 光学機構は新開発の「X Prism」を採用。画角が、従来モデルの「XREAL One」の50度から、57度に拡大。またレンズの奥行きが薄くなり、光学機構が44%軽量化されている。

上が「XREAL One Pro」、下が「XREAL One」。「XREAL One Pro」のほうが光学機構が薄くなっている

 本体サイズは151.6×52.0×51.0mm、重量は約87g。瞳孔間距離に合わせて、Mサイズ(57~66mm)とLサイズ(66~75mm)の2モデルが用意されている。

今回借用したのはLサイズ(66~75mm)。Mサイズ(57~66mm)とLサイズは瞳孔間距離が変更されているだけなので、全体のサイズや重量は変わらない

 単体3DoFに対応するARグラスは、現在XREALから「XREAL One Pro」と「XREAL One」の2モデルが販売されている。主な差分は下記のとおりだ。

「XREAL One Pro」と「XREAL One」の主な差分
XREAL One ProXREAL One
光学機構X PrismBirdbath
FOV57度50度
ディスプレイソニー製0.55インチマイクロOLEDソニー製0.68インチマイクロOLED
最高輝度700cd平方/m600cd平方/m
瞳孔間距離調整ソフトウェア式
Mサイズ(57~66mm)
Lサイズ(66~75mm)
ソフトウェア式
サイズ151.6×52×51mm151.6×52×51mm
重量87g82g
直販価格8万4,980円6万9,980円

プライバシーを保護しつつ狭い場所でも大画面で作業できる

 XREAL One Pro実機での使い勝手についてレビューする前に、まずはARグラス共通のメリットをお伝えしておこう。

 まずはプライバシー、セキュリティの保護。ノートPCのディスプレイで仕事をしていれば、どうしても画面を覗き込まれる可能性がある。その点、ARグラスであれば基本的に画面を見られてしまう心配はない。Windowsであれば「表示」で「セカンドスクリーンのみ」を選択したり、画面の輝度を最も暗くして、ディスプレイをできるだけ手前に倒せば、第三者が視認することは至難の業。背後の目を気にすることなく仕事に没頭できるのは大きなメリットだ。

背後の目を気にすることなく仕事に没頭できる
※Geminiで生成

 2つ目は場所を選ばずに使用できること。新幹線などの車両内ではともかく、飛行機のエコノミーシートでテーブルにノートPCを設置することはほぼ不可能。「ポメラ」や7インチクラスのUMPCであれば置けなくはないが、テキスト入力以外の仕事を快適に行なうのは難しい。その点、ARグラスであればディスプレイを少し開いた状態でノートPCに接続すれば、目の前に大きな画面が表示される。どんなに狭い場所でも大画面で作業できるのは大きなアドバンテージだ。

どんなに狭い場所でも大画面で作業できる
※Geminiで生成

 このほかにもARグラスにはモバイルモニターに対して、携帯性が高い、消費電力が少ない、体勢が自由といったメリットもある。もちろん、ARグラスを装着している人にしか画面が見えない、RAW画像の現像やカラーグレーディングなどに利用できるほどの色精度を備えていない、眼鏡に慣れていない人は長時間装着していると鼻・こめかみ・耳などに痛みや不快感を覚える可能性があるなどのデメリットはある。とはいえARグラスは、モバイルモニターにないメリットを多く備えていると言えよう。

寝転がった姿勢でもPCワークが可能だ
※Geminiで生成

ゲームやクリエイティブ系アプリでの使い勝手は?

 今度は、実際にXREAL One Proを使用した際の感想を、用途ごとにレビューしていこう。まずゲームでの利用については、非常にメリットが多いと感じた。ポータブルゲーミングPCの画面サイズは7~8インチだが、XREAL One Proを接続すれば、目から70cmぐらいの距離で約28インチ相当のゲーム画面が表示される。迫力については、ポータブルゲーミングPCの7~8インチ画面とは雲泥の差だ。

XREAL One Proは、目から70cmぐらいの距離で約28インチ相当のゲーム画面が表示される
※写真はイメージ

 また、XREAL One Proは120Hzのリフレッシュレートに対応しており、最大120fpsのフレームレートでゲーム画面を表示できる。

 今回はCore Ultra 9 275HXとGeForce RTX 5080 Laptop GPUを搭載するASUS製ゲーミングノートPC「ROG Strix G16(2025) G615」に接続してみたが、テアリングやカクツキはまったく見受けられなかった。素早くマウスを動かしても、リニアにゲーム画面が追従する。eスポーツクオリティかどうかは筆者には分からないが、一般ゲーマーには十分快適にPCゲームをプレイできるモニターと言えよう。

Core Ultra 9 275HXとGeForce RTX 5080 Laptop GPUを搭載するゲーミングノートPC「ROG Strix G16(2025) G615」を使用。XREAL One Proでゲームをプレイしてみた

 XREAL One Proの弱点をあえて挙げると、周囲の世界が見えるので、没入感という点ではVRヘッドセットに二歩、三歩譲る。とはいえ個人的には、ゲームに熱中すれば、ほとんど気にならなくなるレベルだ。

「ディスプレイの詳細設定」でXREAL One Proを選択すると、120Hz、90Hz、60Hzの選択肢が表示される
「ROG Strix G16(2025) G615」で「サイバーパンク2077」をプレイしてみたが、マウスを素早く動かしても、視野がスムーズに移動する。テアリングやカクツキはないので、ゲーム酔いすることもなかった

 クリエイティブ系アプリでの使い勝手については、筆者が常用している「Premiere Pro」「Lightroom Classic」「Photoshop」などを試してみたが、まず作業スペースとしては実用レベルだ。普段4Kモニターで作業しているので解像度的には物足りなさはあるが、スケールを125%に設定すれば実用的な作業スペースを確保できる。

 なおXREAL One Proには、「ワイドスクリーンモード」が用意されている。WindowsやMacに接続した際に「ワイドスクリーンモード」をオンにすると、32:9の仮想的なワイド画面を利用可能となる。

 57度という画角は当然変わらないので、32:9のワイド画面全体を一度に見られるわけではないが、首を振るだけで全体を見渡せる。複数の資料を同時に参照しながらのドキュメント作成、広大なタイムラインを見ながらの動画編集など、PCワークの効率を飛躍的に向上させる便利な機能だ。

XREAL One Proの解像度は1,920×1,080ドット。スケールを150%に設定すれば、「Premiere Pro」「Lightroom Classic」「Photoshop」も利用できる

 一方、RAW画像の現像、動画のカラーグレーディングなどの厳密な色確認に使えるかどうかは、どのぐらいの品質を求めるかによる。趣味の延長として映像コンテンツを作るぐらいなら、個人的にはまったく問題ないと感じた。XREAL One Pro自体の色温度も調整できるので、ある程度最終的なアウトプットをイメージしつつ、色確認できるはずだ。

XREAL One Proは設定メニューから色温度を調整できる

 しかし、商業メディア、特に広告品質の色確認はさすがに難しい。そもそも一般モニター用のカラーキャリブレーション機器を使えないので、ユーザーによる経年変化に合わせた定期的な色調整は困難だ。プロ品質でRAW画像の現像、動画のカラーグレーディングを行なうのであれば、色調整を済ませたモニターでの最終確認・調整は必須となる。

XREAL One Proは出荷前にカラーキャリブレーションが実施されているが、経年変化に合わせた色調整は一般ユーザーには困難だ

装着感やバッテリの持ち具合は?

 モバイルデバイスとしての使い勝手についても触れておこう。まずは装着感から。XREAL One Pro本体の実測重量は92g前後。一般的なメガネと比べれば4倍ほどの重さだが、ツルが細く、シリコン製の鼻パッドの当たりが優しいので、長時間装着していても疲れは少ない。目自体への疲れも、ノートPCやタブレットと大差ないと思う。個人的にはXREAL One Proを装着していたほうが、メガネやサングラスと同じように空調などの風が直接眼球に当たらないので、ドライアイ的症状は出にくいと感じている。

個人的にはXREAL One Proを装着していたほうがドライアイ的症状は出にくい

 利用開始、利用終了までの手順についてはシンプルで申しぶんない。XREAL One ProはUSB Type-C(DisplayPort Alt Mode)を搭載するデバイスであれば、専用アプリのインストールなしで利用できる。XREAL One Proとデバイスをケーブルで接続するだけでOKだ。この手軽さは、さまざまなデバイスで利用するうえでの大きな利点と言える。

 XREAL One Proはバッテリを内蔵しておらず、接続先のデバイスから電力供給を受ける。そのため電源供給用のUSB Type-C端子が1つしかないスマホやタブレット用に「XREAL Hub」というアダプタが用意されているが、筆者はほとんど使っていない。ケーブルの取り回しが煩雑になり、利用開始、利用終了が面倒になるからだ。というわけで、スマホのバッテリが心許なくなったら、利用をやめて、タブレット端末を使い始めるという単純な運用をしている。

「XREAL Hub」というアダプタを装着すれば、スマホやタブレットを充電しながらXREAL One Proを利用できる

 最後に、ノートPC単体で使った場合と、XREAL One Proだけに画面を表示した場合でどのくらいバッテリ駆動時間が違うか試してみた。

 「サイバーパンク2077」を実行させながらそれぞれでバッテリ駆動時間を計測したところ、ノートPC側のディスプレイに表示した際は52分19秒、XREAL One Proで表示させた際は48分24秒動作した。もちろん「サイバーパンク2077」ではなく、一般的な用途であればもっと長く利用できるはずだ。いずれにしても、両者のバッテリ駆動時間はほぼ同等と言えるだろう。

モバイルモニターと同じ用途における第二の選択肢として魅力的

 XREAL One Proは単体で3DoFに対応し、広い視野角と高い輝度を実現。これにより、飛行機や新幹線など狭い場所でも大画面で作業できるほか、公共の場でのプライバシー保護にも重宝する。手元でも28インチ相当の迫力ある画面でゲームを楽しめ、クリエイティブワークでも「ワイドスクリーンモード」を活用することで作業効率を向上させられる。

 XREAL One Proは、出張や移動が多いビジネスパーソン、PCの画面スペースを拡張したいクリエイター、そしてどこでも迫力あるゲームや映像コンテンツを楽しみたいエンタメ志向のユーザーにピッタリ。モバイルモニターを完全に置き換えるとまでは言わないが、同じ用途における第二の選択肢として魅力的なデバイスと言えるだろう。