複数のPCやスマートフォン、タブレットなどのデジタル機器からネットワーク経由でアクセスでき、各種ファイルを共有できる「ファイルサーバーPC」。このファイル共有機能に特化した「NAS」(Network Attached Storage)という機器もあるが、こうしたファイルサーバーPCやNASを作るために最適化された「TrueNAS」というOSがある。
今回はこのTrueNASの特徴などを簡単に紹介したうえで、一般的なPCにインストールしてファイル共有機能を利用できるようになるまでを紹介する。
コストとスピードに優れたNASを自分で作れる
ファイルサーバーPCやNASで利用できるファイル共有機能には、いくつかのメリットがある。1つは複数のデバイス間でファイルをやりとりする際に、物理的なメディアを利用せずに済むことだ。たとえばPC: AからPC: Bにファイルをコピーする場合、通常はUSBメモリなど外部機器を利用する必要がある。しかしファイル共有機能を利用する場合、ネットワークで接続されたPC同士でファイルをコピーするだけで良い。
Googleの「Google One」やMicrosoftの「OneDrive」といったクラウド型のサービスでも、こうしたファイル共有機能は利用できる。しかしクラウド型サービスではファイルのやりとりにインターネットを介するため、アップロードやダウンロードに時間が掛かる。一方ローカルネットワーク内で利用するファイルサーバーPCやNASでは、有線LANや無線LANを通じて素早くファイルを共有できる。また月額/年間利用料金のような継続的なコストが発生しないため、コスト面でも有利だ。
クラウド型サービスでテラバイトクラスの共有ストレージを使いたい場合、かなり高いコストを支払っていく必要がある こうした便利なファイル共有機能をシンプルな操作で簡単に利用できるようにしたのが、今回紹介するTrueNASだ。Windows 11と同じくOSとして提供されており、一般的なPCにインストールすることで、ファイル共有サービスに特化したNASを作れる。
特にTrueNASでは、「ZFS」というファイルシステムに対応していることが大きい。これにより、ユーザーが利用できる容量を増やしたり、ストレージが故障したときに復旧したりといった作業がしやすくなっている。ほかにもストレージやファイルの状態を保存して簡単に元に戻せる「スナップショット」機能や、ファイルを安全に保存できる暗号化など、多数のファイルを安全に扱いたいNASにぴったりの機能を多数備えている。
TrueNASの源流は、同じくPCをNASとして利用できるようにする「FreeNAS」である。現在はiXsystemsが開発を行なっており、企業向けでサブスクリプション形式のサポートが提供される有償版の「TrueNAS Enterprise」と、無償で利用できるが有償サポートが提供されない「TrueNAS Community Edition」が存在する。
無償で利用できるTrueNASとしては、まずFreeBSDをベースにした「TrueNAS CORE」がリリースされた。その後、このTrueNAS COREをLinuxベースにして変更して改良した「TrueNAS SCALE」がリリースされ、さらにこのTrueNAS SCALEを改名したのが、現在のTrueNAS Community Editionである。
Enterpriseは企業向けの有償サポートや高度な暗号化機能、統合的な仮想化機能などをサポートするが、一般ユーザーにはあまりなじみのない機能なのでTrueNAS Community Editionでも充分過ぎる ちなみにTrueNAS COREは現在も利用可能だが、今後は機能強化は行なわず、メンテナンスモードに入るとiXsystemsはアナウンスしている。そのため無償で利用できる一般ユーザー向けのTrueNASは、TrueNAS Community Editionが主流になると考えてよいだろう。今回の検証でも、TrueNAS Community Editionの「25.10.3」を利用した。
対応ハードウェアの最小条件は2コア以上の64bit対応CPUや8GBで、システムドライブ用に16GB以上のSSDが必要だという。10年くらい前の自作PC向けパーツでも問題なくクリアできるため、利用のハードルはかなり低い。
ただし、今回は機材の都合で3.5インチベイを4基搭載するAOOSTARの「WTR PRO」に、合計16GBのメモリと512GBのM.2 SSDを組み込んでTrueNASをインストールしてみた。
AOOSTARのWTR PRO。CPUにはノートPC向けで8コア16スレッド対応のRyzen 7 5825Uを搭載し、2基のM.2スロットや4基の3.5インチシャドウベイを装備する セットアップ用USBメモリを作ってTrueNASをインストール
まずはTrueNASのセットアップ用ISOファイルをダウンロードし、Rufusなどブート用USBメモリを作れるツールを使ってセットアップ用のUSBメモリを作る。ちなみにTrueNASのWebサイトからTrueNAS Community Editionをダウンロードするには、結構複雑な手順をたどる必要がある。
Webサイトの上部にある[Products]をクリックしてドロップダウンメニューを表示し、下段右にある[TrueNAS Community Edition]のバナーをクリックしよう するとTrueNAS Community EditionとEnterpriseで機能を比較できるWebサイトに移動する。下にスクロールして[Download community Edition]というボタンをクリックする 次のページでもスクロールして、[No Thanks,I've Already Signed Up.]というボタンをクリックする。この画面は簡単にいえばコミュニティサイトへの勧誘だが、ボタンの内容は「もう加入済みなのでダウンロードサイトに行きたいです」という意思表示だ ダウンロードできるTrueNAS Community Editionのバージョンが表示される。左は安定版、中央は最新版、右はベータ版となり、今回は最新版の[25.10.3]ボタンをクリックする TrueNAS Community Editionのセットアップ用ISOファイルがダウンロードできた 次に、ダウンロードしたISOファイルをUSBメモリに書き込み、セットアップ用USBメモリを作る。起動可能なブータブルUSBメモリにしないといけないので、そういったブート領域を作ってくれるアプリを使って書き込みを行なう。今回は筆者が使い慣れている「Rufus 4.13」を利用した。Rufusはこちらからダウンロードできる。
PCにUSBメモリを挿したらRufusを起動し、2段目右にある[選択]ボタンをクリックする。そして先ほどダウンロードしたISOファイルを選択し、[開く」ボタンをクリックする 元の画面に戻ったら画面下中央近くにある[スタート]ボタンをクリックする 書き込みモードの選択画面が表示される。基本的にはどちらでも大丈夫なので変更なしで[OK]ボタンをクリックする ISOファイルの書き込みでUSBメモリのデータが消去されるというダイアログが表示される。正しいデバイスを指定しているなら[OK]ボタンをクリック しばらく待つと、領域の確保やフォーマット、ファイルのコピーが行なわれ、セットアップ用USBメモリが作成される。[準備完了]のバーが緑色になっていれば作業は終了だ さらにこのUSBメモリを使ってPCを起動し、TrueNASをインストールしていこう。USBメモリから起動する方法はマザーボードやPCによって異なるので事前に確認しておこう。WTR PROでは、USBメモリを挿して電源ボタンを押し、起動中にDeleteキーを連打してUEFI設定画面を呼び出す。[Save & EXIT]タブに移動して[Boot Override]に表示されているUSBメモリにカーソルを移動してEnterキーを押すと、TrueNASのセットアップが始まる。
テキストベースで古いタイプのUEFIを搭載しているPCやマザーボードの場合、WTR PROと同じ方法でUSBメモリからPCを起動できることが多い USBメモリから起動すると自動でセットアップ画面が表示される。[Install/Upgrade]にカーソルを合わせてEnterキーを押す 利用できるストレージのリストが表示される。間違いを防ぐため、今回はOS用のSSDのみを組み込んでいるため、ストレージは1つしか表示されない。ここでスペースキーを押して[※]と表示されていることを確認してEnterキーを押す 指定したドライブのパーティションやデータが消えてしまうことなどの警告が表示される。<Yes>をクリックする 別のPCからWebブラウザ経由でアクセスする時に利用するアドミニストレーター(管理者)アカウントを設定する。特に変更は必要ないので[truenas_admin]のままで[OK]を選択してEnterキーを押す truenas_adminアカウントのパスワードを設定する。上下の入力欄に同じパスワードを入力し、[OK]にカーソルを移動してEnterキーを押すと、TrueNASのセットアップが開始される しばらく待つとセットアップが終了してこの画面が表示される。セットアップ用USBメモリを抜いて[OK]の状態でEnterキーを押すと12の画面に戻るので、[Reboot System]を選択した状態でEnterキーを押すとPCを再起動する 再起動後、各種の初期化作業を行なった後にTrueNASが利用できるようになる。別のPCからWebブラウザ経由でアクセスするためのIPアドレスが上から3段目に表示されるので(今回は192.168.0.25)メモしておく 初期設定を行なってファイル共有機能を有効化する
いったんシャットダウンしたら、ファイル共有で利用する3.5インチHDDをWTR PROに組み込もう。その後WTR PROのTrueNASを起動してしばらく経つと上の画面になる。その後、ほかのPCからWebブラウザ経由で上の画面で確認できるIPアドレスを打ち込むと、ユーザー認証画面が表示される。最初にユーザーインターフェイスを日本語化し、TrueNASの共有フォルダを利用するユーザーを登録するところまでを手順を追って解説する。
ユーザー認証画面では、ユーザー名に先ほど設定したアドミニストレーターアカウント「truenas_admin」とパスワードを入力し、[ログイン]ボタンをクリックしよう するとTrueNASの状態をまとめて表示する「ダッシュボード」が表示される。表示はすべて英語で、PCを使い慣れたユーザーならなんとなく意味は分かる。とはいえTrueNASは日本語対応なので、設定から日本語化していこう 左に並ぶ[System]タブをクリックして表示されるメニューから[General Settings]をクリックする [General settings]の画面。ここで左下の「Localization」の[setting]ボタンをクリックする すると右側からメニューが表示されるので、[Language]のメニューから[Japanese(ja)]、[Timezone]を[Asia/TOKYO]に変更して[save]ボタンをクリックする ユーザーを登録するには右のメニューにある[認証情報]→[ユーザー」とクリックする するとユーザーの管理画面を表示する。右上にある[追加]ボタンをクリックしよう [ユーザー名]の欄にユーザーアカウント、[パスワード]/[パスワードの確認]にパスワードを入力し、アクセス許可で[SMBアクセス]にチェックが入っていることを確認して、下にスクロールすると表示される[保存]ボタンをクリックする ユーザー画面に、先ほど設定したユーザー名の[rtakeuchi]が追加されていることが分かる 次にストレージの設定と共有フォルダの作成を行なう。TrueNASでは、複数のストレージを「プール」と呼ばれるかたまりとしてまとめて扱う機能を装備する。NASメーカーの専用OSやWindows 11の記憶域でも、ほぼ同じ機能をサポートしている。
プールに組み込むストレージの台数や、それぞれのストレージに対してどういった方式でアクセスするか、そうしたストレージのプールをいくつ作るかなどもTrueNASから設定できる。今回は3.5インチHDDを4台組み込んでいるので、ストレージが1台壊れても復旧できるRAID Z1設定のプールを1つ作る。
右のメニューにある[ストレージ]をクリックすると、ストレージダッシュボードを表示する。最初は何もない状態なので、まずは[プールの作成]ボタンをクリックする [名前]欄にそのプールの名前を入力して[次へ]ボタンをクリックする [レイアウト]のメニューからはプール内でどういった設定で各ストレージにアクセスするかを設定する。今回は[RAIDZ1]。[幅]はこのプールに組み込むストレージの台数で今回は[4]。[VDEV]はこの設定のプールをいくつ作るかの数値なので[1]までとなる。普通に共有フォルダを作るだけならこのほかの設定はそのままでもいいので「保存してレビューへ」ボタンをクリック レビュー欄で[プールの作成]ボタンをクリックすると、4台の3.5インチHDDを使ったRAID Z1設定のプールが作成される ストレージダッシュボードに、作成したプールが表示される 左のメニューから[データセット]をクリックすると、プール内のフォルダ状況が表示される。右上にある[データセットを追加]ボタンをクリックしよう [名前]欄に共有フォルダの名称を入力し、[保存]ボタンをクリックする 先ほどの画面に[Works1]というデータセットが追加された。これを選択した状態で右のウィンドウをスクロールし、[用途]にある[SMB共有を作成する]をクリックする 家庭内LANでの共有フォルダを作るだけなら、ここで何か追加で設定する必要はない。[保存]をクリックする SMBサービスを開始するかどうかのダイアログが表示されるので[スタート]をクリックする 先ほど作成したデータセットの用途にSMB共有のアイコンが付いていればOKだ 別のPCからネットワーク経由でTrueNASをインストールしたWTR PROにアクセスすると、ユーザー認証の画面が表示される。先ほど設定したユーザー名とパスワードを入力しよう さきほど作成したデータセットが、TrueNASをインストールしたPCの共有フォルダとして表示される 古いハードウェアでも大丈夫、自分だけのNASを作ろう
ここまでの作業が終われば、NASに保存したファイルをさまざまなPCやスマートフォン、タブレットなどと共有して利用できるようになる。Windows 11しか利用したことがないユーザーにはなじみのない設定もあるが、そんなに難しいものでもない。またTrueNASはハードウェアの要件が低いため、今まで使ってきた古いハードウェアを再利用して、高機能なNASを作れる。しかも無償でだ。興味があるなら試してみてほしい。