山田祥平のRe:config.sys
くっつく幸せ
2026年1月31日 06:30
かつては電子機器と磁気というのは諸刃の剣的な関係にあった。圧倒的なビット単価の安さを武器に、記録メディアはFD、MO、HDDへと変遷し、クラウドの時代になった今もその舞台の裏側ではHDDやテープが使われるなど、現役でデータ時代の根底を支え続けている。デジタルネイティブの世代なら、磁石でデータが読めなくなって、ATMで現金をおろせなくなるなどとは思いもしないだろう。
磁気が全盛期だった前世紀
デジタルな世界では、まだまだ現役の磁気記録だが、その一方で、スマホやIoT機器などのエンドポイントデバイスはストレージに磁気の影響を受けないフラッシュメモリが使われるなどで、磁気によって破壊されるなどということを気にする必要がなくなりつつある。
クレジットカードや各種会員カード、駐車券、ポイントカード、銀行のキャッシュカードなどには磁気ストライプがあって、その磁気記録を読み取ることで本人確認等をするようになっているが、それらとスマホをくっつけるのは避けた方が無難だ。個人的には、知らないうちにそうなったのかどうか、同じ病院の診察券を3カ月に2度再発行してもらったことがあるくらいだ。
磁気ストライプを持つカードの多くは、今QRコードやバーコード記載のものに変わってきている。圧倒的なコスト差なんだそうだ。カードそのものの単価はもちろん、リーダのメンテナンスも最低限で済む。鉄道などで磁気記録された切符は今も使われているが、その読み取りメカニズム部のクリーニングや紙切符の走行系の保守には相応のコストがかかる。でも、QRコードなら汎用のスキャナでいい。また、FeliCaはもちろんNFCも浸透している。
そんなわけで、昨今のデバイス周辺では磁気を恐れる必要性が希薄になりつつある。記録メディアはもちろん、ブラウン管のモニタ、そしてスピーカーと身の回りが磁力に依存する存在だらけだった時代があったのだ。怖がらなくていいと分かれば便利がほしくなる。たとえば、その代表的な恩恵がAppleのMagSafeやワイヤレス充電のQi2だ。
Pixel 10シリーズのQi2実装とPixelsnap
GoogleのPixel 10シリーズが発売されてからそろそろ半年がたとうとしている。10シリーズになって何が便利になったかというと、磁気を気にしないでワイヤレス充電器に限らず各種のアクセサリが使えるようになったことだ。
もともとは正確な位置決めにより、送電コイルと受電コイルの中心をミリ単位で正確に合わせ、かつ、ズレないようにホールドすることで、高い充電効率と熱抑制を実現するために考えられた仕掛けだ。これがなかった時代、置くだけ充電では、充電台から落ちたスマホを見つけて失意のどん底に突き落とされるのがたいていの朝の出来事だった。
Qi2では、スマホ側と充電器側の両方に特定の極性(N極/S極)を持つ磁石のリングを装備し、双方をあわせようとすると、互いに引き合って正しい位置に、それこそパチッと誘導され、吸着する。
Pixel 10シリーズの背面には強力なネオジム磁石が埋め込まれている。つまり、スマホは常に磁石であるということだ。磁力は離れると距離の二乗に反比例して弱くなる。たとえば、スマホをケースに入れると、ケースの厚み分、スマホ内の磁石から離れる。そうすると、くっつく力も弱くなるということだ。
だから、ちゃんとしたQi2対応ケースはケース側にも薄い磁石を実装して厚み分の磁力を補完するようになっている。Qi2の規格には、MPP(Magnetic Power Profile)とEPP(Extended Power Profile)の2種類のプロファイルがある。後者は磁石のない先代Qiとの互換性を維持したプロファイルだ。
一方で、Qi2の本命プロファイルともいえるMPPでは、大電力充電を前提に、双方の磁力がかみ合う位置に来た瞬間だけ強力に吸着・固定される仕組みになっている。Google Pixel 10は技術的にQi2のMPPの実装そのものであり、ピタッとくっつくように本体の内部に強力なマグネットリングを内蔵している。
GoogleではこのQi2ベースの磁気吸着エコシステムをPixelsnapと呼んでいる。MagSafeでおなじみのエコシステムと同じものと考えてもいい。なぜならQi2(MPP)は、AppleがWPC(Wireless Power Consortium)に提供したMagSafe技術がベースになっているからだ。だから、磁気ストライプを持つカード類とは近づけないようにする注意も必要だ。
磁気の干渉に気配りとお節介
いろんなパターンを試してみたが、Pixel 10シリーズの背面磁力は、それほど強くはないような印象を持っている。たとえば、薄くて強いアラミドケースで知られるPITAKAのケースは以前からのお気に入りだが、かなり強力な磁石が埋め込まれているようだ。その強さは金属片などをくっつけてみると分かる。
ただ、Pixel 10の内部には、コンパスなどさまざまなセンサーが内蔵されている。コンパスは地磁気をセンスするものなので特に干渉を回避しなければならない。だから、Qi2の規格を満たす必要十分な強さに調整され、また、背面ガラスの厚みも影響して磁力は多少減衰している。
一方、PITAKAのケースはアクセサリ類から脱落しないことを最優先にしているので、車載ホルダーやスタンドなどでも安心して使える。個人的には、肩からスマホを斜めがけしたいようなときに、リング状のマグネットでスマホに吸着するアクセサリを使っている。絶対に外れないという保証はないので完全に自己責任となるが、特に、不安を感じることはなく脱落の経験もない。
磁力は距離の二乗に反比例して弱くなる。PITAKAのケースはアラミド繊維の層の中に磁石が一体成型されていて、ケース表面ギリギリに磁石があるため、その距離が近く強力な磁力でくっつく。これが脱落の心配が最小限で済む安心につながる。
もちろん、PITAKAのケースの強い磁力が安心を提供しているのに対して、せっかくのPixel 10の配慮が台無しになるということでもある。裸の状態のPixel 10なら診察券などと数センチの距離があればそれほどの心配をしなくてよかったが、PITAKAのケースを装着した状態では影響が出る可能性がある。強力な磁石を持ち歩いているのと同義なのだ。でも、便利さがほしい気持ちが勝ってしまう。
PITAKAの磁力がこれほど強いのはなぜ
PITAKA独自の特許技術であるAmber Magnet Filmは、接着剤を使わない完全一体成形方法だという。磁石の表面に特殊な樹脂をコーティング、それとアラミド繊維をプレスし、分子レベルで一体化するらしい。これでケースの厚みによる物理的な距離はゼロに近くなり、まさに強力にくっつき、新たな便利を実現するわけだ。
このおかげで、スマホを斜めがけして多少はブラブラさせても脱落の心配はない。そして、外すときはクィッと輪っかをずらせばいい。まあ、気を使うのは磁力に弱いカード類だ。まだずいぶんたくさんある。これは診察券やキャッシュカード類のバーコード化、ICカード化を急いでほしいと思う。
マイナンバーカードが病院の診察券代わりに使えるようになる日も近い。そうなればカードリーダーにスマホをかざすだけで保険証の確認と診察券による本人確認を同時にすませることができるようになるだろう。
手元のサイフの中身を見ると、磁気ストライプを持つカードは病院の診察券がいちばん多かった。あとは銀行キャッシュカードだ。これもスマホATMなどが浸透すれば気にする必要がなくなる。物理カードは家に置いたままで、普段はスマホだけで生活する。これなら磁力も怖くない…。くっつくことの恐怖よりも、くっつく幸せを感じることが多くなりそうだ。
まあ、ATMで現金を引き出すことなど、月に一回あるかどうかなのでカードを持ち歩く必要もないのだが、万が一を考えるとそういうわけにもいかない。










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