特集
NVIDIA「GeForce 700」シリーズ第1弾「GTX 780」をベンチマーク
(2013/5/23 22:00)
NVIDIAは5月23日(日本時間)、「GeForce 700」シリーズとその第1弾製品となるハイエンドGPU「GeForce GTX 780」を発表した。今回、「GeForce GTX 780」のリファレンスボードを借用できたので、新世代ハイエンドGPUのパフォーマンスをベンチマークテストで探ってみた。
Keplerアーキテクチャの「GK110コア」を採用
「GeForce GTX 780」は、28nmプロセスで製造されたKeplerアーキテクチャ採用のGPUコア「GK110」がベースの製品だ。「GK110」は今年3月に登場したウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX TITAN」にも採用されたGPUコアである。
「GeForce GTX 780」で採用されたGK110コアでは、192基のCUDAコアと16基のテクスチャユニットなどで構成されるStreaming Multiprocessor eXtreme(SMX)を12基備えており、合計で2,304基のCUDAコアと192基のテクスチャユニットを備えている。GPUコアの動作クロックは863MHzで、自動オーバークロック機能「GPU Boost 2.0」により、負荷状況や温度に応じ、Boostクロックの900MHz程度で動作する。
同じGK110ベースのGPUである「GeForce GTX TITAN」のSMX数は14基だったので、「GeForce GTX 780」は「GeForce GTX TITAN」からSMX 2基分のユニットが削減された格好だ。一方、GPUコアの動作クロックは「GeForce GTX TITAN」より高めに設定されている。
ビデオメモリについては、6,008MHz動作のGDDR5メモリを3GB搭載しており、384bit幅のメモリインターフェイスでGPUと接続している。6GBのGDDR5メモリを備えていた「GeForce GTX TITAN」から容量が半分に削減されたものの、メモリ帯域としては同等のスペックを備えている。
GeForce GTX 780 | GeForce GTX TITAN | GeForce GTX 680 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Kepler(GK110) | Kepler(GK110) | Kepler(GK104) |
プロセスルール | 28nm | 28nm | 28nm |
GPUクロック | 863MHz | 836MHz | 1,006MHz |
Boostクロック | 900MHz | 876MHz | 1,058MHz |
CUDAコア | 2,304基 | 2,688基 | 1,536基 |
テクスチャユニット | 192基 | 224基 | 128基 |
メモリ容量 | 3GB GDDR5 | 6GB GDDR5 | 2GB GDDR5 |
メモリクロック(データレート) | 1,502MHz(6,008MHz相当) | 1,502MHz(6,008MHz相当) | 1,502MHz(6,008MHz相当) |
メモリインターフェイス | 384bit | 384bit | 256bit |
ROPユニット | 48基 | 48基 | 32基 |
TDP | 250W | 250W | 195W |
リファレンスボードはGeForce GTX TITANと同じVGAクーラーを搭載
今回NVIDIAから借用した「GeForce GTX 780」のリファレンスボードは、「GeForce GTX TITAN」のリファレンスボードに搭載されていたものと同じ、2スロット占有のVGAクーラーを搭載している。
搭載クーラーだけでなく、ブラケット部のディスプレイ出力端子や、補助電源供給用のコネクタなどについても「GeForce GTX TITAN」と同じ仕様を採用している。外観上の違いは、基板裏面にビデオメモリが実装されていないことと、VGAクーラーに刻印された「GTX 780」ロゴくらいだ。
テスト機材
それでは、ベンチマークテストの結果を紹介する。今回のテストでは、「GeForce GTX 780」の比較対象として、「GeForce GTX 680」と「Radeon HD 7970 GHz Edition」を用意した。
GPU | GTX 780 | GTX 680 | HD 7970 GHz |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i7-3770K (3.5GHz/Turbo Boostオフ) | ||
マザーボード | ASUS P8Z77-V (BIOS:1908) | ||
メモリ | DDR3-1600 4GB×4 (9-9-9-24、1.5V) | ||
ストレージ | Western Digital WD5000AAKX | ||
電源 | Antec HCP-1200 | ||
グラフィックスドライバ | GeForce 320.18 | GeForce 314.22 | Catalyst 13.4 |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
DirectX 11対応ベンチマークテスト
まずは、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark 11」(グラフ3、4)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ5、6)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ7)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ8)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ9、10)。
今回行なったDirectX 11対応ベンチマークテストでは、多くの条件で「GeForce GTX 780」が「GeForce GTX 680」と「Radeon HD 7970 GHz Edition」に20~50%程度の差をつけて上回っており、「GeForce GTX TITAN」同様、従来のハイエンドGPUより1ランク上のパフォーマンスを記録した。
「GeForce GTX 680」に比べ、高解像度時やアンチエイリアシング適用時など、ビデオメモリへの負荷が高まる条件でのパフォーマンス低下が少ないのも「GeForce GTX TITAN」と同様だ。288.4GB/secという「GeForce GTX 680」比で1.5倍の帯域を持つ「GeForce GTX 780」のメモリバスは、より高い描画設定でのゲームプレイを可能にしている。
DirectX 9/10対応ベンチマークテスト
続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ11、12)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ13)、「3DMark06」(グラフ14、15)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ16)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(グラフ17)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ18)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ19)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ20)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0(DX9)」(グラフ21)。
DirectX 9および10対応のベンチマークテストでも、CPU性能がスコアに反映される3DMarkのPhysics(CPU)Scoreを除けば、「GeForce GTX 780」は比較製品中最高のスコアを記録した。
「Lost Planet 2」や「3DMark06」のように、CPUに利用した「Intel Core i7-3770K」がボトルネックとなってしまい、比較製品との差が僅差に留まっているテストがある一方で、DirectX 9対応ベンチマークテストでは最高クラスのGPU負荷が掛かる「Unigine Heaven Benchmark 4.0」では、「GeForce GTX 680」に70~80%もの大差をつけている。
DirectX 11対応のゲームタイトルに限らず、より高い描画設定でゲームをプレイしたければ、「GeForce GTX 780」を選択する意義は大きい。
消費電力の比較
最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。
「GeForce GTX 780」のアイドル動作中の消費電力は54Wで、今回比較した製品の中ではもっとも低い数値だった。「GeForce GTX 680」とは3W差と誤差程度の僅差だが、「Radeon HD 7970 GHz Edition」とは8Wの差がついている。
各ベンチマークテスト実行中の消費電力については、「GeForce GTX 780」は「3DMark - Fire Strike」と「3DMark11」実行時に310W弱の数値を記録している。一方、他のベンチマークテストでも「GeForce GTX 780」の消費電力は300W前後となっており、最大で383Wを記録した「Radeon HD 7970 GHz Edition」より消費電力が少ないテストも見られた。
「GeForce GTX 680」との消費電力差は最大で78W(+34%)と小さくはないが、パフォーマンス差を考えれば妥当な数値だ。消費電力あたりの性能という見方をすれば、約12%の消費電力差で約32%のスコア差を記録したPSO2ベンチマークをはじめ、「GeForce GTX 780」の方が優れている結果も多い。
GTX 680とGTX TITANの間を埋めるハイエンドGPU
以上のテスト結果から、「GeFoorce GTX 780」は従来のハイエンドGPUより1ランク高いパフォーマンスを持ったGPUであることが分かる。製品の立ち位置的には、「GeForce GTX 680」の後継製品というより、「GeForce GTX TITAN」と「GeForce GTX 680」の間を埋める製品という印象が強い。
NVIDIAは「GeForce GTX 780」の市場推定売価を84,800円としており、この価格で登場することになれば、性能だけでなく価格的にも、12万円程度の「GeForce GTX TITAN」と、5万円程度の「GeForce GTX 680」の間を埋めることになる。
8万円を超えるGPUというのは、最近のGPUとしてはかなり高い部類に入るが、実売価格が10万円を超える「GeForce GTX TITAN」の廉価モデルとしては、なかなか魅力的な価格設定と言えるだろう。よりリッチな設定でゲームをプレイしたいユーザーにとって、「GeForce GTX 780」は見逃せない存在となりそうだ。