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テザリングはバッテリがやばい、そこでモバイルルーターだ。機種やサービスの最新事情は?
2024年10月29日 06:29
コンパクトでどこにでも持ち運ぶことができ、Wi-Fiなどを通じて場所を選ぶことなくPCやゲーム機などをインターネットに接続できる「モバイルルーター」。かつてはスマートフォンの通信料が高額で、テザリングを禁止する携帯電話会社も少なくなかったため、安価で大容量通信が利用できることから人気を獲得していた。
だがモバイルでの大容量データ通信が一般化した現在、携帯各社もテザリングの規制を撤廃、あるいは大幅に緩和している。それゆえ外出先でPCをインターネットに接続する際にも、テザリングが用いられるケースが増えたためモバイルルーターの需要は大幅に減少している。
とはいえ、テザリングはスマホのバッテリと通信量を多く消費する。外出先においてPCでインターネット接続を頻繁に利用する人であれば、テザリングよりもモバイルルーターを利用したほうが安心感が得られるだろう。
また自動車で長時間移動することが多く、車内でタブレットやゲーム機など複数の機器をインターネットに接続するような人にとっても、モバイルルーターのメリットは大きいはずだ。
しかしながら、モバイルルーターの需要はかなり縮小していることから情報も少なく、現状どのような製品とサービスが提供されているのか、使い勝手はどうなのか……といったところが分からない人も多いと思う。
そこでここでは、現状のモバイルルーターのサービスと製品、選び方について解説するとともに、一部の製品を実際に使用し、その使い勝手も検証してみたい。
(1) 大きく3つに分類されるモバイルルーター
(2) NTTドコモ
(3) KDDI(au)
(4) UQコミュニケーションズ(UQ WiMAX)
(5) ソフトバンク
(6) 楽天モバイル
(7) 各社モバイルルーターのスペック
(8) 実際にモバイルルーターを使ってみた
大きく3つに分類されるモバイルルーター
まずは現在提供されているモバイルルーターだが、実は大きく分けて3つの種類が存在する。
携帯電話会社が提供するタイプ
1つは従来通り、携帯電話会社やその系列企業などが提供しているもの。各社が提供する最新の5Gサービスなどが利用できる上、端末と通信サービスを一緒に契約・購入でき、サポートなども受けられるなど利便性は高く誰でも利用しやすいが、そのぶん端末やサービスの選択の自由度は低い。
お店で買えるSIMフリーのタイプ
2つ目は家電量販店やECサイト等で販売されている、いわゆる「SIMフリー」のもので、こちらは5Gに対応した高性能のものから、4Gのみの対応ながら安価でコンパクトなものなど、非常に幅広い製品が存在し選択の自由度は非常に高い。
ただ、通信サービスは端末の対応周波数帯を考慮した上で別途契約しなければならず、通信するための設定も自分でする必要がある。快適に利用するにはモバイル通信に関する知識が必要不可欠でハードルは高い。
クラウドSIMに対応したタイプ
そして3つ目として、ここ最近増えているのが「クラウドSIM」を活用したものである。クラウドSIMとは文字通り、SIMをクラウド上で管理し、場所に応じて最適なSIMに切り替えて接続できるサービス。
それゆえ国内であれば場所に応じて大手3社のうち最適な回線を選んで接続できるほか、海外ローミングに対応しやすいなどのメリットがある一方、端末は専用の物を用いる必要があるので自由度は低く、5Gに対応していないサービスが多いなどデメリットも少なからずある。
今回はここまで紹介した3種類の中でも最もスタンダードな、携帯電話会社が提供するモバイルルーターに絞り、最新機種の機能や性能、利用できるサービスを確認してみたい。
NTTドコモ
NTTドコモが提供しているモバイルルーターの中で、最も新しいのは2023年発売のシャープ製端末「Wi-Fi STATION SH-54C」。5G向けの「サブ6」と呼ばれる周波数帯だけでなく、より周波数が高く高速通信が可能な「ミリ波」の28GHz帯(バンドn257)にも対応するほか、5Gの性能をフルに発揮できるスタンドアロン運用(5G SA)にも対応するなど、通信性能が非常に高い。
Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応するなどWi-Fiの性能も高められているほか、別途ケーブルやアダプタを用いることで、有線LANやUSB経由で機器をインターネット接続することも可能。バッテリも4,000mAhと大容量であるなど性能面が高いだけでなく、QRコードやWPSによる接続にも対応するなど、簡単に接続できる仕組みも整えられている。
ただ通信サービスには注意が必要だ。同社では5G対応データ通信向けのプランとして「5Gデータプラス」を提供しているのだが、これは月額1,100円を支払うことで、「eximo」「ahamo」など既存の料金プランのデータ通信量をデータ通信端末で利用できるようにする仕組みなのである。
つまりNTTドコモは現在、モバイルルーター単体で利用できる料金プランを提供しておらず、Wi-Fi STATION SH-54Cを利用するにも必ずeximoなどの料金プランに加入し、その上で5Gデータプラスを契約する必要があるのだ。NTTドコモ回線でスマホを使っている人には便利だが、他社回線の人には非常に不便な仕組みなので契約時には注意されたい。
KDDI(au)
KDDIのauブランドで提供しているモバイルルーターは、NECプラットフォームズ製の「Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03」というもの。5GとWi-Fi 6に対応し、4,000mAhのバッテリを搭載するなど高い性能を備えている点はWi-Fi STATION SH-54Cと共通しているが、こちらはミリ波に対応しておらず、KDDIが免許を持つサブ6の3.7GHz帯(バンドn77、n78)のみへの対応となっている。
一方で大きな違いとなるのが、別売りの専用クレードルが用意されていること。クレードルに装着すると有線LANでの接続が利用可能なことから、持ち運んで使うだけでなく、固定ブロードバンドの代替としても利用しやすいのが特徴だ。
そしてKDDIの場合、モバイルルーター専用の料金プラン「モバイルルータープラン 5G」が用意されており、au以外のスマホを使っていても単体で契約・利用することが可能だ。こちらは割引なしの場合月額5,458円で、プラチナバンドの800MHz帯は利用できないがデータ通信が使い放題の「スタンダードモード」が利用できる。
プラチナバンドも利用するなら月額1,100円のオプション料金を支払って「プラスエリアモード」に変更する必要があるが、この場合データ通信量は使い放題にならず、月当たりの通信量が30GBを超えると通信速度が128kbpsに制限される。ただ通信量超過後に2,750円で2GBを自動追加する「エクストラオプション」を申し込んでおけば、非常にお金がかかるものの通信量上限は事実上なくなる。
UQコミュニケーションズ
KDDIグループでモバイルルーターと言えば、UQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」のほうが知名度が高いかもしれない。こちらも現在はauと同じネットワーク構成でサービスが提供されているので5Gも利用可能なほか、販売する端末もほぼ共通しており、最新モデルとしてauと同じ「Speed Wi-Fi 5G X12」が提供されている。
ただし、料金面には違いがあり、現在の主力プランである「WiMAX +5G ギガ放題プラスS」は月額4,950円とモバイルルータープラン5Gより安く利用できる。それでいてスタンダードモードとプラスエリアモードの仕組みが存在するなど、サービス面ではモバイルルータープラン5Gと大きな違いはない。
一方で割引施策は少なく「au PAY カードお支払い割」(月額187円引き)は適用できないが、それでも単体で契約するのであればこちらのほうが月額料金は安い。映像配信の「Netflix」のスタンダードプランが付属する「ギガ放題プラスS Netflixパック」(2024年11月30日まで月額6,336円、それ以降は月額6,435円)も提供されているので、Netflixを頻繁に利用しているならこちらも検討の余地があるだろう。
ソフトバンク
ソフトバンクが「ソフトバンク」「Y!mobile」ブランドで販売している最新のモバイルルーターは、中国ZTE製の「Pocket WiFi 5G A101ZT」というもの。5G(サブ6)とWi-Fi 6に対応する点は共通しているが、バッテリ容量が5,300mAhとより多く、USB Type-C PD-PPSに対応し約180分で充電可能な急速充電にも対応している。別売りの有線LAN対応クレードルも用意されており、固定ブロードバンド代わりに使うことも可能だ。
一方、料金プランは選択肢が多いが全体的にやや癖がある印象だ。まずメインブランドのソフトバンクの場合だが、NTTドコモのようにスマホの通信量をシェアして利用する「データシェアプラン」(月額1,078円)が用意されている。ただしこちらを使用してデータ通信する場合、「ペイ得無制限」などデータ通信し放題のプランを契約していても、通信量は最大50GBまでに制限される点に注意が必要だ。
そしてもう1つ、ソフトバンクでは通信量50GBの「データ通信専用50GBプラン」(月額5,280円)、通信量3GBの「データ通信専用3GBプラン」(月額1,408円)といったデータ通信専用プランも選ぶことができる。いずれも使い放題にはならないものの、後者は1回当たり110円から550円のオプション料金を支払うことにより、一定時間データ通信し放題にできる仕組みが用意されている。
Y!mobileの場合、現在の主力プランは「Pocket WiFiプラン2」となるようだ。こちらは月額3,690円で7GBのデータ通信が可能だが、それを超えて通信したい場合は月額4,380円の「アドバンスオプション」にアップグレードすればよい。
ただアドバンスオプションでデータ通信上限なしで利用できるのは、4Gのうち通信方式がTDD-LTEまたはAXGP方式のエリアのみ。プラチナバンドや5Gは利用できないことから通信速度やエリアの面で制約が生じるのが弱点と言えるだろう。
楽天モバイル
楽天モバイルもモバイルルーターを提供しており、最も新しい端末は越Fuyu Precision Component製の「Rakuten WiFi Pocket Platinum」というもの。こちらは5Gに対応しておらず4Gのみ、Wi-Fi側もWi-Fi4(IEEE 802.11n)までの対応となるなど、性能的には他社と比べ落ちる部分が多い。
ただそのぶん価格は7,980円と非常に安く、重量も軽い。また名前の通り、同社のプラチナバンドである700MHz帯(バンド28)にいち早く対応している点も、大きなポイントと言えるだろう。
一方で、料金プランは同社がワンプランと掲げる「Rakuten最強プラン」を使う形となる。こちらは通信量に応じて月額料金は1,078円から3,278円に変化するが、データ通信が使い放題である点は安心感が高いだろう。ちなみにRakuten最強プランにはデータ通信専用のプランも用意されているが、料金は音声通話付きのプランと変わらない点に注意したい。
各社モバイルルーターのスペック
各社のモバイルルーターのスペックを下表にまとめておくので、こちらも参照されたい。
NTTドコモ | KDDI(au)/ UQコミュニケーションズ | ソフトバンク | 楽天モバイル | |
---|---|---|---|---|
端末名 | Wi-Fi STATION SH-54C | Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03 | Pocket WiFi 5G A101ZT | Rakuten WiFi Pocket Platinum |
メーカー | シャープ | NECプラットフォームズ | ZTE | Fuyu Precision Component |
サイズ(幅×高さ×奥行き) | 約157×84×16mm | 約136×68×14.8mm | 約141×69×15.9mm | 約65×96.5×15.3mm |
重量 | 約282g | 約174g | 約240g | 約103g |
最大通信速度(理論値) | 5G SA:下り4.9Gbps、上り1.1Gbps 5G NSA:下り4.9Gbps、上り480Mbps 4G:下り1.7Gbps、上り131.3Mbps | 下り3.9Gbps、上り183Mbps | 5G:下り2.4Gbps、上り110Mbps 4G:838Mbps、上り46Mbps | 下り150Mbps、上り50Mbps |
対応周波数帯(国内のみ) | 4G:1(2GHz帯)/3(1.7GHz帯)/19(800MHz帯)/21(1.5GHz帯)/42(3.5GHz帯) 5G:n1(2GHz帯)/n28(700MHz帯)/n78(3.5~3.7GHz帯)/n79(4.5GHz帯)/n257(28GHz帯) | 3G:I(2GHz帯) 4G:1(2GHz帯)/3(1.7GHz帯)/18(800MHz帯)/41(2.5GHz帯) 5G:n3(1.7GHz帯)/n28(700MHz帯)/n41(2.5GHz帯)/n77(3.5~3.7GHz帯)/n78(3.5~3.7GHz帯) | 3G:I(2.1GHz帯)/VII(900MHz帯) 4G:1(2GHz帯)/3(1.7GHz帯)/8(900MHz帯)/11(1.5GHz帯)/28(700MHz帯)/41(2.5GHz帯)/42(3.5GHz帯) 5G:n3(1.7GHz帯)/n28(700MHz帯)/n77(3.5~3.7GHz帯)/n78(3.5~3.7GHz帯) | 4G:1(2GHz帯)/3(1.7GHz帯)/18(800MHz帯)/19(800MHz帯)/26(800MHz帯)/28(700MHz帯)/41(2.5GHz帯) |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 4 |
有線LAN | 100BASE-TX/1000BASE-T(専用アダプタ使用) | - | - | - |
同時接続台数 | 17(Wi-Fi×16、有線LAN or USB×1) | 17(Wi-Fi×16、USB×1) | 30 | 17(Wi-Fi×16、USB×1) |
バッテリー容量 | 4,000mAh | 4,000mAh | 5,300mAh | 2,400mAh |
連続通信時間 | 5G:約540分 4G:約600分 | 約540分 | 5G(サブ6):約5時間 FDD-LTE:約7.5時間 AXGP:約9時間 | 約10時間 |
WPS | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
QRコード接続 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
実際にモバイルルーターを使ってみた
では実際のところ、現在のモバイルルーターの使い勝手はどのようなものなのだろうか。今回は先に挙げた機種の中から、KDDIのauブランドで提供されている「Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03」をお借りし、実際に使ってみた。
こちらの詳細な内容は先程触れた通りなのだが、実際に手にするとサイズ感はiPhoneやPixelシリーズの小型モデルよりやや小さいくらいで、厚さはその1.5~2倍くらいといったところ。実はモバイルルーターは大容量バッテリのニーズが高いことに加え、5Gへの対応によって大型化したことから、4G時代と比べかなり大きなモデルが増えている。
それでも5Gのサービス開始からある程度年数が経ち、1~2世代を経たことで以前より小さくなってきてはいるのだが、それでも4G時代のモバイルルーターに馴染んだ人からすると、大きいと感じる可能性が高いかもしれない。スマホと大きく変わらないサイズ感なので鞄などには入れやすいだろうが、厚みがあることもあり、ポケットに入れておくにはやや大きいかもしれない。
ディスプレイを搭載しているがタッチ操作には対応せず、基本的な操作は本体前面のボタンでする形となる。ただ最近のモバイルルーターの多くは、スマホから各種設定ができるアプリが提供されており、Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03も独自のスマホアプリ「NEC WiMAX +5G Tool」を利用することで、スマホから直接さまざまな設定をすることが可能だ。
モバイル通信に関する設定は、先に触れた通りauのサービスということもあって、スタンダードモードとプラスエリアモードの切り替えが可能。またWi-Fiに関しても、5GHz帯が屋外での利用に制限があることを考慮し、屋内でのみ利用するか、屋外で利用するかを設定することが可能。また2019年より利用可能な144chにも対応しているので、屋外で利用する際はそちらを含むかどうかを設定することも可能だ。
多くの人が気にするのは、1つに通信速度だが、こちらは持ち歩いて利用する機器ということもあって、通信速度はどうしてもその場のネットワーク環境に大きく左右されてしまう。周囲の混雑状況にもよるが、Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03は5Gのサブ6までの対応となることから、KDDIのエリアマップから3.7GHz帯が確実に入るエリアを探し、そちらで通信すれば高速通信が可能なことは覚えておきたい。
そしてもう1つ、気になるのはバッテリの持続時間だろう。Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03は4,000mAhのバッテリ容量を誇るが、スマホとは異なり常時通信している機器ということもあって、バッテリ消費はどうしても早くなる。
そこで実際に、本体の省電力モードが「ノーマル」の状態で、Wi-Fiが2.5GHz帯のみの場合と、2.5GHz帯と5GHz帯を同時に利用した場合の2パターンでバッテリ消費を比較してみた。いずれも常時2~3台の機器をWi-Fiに接続して通信していたのだが、前者の場合およそ8時間、後者の場合およそ12時間10分でバッテリが切れる結果となった。
それゆえ2、3時間程度でバッテリ切れとなることも多かった以前のモバイルルーターと比べれば、持続時間は大幅に改善されていると言えよう。ただ使い方によってバッテリ消費には変化が生じやすいので、バッテリを持続させたいならWi-Fiは2.5GHz帯に制限し、省電力モードを「エコ」にしてパフォーマンスより電池持ちを優先するなどの対応を取るのがよい。
最後にもう1つ、モバイルルーターはデータ通信が使い放題のサービスを契約していても、使い方によって通信速度が制限される場合があることは覚えておきたい。実際、今回使用したauのモバイルルータープラン 5Gの場合、「一定期間内に大量のデータ通信のご利用があった場合、混雑する時間帯の通信速度を制限する場合があります」とされている。
これはモバイル通信が、多くの人と電波を共用して通信する仕組みであることから、利用者の公平性を確保するため、どのようなサービスであっても必ず設けられているもの。かつてはこの仕様を巡ってトラブルが生じたサービスなどもあるが、低価格で大容量通信が可能なサービスを提供する上では必要不可欠なものでもある。
通常の利用で制約がかかることは考えにくいが、昨今は大容量通信が必要なサービスも増えているだけに、とりわけ短時間のうちに、非常に大きな容量のデータをアップロードするような場合は注意が必要だろう。