山田祥平のRe:config.sys
Androidクロスデバイスサービスでインスタントテザリング
2024年11月9日 06:09
以前から設定項目内に存在していたので、できそうなことは分かっていたし、そのヘルプもあったのに、どうにも有効にできなかった機能が、今月のアップデート以降、ようやく使えるようになったようだ。
要するに、Androidスマホのインターネット接続を共有するために、つなぎたい側がつながれる側のインスタントアクセスポイントを有効にする機能だ。
WANは1つ、接続は全部
それにしても、なかなかPCのWAN化が進まない。モバイルノートであって、持ち運びで使うことが前提の筐体であっても、無線接続はWi-Fiがあればそれで十分というムードがある。
5G通信の普及によって、せっかく1Gbpsを超えるような広帯域のWAN接続も現実的になってきたというのに、実にもったいない話だ。WANのデータ通信料金も、かなり安くなってきた。
本当なら、一気にWANの時代がやってきてもよさそうなのに……と嘆いてばかりいても仕方がない。その日がくるまでは、なんとか工夫で乗り切ろう。といっても今回の機能はAndroid端末限定だ。ここでもWindowsは置いてけぼりだ。
それでもAndoroidが今頃になってこうした機能を実装してくるというのも、WAN接続を持たないデバイスがインターネットに接続するのに一定の手間暇が必要だということが分かっているからなのだろう。AIの時代ではあるが、それ以前の不便を着実に解消していくのがスマートなデバイスというものだ。
というわけで、インスタントアクセスポイントだが、この機能はAndroidのクロスデバイスと呼ばれるサービスの上に成り立っている。
クロスデバイスサービスを有効にすると同じGoogleアカウントでログインしている複数のデバイスをグループ化し、グループ内で、いろいろなものを共有できるようになる。
このサービスを有効にしたデバイス間でデバイス同士が近くにある場合、互いを検出できるようになり、インターネットもその1つとして共有できる。検出等についてはBluetoothが使われる(Android デバイスでクロスデバイス サービスを使用する)。
どうやらQuick ShareがAndoridの既定共有手段となったことから露出されたサービスのようで、アプリを使って別のユーザーを招待したりすることができる機能を拡張したもののようだ。
その副作用なのかどうか、Samsung製のデバイスではこの機能が使えなかたっりもする。もっともSamsung製デバイスのAndroidには同等の機能が独自に実装されている。「自動Wi-Fiテザリング」がそれで、同じSamsungアカウントにサインインしているデバイスやファミリーグループのデバイスを招待しておき、インターネット接続を自動的に共有できる(個人のデバイスを Wi-Fi とインスタント アクセス ポイントに自動的に接続する)。
帯域に改善の余地あり
クロスデバイスサービスを有効にするには、Androidの設定アプリを使い、「Google」のサービスと設定項目から「すべてのサービス」のタブを開き、「接続済のデバイスと共有」の中から「クロスデバイスサービス」を開く。
ここでクロスデバイスサービスを有効にし、そこでインターネット共有を開いて、「Wi-Fiを自動的に共有する」、「インスタントアクセスポイント」をオンにする。デバイスの位置情報を有効にしておくことも求められる。
ここまでを手持ちのデバイスすべてで繰り返して設定しておく。
これで、1台のデバイスがインターネットに接続していれば、同じアカウントを使ってサインインしているほかのデバイス側から、インターネット共有をオンにして、その接続を利用できる。WANとWi-Fi、どちらでも共有できる。
具体的にはWi-Fiアクセスポイントが自動生成され、Wi-Fiの一覧にアクセスポイントとして出現する。通常のWi-Fiとは区別できるように明確に「スマートフォン」と表記され端末名がしっかりと表示される。
接続するのにパスワードは必要ない。正確にはパスワードは設定されているのだが、それも共有されているために入力の必要がないだけだ。
また、クロスデバイスサービスからの通知がきて、「スマートフォンのアクセスポイントを使用する」ことができる旨のメッセージが表示されるので、ここから接続することもできる。
このとき、もともと端末に設定されていたアクセスポイントは、いったん待避された状態になって見えなくなる。これについては、すべての共有が解除された時点で元通りの設定に戻る。
接続には数秒間というそれなりの時間が必要だ。これがまどろっこしい。そして、端末に関わらず、周波数については2.4GHz帯が決め打ちで使われるようだ。リンク速度も1Mbpsとなっている。
屋外では5GHz帯が使えない以上、仕方がないとはいえ、6GHz帯が使えるときには使うようになっていれば、もう少し広い帯域幅でのリンクができそうなものだ。
現状での接続では、通常のアクセスポイントを手動でオンにして使うよりも明らかに遅い。もしかしたらWi-Fi directも微妙に絡んでいるかもしれない。このあたり、もう少し改善が進んでくれればと思う。
デバイス相互のリソース共有
メインのスマホは、メールや予定の確認、ドキュメントの閲覧、SNSのチェック、そしてゲームに動画鑑賞、音楽鑑賞と、いろんな用途に使うわけで、そのインターネット接続を頼るWANが使い放題であったとしても、バッテリの残り容量にヒヤヒヤしながら1日を過ごすことが多いのではないだろうか。まるで綱渡りというのが普通だ。そしてピンチのときには充電しようと、モバイルバッテリを持ち歩く。
これらの用途に加えてメインのスマホにアクセスポイントの機能を委ねる。手っ取り早いのは、丸一日、そのインターネット共有をオンにしっぱなしにしておくことだ。こうしておけば、WANのないデバイスは自動的に接続して、そのインターネット共有を活用してスマートデバイスとして機能する。
もちろんそのためにメインのスマホは余分にバッテリを消費するが、支障が出るほどかというとそうでもない。むしろ、適材適所で複数台のデバイスを使い分けるので、処理が分散して、バッテリ消費も分散するというメリットらしきものもある。
個々のデバイスがWANに接続できるのは理想だが、現実的にはなかなか難しい。それでも今後のハイブリッドなAI利用には、個々のデバイスがインターネットに接続できることが望ましい。
たとえローカルで処理するオンデバイスAIをメインに使う将来がやってくるのだとしても、その利活用の幅を拡げるにはインターネットは参照できたほうがいい。
そのためにも、メインのスマホのあらゆるリソースを共有するための手段は多ければ多いほうがいい。クロスデバイスサービスについては今後の可能性を楽しみにしたい。