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「何もしてないのに壊れた」は当たり前!?PCを正しく掃除して長持ちさせよう
2024年9月12日 06:12
今回のテーマは「PCのお掃除」。SNSや掲示板では定期的に「汚PC」ネタで盛り上がるわけだが、お手元のPC内部はどうだろうか。最近のゲーミングPCではクリアサイドパネルも多い。せっかく内部パーツを眺められるPCなのに、視界に入らないようにしているなんてことはないだろうか。まあ、非クリアサイドパネルで目に入らなければよいというわけでもない。
(1) 定期的に掃除しておかないとこれだけヤバい……かも!?
(2) ダスター1本でも大丈夫、グッズがあればより快適
(3) PC掃除の基本~注意点
(4) 外装掃除を一通り
(5) 内装掃除は外装よりも少し複雑
(6) めんどうに感じない程度がちょうどよい。PC掃除を習慣づけよう
定期的に掃除しておかないとこれだけヤバい……かも!?
<<<以下、ホコリ・チリが積もったPCの写真が続きます>>>
掃除をサボるリスクから説明していこう。家屋内では放っておいてもホコリが積もる。PCの天板にもホコリが積もってくるが、PCはけっこう隙間があるので内部にもホコリが侵入する。ファンのブレードや各パーツの基板上にもホコリが積もってくると、いよいよ故障の危険が高まってくる。
ホコリが直接PC故障の原因になるのは短絡だ。トラッキング現象という言葉を聞いたことがあるだろう。コンセントプラグで生じるもので、プラグ付近にたまったホコリが空気中の水分を吸収し、電極間に微小の電力が流れる。その電流が熱を生じてホコリが乾燥してくる。ホコリの炭化が進行すると、電極間のショートで発熱、発火するといったものだ。PCから焦げ臭いにおいがする……というのは危ないサイン。最悪の場合発火もあり得る。PCどころでは済まない可能性もあるとなれば放置していられないだろう。心穏やかにPCを使いたいとなら、定期的に掃除をしよう。
また、PCの快適さにも関係する。ファンのブレードにホコリが付着する、ヒートシンクのフィンとフィンの間にホコリが詰まるというのはよく見かける。ホコリが付着すると少しずつエアフローが悪化する。冷却性能が低下すると、CPUやGPUのブースト上限も下がるので、パフォーマンスが低下する。冷やそうと積極的にファンが回転するから、普段なら回転数が下がるようなシーンでも高回転しつづけることになる。つまりうるさくなる。いつまでも快適にPCを使いたいと思っているなら、定期的に掃除しよう。
そして、短絡未満、性能低下以上の段階でも各部の故障リスクが高まる。まず半導体の寿命は温度に比例するため、冷却性能が低下してPC内部温度が上昇すると、本来の寿命よりも短く終わる可能性が高まる。そうでなくても、ファンの軸部分のホコリはファンの寿命を縮める。PCの故障の多くは熱によるものという話もある。ファンが故障したのに気づかず使い続けて壊したというのはあるあるだ。せっかく買ったPCを長く使いたいなら、定期的に掃除しよう。
まあ、まったく掃除せず使い続けても5年、10年壊れてはいないといったことも聞く。ここで挙げたリスクは必ずしも生じるわけではないし確率的に見れば低いのかもしれない。ただ、しないよりはしたほうがよい。
ダスター1本でも大丈夫、グッズがあればより快適
掃除と言うと、めんどうに感じる方も多いだろう。しかし、究極的にはダスター(ブロワー)1つで必要十分な掃除はできる。……と言うよりも、いろいろと考えてみて結局のところ最終兵器はダスターだ。スプレータイプのものなら、ブワーッとかけて終わりだ。内部掃除にPCケースを開ける手間はあるが、それでも30分見積もれば十分だろう。時間とコストをかけなくてもPC掃除はできる。
ただし、しっかり時間をとっていろいろと掃除用品を揃えればもっとキレイにできる。ここのホコリが取りにくい……という部分に対処できるからキレイになるのを実感できて、掃除自体を(少し)楽しめるようになる。そんな適材適所の掃除用品も紹介しよう。
とはいえ、モノが増えるのもお金がかかるのも考えもの。筆者もそうだ。だが、PC専用のものというのは意外と少ない。普段の掃除にも使えるもの、意外な代用品も紹介しよう。そして100円ショップで買えるものならお財布へのダメージも小さいはずだ。
10年、20年、30年……PC歴の長い方なら、PC掃除も心得ているだろう。実際、ここで紹介する内容も、あぁ……アレねと思われるかもしれない。そうなるとさすがに面白くないので、過去、メーカーの中の人に聞いたお墨付きの掃除方法やコレをここに使う時は気をつけよう的な掃除ネタも紹介しよう。まあ、「これで正しかったんだ!」とか「えッ!?これ間違っていたの?」といった発見があれば幸いだ。
PC掃除の基本~注意点
- 電源は必ずオフに
- コンセントからも外しておこう
- 掃除に換気は必須
- ホコリを吹き飛ばすなら窓際、屋外でもよい
- 傷つきやすい、壊れやすいパーツに目星をつける
- 基本的にパーツを分解してまで掃除しない
言われなくても……ではあるが、PCを掃除する際は電源オフ、コンセントからケーブルを外した状態で行なおう。ファンが回転している状態でPC内部を掃除すると怪我する危険性がある。天板のホコリをダスターで吹き飛ばすにしても、舞ったホコリをファンが吸い寄せていたら意味がない。
そもそも掃除をする時は窓を開けると習ったはずだ。PC内部のよごれはほぼホコリとチリ。舞ったホコリが出ていくように窓を開けて行なおう。窓際で掃除をすればそのまま外に出ていってくれる。あるいは晴れの日限定になるが玄関先や軒下、ガレージなど屋外で掃除すれば、室内が汚れる心配がない。
最近多く見るクリアサイドパネル。最近は強化ガラス製がほとんどだが、古いものや安価なものではアクリル製のものもある。アクリルは傷つきやすいので要注意だ。また、ファンも意外と繊細だ。回転するものなので、軸がブレると異音を発するようになる。
問題なく動いている間は基本的にパーツを取り外さない。取り外したことで動かなくなることもあるからだ。掃除の場合はもういくつか理由がある。まずCPUクーラーのファンなど取り外すのはラクでも、(組まれた状態から)再装着するのが難しい場合があるという理由だ。装着のためにバラし、組み直しが生じたら掃除だけで1日かかってしまう。
もう1つは保証の問題。たとえばATX電源内部に目立つホコリがあるとして、カバーを開けたくなる気持ちは分かるが、開けた瞬間、保証が切れてしまう。外すのは各種ケーブルとフィルタ、側板くらいがちょうどよい。気になる汚れがあったとしても、リスクが高ければあきらめる決断も必要だ。
外装掃除を一通り
それではケース外装から掃除しよう。
続くPC内部も同様だが、あらかじめダスターでおおまかに吹き飛ばすのをオススメする。ただし、外装掃除の際、前面パネルや背面、天板など、すぐ裏にファンが隠れている部分については、ダスターの風を直接当てないようにしよう。ダスターの風がブレードの1点に集中して当たってしまうと軸ブレを生じるおそれがある。噴射量を加減するか、綿棒やブラシなどを使って掃除するほうがよい。
普段のケース外装掃除なら、ハンディモップや不織布、マイクロファイバーの雑巾など、ホコリを吸着するタイプの掃除用品が適している。ホコリが舞うのを抑えられるから、普段の設置場所でも気にせず掃除できる。
アクリル製のクリアサイドパネルは乾拭きNG。とくに柔らかい布を選び、水拭きするのがよいとされる。しつこいよごれがある場合は、少量の中性洗剤を含ませてもよいとのことだ。
アクリルやガラスの水拭きでは、拭きスジや水アカにも気を配りたい。アクリルの場合はしっかり拭き上げたくても乾拭きNGなので、余計な水分はダスターで吹き飛ばすのが有効だ。水アカの原因はミネラル分なので、これを含まない精製水を使う手もある。ちなみに、自動車用のバッテリ補充液があれば、中身は(ほぼ)精製水なので代用可能だ。
また、アクリルはアルコールにも弱い。手元にあったウェットティッシュが使えそう……とアルコールを含むものだと気づかず使ってしまうようなこともあり得るので注意しよう。
端子部分も忘れずに掃除しておこう。前面インターフェイス、背面パネルの端子部分にはホコリがたまりやすい。ダスターで吹き飛ばす、ブラシで掻き出すのがよいだろう。また、ビデオカード購入時に付属するHDMIやDisplayPort用のキャップが余ったら、それをマザーボードの映像出力に被せておこう。少なくともその部分はホコリの付着を抑えられる。USBやそのほかの端子用のキャップも市販されているので、余裕があればそれを揃えるのもよい。
内装掃除は外装よりも少し複雑
続いて内部。まず左右の側板を取り外してから掃除をはじめよう。風の抜けがよいほうが掃除しやすい。内部もファンの部分だけ避けてまずはダスター。忘れがちなマザーボードの裏側の隙間のホコリもダスターで吹き飛ばしておこう。
ファンのブレードに付いたホコリは、ブラシ掃除が最適だろう。やわらかいブラシなら軸への負担が小さい。実際は、ちょっとした力でもブレードが回ってしまうので、指などでこれを止めながら掃除することになる。くれぐれも力を入れないことが大切だ。
マザーボードはダスターを吹き付けてもちいさなチリが残りがちだ。手の入る部分はブラシや綿棒が適しているだろう。ピンヘッダに糸くずが絡まっているようなことも多い。ただしピンヘッダがあるのはマザーボードの外周であることが多く、PCケース内ではかなり狭い部分で周囲も暗い。もし取れそうならライトで照らしたうえでピンセットを使って除去しよう。
綿棒は使える掃除用品だ。ある程度長さがある柄で、狭い部分にも挿し込めるところが使いやすい。そして電源のファンガード内にあるブレードにも届く。以前、玄人志向に話を伺った時も、開口部は綿棒で掃除というのがオススメされた。
そして電源内部の掃除はダスターよりも掃除機の弱モードが推奨とのことだった。ダスターだと吹き飛ばしたホコリが予期せぬ隙間に入り込んでしまうからという理由。電源内部はコンデンサが高密度に並んでいたり、いかにもホコリが絡まりやすそうなヒートシンクがあったりする。その上分解不可なので開口部と言えばファンガード部分しかない。こうした特殊性から、ダスターよりも掃除機推奨になるわけだ。
たぶんPC内部掃除のハイライトはCPUクーラーだろう。とは言え、ここまでにおおよその掃除方法は説明済みだ。ヒートシンクのフィンとフィンの間のホコリはダスターを、ファンについてはブラシをといった具合だ。十分に空間があり、ファンを取り外しても再装着できる確信があれば取り外したほうが掃除しやすい。取り外してしまってから再装着が難しい……という場合は、あきらめてCPUクーラーごとバラすしかない。バラすことになるなら……せっかくだからグリスも塗り換えておこう……と一度転んでもただでは起きない発想が必要だ。
水冷ラジエータも同様だ。取り外すのが難しければ、ファンは外すのをあきらめたほうがよい。ただCPUクーラーのヒートシンクと違って、ラジエータはどの角度からダスターをかけてもファンに当たる。ダスターの噴射力を加減するしかない。ダスターで取り切れなかったブレードのホコリをブラシで落とすのがよい。
そしてビデオカード上のファンも取り外せない。しかも一般的な横置きレイアウトだとファンと隣の拡張カード、ファンとケース壁面の間に、ブラシを使えるほどのスペースがないこともある。ビデオカードの掃除は、噴射力を調整したダスターと、ブラシが使えるならばブラシでブレード掃除といったところだろう。
「絶対にダスターを噴射してはいけない」ではなく「噴射力を調整すればよい」という考えと、ファンの故障リスクと冷却性能低下で生じるPC不調のどちらがより大きな不利益なのかで考えたい。
めんどうに感じない程度がちょうどよい。PC掃除を習慣づけよう
さて、具体的にどのくらいの間隔で掃除をしたらよいだろうか。この企画の撮影のためにPCにホコリを蓄積させるというのを試みた。常時稼働させて放置を2、3カ月ほど行なった。まあ、思いどおりの結果にはならなかったが、なんとなく分かったこともある。
1台目はN100を搭載していて省電力なPC。発熱も少なく一般的な負荷をかけたところでそこまで空気循環しない。やはりある程度熱量があり、空気をがんがん入れ換えるようなPCでないとホコリを吸い込みにくいと感じた。
2台目は少し熱量が多いものの同じくミニPC。3面メッシュということもあって期待したが、これも思ったほどホコリが蓄積しなかった。まずホコリが落ちてきやすいのは天板部分だが、縦型なのでその天板面積が小さかった。その上、天板部が排気口にもなっているので、排気がホコリを寄せ付けにくいように感じた。また、吸気口は側面にあってこちらはどうだと思ったが、メッシュ部に多少ひっかかるくらいだった。こちらはどうも設置場所の問題だった気がする。
普段の部屋掃除でも、ホコリがたまりやすいところ、少ないところがあるだろう。室内で生活していれば、エアコンや扇風機といった風を生む家電があり、人の行き来やドアの開閉でもわずかながら風を生じる。舞い上がったホコリはその風に流される。そして比較的風が弱くなったところで落ちてくる。ホコリは部屋の中でも四隅に集まりやすい。PCを置いた仕事机は壁面の中間くらいの位置だ。ここだとあまりホコリが落ちてこない。
一方、部屋の隅のTV横にも1台PCを置いているが、そちらの天板にはしっかりホコリが積もっている。だいたい同じくらいの期間、掃除をせず放置したPCだ。そして、そのPCは横置き型で天板部の面積が大きく、上面吸気/側面排気でもある。設置場所、天板面積、そして上面吸気と、ホコリを吸い寄せやすい条件が揃っていた。
どのくらいの間隔で掃除をしたらよいかは一概には決められない。PCごと、家庭ごと異なるものだ。だから、定期的にPCのフタを開けてみよう。自分の手で組んだわけではない、PCに詳しくない方も、フタを開けるくらいは簡単だ。
そして感覚に敏感になろう。異音はしないか、性能は落ちてないか……気になるところがあったら掃除を検討してみよう。先のとおり、簡単に済ませたいならダスターだけ30分程度で済ませてもよい。本格的に掃除したいにしても、日本ならだいたい季節ごとまとまった連休がある。本格掃除は4カ月ごとで大丈夫だ。半期に1度でも問題ないかもしれない。ただ1年放っておいたらエラいことになるかもしれない。定期的にPC掃除を続けるなら、手軽/気軽に、愛着を持って、楽しくやろう。