特集

2018年のゲーミングノートパソコン9製品を一斉レビュー

~プロゲーマーに加え3DCG/映像/写真のプロもそれぞれの視点で評価

【3DCG製作者目線】宋 明信の評価

※ここでは、宋 明信氏による9製品の評価を掲載している。各製品のスペックやほかのライターの評価をご覧になりたい方は、ページ最下部にあるリンク付きの目次を参照いただきたい。

 今回テストした機種はすべて予想を上回る結果となっており、正直「鳩が豆鉄砲を食ったよう」的なところが率直な感想だ。とくにG-TuneのNEXTGEAR-NOTE i71130PA1は、比較機種すべてに対してブッチギリの結果を出しており、下手なデスクトップ型ワークステーションにも匹敵しているか、むしろ凌駕している。

 片やRazer Blade Stealthやiiyama PCのLEVEL-13FH053-i7-RNSVIといったモバイル性と性能を両立させる外部GPUユニットを可能にする製品が2機種同時にテストできたのもラッキーであった。

 テスト機種全般に言えることだが、お世辞にも安い製品群ではないので、能力と導入コストとの兼ね合い、また製品としての品質の高さも重要なポイント。

 これらの評価軸を踏まえて、堂々の1位の座を射止めたのはASUS ROG ZEPHYRUS GX501とLenovo Legion Y720という結果になった。

 なお、今回のテストはあくまでも3ds Maxを使用する場合にかぎった評価であって、製品全般の評価ではないことをご了承いただきたい。

レンダリングスピード
グラフィックス性能
3ds Max起動時間

第1位「ASUS ROG ZEPHYRUS GX501VI」

 ASUS ROG ZEPHYRUS GX501VIの特徴は、まずなんと言ってもトラックパッドが秀逸であるということ。通常はキーボード中央下に配置されているトラックパッドがテンキー位置、つまりキーボードの右側に配置されている。

 最初は違和感があったものの数分でその操作に慣れ、自在に操ることができた。通常CGソフトウェアはマウスがないと実際問題として操作ができないのだが、このトラックパッドであれば十分にマウスの代わりに成り得ると確信した。

 3ds Maxはほかのグラフィックスソフトウェア同様、頻繁にショートカットキーを使うが、トラックパッドが中央にあると非常に操作しにくいのだ。このレイアウトであれば問題が発生することはないだろう。キーレイアウトも自然である。

 レンダリングスピードはテスト中2位、描画能力はGALLERIA GKF1060GFと同列4位、ソフトウェアの起動時間も2位だけあって操作レスポンスにも優れる。なんといってもこれだけの性能を持って重量がたったの2.2kgと軽量であること。最大厚みも18㎜弱という薄さ。携帯性、性能、操作性など、全体のバランスが際立って高い 非常に魅力的な機種であった。

第2位「Lenovo Legion Y720 - 80VR0018JP」

 Lenovo Legion Y720の最初の印象は正直あまりよくなく、ベンチマークをとっても平均的な値だった。レンダリングスピードは9機種中5位、起動時間は7位、グラフィックス性能は6位と数字だけ見ると大したことはないのだが、G-Tuneを除いた8機種でのベンチマーク結果はその差がごくわずかであり、甲乙つけがたい結果であるのも事実。だが、とくと観察すると筐体の作りは非常によく、今回テストしたなかではトップクラスの品質ではないかなと思う。

 特徴がないといえばそれだけになるのだが、ほかの機種を圧倒するのがその価格。今回のテスト機種の場合キャンペーン価格でなくても222,480円というのは衝撃である。キャンペーン中のE-クーポンを適用すると162,410円である。コストパフォーマンスは最強と言える。さらには本体重量が2.95kgということで軽くはないが、ギリギリ持ち運びも可能だ。

 難点を言うならばメーカーオーダーできるメモリ環境が16GBしかない点。昨今の3DCGの制作環境からすると32GBは最低でも実装したいが、その辺はコストパフォーマンスとのトレードオフになるだろう。

第3位「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i71130PA1」

 この機種に関しては、重くて文句あるか? でかくて悪いか? といった割り切りが心地よいノートPCであり、GeForce GTX 1080を2枚搭載というモンスターGPU環境であった。

 今回テストした機種のなかで唯一6コアのCore i7-8700Kを実装しており、すべてのベンチマークでブッチギリの結果を出している。とくに圧巻だったのはレンダリングスピードで、2位のASUSの約半分の時間で終わってしまったこと。アプリ起動時間も2位とは3秒近く離しており、描画スピードも1.5倍ほど早い。もはやシングルXeon搭載のワークステーションの領域だと言える。

 このスペックあればVRデバイスを快適に動作させることができるだろう。そういった意味ではこの大きさはむしろ軽量と言えるかもしれない。ただし、体力の違いで判断基準は異なるが本体だけで5.6kgである。巨大なACアダプタも持ち歩くとなると6kg越え。正直 普段の持ち運びはあきらめたほうが良いと思う。

 589,800円とお値段もブッチギリではあるが、デスクトップ型でこれだけの仕様を構成するとなると結構かかるのも事実。Core i7-8700Kで約4万円。4Kディスプレイで4万円前後。10万円近いGeForce GTX 1080を2枚用意。メモリも16GBを4枚で約10万円はするだろう。NVMe SSD 1TBで約6万円。電源ユニットも相当強化しなければならない。ワークステーションクラスでこのスペックを実現するとなると軽く倍近い価格になってしまう。むしろ安いと言えるかもしれない。

 モバイル性で評価すると最低ランクだが、それを踏まえてもこの性能の高さは尋常ではない。


※以下、4位以降の製品を点数順で掲載。同点の場合は製品リスト順で並べている。

OMEN by HP 15-ce000パフォーマンスモデル

 まずはデザインがんばってるね、といった感じだが、PCとして使う場合に致命的な問題が「キーボードになにが書いてあるか読めない」という点。赤くイルミネーションしているのはデザイン上の特徴だとは思うが、視認性がよろしくない。キータッチ、レイアウト自体は問題ないので、とても惜しい感じがする。

 レンダリング性能、描画性能、起動速度とも今回テストしたなかでは平均的な数値より若干上回っている。エアーフローのダクトがかなり大きいので長時間のレンダリング処理をかけても熱の問題はなさそうである。

 携帯性は2.6kgとギリギリのライン。つくりの良さは、さすがはHPだけあってしっかりとした筐体に仕上がっている。18万円弱という価格はこのスペックであれば十分にコストパフォーマンスが高いと言える。

GALLERIA GKF1060GF

 GALLARIA GKF 1060GFは、ベンチマークの数値自体はテスト機中ちょうど平均値ぐらいを出している。そのなかでも起動時間は優秀な結果であった。

 この機種もゲーミングPCにありがちなキラキラしたキーボードで視認性という点はどうかなと思う。キータッチも若干頼りなさが感じられる。トラックパッドの感触は良く、上位にランクしたLenovoやG-Tuneのトラックパッドと引けを取らないと思う。

 テストした機種は8GBの環境でメモリ的にはつらいところではあるが、購入時に32GBまで設定できるので、メーカー保証内でこれができるのは、この価格帯からすればすばらしいことだと思う。コストパフォーマンスは良好だろう

ALIENWARE17 スプレマシーVR

 老舗のALIENWAREであるが、さすがに製品の完成度が高く、そつがない作り。アプリの起動速度も速い。レンダリング速度は3番目、グラフィックス性能もG-Tuneに次ぐ2位の成績。G-Tuneが特殊過ぎる点を鑑みればテスト機中トップでレベルの性能を誇る。

 17.3型で2,560×1,440まで表示可能なディスプレイは非光沢液晶ということもあり、実際の3DCG作業では視認性が非常に良い。あらゆる操作レスポンスが良く、アプリを使っていて引っかかるような印象がない点もすばらしい。キータッチやレイアウトも自然なので使いやすい。筐体の作りはソリッド感が強い。

 半面、これといった個性がないのも事実。G-Tuneほどではないが17.3型のディスプレイを実装していることもあり、筐体はかなり大きいし重い。ACアダプタ含めると軽く5kgを超えるため、携帯性は厳しいと言わざるを得ない。携帯性を求めるのなら15型を選ぶべき。価格もそれなりのいいお値段ではある。

iiyama PC LEVEL-13FH053-i7-RNSVI

 Razer Blade Stealthと同様、GPUボックスを接続して描画性能を上げる構成。CPUも同じCore i7-8550Uを搭載。たいへんコンパクトな筐体で、持ち運びにはなんの問題もないサイズ。

 レンダリングスピード、グラフィックス性能はRazer Bladeとほぼ同じか若干優れる数値を出す。当然GPUボックスを外した状態ではIntel UHD Graphicsのみになるので、描画はかなり落ちるが、落ち込みはRazer Bladeほどではなく32.4秒が1分38秒になる程度だった。

 アプリの起動時間はかなり速い。ただ、実装メモリの最大容量が8GBまでなのは3DCGソフトウェアを業務用途で使用するには少なすぎる。これは致命的な問題。3ds Maxを使う観点では最下位になってしまったが、軽いグラフィックスソフトウェアを使うのであれば、8GBのメモリで事足りる場合がほとんどなので、その辺は誤解のないように。

MSI GS63 7RD Stealth

 ベンチマークの結果はテスト機中平均レベルといったところ。この機種の良いところは15.6型のわりにたいへん軽量にできているところだろう。高性能なノートPCで2kgを切っているのは大したものだと思う。起動時間も速いし、グラフィックス性能も悪くない。メモリの最大32GBまで搭載できる。

 ではなぜ評価を下げたのかというと、キーボードのレイアウトに問題があったからだ。3DCGの作業では「Delete」キーは非常に使用頻度の高いキーの1つだ。この機種の場合、テンキーの最上段、しかもまんなかに配置してある。おそらくこのレイアウトだと、タイプミスの連続だろう。

 あと、テスト機に関してはトラックパッドの感触が良くなかった。これは今回の機材固有の問題であってほしいのだが、マウスが必須と感じた。

 筐体のデザインは悪くはないし、2.35kgと15.6型クラスでは軽量なほうだ。筐体の品質はあまり高くないものの、今回のテスト機全般を見るとソリッド感が強い機種はそれなりに重量が出ているようなので、軽さを求めるのであれば致し方ないだろう。

Razer Blade Stealth + Razer Core V2

 とてもよくできたソリッド感のある筐体で、軽くて小さい。デザインはまんまMacBook Pro 13インチ。直球過ぎて逆に心地よい。キーボードタッチも心地よい。アプリの起動時間も速かった。

 GPUボックスをつないでいる場合のソフトウェアの操作レスポンス、グラフィックス性能はとくに問題は感じられない。ただし当然ながら、外した状態だとグラフィックス性能は極端に低下する。ベンチマークの平均が25秒前後に対して2分30秒超えになるので、3Dグラフィックス性能を求めるならGPUボックスをつなぐのが絶対である。

 13.3型ディスプレイで3Kまで表示可能だと画面が見えるのか?と心配にもなるが、3ds MaxのGUIはWindowsのカスタム スケーリングに対応しているので問題はない。レンダリングスピードはテスト中最下位であった。