特集

2018年のゲーミングノートパソコン9製品を一斉レビュー

~プロゲーマーに加え3DCG/映像/写真のプロもそれぞれの視点で評価

【技術系ライター目線】西川 善司の評価

※ここでは、西川 善司氏による9製品の評価を掲載している。各製品のスペックやほかのライターの評価をご覧になりたい方は、ページ最下部にあるリンク付きの目次を参照いただきたい。

 筆者の評価軸は、ゲームには最重要スペックであるGPU性能、そのグラフィックスを描き出し表示するディスプレイ性能をとくに重要視して評価した。GPU性能は搭載GPUの基本スペックはもちろんのこと、ベンチマークテストのスコアなども吟味して採点している。

 ディスプレイ表示性能は、実際にストリートファイターVなどをプレイしたさいの、映像の見えやすさをチェックしただけでなく、色再現性、視野角といった画質マニアの筆者の目線のチェックを行なって採点した。ノートPCは画面がヒンジに組みつけられているため、画面を見るさいの調整自由度が低い。このことからディスプレイとしての基本性能が高くないと、使い勝手(プレイ感)がよろしくない。

 それとGPUは、その進化スピードが早く、標準搭載されているGPUが意外と早く性能不足となってしまいがちなことから、最近、にわかに注目されている外付けGPUボックスを接続できる拡張性にも注目してみた。Thunderbolt 3端子があるかないかをチェックし、あれば実際に外付けGPUボックスを接続してドライバーをインストールして動作するかをチェックして採点している。

 なお、ディスクリートGPUを搭載したノートPCで外付けGPUをプライマリGPUとして認識させるには、外付けGPU側にディスプレイをつなげてプライマリディスプレイとして設定するか、内蔵側のGPUを無効化する必要がある。また、ディスクリートGPUがうまく認識されない場合は、デバイスマネージャー上などから適切なドライバを当ててやる必要がある。

 ゲーミングノートPCは、それ単体で良好なゲーム体験ができるところがウリの商品なので、標準搭載スピーカーの音質についてもチェックした。「ヘッドフォンを使えばいいじゃん」という指摘はごもっともだが、友人達とゲーミングPCを持ちよって対戦を楽しむ、格闘ゲームパーティーのときには、1台のゲーミングノートPCの前に2人が座ることになって、ヘッドフォン端子が1つしかないゲーミングノートPCでは2基のヘットフォンはつなげられない。となると、やはり本体から鳴るサウンドで楽しむことを余儀なくされるわけで、そのさい、音がショボいとガッカリなのである。

 最後の評価軸はコストパフォーマンス。価格に対して満足度がどうか、という部分だ。ここは単純に実勢価格の高低と前出の評価項目の結果とのバランスで採点したが、基本的に高価な製品は、やや厳しめになっている。

第1位「Lenovo Legion Y720 - 80VR0018JP」

 このマシン、正直印象は薄かったのだが(笑)、筆者の評価軸において、まんべんなく優秀なスコアを獲得したことで1位となった。突出したところはないが、逆に不満もない。言うなれば「地味な優等生タイプ」といったところ。

 PCとしての基本スペックに不満はないし、GPUはGeForce GTX 1060搭載でストリートファイターVもグラフィック設定最高スペックで60fps安定。

 液晶パネルはIPSでハイフレームレートに対応しているわけではないのだが、TN型液晶パネル採用モデルにありがちな上下方向の視野角の狭さがなく、左右から見ても彩度の高いカラー表示が行なえていた。表示品質は良好で、画面の正面に2人が座ってプレイする格闘ゲームと相性がいい。

 サウンドも良好。内蔵スピーカーが2.1チャンネル仕様のためかちょっとしたPCスピーカー並みの音質でゲームが楽しめるのだ。画面を支えるヒンジ部を中央に寄せて実装している関係で、本体上面の左右をまるまるステレオスピーカー開口部にレイアウトしているのがデザイン上の特徴だ。サブウーハーは底面に配置。いわゆる「ノートPC内蔵スピーカーでありがちなスカスカ音」とは一線を画したサウンドになっている

 Thunderbolt 3も搭載で外付けGPUボックスに接続してちゃんと認識してドライバーがインストールできることも確認できたので、この点においても問題なし。

 気になる点があるとすればキーボードだ。画面サイズ15.6型の比較的大きい筐体にもかかわらず、とても窮屈そうな日本語キーボードの特殊なレイアウトとなっているのだ。たとえば[Num Lock]がテンキー[0]の左にあったり、かなキーの[む]が、英語キーボードでは大判だった[Enterキー]を無理矢理分割した感じで実装されているのである。おそらく英語キーボードの天板をあまり改変せずに無理矢理日本語キー対応化したためにこうなってしまったのだろう。

 ただ、今回の評価において、キーボードについてはほかの機種でもっと異形なものがあるので本機はまだマシなほうである(笑)。その意味でも、この点についても「可もなく不可もなく」と評価できなくもない。

 実勢価格も、「このスペックでこの価格ならばいいな」と思える設定。「どれを選んでいいのかわからない」というあなたにこそオススメしたい「静かなる優等生」。Legion Y720はそんなマシンである。

第2位「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i71130PA1」

 価格が高いのでコストパフォーマンスは最低値となったが、それ以外の要素がすべて満点。大画面の4K液晶パネルは、画面が大きいだけでなく表示が美しく、今回の製品のなかではベストに近い画質。パネル種別非公開だがおそらくこれもIPS液晶だろう。

 サウンドは大迫力で不満なし。見た目のデザインが古くさいこと、重量が重いこと、キーボードのレイアウトが変わっていることに納得できれば買いだ。予算の確保はたいへんかもしれないが。

第3位「iiyama PC LEVEL-13FH053-i7-RNSVI」

 採点表上の3位は同着で3機種、iiyama PC、MSI、OMEN by HPとなるが、ここから1つだけ選ぶとすれば、iiyama PCとしたい。

 理由は画面が小さい割には視野角が広く発色が良く(おそらくIPS型液晶)表示品質が高いこと、そしてThunderbolt 3接続の外付けGPUボックスが標準搭載されていて、しかもGeForce GTX 1060つき……という点がほかの2モデルに対して秀でていると感じたため。

 GPUボックス(標準でGeForce GTX 1060搭載)にもかかわらず、かなり押さえ込んだ価格にも魅力を感じる。PC本体自体は13.3型画面サイズの普通のノートPCなので、GPUボックスから取り外せば、日々使えるモバイルノートとして使えるのも魅力だ。キーボードレイアウトは変ではあるが(笑)。


※以下、4位以降の製品を点数順で掲載。同点の場合は製品リスト順で並べている。

MSI GS63 7RD Stealth

 GPU性能は今回唯一のGeForce GTX 1050搭載機で、評点は低めだが、ストリートファイターVはグラフィックスオプションがすべて最高設定でも60fpsを維持してプレイできたので不満はなし。IPS型液晶パネル採用で視野角も広く色再現性も良好。画面表示は美しい。

 ただ、サウンドは「並」。いかにも「ノートPCの内蔵スピーカーです」というようなサウンド。キーボードは、英語キーボードのキー形状をそのままに、日本語キーボードレイアウトのために包丁で切り分けたようなデザインになっていて打ちにくい。

 価格は今回の製品群ではもっとも安価で、今回の製品群では唯一の「5」を与えた。ゲーミングPC入門機として最適。

OMEN by HP 15-ce000パフォーマンスモデル

 液晶パネルの品質は良好。映像は綺麗だった。見た目のデザイン性も悪くなく、ゲーミングPCの奇抜さと普通のノートPCのエレガントさをバランス良く兼ね備えている。

 キーボードレイアウトはALIENWAREの次に「普通」で使いやすい。普通のPCとしての使い勝手は今回の製品群のなかではいいほうに属する。スピーカーは大きいのだが、見た目の割には音質があまりよくない。

ALIENWARE17 スプレマシーVR

 GeForce GTX 1080搭載のALIENWAREやASUS ROGのハイスペックコンビがベスト3に入ってこなかったのはコストパフォーマンスと、スピーカー性能がかんばしくなかったため。ここに妥協できるならばこの2モデルはおすすめできる。

 TN型液晶の特性のためか、液晶パネルは上下の視野角がせまめで角度によって色変移が大きい。GPUがフル稼動するとゲームサウンドに影響が出るほど轟音の冷却ファンの音が鳴り響く。筐体が大きい割にはスピーカーの音質が「並」なのも気になった。

 気に入ったのは日本語キーボードがもっとも自然なレイアウトで日本人ユーザーに向けて最適化が施されているところ。筆者も「PCとしての使い勝手」だけで選ぶとしたらこの機種を選びたいと思う。

ASUS ROG ZEPHYRUS GX501VI

 薄型でありながらMax-Q技術により、高性能なGeForce GTX 1080を搭載しているのが最大の特徴。性能に関しては文句なしだが、スピーカーの性能がいま1つ。

 テンキー部がタッチパッドマウスになったりするところはおしゃれ。ただ、キーボード全体が手前に来すぎていて画面が遠い印象で使い勝手については好みが分かれそう。

 価格の高さは、最新技術とハイエンドパーツを詰め込んでいるためなので、致し方ないという感じもする。最高のモノをコンパクトに手にしたい人向け。

Razer Blade Stealth + Razer Core V2

 iiyama PCとよく似たコンセプトのRazer Blade Stealthは、GPUボックスは付属するがGPU自体は別売りなところ、価格が高いこと、スピーカー性能がかんばしくなかったことで差がついた。

 ノートPC本体とGPUボックスだけで27万円超の価格は高い。これにGPUを加えたらトータル30万円となってしまうことから、コストパフォーマンスの評点には「2」をつけた。

 スピーカーは本体サイズが小さいわりには十分なステレオ感が得られがんばっているとは思うが、出音を絶対評価すると「4」をつけるほどではないと判断。

 液晶パネルの表示品質は、同じGPUボックス接続前提のゲーミングPCのiiyama PCよりもむしろ上質だった。13.3型サイズで3,200×1,800ドットの液晶パネルは解像感抜群。評点はG-TuneのNEXTGEAR-NOTE i71130PA1にならんで最高の「5」を与えた。

GALLERIA GKF1060GF

 GALLERIAは、最下位になってしまったが、筆者的には「地味な優等生」という、1位のLenovoと同じイメージを持つ。

 評価スコア的にほかと差が出てしまったのはThunderbolt 3に対応していないこと(外付けGPUボックス未対応)、スピーカー性能や液晶パネル表示品質などにおいて他機種に対して抜きん出る部分がなかったことなどが原因だ。

 スペックの高さのわりには安価であり、コストパフォーマンス的にはいいマシンだと思う。MSIのと同様にゲーミングPC入門機としておすすめしたい。