特集

2018年のゲーミングノートパソコン9製品を一斉レビュー

~プロゲーマーに加え3DCG/映像/写真のプロもそれぞれの視点で評価

【映像エディター目線】小林 譲の評価

※ここでは、小林 譲氏による9製品の評価を掲載している。各製品のスペックやほかのライターの評価をご覧になりたい方は、ページ最下部にあるリンク付きの目次を参照いただきたい。

 「一番よい編集機器はなにか?」という質問は筆者も各所から頻繁に受けるが、会話ベースがついMacによりがちだった。今回の検証はWindows PCにすさまじい可能性を感じるだけでなく、なかでもゲーミングノートには実戦レベルでぜひとも使ってみたいと思わせてくれるすてきな出会いであった。

 処理能力はもちろんだが、テンキーや接続端子の豊富さ、フルHD以上の解像度など、ゲーミングノートが搭載している装備が、そのまま編集作業でも「そう、それがほしかった」と思えるものだったことは、目から鱗の体験であった。ぜひこれからは導入の選択肢に加えて考えていきたい。

第1位「ALIENWARE17 スプレマシーVR」

 広々としたディスプレイは見やすく、カラーチャートで測ると輝度の再現性も暗部まで良く見えた。まわりの環境が整っていない場合でも本体で見る映像に一定の信頼をもってよさそうだと感じた。

 接続端子は横と後ろに分けられていて、一番抜き差しを想定されるUSBなどが横側、のこりのHDMIなどは後ろと整理されていて、ユーザビリディも高くて好印象だ。

 4Kの映像をエフェクトをかけ再生してみたが、カクつくことなくスムーズな編集ができた。ファイル書き出しのスピードも60秒想定の計算を下回り、55秒を叩き出した。せっかちな顧客を隣にしてもこのパフォーマンスならストレスなく作業をこなせることだろう。

 これからの映像編集で絶対に関わる案件といえば4K映像の編集だ。この超解像度の素材を前にしてもサクサクとしたレスポンスがまずすばらしい。Premire Pro CCには、再生できない重たいエフェクトを検知すると赤いバーが表示される仕組みがあるが、このマシンでは赤いバーに中々お目にかからなかった。

 そして標準搭載のマクロキーにもおおいに想像力をかきたてられた。単純なリピート作業も発生しがちな編集環境では、キーの仕込み次第でかなりの効率化が望めるのではないかと期待する。

 筆者はまったく先入観なく今回の検証を行なったが、あとから周りの人に聞いてもALIENWAREの評価は高く、自分の印象も間違ってなかったと思った。

第2位「OMEN by HP 15-ce000パフォーマンスモデル」

 さわった印象がなぜか一番落ち着く作りになっていたのがOMEN by HPだ。

 キーボードの感触やディスプレイの見やすさ、端子の配置、どれをとっても「ちょうど使いやすい」と思わせてくれた。単純なことかもしれないが、スペースバーの大きさやマウスパッドのキーの押しやすさにエディターとしての心地よさを感じさせてくれた。ゲーミングPCは派手なデザインも多いが、そのなかでは比較的ひかえめということなのだろう。

 Lenovoなど同じ価格帯の製品と比べても、若干ではあるが性能に関する結果が良く、個人的には「今からでも作業できそうだ」と一番思えた製品かもしれない。

第3位「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i71130PA1」

 9つの製品のなかでもダントツ1位の価格で勝負しているG-Tune。
重さも5kg超ともはや持ち歩きとしては考えられないほどのモンスターPCだ。

 処理速度を測って見ても期待どおりNo.1。編集室のワークステーションにまったくひけを取らない性能だ。筆者はさまざまなエフェクトを用いて再生の負荷をかけたが、いたってスムーズな再生を失わない力強さだった。

 さらにGPUを2枚搭載しているのだが、残念ながら今回の検証ではPremire Pro CCでその効果が発揮されていなかった。Abobeの広報によると、エンコード出力時に複数GPU処理に対応しているものの、シーケンスのエフェクトの種類や数によって結果が異なるとの話なので、場合によってはその性能を遺憾なく発揮できるのかもしれない。

 逆に言うと、本製品はほかを圧倒する性能をGPU 1枚で成し遂げているということだ。ほかの製品の2倍、3倍近い価格を投じてまで購入したいかは各々の作業環境によるだろう。


※以下、4位以降の製品を点数順で掲載。同点の場合は製品リスト順で並べている。

ASUS ROG ZEPHYRUS GX501VI

 こちらはほかのPCとさわり心地で大きな違いがある。まずキーボード周辺に熱を感じさせないような構造になっており、ゲーマーの視点の設計思想が感じられた。

 さらに マウスパッドと電子テンキーがボタンで入れ替わるというユニークな作りになっている。テンキーは映像編集作業では必須はあるが、用途によっては好みの分かれるところだろう。もちろんMacBookなどApple製のノートにはそもそも搭載されていないので(筆者はテンキーつきのキーボードを別に持ち歩いている)これは贅沢な注文なのかもしれない。

 再生や書き出しはトップクラスで、価格に見合うパフォーマンスで申し分ない。総合力の高さからこの製品を選ぶ人も多いのではないだろうか。

Lenovo Legion Y720 - 80VR0018JP

 まず第一に言えることが「安い!」ということだ。クーポン使用時の価格が16万円ほどとなっており、コストパフォーマンスはほかと比べてもピカイチだろう。

 4K映像の再生も想像以上にレスポンスが良く、60秒想定の書き出しもぴったり60秒、接続端子もスッキリと並べられていて、安定性から考えても心惹かれる人も多いのではないだろうか。

 筆者は多少テカリ感のあるディスプレイの反射を気にしてしまったが、好みの範囲内と言っていいだろう。

GALLERIA GKF1060GF

 今回検証したなかで唯一光学ドライブが搭載されているPCだ。いまだDVDやCDを頻繁に使う環境にいる人にとってはうれしい装備だろう。筆者はあまり使わないので、個人的にはこのおかげで接続端子がすべて片側に集中してしまっている設計が残念に思えた。逆に複数台のPCを使う環境の場合だと、1台こういうPCがあると便利かもしれない。

 性能はと言うと、この価格帯のなかでは大健闘で、30万円クラスの製品の性能に十分追従できているといっていい。若干ディスプレイの視野角がせまく、角度によってはUIが見えにくい場合もあるかもしれない。

MSI GS63 7RD Stealth

 9製品のなかでもっとも最安値のMSI。若干その能力を心配してしまう値段だが、驚くほどの健闘を見せた。60秒書き出し想定に対し、それを切る55秒という結果には、普段30万円クラスのMacBook Proを使う筆者としては「半額以下でこれが手に入るのか」と、これまでの自身の無知を思い知る結果になった。

 その反面と言っていいのかわからないが、カラーチャートを用いたところ、色や輝度の再現性はやや低く、角度によっても見た目が変わってきてしまうところが気になった。

iiyama PC LEVEL-13FH053-i7-RNSVI

 本体の携帯性を高め、重たいGPUを外付けにしているiiyama PC。持ち運びするさいはパフォーマンスはある程度落ちることは想定されるが、じっくりデスクで作業するさいにはGPUをつなげばグッと性能が上がるという仕組みだ。

 13.3型で軽く、撮影現場など、ある程度歩き回って映像を確認するような場合は便利だろうと想像した。

 さて実際の検証を行なったところ、GPU込みでの性能は60秒想定の書き出しに2分近くを要するといった結果で、他製品と比べると残念ながら見劣りしてしまった。もちろんGPUなしのさいはこの結果よりさらに落ちてしまうので、使用時は本体の限界を知った上で作業環境を選ぶといいだろう。

Razer Blade Stealth + Razer Core V2

 懐かしの黒MacBookと見た目がそっくりのRazer Blade Stealth。iiyama PCと同じくGPUを外付けにする考えで、本体はバッグに入れて軽々と持ち運べる軽さだ。この考え方に同調する一定層には支持される作りだろう 。

 GPUボックスとビデオカードが別売りなので、セットでの購入を想定すると、ややコストパフォーマンスに難色を示す人がいるかもしれない。

 GPUボックスありでの性能は60秒想定の書き出しを1分20秒とやや遅め。GPUボックスに接続端子を集中させているので、ノートPC本体の端子はスッキリしている。これも好みの分かれるところだろう。

 テカリのあるディスプレイは、Premiere Pro CCをはじめ暗めのUIが主流の映像ソフトでは反射が気になる人もいるのではないだろうか。