特集

2018年のゲーミングノートパソコン9製品を一斉レビュー

~プロゲーマーに加え3DCG/映像/写真のプロもそれぞれの視点で評価

【写真家目線】若林 直樹の評価

※ここでは、若林 直樹氏による9製品の評価を掲載している。各製品のスペックやほかのライターの評価をご覧になりたい方は、ページ最下部にあるリンク付きの目次を参照いただきたい。

 今回は私の専門である画像再現性と処理能力を中心に見てきた。

 そして、ゲーミングノートPCということだったのだが、思ったよりもIPSパネルが採用されており、階調性の良いものが多くて驚かされた。とくに輝度ムラに関しては、昔の蛍光管では難しかったが現代のLED化で全体的にムラは少なくなっているようだ。さらに、ほとんどムラを感じさせない機種が2機種あったのも予想外だった。

 画像処理能力で大きく差がついたのは「バッチテスト」であり、重いフィルタを使用するとてきめんにGPUのパワーがものを言う感じだった。「RAW現像」はCPUの性能に左右されているようで唯一高性能だったG-Tuneの「NEXTGEAR-NOTEi71130PAI」はCPUが6コアあるため速いようだ。それ以外はそれほど変わらない結果だった。

 なお、今回カードリーダを使用したさいの写真データの転送速度も測ってみたがUSB 3.0接続の外付けSDカードリーダのほうが、内蔵スロットのものよりもかなり高速だった。これはSDカードリーダを備えている全機種についても同じである。写真データを取り込むさいに、時間を優先するなら内蔵は使わないほうが良さそうだ。

RAW現像時間

第1位「Lenovo Legion Y720 - 80VR0018JP」

 液晶はIPSパネルで視野角は広い。今回のテストで色温度は一番理想の6,500Kに近く、白をきちんと白色に表示してくれている。階調性も綺麗なグラデーションで、暗部の階調性も良く明部は細部まで表現できている。輝度ムラもほとんどなく理想的な液晶を搭載し、表示能力はプロ機のディスプレイに匹敵するぐらいのコントロール制御がなされているようだ。

 評価項目以外で良かった点としては、HDMIやThunderbolt 3といったインターフェイス類が揃っていることで、プロ用ディスプレイにつなげばより正確な画像処理作業ができる。また、スピーカーはJBLのステレオスピーカー(サブウーファー付き)で、Dolby Atmos対応も魅力だ。

 気になるのはキーボードのテンキーの位置が上部に配置されているせいでせまく、慣れるのに多少時間がかかりそうだったところ。

第2位「OMEN by HP 15-ce000パフォーマンスモデル」

 液晶パネルはIPSで色温度は白(6500)に近く、輝度ムラも色の階調など問題はなく評価は高い。RAW現像はそこそこの値だがバッチテストの結果は悪いのが少しばかり残念だ。

 コネクタ類が揃っており、キーボードのキーのストローク感は良い。SSDは256GBが1台とHDD1TBが1台あり、速さと容量を両立できるのは魅力と言える。全体的にバランスが取れたノートPCという印象だった。

第3位「MSI GS63 7RD Stealth」

 やや色温度は高いが、許容範囲内で輝度ムラも少ない。階調も暗部は潰れてしまうが明部は問題ない。色のグラデーションは良いほうだが、赤のグラデーションが強めに出ているようだ。

 画像処理能力RAW現像もバッチテストも平均的な数値であった。キーボードのキーはストロークがほどよく、クリック感は良い。SSDが256GBが1つしかないので、と外付けHDDなどが必要となる。


※以下、4位以降の製品を点数順で掲載。同点の場合は製品リスト順で並べている。

GALLERIA GKF1060GF

 ディスプレイの視野角が狭いが、色の階調も輝度ムラも少ない。ただし、全体的にやや白っぽい表示になる傾向がある。色温度が若干高く、青のグラデーションが弱いのも気になった。

 RAW現像は9製品では一番遅いが、バッチテストの結果は速いほうだろう。そしてSSD 256GBとHDD 1TBの組み合わせによってコストパフォーマンスは良いと思う。

 オーソドックスなキー配列だが色分けしたLEDの光がキーボードを個性で好きなスタイルだ。テンキーはややせまく使いにくそうなのが気になるところ。唯一光学ドライブ(DVDスーパーマルチドライブ)を装備しているが、どうせならBDのほうが良かった。

G-Tune NEXTGEAR-NOTE i71130PA1

 液晶が4K対応で今回の9製品ではもっとも解像度が高い。ただ、残念なことに画質評価で暗部が潰れていることと、グラデーションが早い段階で白くなっているなどコントラストが高すぎたため減点した。色温度はやや低いながらも6,050と色再現には適している。

 このノートPCの魅力はなんと言ってもGPUパワーで、バッチテストはダントツで、RAW現像も一番速い。しかもメモリは64GBもあり、SSDは1TBでデータの読み書きも高速だ。ディスプレイポートがあるので高性能な液晶ディスプレイにつなげればPhotoshop環境としては申し分ない最強マシンになるはずだ。

Razer Blade Stealth + Razer Core V2

 色温度がやや高く、青が少し弱い感じはある。輝度ムラも気になるレベルだが、色のグラデーションは良いほうだ。暗部と明部の階調も許容範囲内。

 RAWはやや遅いが、9製品のなかでは平均的な数値だ。キーボードのキーストロークはほかに比べれば浅いが使いやすい。テンキーはなくコンパクトそして1.35kgと軽いため、モバイルノートとして使用できるのは好印象だ。ただし、GPUボックスが別売りで、ビデオカードも別売りなので、コストパフォーマンスの悪さがネック。

iiyama PC LEVEL-13FH053-i7-RNSVI

 色温度が高く、暗部の階調がやや弱いが、明部の階調は良く全体的にはバランスの取れた色階調となっている。輝度ムラも少なく画面も非光沢でモバイル用途に適したディスプレイだ。

 GPUボックスを装備しているが、RAW現像はやや遅く、バッチテストは平均的で飛び抜けた点はない。SSDの容量は250GBで、1TBのHDDもあり、重量も1.5kg程度と持ち運びしやすい。

ALIENWARE17 スプレマシーVR

 今回見たノートPCのなかでは2番目に重く、デスクトップ的なノートPCだ。システムドライブとなる256GBのSSDと、1TBのHDDがあり、メモリも16GBと写真を扱うには十分だ。

 ビデオカードは「GeForce GTX 1080(GDDR5X 8GB)」とPhotoshopのパフォーマンスを高めるには十分で、Photoshopでのバッチテストでも2番目に速い結果が出た。

 キーの配列はオーソドックスで、テンキーのほかにショートカットキーもあるので普通に使いやすい。キータッチはやや弾力が強い印象。液晶のパネルはTNなので視野角は狭いが、正面から見る分には問題ない。そして上方向から見ると全体が明るくなってしまうが、とくに暗部の階調が見えてくるので暗部の様子をチェックするという変則的な使い方ができそうだ。

ASUS ROG ZEPHYRUS GX501VI

 液晶パネルはIPSなため視野角は広く階調性も良いが色温度が高く青傾向にある。RAW現像は速いほうだが、バッチテストの結果は2番目に遅い結果になってしまい、何度か試したものの原因は不明だった。

 この製品はキーボードにパームレスト部分がないことが特徴だろう。また、タッチパットが右にあり、そのパットがボタン1つでテンキーに変わるという独創的な発想の製品だ。コネクタは必要なものが揃っており重量も軽いほうだ。天板を開けば底面が持ち上がり、キーボード面に傾斜ができるなど工夫されている点などは多いに評価できる。

 ただし、ドライブは1台のみで、SSDの容量が512GBしかないため、画像をたくさん保存できないのが残念だ。