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世界初51量子ビットの量子コンピュータをMITとハーバードの研究者らが実現
〜ルビジウムとレーザーを用いて量子ビットを作製
2017年11月30日 20:22
米マサチューセッツ工科大学は29日(現地時間)、ハーバード大学の研究者と共同し、世界初となる51量子ビットをもった量子コンピュータ作製の成功を発表した。極度に冷却したルビジウム原子に高度に制御したレーザーを照射することで量子ビットとするこの手法は、現在研究されているほかの方法と比較して大規模化が容易であると考えられ、飛躍的な計算能力の向上が望めるという。
量子コンピュータを構成する量子ビットには「0」と「1」という状態を同時にとる「重ね合わせ」状態となることが要求される。また、各々の量子ビットが全て相互的に作用できることが必要とされる上、実用的にはその状態をコントロールする必要があるという課題があった。
先行する研究には、イオンや、意図した量子的な性質をみたすような人工原子を用いるものがある。しかし、前者は電荷を帯びており、その電気的な作用が邪魔になる。一方、後者では人工原子を精度良く生成することが困難であることから、量子ビットを次々に増やし計算能力を大規模化することが困難になるという課題があった。
そこで、研究者らはルビジウムとレーザーを用いることでこれらの問題を解決した。ルビジウムは陽子と電子の数が同じ「中性原子」であり、イオンと異なり、互いに反発などを生じない望ましい電気的な性質をもっている。
さらに、レーザーはルビジウム原子を「捕獲」するために用いられるのだが、レーザーの周波数やエネルギーを制御することで個々の原子の状態を制御することに成功した。
レーザーは3種類用いられる。1つ目は極冷により、原子をほぼ静止状態に「固定」するためで、もう1つは100以上に分光され、個々の原子を固定し、量子ビットを望んだ配列に捕獲する。
いったん整列された量子ビットは、各量子ビットを操作するために、原子を捕獲しているレーザーの周波数をオフにし、3つ目のレーザーを加え、リュードベリ状態という通常より高いエネルギーを持った状態に入り励起される。そして原子を捕獲するレーザーを戻し、最終状態を検出する。
原子を励起するビームの周波数や色だけでなく、捕獲された原子の配置を変えることで、原子間の相互作用を変化させられるとしており、このため、大規模化が容易であり、数百量子ビットまで拡張可能であると考えている。
なお、この研究は夢の技術とされる「汎用量子コンピュータ」でこそないものの、レーザーによって量子ビットの状態を比較的容易に制御できるため、解く問題の設定は少なくとも容易にできるという点では画期的だ。
とくに、研究者らが適用を考える「最適経路探索問題」や「組み合わせ最適化」は、要素数に対し指数的な計算時間を要する問題も多く、商用化できれば実務上にも大きな影響を与えうる。
こうした計算負荷の高い問題として「巡回セールスマン問題」などが知られているが、ネットワークにおける最短経路探索や、組み合わせの問題は地図サービスやネットワーク設計で用いられ、素因数分解の高速な実行は暗号の強度などとも密接に関係している。