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【懐パーツ】RIVA 128搭載のカノープス製ビデオカード「PWR128P」
2017年11月1日 06:00
かつて日本を代表するビデオカードメーカーといえば、旧カノープス(現グラスバレー)が挙げられる。優れた基板設計による高い画質や、独自のドライバによる高速描画により、Windows 3.1と95時代は「Power Window」シリーズが、Windows 98/Me/2000/XP時代はGeForceを採用した「SPECTRA」シリーズが、パワーユーザーの間で確固たる地位を築いていた。
もちろん、画質や性能といった面を語るなら、ほぼすべてを内製としたMatroxのビデオカードも外せないが、ビデオチップを自身で製造していない純粋なビデオカードベンダーとして、カノープスの技術力は高い水準にあった。
今回ご紹介する「PWR128P」は、Power Windowシリーズに属し、ビデオチップにNVIDIAとしては初となるDirect3D対応の「RIVA 128」を搭載するモデルである。RIVA 128はSGS-THOMSONの0.35μm 5LMプロセスを採用し、350万トランジスタを搭載。メモリバス幅128bitのSGRAMを搭載することにより、高い3D描画性能を実現していた。もともと描画性能が高いRIVA 128だが、カノープスの独自ドライバにより(とくに2Dを中心に)さらに描画が高速化され、市場より高い評価を得ることを実現していた。
もっとも、RIVA 128は230MHz駆動のRAMDACが内蔵されているため、外付けのハイエンドRAMDACと比較してどうしても品質や性能が落ちる。このため、残念ながらPWR128Pの画質は「素晴らしい」と手放しで褒められるほどではないが、当時市場にある多くのビデオカードよりきれいだったのは事実だ。
RAMDAC的にはおそらくかなり高い解像度やリフレッシュレートをサポートできるが、ビデオメモリが4MBしかない関係で、32bitフルカラーで出せる解像度は1,152×864ドットが限界である(1,152×864×32÷8÷1,024÷1,024で約3.8MB使用)。ちなみに後継の「RIVA 128ZX」では、RAMDACのクロックを250MHzに強化しているのに加え、メモリを8MBまで強化したため、1,600×1,200ドットでも32bitフルカラー(約7.32MB使用)を実現できる。
RIVA 128は1997年4月に発表され、わずか数カ月で100万個の出荷を達成し、今のNVIDIA成功の礎を築き上げた。なお、RIVA 128はSGS-THOMSONのみでの製造だったが、後継のRIVA 128ZXではTSMCが製造パートナーとして加わり、単価は1万個ロットあたり32ドルという低価格で提供されることとなった。
低価格なカードをターゲットに開発されたRIVA 128だけあって、PWR128Pのカード自身も非常に簡素で部品点数は少ない。PCIのコネクタに非常に近い位置で配置されるRIVA 128のチップや、それを取り囲むMoSys製のSGRAM「MG802C 256Q-10」が印象的だ。このほか、BIOSを格納するAtmel製の512KbフラッシュROM「AT29LV512」、Linear Technology製の電圧レギュレータ「LT1587」、Motolora製のHEXインバータ「74ACT04」などが表面に実装されている程度だ。
チップコンデンサやチップ抵抗は背面に集中しており、このあたりはカノープスらしさが見受けられる。本製品は空きパターンが多くあるが、これは上位の「PWR128P/4VC」と基板が共通化されているためで、PWR128P/4VCではRCAのビデオ入力端子を備え、キャプチャができるようになっているからだ。
解析をしたわけではないので詳細は不明だが、唯一の画像出力端子であるミニD-Sub15ピンの付近には、数個の部品が等間隔に並んでおり、このあたりがカノープスの画質を支えているものかもしれない。
カノープスの製品を評価するなら、むしろドライバ(ソフトウェア)を評価すべきなのはごもっともなのだが、2017年現在PWR128Pを動作させるハードウェア/ソフトウェア一式を揃えるのは難しいのが残念でならない。ちなみにNVIDIAはRIVA 128のリファレンスドライバを提供しているが、基本的にドライバはビデオカードベンダー任せであり、リファレンスドライバの使用は保証外行為である。