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Ryzen Threadripperは"ヤミ研"から生まれた予定外の成果だった

 2017年5月に発表され、同8月に発売されたAMDのハイエンドデスクトップ向けCPU「Ryzen Threadripper」は最大の16コア/32スレッドを誇る「Ryzen Threadripper 1950X」をラインナップすることで記憶に新しい。そんなThreadripperも当初はAMD社員の有志が自発的に始めたいわゆる"ヤミ研究"で、当初の計画には存在しなかったという(Threadripperについてはこちらも参照"パワーユーザー待望の16コア/32スレッド環境を実現する「Ryzen Threadripper 1950X」をテスト")。

 米誌Forbesは5日(現地時間)、AMDの役員やThreadripperの開発チームへの取材から報じるところによれば、2014年に同社がZenアーキテクチャを発表した時点ではThreadripperは影も形もなく、「志をもった社員たちが、自身が欲しいと思えるハイエンドデスクトップ向けCPUを作ろうとし」ことを始まりとし、約1年後に経営サイドからの承認を得て2017年の発売に至った"異例のCPU"とのことだ。

 Zenアーキテクチャが発表された当初、ロードマップにはサーバーやデータセンター向けの「EPYC」とデスクトップ向けの「Ryzen」の2種が存在していた。EPYCは4つのダイを結合し、最大32コアのモデルをラインナップするサーバー向けプロセッサで、通常デスクトップ向けで、最大8コアを予定したRyzenより大きなメモリ帯域やPCI Expressレーン数をもつハイエンド製品だ。

 Forbesによると、開発部門のジェームス・プリオール氏はデスクトップ向けのRyzenとEPYCの間には大きな幅があるが、わずかな変更でその幅を埋める製品を新たに作ることができると考え、有志をあつめて開発チームを結成した。当初、開発は会社非公認のプロジェクトであり、それぞれが自分の時間を使って行なわれた。チーム内での議論はSkypeなども用いて行なわれ、しばしば深夜に及んだという。

 プロジェクトが公式化する転機はCOMPUTEX 2016に向かうタクシーの中でジェームズ氏の上司が役員の一人、ジム・アンダーソン氏に対して打ち明け、アイデアが気に入られたことで訪れた。アンダーソン氏はThreadripperのコンセプトを「すばらしい(awesome)」として、2017年夏の発売を予定して計画を承認したとのことだ。

 また、アンダーソン氏は、Threadrippeには「ビジネスプラン」と呼べるものはなく、計画を承認したのは単にコンセプトが「すばらしい(awesome)」ことと、AMDが市場に送り出す最高の製品になり得ると確信していたからだとしている。

プレスキットの写真。工夫をこらされたパッケージ。

 そうした「楽しさ」や「すばらしさ」を追求する文化はパッケージにも息づいているという。ThreadripperのパッケージはCPUとしては一風変わったもので、透明なケースを緩衝材が上下から挟み込む趣向をこらしたものとなっているが、これも当初はライティングが施される予定だった。実際には時間的な制約のため、一般向け製品でのライティングは諦めたとFrobesの取材で述べられているが、プレスキットではライティングが施されていたのは、そうした遊び心の発露だったようだ("久しぶりにPC自作を思う存分に楽しめた「Ryzen Threadripper」の開封から装着までを写真と動画でご紹介")。