【IFA 2012レポート】
東芝、Windows 8におけるPC販売戦略を発表
~Windows RTは当面見送り。2013年には4K出力対応dynabookも計画

会期:8月31日~9月5日(現地時間)
会場:Messe Berlin



 東芝は8月30日(ドイツ時間)に、国内メディアに向けたデジタルプロダクツの商品説明会を開催した。IFA 2012の同社展示コンセプトは「BE INSPIRED BE CONNECTED」。つながることで、パーソナルからリビングまで驚きと感動を、となっている。

「P845t」を紹介する東芝デジタルプロダクツ&サービス社営業統括責任者の檜山太郎氏

 映像およびTV関連は僚誌のAV Watchが詳しいが、同社としては2011年12月に世界ではじめて4KTVを発売したことを強調。2013年におけるグローバル戦略の1つの柱として今回のIFAで発表された84V型4K(3,840×2,160ドット)モデルを中心に、4Kの推進を拡大強化していきたいとしている。

 PC製品の戦略としては、2011年のIFAで事実上のローンチが行なわれたUltrabookが次世代へと進化する。これまではまず、薄く軽くを目指して製品が出荷されることが重要だったが、今秋以降はどういった風に活用していくのかが鍵になるという見方を示した。もう1つ大きなポイントとしては、10月末に登場するWindows 8への対応がある。東芝デジタルプロダクツ&サービス社営業統括責任者の檜山太郎氏は、「(現行の)Windows 7搭載機は欧米市場を中心に、買い控えが起きているのが現状」と説明する。そうした層はWindows 8登場とともに、(購買へと)ニーズが切り替わっていくという期待感を示した。

2011年は、薄く軽くを目指してまず出荷を目指したが、2012年以降はニーズの多様化が進む欧州向けのUltrabookラインナップ。「Satellite U940」を除く3製品は国内市場向けにも名称を変えて導入されるWindows 8のタッチ操作対応のPCもWindows 8出荷にあわせて導入する。クラムシェル型でタッチ操作に対応する「P845t」もある

 またWindows 8で導入されるタッチ操作については、これまでのマウスとポインタを使った操作とは異なる創造性を生む要素として注目しているとした。あわせて昨今のスマートフォンの普及を背景にして、スマートフォン文化のPCへの流入にも期待を寄せた。

 Windows 8のタッチ操作に対応する製品として、東芝は欧州市場に23型の液晶一体型デスクトップ「LX830 Touch」を導入する。日本市場向けには21型中心のD700系モデルにタッチ操作を導入して市場展開を目指すという。クラムシェル型のノートブックながら、パネルのタッチ操作に対応する「Satellite P845t」も発表した。Windows 8を搭載し、クラムシェル型でタッチとキーボード操作をどのように併用して使ってもらえるかが大きなテーマになる。さまざまな実証実験を繰り返して、同社ではこうした操作体系に十分可能性があるとみている。日本国内ではdynabook T600番系のシリーズとして発表される予定だ。

 タッチ操作を中心としたコンバーチブル製品としては、6月のCOMPUTEX TAIPEIで参考出展していた「Satellite U920t」を欧州市場向けに正式発表した。スライド式のマルチタッチパネルを搭載して、パネルを閉じた状態ではタブレット、スライドさせて起こすとノートブック操作とタッチパネル操作を併用できる。基本的に型番的に末尾「t」が付く製品がタッチ操作に対応した製品となる。

 ほかに、シアターサイズのアスペクト比21:9パネルを搭載する「Satellite U840W」、グローバルスタンダードモデル「Satellite U940」、ビジネス向けとして「Satellite Z930」を欧州市場向けに発表して、Ultrabookカテゴリの強化を図る。

 シアターサイズディスプレイは、日本市場ではWindows 7搭載の「dynabook R542」としてすでに出荷されている。出荷されて間もないものの技術的な評価は高く、順調な需要があるとしている。一方で、エンターテインメントモデルとして21:9モデルの大画面化やバリエーション展開については、検討段階と述べるにとどまった。大画面化自体に技術的な阻害要因はないが、部材として同サイズのパネルを採算ベースでまかなえるだけの製品需要の有無を見極めたいとしている。

 またエンターテイメント系が先行しているが、横長の画面を活かして複数のアプリケーションを横並びで表示するなど、ビジネス面での訴求も今後は進めていきたいということだ。

パネルがスライドして、タブレットとノートブックの両方のスタイルで利用できる「Satellite U920t」パネルを水平方向まで倒してフラットにする手前にスライドさせると、キーボードをおおうスタイルでタブレットに変わる
クラムシェル型でパネルのタッチ操作が可能な「Satellite P845t」。日本国内ではdynabook T600系として発表予定アスペクト比21:9のパネルを搭載する「Satellite U840W」。国内向けにはWindows 7搭載モデルがすでに出荷されているビジネス向けの「Satellite Z930」。Toshiba Smart Client Managerを搭載し、セキュリティと消費電力の管理を実現する

 質疑応答では、「Surface」を発表してハードウェア直接販売へも乗り出すMicrosoftとの関係について言及された。檜山氏は「パートナーであった会社から、(競合する)ハードウェアがでてくることは、1つの転機だと考えている」と前置きした上で、Windowsプラットフォームにおける水平分業の時代にも転機が訪れているという見方を示した。

 同氏によれば、1995年から2000年にかけてIntelがチップセット製造を台湾へと持ち込んだ。これを契機に各社独自のノウハウで行なってきたPCの製造が次第に画一化され、CPU、OS、ハードウェア製造が分業によって成り立つ現在の水平分業的Windowsプラットフォームのビジネスが成り立ってきた。これが、今回のMicrosoftによるハードウェア販売参入で何らかの変化が起こることは避けられないと見ている。一方で、PC業界を継続して盛り立てていく上で、Microsoftとのパートナーシップは欠かせない要素という事情も垣間見せた。

 また当初はWindows RT機の投入を示唆していた東芝だったが、準備は行なっていたものの、ローンチにあわせた導入を中止したことを正式に明らかにした。理由の1つとしては、基幹部品の1つが納期に遅れてしまうことが挙げられた。この遅れはローンチ直後の大きな需要の山を逃がすことになるため今回の見送りを決定したという。ただし、Windows RTの市場については継続して注目していく。「(Windwos RTを)やらないというわけではなく、市場の動きやユーザーから見方を再検証して、導入の必要性やタイミングを再検討していきたい」としている。

 4Kを推進するという視点から、同社の展示ブース内には4K出力対応のdynabookが参考出展された。HDMIポートから4K(3,840×2,160ドット)の映像が出力できる。4K対応のコンテンツとしては、既存のPCゲーム、Google Mapsの表示、パノラマ映像の表示、そして高解像度デジタル写真の表示などが紹介されている。

 冒頭に述べたように4Kを推進していく上で、対応コンテンツの充実は不可欠だ。PCを使った4Kコンテンツの制作フローは近々に必要となる大切な要素である。身近なところでは、高解像度デジタルカメラによって撮影した写真を4Kパネルへと表示して、ドットバイドットで編集を行なう例などが紹介されている。

 デモ機として使われているdynabookは参考モデルで、4K対応製品は2013年度の出荷を見込んでいる。当初はディスクリートGPUの搭載を前提にしているが、将来的にはチップセット統合での対応も視野に入れる。まずは静止画像などをターゲットにして、GPU技術の進化にともない動画出力の対応も目指す。PC本体に搭載されるパネルの高精細化はAppleが出荷している「MacBook Pro with Retina Display」などの例があるが、PCプラットフォームにも順次導入が進むとみている。ただしPC側がTVのように一気に4Kパネル化するというわけではなく、段階的に高解像度化が行なわれるというのが同社の見解だ。

2013年度に4K出力対応のdynabookを商品化予定4K出力対応dynabookと4K対応TVで利用できるPCの可能性を紹介今回の出展にはニコンが協力しており、D800で撮影した写真を4Kパネルで高解像度表示
参考展示された4K出力対応のdynabookから、4K対応55型TVへの出力デモGoogle Mapsの4K表示。Web上には数々の4K表示可能なコンテンツが存在すると説明。見つけることで楽しさが拡がっていくというTVへの出力は、4K出力対応のHDMIポートから行なっている

(2012年 9月 3日)

[Reported by 矢作 晃]