【CES 2012レポート】Microsoft基調講演編
~同社最後のCES基調講演の内容はWindows Phone、Windows 8、Xbox 360

シークレスト氏とバルマー氏

会期:1月10日~13日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian



 CES開幕の前日にMicrosoftの代表者による基調講演を行なうのが、最近の通例であった。しかし、それも今年で終わりとなる。なぜなら、Microsoftは、CESへのブース出展および基調講演への参加を2012年限りで終了すると発表しているからである。

 その同社最後の基調講演は、米国のラジオパーソナリティのライアン・シークレスト氏とスティーブ・バルマー氏による対談という形で進行した。主な内容は、Windows Phone、Windows 8、そしてXbox 360で、それらの今と未来を概観した。

 まずは、Windows Phone。バルマー氏は、携帯電話の用途が通話だけじゃなく、メールやソーシャル、アプリなど多岐に渡る現在において、Windows Phoneは他の携帯電話OSと違い、同社が「People Hub」と呼ぶ、人を中心に据え、そこから各種のコミュニケーションを行なうという設計思想になっていることを紹介。また、それを具現化するためのユーザーインターフェイスである「Metro UI」についてデモを交えて説明した。

 ただし、このあたりの説明は、過去に何度も行なわれたもので新味はない。CESでのニュースとしては、Nokiaの「Lumia 900」、HTCの「Titan」という新端末の投入がバルマー氏によって発表された。いずれもキャリアはAT&TでLTEに対応するのが特徴となる。

Lumia 900Titan

 続いてWindows 8。ただの次バージョンではなく、PCの性能にタブレットの潜在能力を加えたものだと表現するWindows担当Chief Marketing Officerのタミ・レラー氏がデモを行なった。

 Windows 8には、iOSやAndroidと同じロック画面が用意され、スリープからの復帰時などはまずこの画面が表示される。ここでは、ロックを解除することなく、未読メール数や、直近の予定などの通知を見ることができる。おもしろいのが、解除方法について、ピクチャーパスワードというのが用意され、自分で用意した壁紙の任意の場所を指定した順番にタップしてパスワード入力の代わりにすることができる。

 周知の通り、Windows 8はWindows Phoneと同じMetro UIを採用するが、レラー氏はWindows 8がタッチだけでなく、マウスとキーボードでも同じ操作が可能なことを再三強調し、画面が10型であれ30型であれ妥協のない体験を提供すると述べた。

 Metroスタイルアプリは、基本的にモバイルOSのようにフルスクリーン表示で利用する。アプリのメニューを呼びだす際は、画面の上端か下端から中央に向かってスワイプする。また、右端からスワイプすると、「Charm」と呼ばれるWindows 8の主要機能にアクセスできる帯が表示される。

タミ・レラー氏ロック画面。左下に通知が表示ロック画面をカスタマイズして、ピクチャーパスワードも利用可能
Metro UIのスタート画面スワイプやマウス/キーボード操作でタイルが横スクロール右端に出ているのがCharm
Metroスタイルのお絵かきアプリ。フルスクリーン表示だが、上下からスワイプでメニューが表示タイル全体を縮小もできる

 これらのデモに使われたのはTegra 3の載ったタブレットで、レラー氏はx86だけでなく、NVIDIA、Qualcomm、Texas InstrumentsのARM SoCでもWindows 8が動くことを改めて紹介。また、Metroスタイルアプリは、HTML5ベースであり、同じバイナリがx86/ARMの両プラットフォームで動作すると説明した。

Core i5を搭載したSamsungのタブレットTegra 3を搭載したタブレット

 それらのアプリを配信するWindows Storeについても、実際の画面を使ってデモを行なった。Windows StoreもMetro UIになっており、アプリのジャンルごとにタイルが並べられている。ここで配信するのはコンシューマ向けアプリだけでなく、企業向けアプリも用意され、その自動アップデートにも利用される。Windows StoreはWindows 8に先駆け、2月1日に世界同時オープンする。

 メトロスタイルアプリのもう1つの特徴は、App Contractと呼ばれるデータ共有の仕組みが用意されている点。アプリごとに、他のアプリのデータへのアクセスを許可することで、アプリ間でデータが共有できる。例えば、とあるWebページを開いた状態で、Charmを呼び出し、「Friend Send」アプリを使って即座にそのページの内容を送信するといった具合。

 Windows 8のパブリックベータは2月下旬に公開予定。また、バルマー氏は、全てのWindows 7 PCがWindows 8にアップグレード可能であることを添えた。

Windows StoreこれもMetro UIでジャンルごとに並べられる
HTML5で作成された「Cut the Rope」左画面のWebページの情報を、右画面に表示したFriend Sendアプリで共有しているところ

 最後がXbox 360。Xbox 360もまた、12月に実施されたアップデートでMetro UIを採用。さらに、Kinectのジェスチャーや音声での操作が強化された。また、アプリを使って、Windows Phone経由でも操作できる。

 ここでは、Verizon FiOS、Comcast Xfinity、News Corporationらによる北米でのTV/動画コンテンツ配信開始が発表された。

 その中でもっとも特徴的なのが、Xbox 360+Kinect専用のセサミストリートを使ったTV番組。デモでは、これは「初の双方向TV番組」として紹介され、実際にTVのような動画が表示されるのだが、Kinectを使って番組と双方向のやりとりを行なうことができる。例えば、登場キャラクタが「ハコの中にココナッツを入れて」と言うので、ユーザーがTVに向かってものを投げ入れる仕草をすると、画面の中にココナッツが投げ入れられる。また、Kinectのカメラを使って、視聴者自身の姿が画面内に取り込まれ、画面内のキャラクタとゲームをしたりできる。

 なお、KinectはWindows版が2月1日に発売となることが発表された。

 基調講演の締めくくりとして、シークレスト氏がバルマー氏に「この次に来るものは?」と尋ねると、バルマー氏は「Metro! Metro! Metro!」、続けて「Windows! Windows! Windows!」とおなじみのバルマー節で答え、最後の基調講演の幕を閉じた。

Kinect専用セサミストリート左下はTV画面。右上は視聴者を写したところ画面に向かってものを投げる仕草をすると、実際に画面にココナッツが投げ入れられる
大きなものを投げる仕草だと、入り方が変わるなどの仕掛けもTV画面に自分が入り込んでゲームをすることもできるCESでのバルマー氏の見納め

(2012年 1月 11日)

[Reported by 若杉 紀彦]